【産婦人科医監修】早産とは?早産の原因と兆候、予防法、赤ちゃんのリスクについて

予定日より早い段階で出産となる早産。医療技術の進歩とともに赤ちゃんが無事に育つ例も増えたものの、それでも母子ともに危険にさらされることもあります。ここでは、赤ちゃんやママの体の負担を減らすためにも知っておきたい、早産の原因や兆候、予防法、赤ちゃんへのリスクについて解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 早産とは
  2. 早産の原因
  3. 早産の兆候
  4. 早産の予防法
  5. 早産児のリスク
  6. 無理のないマタニティライフを
  7. あわせて読みたい

早産とは

妊娠22週から37週未満に出産すること

妊娠22週~37週未満に出産することを早産といいますが、早産の結果、赤ちゃんが生存できなかった場合には、死産という扱いになります。

なお、妊娠22週未満の分娩を「流産」、妊娠37週~41週未満の分娩を「正期産」、妊娠42週以降の分娩を「過期産」といいます。流産は胎児側の染色体異常が原因になることが多いのですが、早産は母体側の問題が原因になることが多いのです。

切迫早産との違い

早産になりかかっている状態、つまり早産の一歩手前の状態を切迫早産といいます。子宮収縮が頻回におこり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態や破水(子宮内で胎児を包み、羊水が漏れないようにしている膜が破れて、羊水が流出している状態)をしてしまった状態のことです。

治療が必要になることがほとんど

妊娠37週未満で胎児が母体の外に出てしまうと、新生児ICU(集中治療室)での治療が必要になることがほとんどです。早く生まれれば生まれるほど、障害が残る可能性も大きくなります。

早産の原因

感染症

感染症の場合、初期のうちは無症状の為気づきにくく、下記のように徐々に進行していく事が多いようです。

①細菌性腟症
特別な菌が原因ではなく、ふだんから体内にいる菌が腟内で過剰に増えた状態をいいます。

②頸管炎
細菌性腟症に気づかずにそのままにしておくと、さらに上方へと感染が進み、子宮頸管まで到達して炎症を起こします。

③絨毛膜羊膜炎
細菌性腟症や頸管炎の原因菌が卵膜から子宮に広がり、羊水まで達したもの。ここまで感染が進むと前期破水を起こし、早産の大きな原因にもなります。

④切迫早産・早産の引き金に
細菌性腟症、頸管炎、絨毛膜羊膜炎のいずれも、切迫早産の大きな原因になります(妊娠22~36週)。そのまま放置しておくと、早産を引き起こすことになるので、腟症は腟の洗浄や抗菌薬の腟錠薬(局所投与)、頸管炎・絨毛膜羊膜炎は腟錠と抗菌薬(全身投与)で治療します。

子宮の異常

子宮頸管無力症や子宮奇形、子宮筋腫などが早産の可能性になる原因といわれています。

・子宮頚管無力症
腟内に炎症がなく、お腹の張りもないのに子宮口が自然と広がってきてしまう事。

・子宮奇形
先天的に子宮の形に異常があると早産になる頻度は高まります。女性全体の4%前後にこの子宮奇形があるとみられ、珍しいことでもないようです。

・子宮筋腫
筋腫が出来た場所や大きさによっては早産につながることがあります。

妊娠高血圧症候群

2005年までは「妊娠中毒症」とも呼ばれていました。妊娠によって血管や腎臓に大きな負担がかかることになり、妊娠後期に起こりやすいトラブルです。もともと高血圧だった人や、糖尿病、腎臓病を持病とする人、肥満気味の人は発症のリスクが高くなるので要注意です。

心臓病、腎臓病などの合併症

心臓病や腎臓病他、もともと持病がある人や、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病になった場合、体がお産に耐えられない事もあるので早産になる可能性があります。

多胎妊娠

2人以上の赤ちゃんの妊娠の場合。子宮の内圧が高まり、早産につながることがあります。 双子であれば、妊娠37週以降まで維持も可能です

羊水過多・過少

羊水が多すぎたり、少なすぎたりする状態のこと。赤ちゃんの機能異常が考えられます。

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胎児機能不全

妊娠中お腹の赤ちゃんが急に元気がなくなるということも。こうした状況は「胎児機能不全」と呼ばれますが、人工的に早産したほうが安全、早産せざるを得ないと判断されることがあり、帝王切開にて赤ちゃんを取り出すということもあるようです。

