【産婦人科医監修】稽留流産の症状は?出血・痛みの兆候なし?つわりや基礎体温はどうなる?

流産と言えば、大量の出血や下腹部痛とともに起こるイメージが強いかもしれません。ところが、死亡した胎児や胎盤が子宮内に残ったままの「稽留流産」はこうした兆候がないのが特徴で、本人が気づかないあいだに流産していることがあります。ここでは、稽留流産の症状のほか、つわりや基礎体温、妊娠初期症状の変化について解説します。

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この記事の監修

寺師 恵子
産婦人科医
寺師 恵子

目次

  1. 稽留流産とは?心拍確認後でも起こる?
  2. 稽留流産の兆候・症状は?出血なしなの?
  3. 稽留流産になってもつわりが続く?
  4. 稽留流産すると妊娠初期症状・基礎体温はどうなる?
  5. 稽留流産の自然排出の兆候は?出血・痛みはいつまで?
  6. 稽留流産のリスクをできるだけ低くしよう
  7. 流産に関連するおすすめの書籍
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稽留流産とは?心拍確認後でも起こる?

流産とは

そもそも流産とは、何らかの原因で妊娠22週未満にお腹の赤ちゃんが亡くなってしまい、妊娠が中断することです。人工妊娠中絶を意味する「人工流産」と区別して、「自然流産」ともいわれています。流産は全妊娠の約15%の確率で発生するとされ、誰でも経験する可能性があります。

流産は発生する時期によって以下に分類されます。

早期流産胎嚢が確認できてから妊娠12週未満
後期流産妊娠12週以降22週未満

流産の多くは妊娠初期に発生し、早期流産が全流産の約80%を占めます。なかでも、妊娠検査薬で陽性反応が出てエコー検査で胎嚢も確認できたものの、心拍確認ができずに流産と診断されるケースがほとんどです。そのため、昔から心拍確認ができればひとまず安心といわれてきました。

ただし、経腟エコーによる心拍確認後の流産率は全流産の16~36%で、決して低い数字ではありません。精度の高い経腟エコーでは妊娠の早い段階で心拍確認ができますが、その後胎児が成長できなくなる場合があるということです。

なお、よく耳にする「切迫流産」は、厳密には流産とは異なるものです。切迫流産とは、胎児はお腹の中で生きているものの流産になる危険性があり、入院や絶対安静が必要な状態を指します。

稽留流産とは

「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」は流産の一種です。「繋留流産」と書き間違えやすいですが、「稽留流産」が正しい漢字です。稽留流産は胎児が子宮内で死亡し、胎児や胎盤といった子宮内容物が子宮外に排出されずに残っている状態で、腹痛や出血といった自覚症状があらわれません。そのため、流産に気づかないで過ごし、妊婦健診で初めて判明するケースがほとんどです。

稽留流産を診断するにはエコー検査を行います。経腟エコーで胎嚢は確認できるものの、その中に胎児(胎芽)とその付属物が認められないことを「枯死卵(こしらん)」と言います。この枯死卵が証明された場合や、経腟エコーで妊娠7週以降に心拍が確認できない場合、稽留流産が疑われます。

稽留流産はそのままにしておくと子宮内容物が自然に排出される「進行流産」になり、出血や痛みがあらわれることがあります。子宮内容物がすべて排出される「完全流産」になるまでは症状が続き、大量出血といったリスクもあるため、手術を行う場合が多いです。

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稽留流産の原因

稽留流産を含み、流産の原因は時期によって異なります。

妊娠初期に起こる早期流産の原因の多くは、受精卵の染色体異常です。胎児が育たないことが受精の段階で決まっていたと言え、残念ながら予防することはできません。どんな人が流産しやすいかは一概には言えませんが、母体の年齢が上がるにつれて受精卵の染色体異常率が上がり、流産のリスクも高まるといわれています。

まれに、染色体異常によって「絨毛組織」が異常増殖する「胞状奇胎」が原因で稽留流産になることもあります。胞状奇胎は絨毛がんに移行するといったリスクがあるため、流産後の子宮内容物を病理検査に出して、胞状奇胎だったかどうか診断する必要があります。

一方、妊娠初期の途中から妊娠中期にかけて発生する後期流産は、母体側の原因であることが増えます。「絨毛膜羊膜炎」「子宮筋腫」「子宮奇形」「子宮頸管無力症」などが後期流産の原因として考えられます。

近年、稽留流産が増加傾向にあり、稽留流産の原因について新たな見解も出てきています。子宮組織の代謝が悪いために良い胎盤が形成されず、胎児への血液供給がうまくいかないことで胎児が育ちにくいのではないかというものです。 この見解はまだ医学的に証明されていませんが、今後明らかにされれば稽留流産を予防する手がかりになるかもしれません。

稽留流産の兆候・症状は?出血なしなの?

流産と言えば、激しい腹痛や出血があらわれるイメージが強いかもしれません。実際、進行流産では出血や陣痛のような規則的な下腹部痛、お腹の張り、腰痛などがみられます。しかし、稽留流産はこれといった兆候があらわれず、自覚症状もないのが特徴です。痛みを感じず出血しない流産のため、妊婦健診で突然診断されて驚くという妊婦さんが多いです。

前兆がない分、稽留流産が判明したときのショックは大きく、気づかなかった自分を責めてしまうかもしれません。しかし、妊婦さんがどんなに気をつけて過ごしていても流産を確実に予防することは困難なため、くれぐれも自分を責めないようにしましょう。

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稽留流産になってもつわりが続く?

