妊娠糖尿病の食事療法の「分割食」とは?おすすめメニューは?出産後の食事はどうする?

今や妊婦さんの8人に1人が診断されている「妊娠糖尿病」。自覚症状がほとんどないので、突然の診断にびっくりしてしまう方が多いのではないでしょうか。妊娠糖尿病の治療は基本的に食事療法を行います。ここでは、妊娠糖尿病の食事療法で行う「分割食」のポイントや、おすすめのおやつメニュー、出産後の食事について解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 妊娠糖尿病とは
  2. 妊娠糖尿病の食事療法は分割食を行う?
  3. 妊娠糖尿病の食事で気をつけること
  4. 妊娠糖尿病におすすめのおやつメニュー
  5. 妊娠糖尿病の出産後の食事は?
  6. 妊娠糖尿病でも食事を楽しもう
  7. あわせて読みたい

妊娠糖尿病とは

「妊娠糖尿病」とは、妊娠中に発症する糖代謝異常です。糖尿病まではいたっていない軽度なもので、妊娠前から糖尿病を発症していた「糖尿病合併妊娠」や、妊娠中に「明らかな糖尿病」だと診断されるケースとは区別されます。

妊娠糖尿病の原因は、胎盤から分泌される「胎盤性ホルモン」によって、血糖値をコントロールするインスリンの働きが抑えられることです。通常、食事をして血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が上がると、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンが細胞にブドウ糖を取り込ませて、血糖値の上昇を抑えます。ところが、妊娠中は胎児に栄養としてブドウ糖を供給するために、胎盤性ホルモンがインスリンの働きを抑えてしまうため、食後に高血糖になりやすくなるのです。

妊娠糖尿病になると、合併症として「妊娠高血圧症候群」を発症したり、胎児が発育不全や機能不全を起こしたりするリスクが高まり、場合によっては流産や早産になってしまう可能性があります。

妊娠糖尿病の治療は、まずは「食事療法」で血糖値を管理するのが基本です。食事療法で改善が見られなければ、インスリン注射を投与する「インスリン療法」を行います。

妊娠糖尿病の食事療法は分割食を行う?

分割食とは

食事療法中は、標準体重をもとに決められた1日の総摂取カロリー内で、栄養バランスがとれた食事を4~6回に分けてとるよう指導されます。これを「分割食(分食)」と呼びます。なぜ分割食を行うかというと、妊娠中の血糖値は空腹時に低く、食後に高くなりやすい特徴があるからです。1回の食事量を減らして回数を増やすことで、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。

分割食の方法

分割食は1日3食の食事の合間に「補食」と呼ばれるおやつを1~3回食べ、極端にお腹の空いた状態にならないようにします。1日の総摂取カロリーが2700kcaLの妊婦さんが6分割食を行う場合、食事は毎食600kcaL摂取し、朝昼晩の3回のおやつで300kcaLずつ補うというように、カロリーのバランスに配慮しながら食事をします。

妊娠糖尿病の食事で気をつけること

栄養バランスを整える

食事の献立を決める際に何よりも意識したいのは栄養バランスです。炭水化物、タンパク質、ビタミン、ミネラル(無機質)、脂質の5大栄養素や食物繊維がバランス良くとれるメニューにしましょう。

糖尿病といえば、ごはんやパンといった炭水化物を食べすぎてはいけないイメージがあるかもしれませんが、妊娠中、炭水化物は胎児の成長に必要不可欠です。完全に抜くのではなく、量を減らすようにします。

糖質と塩分を控える

妊娠糖尿病を改善するには、血糖値と体重のコントロールが欠かせません。そのため、糖質の多い甘いものは控える必要があります。また、塩分を摂りすぎると、妊娠高血圧症候群を合併するリスクが高まるため、塩分を抑えた薄い味付けを心がけましょう。

食べ順を意識する

食事をする際は、血糖値の上昇を抑える「食べ順」を意識することも大切です。野菜には糖質の吸収を穏やかにする食物繊維が豊富に含まれていることから、まず初めに野菜のおかずを食べます。次にタンパク質中心の主菜を食べ、最後に糖質が多いご飯やパンなどの主食を食べましょう。糖質の前に食物繊維やタンパク質を摂取すると、インスリンの分泌を促進する「インクレチン」というホルモンが消化管から多く分泌され、食後の血糖値を下げる効果が期待できます。