疲労・ストレス

母体が抱えるストレスが早産の原因となることもあります。疲れがたまっている、ストレスが重なったというような場合は子宮の収縮が起こりやすく早産になりやすい状態に。その日の疲れはその日のうちに解消するようにしっかりと休むようにしましょう。

冷え

体が冷えることで、直接的に早産や切迫早産を起こすことはありませんが、冬の寒い夜に台所に立ったりクーラーがきいた部屋にずっといたりすると、おなかが張りやすいという人も。

早産の兆候

お腹の張り

多くの妊婦さんが経験する症状なので、早産を引き起こしうる症状とは気づかないことも多いです。すぐに治まるお腹の張りだと問題ありませんが、安静にしていても規則的にお腹が張り続けたり、10分間隔より短くなると要注意です。

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腹痛

安静にしても痛みが強くなるときは要注意です。自覚はなくても子宮収縮が起こっているとも考えられます。

不正出血

「おしるし」と呼ばれる出産前の出血、まだ出産時期ではないのにそのおしるしがあると切迫早産と判断される可能性が高いです。おりものなどに混ざった少量の出血などであれば心配ないこともありますが、トラブルの可能性もあります。

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破水

破水が起こると、羊水に雑菌が侵入しやすくなります。そのため妊娠を維持することができなくなり、大体1週間以内には出産になってしまうことが多いようです。

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子宮頸管が短い

赤ちゃんが産まれる時の通り道となる子宮頸管はお腹が張ると段々短くなり、子宮を支える力が弱くなり出産につながるのです。

まだお産の時期ではないにも関わらず、子宮頸管が徐々に短くなってしまう方や元々子宮頸管が短い方もいます。子宮頸管が短くなると、その分赤ちゃんが下がってきてしまい、ついには子宮口も開いて、切迫早産や早産へとつながってしまうのです。

早産の予防法

妊娠高血圧症候群の場合は医師の指示に従った食事も心がける

妊娠高血圧症候群になり症状が進行すると、胎盤剥離などが起こりやすくなる、赤ちゃんの発育が悪くなったりするなど、様々な異常を引き起こすリスクがあります。

妊娠高血圧症候群の場合には特に、赤ちゃんに十分に栄養が行き届くよう、塩分を控えめにし、バランスの取れた食事をするように心がけましょう。

適度な運動を心がける

妊娠中の適度な運動は良いのですが、張り切りすぎては良くありません。激しい運動はお腹が張る原因にもなります。安産体操やマタニティエクササイズでも、お腹が張ったと感じたら、すぐにやめて体を休めましょう。

体を冷やさない

体が冷えると、お腹の張りが起こりやすい人もいるようです。寒い時期には、キッチンやトイレ、脱衣所などにヒーターを置くなどして、冷えないようにしましょう。

夏でも、エアコンが効いている場所では、靴下を履いたりひざ掛けをかけるといったように、冷え対策が必要です。

重いものを持たない

重いものを持ち上げようとしたり、高いところのものを取ろうとすると、お腹に力が入ってしまうので、お腹の張りを引き起こしがちになります。できるだけ、周囲の人や家族に頼むようにしましょう。

また、上の子がいる場合にも、抱っこでお腹に負担がかかることがあります。立ったまま抱き上げようとしたりせず、椅子に座って膝にのせるようにしてくださいね。

立ち仕事は控える

妊娠しても、出産前まではお仕事を続ける人も多いですね。そのお仕事が立ち仕事の場合、長時間立ちっぱなしにならないように気を付けましょう。

長時間の立ち仕事は、子宮が収縮しやすくなってしまいます。「疲れた、ちょっとお腹が張ってきた」という場合には、無理をしないですぐに休憩をしましょう。お仕事でなくても、家事や買い物などに出かけた際にも注意してくださいね。