つわりは早い人で妊娠4週頃に始まり、妊娠8~9週頃にピークを迎え、安定期と呼ばれる妊娠中期に入る頃に治まるのが一般的です。子宮内容物が体外に排出される進行流産の場合、このつわりが急になくなるケースがあります。

しかし、稽留流産の場合、進行流産とは逆につわりがなくならず続くことがあります。稽留流産では子宮内容物が子宮内に残っているため、身体が妊娠を継続していると勘違いしてしまうのです。子宮内容物が自然に排出されて完全流産になったり、手術で取り除かれたりすると、つわりも自然に治まると考えられます。

流産するとつわりがなくなることもあれば続くこともあるということです。そもそもつわりは個人差が大きく、つわりの有無だけでは流産を判断できません。

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稽留流産すると妊娠初期症状・基礎体温はどうなる?

妊娠初期症状の胸の張りが続く

妊娠初期には胸の張りといったこの時期特有の症状があらわれますが、稽留流産すると妊娠初期症状はどうなるのでしょうか。

稽留流産では胎児が亡くなった後も正常妊娠のときのホルモンバランスが保たれ、妊娠を持続する役割があるプロゲステロンという女性ホルモンが分泌され続けます。プロゲステロンは乳腺を活発にする働きもあり、胸の張りの原因になることから、子宮内容物が排出されてプロゲステロンの分泌量が低下するまでは、胸の張りが続くことが多いようです。

基礎体温は高温期を維持する

プロゲステロンには妊娠を維持するために体温を上げる働きがあり、妊娠初期の基礎体温は高温期を維持します。進行流産では子宮内容物の排出とともにプロゲステロンの分泌量が減るため、流産の兆候として基礎体温が低下することがあります。しかし、稽留流産ではプロゲステロンの分泌が維持されるため、正常妊娠と同じように高温期が続くと考えられます。

ただ、基礎体温は正常な妊娠でも妊娠13週頃から徐々に下がり、妊娠20週頃には低温期の体温に戻ります。基礎体温低下が流産の兆候とは言い切れない一方、基礎体温が高温のままでも稽留流産の可能性はあるということです。

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稽留流産の自然排出の兆候は?出血・痛みはいつまで?

自然排出は兆候なしに突然始まる

稽留流産が判明した場合、胎児の大きさによっては、子宮内容物が自然に排出されるのを待つ「待機療法」もしくは手術を選択することになります。

待機療法の場合、出血やお腹の痛み・張りといった症状が突然あらわれる場合があります。出血や痛みがいつから始まるかは個人差があり、自然排出を選択した方の中には「いつ症状が出るのだろう」と不安になりながら過ごした人も多いようです。また、長期間待ってもなかなか自然排出が起こらない場合、感染症が起こるリスクも高まるため、結局手術することになる可能性があります。

稽留流産後もしばらく症状が続く

自然排出が始まった後や手術後、子宮が妊娠前の状態に回復する過程で出血や腹痛があらわれます。これらの症状がいつまで続くのかというと、一般的に稽留流産後、約1~2週間は生理痛のような下腹部痛や出血がみられるといわれています。

ただし、症状が治まるまでの期間は個人差があり、出血が数週間ダラダラと続いたという人もいます。いずれにせよ、2週間以上症状が続いた場合は一度産婦人科を受診すると良いでしょう。

流産手術後の出血量が少なく、痛みも軽い場合、大きな問題にはならないでしょう。しかし、「出血量が多い」「激しい痛みが続く」「発熱を伴う」といったときは、手術で取り除けずに遺残した子宮内容物が感染源となって感染症を発症しているのかもしれません。こうした場合、抗生剤や子宮収縮薬を投与して経過を観察しますが、再手術が必要なこともあります。

稽留流産のリスクをできるだけ低くしよう

稽留流産は兆候がなく、本人も気づかないうちに起こります。妊婦健診で稽留流産が判明しても、つわりや妊娠初期症状が続いていると「まだ赤ちゃんが頑張ってくれているのではないか」と信じたくなるかもしれません。また、赤ちゃんが苦しんでいるのに気づいてあげられなかったことに罪悪感や後悔をもつこともあるでしょう。しかし、稽留流産の多くは胎児側に原因があり、妊婦さんが100%予防することは困難なため、どうか自分を責め過ぎないでください。

稽留流産の確実な予防法はありませんが、できるだけリスクを低くするよう生活習慣を見直すことはできます。稽留流産の原因として子宮組織の代謝の低下が指摘されていることから、健康な母体を作ることが必要不可欠です。赤ちゃんにとって居心地の良い身体は、ママ本人にとっても健康な身体ということになります。妊娠前から栄養バランスのとれた食事や適度な運動を心がけるほか、ストレスをためないようにして、基礎代謝を高めましょう。

また、妊娠中の喫煙や飲酒が流産や早産のリスクを高めるというデータが出ているため、妊活中から禁煙したりお酒を控えたりするよう心がけましょう。

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