かさまし食材で満腹感を得る

摂取カロリーが制限されていると、「たくさん食べたいのに食べられない」というストレスがたまってしまいますよね。そんなとき、低カロリーなのに満腹感が得られる「かさまし食材」が活躍します。かさまし食材の代表は、もやしやキャベツ、こんにゃく、しらたき、寒天、ナタデココです。歯ごたえを残す調理方法にして、たくさん噛んで食べるようにすると、さらに満腹感が得られますよ。

糖尿病向けのレシピ本や宅配を活用する

妊娠糖尿病の食事で大変なことのひとつは、栄養バランスがとれたメニューを毎日考えなければならないことでしょう。もちろん、病院で医師や管理栄養士から食事指導を受ける際にメニュー例を教えてもらうことはできますが、飽きが来ないように食生活に変化をつけるのは苦労しますよね。

そんなときは、糖尿病患者や妊婦さん向けのレシピ本を参考にしてみてはいかがでしょうか。病院や管理栄養士が監修したものなど、いろいろな種類があるので、好みの1冊を見つけてくださいね。

毎食きちんと作るのは負担が大きいという妊婦さんは、妊娠糖尿病向けの食事宅配を活用しても良いでしょう。

妊娠糖尿病におすすめのおやつメニュー

分割食のおやつの作り置きレシピ

妊娠糖尿病の改善や予防には、1日3食の食事のほかに補食と呼ばれるおやつを1~3回間食する「分割食」を行い、血糖値を急激に上げないことが大切です。おやつと言っても、糖分の多い甘いものは控えなければならないほか、日に何度も用意する手間があることから、一体何を食べたら良いのか悩んでしまうかもしれませんね。筆者はその都度用意するのが面倒だったため、おやつを作り置きしておき、その日の気分で食べていましたよ。

筆者が実際にストックしていたおやつメニューのレシピは以下のとおりです。

□人参のコンソメ煮
カットした人参を鍋に入れ、ひたひたの水とコンソメを加えて水分がなくなるまで煮詰めます。

□ミニおにぎり
外出先でも食べやすいように、一口サイズに握って冷凍ストックしていました。

手軽に食べられる市販のおやつ

分割食のおやつは、手軽に食べられる市販のものも用意しておくと良いでしょう。筆者は大豆バーやクリームチーズ、野菜ジュースを常備していました。

ミニトマトやきゅうり、ヨーグルトを買って食べていたという妊婦さんもいますよ。

どうしても甘いものが食べたいときのおやつ

妊娠糖尿病の妊婦さんも甘いものが食べたいことはありますよね。甘いものを我慢しすぎてストレスがたまってしまっては良くありませんから、「どうしても甘いものが食べたい」というときは、血糖値を上げにくいおやつを選んで食べましょう。

妊娠糖尿病の妊婦さんにおすすめの低糖質スイーツは以下のようなものです。

□おからクッキーのような大豆を使ったお菓子
大豆製品は栄養価が高く低糖質です。食物繊維も豊富で、便秘の解消にも効果が期待できますよ。

□寒天・ゼリー
寒天やゼラチンには糖質が含まれていません。市販の商品にはゼロカロリーや低カロリーのものが多くあります。

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妊娠糖尿病の出産後の食事は?

妊娠糖尿病はインスリンの働きを抑える胎盤性ホルモンの影響で起こるとされています。そのため、出産して胎盤が排出されると改善することがほとんどです。しかし、妊娠糖尿病になった人は、妊娠糖尿病を発症したことがない女性に比べて、将来糖尿病になるリスクが高いといわれています。出産後は妊娠中の緊張が解け、子育てに追われるからか、血糖コントロールがおろそかになりがちですが、引き続き食事内容に気を配りましょう。

授乳期間中は、妊娠前の摂取カロリーに、授乳のためのカロリーとして600kcaL程度増やします。妊娠中と同様、栄養バランスの良い食生活を心がけ、特に授乳中に不足しがちなカルシウムや鉄、ビタミンは積極的に摂るようにしましょう。

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妊娠糖尿病でも食事を楽しもう

いかがでしたか。分割食は大変で面倒くさいイメージがあるかもしれませんね。筆者も最初は何度もくじけそうになりましたが、1週間くらいでコツがわかり、だんだん楽になりました。

妊娠糖尿病の食事は気を遣わなければなりませんが、食べることに対してストレスがたまってしまっては、母体にもお腹の赤ちゃんにも良くありません。市販の低カロリーおやつや調味料をうまく使ったり、たまには外食を楽しんだりして、息抜きしてくださいね。

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