腸重積症とは?赤ちゃんの腸重積症の症状と原因、治療法について

腸重積症は生後3ヶ月から2歳までの子どもに多く発症する腸の病気です。腸が腸のなかにもぐり込んでしまう症状で、原因ははっきりと解明されていません。長時間その状態が続くと腸全体が壊死し腹膜炎となり、最悪の場合は死にいたる恐れがあるので、できるだけ早期の発見が治療の鍵を握っています。今回は、症状と治療法についてご紹介します。

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この記事の監修

千葉 智子
小児科医
千葉 智子

目次

  1. 腸重積症とは
  2. 赤ちゃんの腸重積症の症状
  3. 赤ちゃんの腸重積症の原因
  4. 赤ちゃんの腸重積症の治療法
  5. ロタウイルスワクチンで腸重積症のリスクが高まる?
  6. 早期発見が大切!いつもと違うと感じたらかかりつけ医を受診しましょう
  7. あわせて読みたい

腸重積症とは

腸の一部が腸のなかに入ってしまう病気

腸重積(ちょうじゅうせき)は、腸の一部が腸のなかに重なって入り込んでしまう病気です。スライドさせて伸び縮みする望遠鏡を縮ませた状態と説明されることがあります。腸重積によって引き起こされる腸閉塞、腸の血行不良などが起こり、腸重積症と言います。

大腸につながっている血管は大腸の外側からつながっています。そのために腸重積で大腸に入り込んだ内側の部分は血流が悪くなります。

生後6ヶ月~2歳の子どもに多い

腸重積症は、生後6ヶ月~2才で、すこしだけ男の子がなりやすいといわれています。


赤ちゃんの腸重積症の症状

お腹にしこりがある

腸重積症の症状としてお腹にしこりが発生します。おへそのやや右上くらいに発生頻度が高いといわれています。腸重積症の赤ちゃんはここを押されるとしこりを感じたり、痛みを覚えて激しく泣くことがあります。

ミルクを吐く

腸重積症の症状としてミルクを吐くなどの嘔吐(おうと)があります。嘔吐に行き着く前には、痛みで機嫌が悪くなり泣き出すという兆候があるはずです。そして激しく泣いては泣き止んでぐったりし、再び激しく泣きだします。それを何度も繰り返し嘔吐するように。次第に顔色が青白くなっていきます。

機嫌が悪い

普段より機嫌が悪く、それが長時間続くときは腸重積を疑うべきとの指摘があります。腸重積症は突然発症しますが、不機嫌にぐずったりすぐに落ち着いたりを繰り返すことがあります。これを間欠的な症状と表現するようです。

周期的に泣く

腸重積症を発症すると、上記のように急に不機嫌になったり落ち着いたりを間欠的に繰り返すといわれています。このように周期的に泣いたり泣き止んだりするのが腸重積症の特徴です。同時にミルクを吐いてしまう、うんちに血が混じってイチゴジャムのように見えるなどの症状が出るのが一般的な症状です。

粘血便が出る

腸重積の特徴のひとつが粘血便です。一方で、血便だけを腸重積の判断材料にしてはいけないとはいわれますが、つぶれたトマトやイチゴジャムに似た血便も出ることがあるので、うんちにも気をつけましょう。

腹痛

腹痛も腸重積症の典型的な症状です。激しい腹痛を伴いますので、赤ちゃんが激しく泣くことがあると指摘されています。

顔色が悪い・ぐったりしている

赤ちゃんの顔色が悪くなり、ぐったりしている場合も腸重積症を疑ったほうが良いでしょう。以上のような症状が見られたらとにかく早期に受診することが重要です。特に赤ちゃんの場合は、腹痛または不機嫌になったり泣き止んだりを周期的に繰り返す症状が出たらそれだけで腸重積症の可能性もあるので早期の受診を心がけましょう。

