更新日:2017年09月05日

妊娠できる?抗精子抗体の検査方法と原因、治療法について

抗精子抗体とは、精子を外敵とみなし、動きを阻害してしまう免疫の働きです。男女どちらも抗精子抗体を持つ可能性はあり、不妊の原因となってしまいます。自然妊娠は難しいとされますが、直接体液が交わらないところでは抗体が働かないので、体外受精なら妊娠の可能性が上がります。ここでは、抗精子抗体の原因や治療法について解説します。

監修 : mamanoko 医師・専門家
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抗精子抗体(こうせいしこうたい)とは

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不妊症の原因のひとつに、抗精子抗体というものがあります。聞きなれない言葉ですが、いったいどのような症状なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

症状はどんなもの?

抗体とは、免疫反応によって作られるたんぱく質です。本来なら、抗体が抗原とくっつくことで、細菌などから身体を守っているのです。同じ現象が精子に対しても起こってしまうことがあります。

精子を外敵とみなし、身体につくられる抗体を「抗精子抗体」といいます。精子を受け入れる側の女性、精子を作る側の男性でも、抗精子抗体を持つ人は存在します。つまり、夫妻両方の不妊原因として考えられるのです。女性の場合、頸管粘液、子宮、腟、卵管内に抗精子抗体が存在します。

抗精子抗体にはいくつか種類が存在し、精子の運動を止めてしまう「精子不動化抗体」、精子同士をくっつけて大きくし、子宮に進入できなくさせる「精子凝集抗体」、精子の受精機能を壊す「受精阻害抗体」があります。アレルギーのような発疹や、身体の痛みなどはないので、男女ともに気づきにくい症状でもあります。

どのくらいの確率で存在する?

男女が抗精子抗体をもつ確率はどのくらいなのでしょうか。そのほか不妊原因が不明の女性では、抗精子抗体陽性の割合は13%ほどとされています。不妊男性の数%にも抗精子抗体は存在するようです。不妊原因がわからない人は、抗精子抗体が問題となっている可能性も十分にあるといえます。

ただし、抗精子抗体だけではなく、他の不妊要素が同時に絡んでいることも考えられます。不妊のいろいろな原因を探っていく中で、こういった症状もあると知っておくと良いでしょう。自分で判断することはできないので、疑わしいときは病院で検査することが大切です。

何が原因でなるの?遺伝する?

なぜ、本来無害である精子に対する抗体ができてしまうのでしょうか。いまだ、詳しい原因は不明とされています。女性の場合、夫以外の精子なら大丈夫なのかというとそうではなく、ほとんどの場合人の精子全般に対して抗体は作用します。もともと精子は女性の身体には存在しないものなので、異物とみなしてしまい、アレルギー反応が出るという説もあります。

遺伝するのかどうかも不明のようですが、今のところ、あまり関連していないとするのが有力です。生まれつきのものでもなく、14歳未満の女児に対する検査では、抗精子抗体はほぼ見られませんでした。それまで抗体がなかった妊婦さんが、後に陽性になったということもあるようです。

男性の場合は、そもそも精子が体内に存在しているのに、抗原になるのは不思議ですよね。本来、精液と血液は絶対に混ざらないようになっています。しかし、あるきっかけで精子と血液が触れてしまうと、抗精子抗体ができる可能性があるとされています。

きっかけとは、精巣や精巣上体の炎症や、外傷などです。思いあたることがある場合、病院で検査してもらうと良いでしょう。

どんな検査が必要?

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フーナーテストの結果次第

不妊治療を開始した夫婦の場合、まずはフーナーテストを受ける人が多いようです。フーナーテストとは、性交後の子宮と腟を結ぶ管の粘液を採取し、粘液に含まれる精子の状態を調べる検査です。フーナーテストで精子の運動率や数などを調べ、結果が「不良」の場合に次の段階で考えられるのが、抗精子抗体の検査だといわれています。

ただし、フーナーテストの結果が良だとしても、抗精子抗体が存在していることもあります。抗体が精子について子宮に入ってはいけるものの、受精ができない状態などが考えられます。どうしても原因が不明な場合は、やはり抗精子抗体検査をすすめられることもあるようです。

血液検査でSIV値を見る

不妊の原因が不明で、抗精子抗体の疑いがある場合、女性ではまずは血液検査をするのが一般的です。この血液検査は精子不動化試験ともいわれ、血清と正常な検査用精子を混ぜあわせることで判定できます。もし血液中に抗精子抗体があると、検査用精子の運動率は低下するため、運動率の上がり下がりで判断が可能なのです。

どのくらい運動率が阻害されたのかを示すのが「SIV値」です。SIV値が1であれば、運動率はまったく落ちていない、つまり抗精子抗体はないとみなされます。SIV値が高ければ高いほど、抗精子抗体の陽性度が高くなります。具体的には、SIV値が2以上で、抗精子抗体の陽性となります。これは、精子が普通の半分しか動けなくなっている状態です。

男性はイムノビーズテスト

男性の場合、血中の抗精子抗体よりも、射精した精子に存在する抗体が問題となってきます。射精した精子の抗精子抗体をみるときは、「イムノビーズテスト」という精液検査を行うこともあります。

イムノビーズテストは、運動精子の表面に結合した抗体に、イムノビーズとよばれる粒子がくっつくかをみます。20%以上の精子にビーズがくっついていれば、抗精子抗体陽性と判断されます。

費用はどのくらい?