運転中はこまめに休憩をとる

車の運転をするときは30分~1時間で休憩をとる様にしましょう。座っていても長時間同じ体勢というのは妊婦さんにとってはあまり良くないものです。

早産児のリスク

早産により、赤ちゃんには様々なリスクが引き起こされる可能性があります。

低出生体重児

低出生体重児は大きさによりさらに呼び名が区別されていて、2500g未満の胎児を「低出生体重児」1500g未満の胎児を「極低出生体重児」、さらに1000g未満の胎児を「超低出生体重児」と呼びます。

特に1500g未満で産まれた胎児は、様々な機能がまだ未熟であるため、新生児仮死、呼吸急迫症候群、低血糖などの合併症を引き起こす可能性が高いです。また免疫力もとても弱く、感染症にもかかりやすくなります。

呼吸器系の病気

未発達の肺では呼吸をしても十分な酸素を得られないという危険性や無呼吸になってしまうことがあり、こうした呼吸の”ムラ”は早産児の特徴と言われることもあります。

また、呼吸するたびに異音がするということも肺が未発達な早産に多い症状のひとつ。そのため、人工呼吸器をつけて様子を見たり、呼吸を忘れないような刺激を赤ちゃんに与えるなどの対処が採られるのが一般的です。

心臓・脳・目などの病気

未発達のまま生まれてくる早産児は、うまく子宮の外の環境に適応することができず心不全を起こす可能性があります。

目の網膜に対する血管構造が完全に構築されるのは妊娠36週頃。そのため、早産児では網膜の血管が発展途上のまま出生することになり、出生後に異常な発達を遂げてしまう「未熟児網膜症」の恐れがあります。

脳の障害では、脳室内出血が代表的な例であり、生命の危険にさらされたりしますし、長期的には発達の遅れが生じることもあります。また、水頭症・脳性まひ・知的障害など様々な障害のリスクもあります。

栄養不足による病気

早産で生まれた赤ちゃんは十分な哺乳力が備わっていないということが多く、栄養不足に陥ることも多いと言われています。胃が他の赤ちゃんよりも小さいということもあり、吐き戻ししやすいのも特徴です。

栄養素が足りないとくる病や貧血につながるため、鉄剤などで補給することも。また、血糖を保つことができずに、血糖異常に伴う障害を起こすこともあると言われています。

黄疸

未発達な肝臓の影響を受けて、黄疸が出ることも。新生児黄疸といって、正期産で生まれた赤ちゃんでも皮膚や目が黄色くなることがありますが、その後1~2週間かけて徐々に快方へと向かうため、適切に対処を行えばそのほとんどが心配の要らないものと言われています。ただし、早産児の場合は黄疸の症状も長引きやすいという特徴があります。

口蓋裂・口唇裂

口蓋裂(上あごと鼻の穴がつながった状態)・口唇裂(唇に亀裂が入った状態)といった障害が多いのも早産児の特徴です。この場合、おっぱいが飲めなかったり、気道に入り肺炎の原因となったりすることから注意が必要にはなりますが、生後1年以内に手術を行うことが多く、成長すれば見た目にも分からなくなるように治療することができます。

ADHDなどの発達障害

超低出生体重児(出生体重1000g未満)の予後についての研究によると、超低出生体重児のうち出生時の体重が少ないほど、学齢時のIQの平均値が低いことが分かっています。

極低出生体重児(出生体重1500g未満)の約半数が学習障害のリスクを持ち、言語能力、読書力、書字、算数、注意集中、運動などの分野で発達が遅れる頻度が高いと言われています。

また、知的障害を伴わない学童期の超低出生体重児(出生体重1000g未満)のうち、学習行動上にも影響するADHDについて、一般の学童より高頻度であることが分かっています。

無理のないマタニティライフを

働いている女性が増えたこともあり、産休前にお腹の張りを頻繁に感じたという方や切迫早産と診断されたという方は多いもの。薬の服用や安静生活で無事に出産されたという方がほとんどではありますが、実は早産や切迫早産は非常に身近なものなのです。

母体や胎児の状況によっては早産が免れないケースもありますが、妊婦さん自身が気を付けることはくれぐれも無理はしないこと。とはいえ、無理は禁物と分かってはいても、体の変化に合わせて生活を変えるのも難しいものです。思いっきり怠けるくらいで、ちょうど良いのかもしれませんね。

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