上記のように多様な症状が考えられますが、嘔吐、粘血便と腹痛が腸重積症の3大症状といわれています。

ただ、この3大症状が初診時に3つとも現れるのは10~50%程度との指摘があります。嘔吐や腹痛のみが現れた場合は風邪と間違われやすいですが、いつもと何か違うなど気づいたことがあれば、注意深く観察して医療機関を受診してください。

赤ちゃんの腸重積症の原因

リンパ節の腫れ


腸重積症の原因ですが、まずリンパ節の腫れが指摘されています。腸重積症では、腸の中に腸が入ってしまい、それが次から次へと重なってしまうというものです。典型的には、腫れてしまった小腸末端付近のリンパ節が大腸内に送り出され、はまり込んでしまい抜けなくなってしまった状態です。

リンパ節が腫れる原因としてはウイルス感染などが指摘されていますが、詳しくは解明されていません。

リンパ組織の増殖

他の原因としては食べ物を摂取した際に腸のリンパ組織にあたってしまい、それが腸重積症の原因ではないかともいわれています。これは生後の免疫が発達する時期に免疫力をつけるためにリンパ組織が大きくなり、リンパ組織が増殖した影響で起こってしまうと考えられています。

また小腸ポリープや悪性リンパ腫、メッケル憩室、重複腸管、血管性紫斑病などが原因の場合もあります。このような腸の病気が原因の腸重積は、典型的でない年齢で発症した場合などに多くなります。

赤ちゃんの腸重積症の治療法

自然治癒は困難(早期に受診する)

腸重積は早期発見・早期治療が特に大切で、早期に治療すれば回復が見込まれる病気です。自然治癒は困難で必ず専門医の処置が必要になるので、少しでもおかしいと感じたら早期に医療機関を受診してくださいね。

高圧浣腸法

治療法のひとつに「高圧浣腸法」があります。赤ちゃんの身体への負担を最小限に抑える場合に用いる方法です。この治療では整復を行うだけなので開腹手術はしません。

肛門から造影剤としてバリウム、アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン、生理食塩水、空気、炭酸ガスなどを注入して入り込んだ腸を戻す方法です。8割から9割がこの方法で治るといわれています。数時間から数日で再発の可能性があるので入院する場合もあります。

開腹手術(手術後は絶食・入院)

高圧浣腸法で腸が元の状態に戻らない場合や重症化している場合は開腹手術がされます。発症から24時間以上経過していたり、腸が三重に折り重なっていたりする場合も、手術が選択されるようです。また腸に小腸ポリープや悪性リンパ腫ができたことが原因と考えられる場合は、その原因になっている部分を手術によって切除する必要があるようです。

治療後約10%が再発

腸重積は再発しやすい病気であるといわれています。再発率は全体の10%程度ともいわれています。数時間から数日で再発することもあるといわれており、高圧浣腸法などで修復した後でも入院をすすめられるのは、再発を早期発見し予防するという理由も大きいようです。

ロタウイルスワクチンで腸重積症のリスクが高まる?

ロタウイルスワクチンを接種すると腸重積症のリスクが高まるという指摘があります。ロタウイルスとは冬場に多くみられる胃腸炎で低年齢児が発症する傾向が高い症状です。主な症状は発熱と激しい嘔吐下痢、ひどくなると脱水症状を起こします。

現在、ロタリックス(Rotarix)とロタテック(Rotateq)という2種類のワクチンがあります。このワクチンはロタウイルス感染症による発症予防と重症化予防に対する高い防御効果がある一方で、ロタウイルスワクチンの初回接種後に、腸重積が発症するリスクがすこし高まるという報告もあります。しかし、早期発見することで治療が可能ですし、ロタウイルス感染症による脱水や痙攣・脳症などの重症化予防の効果を考えると、ワクチン接種前にしっかりと医師に相談してみると良いでしょう。

早期発見が大切!いつもと違うと感じたらかかりつけ医を受診しましょう

いかがでしたでしょうか。腸重積症の症状と原因、治療法についてご紹介しました。とても怖い病気ですが早期に発見すれば完治できる病気です。赤ちゃんや子どもに違和感を感じたら速やかにかかりつけ医に相談しにいきましょう。

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