精子不動化試験の前段階、フーナーテストは保険が適用されることがほとんどなので、検査だけなら1,000円以下で済むようです。しかし、精子不動化試験の場合は保険適用外ということで、費用は高くなってしまいます。

精子不動化試験の費用は病院によって変わりますが、一般的には5,000円~10,000円前後です。さらに、イムノビーズテストは手間がかかる分費用もかかり、10,000円以上の検査費が必要となります。

自然妊娠は可能?

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薬などでの治療は難しい

女性が抗精子抗体陽性と診断された場合、免疫のバランスを調整するため、薬や漢方薬を処方されることもあります。しかし、精子不動化試験でSIV値が高い場合、薬や漢方薬はあまり効果的とはいえないようです。ほかの免疫機能を上げても抗体は残り続けるので、自然妊娠は難しいとされます。

一昔前は、コンドーム着用での性交をする「コンドーム法」が行われていました。抗体は、自身の血液・体液と精子が触れたときにできるので、避妊具を使わずに性交を重ねるほど、抗体が強くなってしまいます。接触を一時的に遮断することで抗体が陰性に戻るとされていましたが、効果はあまり上がらず、現在ではあまり推奨されていません。

不妊治療を行うのが一般的

抗精子抗体を持つ人に対しては、不妊治療の一環として体外受精をすすめる病院が多いようです。抗精子抗体陽性の場合、血液や体液と精子が交わる段階で、精子の動きを止めてしまうのが不妊の原因となっています。

しかし、体外受精であれば卵子に精子が直接入り込むので、抗精子抗体は働かず、高い確率で妊娠が可能になるといわれているのです。他にも原因があれば成功率は下がりますが、女性のの抗精子抗体が陽性の場合は体外受精が最も有効な手段とされています。

SIV値が10以下の場合、夫の精子を妻の子宮に注入する人工授精(AIH)なども治療としては有効です。しかし、SIV値が10を超えた場合、体外受精や顕微授精ではないと治療は難しいようです。

男性が抗精子抗体陽性だったときは、ステロイド療法、精子を洗浄したうえでの人工授精、体外受精、顕微授精が治療の方針となります。男性側の問題は、射精した精子に、すでに抗体が付着してしまっていることです。それゆえ、採取した精子をそのまま利用する人工授精や体外受精では、妊娠が難しいことも多いようです。

男性側に抗精子抗体が判明しているときは、卵子に洗浄した精子を直接注入する顕微授精が最も効果的といわれています。通常の体外受精で妊娠しなかった夫婦に顕微授精を試したとき、抗体陽性でも、抗体陰性の夫婦と同程度の妊娠率であることがわかってきています。

体外受精とは?費用や確率は

体外受精とは、排卵前の成熟卵胞から卵子を体外に取り出し、夫の精子と授精させた後、培養させ再び子宮内に注入して戻す方法です。一般的に「体外受精」というと、IVF‐ETとよばれる胚移植方法を指すことが多いようです。

また、ICSIと呼ばれる顕微授精も体外受精の方法のひとつです。顕微授精では、顕微鏡下で精子を直接卵子の細胞の中に入れます。

日本産科婦人科学会によると、2014年には体外受精や顕微授精での治療は39万件を超え、生まれてくる赤ちゃんは4万7千人を超えています。件数は年々増加傾向にあり、累積すると43万人もの赤ちゃんが、高度不妊治療を越えて生まれてきているのです。

妊娠する確率は年齢や体外受精の方法によっても大きく変動しますが、総合的に女性が20代であれば25%から30%のあいだで、30代を越えるとさらに下がり、40代では15%をきるようです。

体外受精は、原則として保険適用外です。治療内容で大きく変わりますが、採卵、受精など、それぞれ費用がかかってきます。大体、5万円から50万円ぐらいが一般的で、成功報酬がかかる病院もあるようです。条件によりますが、国と自治体で不妊治療に助成金を出しているので、まずはそちらをチェックしてみましょう。

抗精子抗体でも体外受精で可能性が上がる

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抗精子抗体は不妊の原因のひとつで、自然妊娠は難しいと判断されることが多いようです。しかし、体外受精では妊娠の可能性が上がり、男性側が原因の場合は顕微授精が有効です。諦めずに、まずは原因を探ることから始めてみましょう。

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