子宮肉腫とは?初期症状や生存率は?ステージ・子宮筋腫との見分け方を解説産婦|人科医監修

産婦人科医監修|「子宮肉腫」とはどのような症状でしょうか。子宮がんや子宮筋腫と比べると聞き慣れないかもしれません。子宮肉腫は婦人科のがんの中では患者数が少ないがんですが、治療法が確立されておらず、生存率が低い病気です。子宮肉腫を早期に発見できるよう、症状、診断・検査方法、治療方法について産婦人科医監修で解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 子宮肉腫とは?
  2. 子宮肉腫の症状は?
  3. 子宮肉腫の種類とは?
  4. 子宮肉腫の生存率は?ステージとは?
  5. 子宮肉腫は子宮筋腫と似ている?見分け方は?
  6. 子宮肉腫はどう診断する?検査方法は?
  7. 子宮肉腫は治療で完治する?手術するの?
  8. 子宮肉腫の症状が出たらすぐに病院へ
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子宮肉腫とは?

子宮肉腫は主に子宮の筋肉にできる悪性の腫瘍です。同じく子宮の内部にできる悪性腫瘍である子宮体がんは別名子宮内膜がんとも呼ばれ区別されますが、よく似ていることから子宮体がんの一種として扱われることもあります。良性の腫瘍である子宮筋腫と判別がつきにくい場合があるでしょう。

40代~60代に多い

子宮肉腫の原因は、まだはっきりとはわかっていません。ウイルス感染やホルモンの影響、肥満や糖尿といった体質とはほとんど関係ないと考えられています。骨盤の中に放射線をあてたことがある人に発生しやすいとの報告があります。また、40代~60代の女性の患者が多いため、加齢によってリスクが高まるとも考えられます。

治療しにくい

子宮肉腫は婦人科系のがんの中では発症例が少ない病気で、子宮肉腫と診断される人は年間約800人です。そのため子宮頸がんや子宮体がんと比べると効果的な治療方法が解明されておらず、生存率が低い病気です。良性の腫瘍である「子宮筋腫」と見た目の区別がつきにくいことがあるため注意が必要です。

子宮肉腫の症状は?

子宮肉腫ではどのような症状がみられるのでしょうか。初期症状はあるのでしょうか。

初期症状がないことがある

子宮肉腫は初期であれば症状がほとんどなく、病気であることに気づかないケースが見られます。進行すると症状があらわれるようになります。

不正出血や下腹部痛・違和感に注意

子宮肉腫が進行すると出てくる可能性のある症状としては、不正出血(生理以外の出血)や下腹部痛、下腹部の違和感・圧迫感があげられます。これらの症状があるときには病院に行きましょう。たとえ子宮肉腫でなかったとしても、子宮内膜症や子宮筋腫といった子宮の病気である可能性があります。

子宮肉腫の種類とは?

代表的な子宮肉腫は3種類あり、種類によって患者の年代や治療方法、予後(病気や治療の見通しの良さ)が異なります。それぞれどのような特徴があるのか見ていきましょう。

がん肉腫(ミューラー管混合肉腫)

子宮肉腫の約半数を占める肉腫で、子宮の内側にポリープのように隆起して見えることが多いといわれています。子宮体がんと似ているため、子宮体がんと同じような治療を行います。閉経後の高齢者の患者が多い点も特徴です。

平滑筋肉腫 

子宮肉腫のうち35~40%程度を占める肉腫で、40代~50代の女性の患者が多いといわれています。悪性か良性か判断しにくく、子宮筋腫と間違えられやすいという特徴があります。術後の放射線治療や抗がん剤治療の有効性についてはまだ確認されておらず、再発するリスクが高い肉腫です。

子宮内膜間質肉腫 

子宮肉腫の10~20%程度を占め、30~40代の比較的若い年代でも発症することがある肉腫です。平滑筋肉腫と同様に良性の子宮筋腫と区別がつきにくい場合があるでしょう。がん肉腫や平滑筋肉腫と比べると予後が良いといわれています。放射線治療や抗がん剤治療の有効性はまだ解明されていませんが、女性ホルモン剤を用いた治療(ホルモン療法)が効果的な場合があると考えられており、研究が進められています。

子宮肉腫の生存率は?ステージとは?

子宮肉腫は比較的治りにくい病気ですが、生存率はどのくらいなのでしょうか。子宮肉腫には3種類あり、さらに病期はそれぞれ以下のようにステージI~IVまでありますが、5年生存率は平均して30~40%程度です。ステージIであれば生存率は50%程度ですが、ステージII以降はぐっと下がり10%前後になります。

ステージ I

子宮体部に肉腫がある。子宮頸部(子宮の入り口部分)まで達していない。

ステージ II

肉腫が子宮体部だけでなく子宮頸部にまで広がっている。

ステージ III

肉腫が子宮の外まで広がっているが、骨盤より外には出ていない。

ステージ IV

肉腫が骨盤より外に広がっている。膀胱や直腸(肛門の近くの腸の部分)、子宮から遠い部位にまで転移している。

子宮肉腫は子宮筋腫と似ている?見分け方は?

子宮肉腫は子宮筋腫と見間違えられることがあり、子宮筋腫だと思って手術をしたら実は子宮肉腫だったというケースがみられます。子宮肉腫と子宮筋腫の違いについて確認しておきましょう。

子宮肉腫は悪性

子宮肉腫と子宮筋腫の大きな違いは、悪性か良性かです。子宮肉腫は悪性で命にかかわりますが、子宮筋腫は基本的には命にかかわることはありません。

子宮肉腫は閉経後も大きくなる

腫瘍が閉経後に大きくなっていく場合には、肉腫である可能性が高いと考えられます。一方、子宮筋腫は女性ホルモンの分泌量が多い30代に多くみられ、ホルモンの分泌によって筋腫がだんだん大きくなっていきますが、閉経すると小さくなる傾向があります。症状がなければ治療を行わずに済む場合が多いでしょう。

子宮肉腫は症状が少ない

子宮肉腫の症状は不正出血や下腹部痛、下腹部の違和感ですが、子宮筋腫の場合には不正出血や下腹部の圧迫感だけでなく重い月経痛や経血量の増加、貧血状態といった症状があらわれる可能性があります。

ただし子宮肉腫も子宮筋腫も無症状の場合があり、その場合には症状からは判別がつきません。子宮肉腫が進行して症状が出てくることで子宮肉腫であることがわかったり、子宮筋腫の治療をする中で子宮肉腫であることがわかったりする場合があるでしょう。

子宮肉腫はどう診断する?検査方法は?

子宮肉腫かどうかを診断するために、どのような検査を行うのでしょうか。検査の種類は主に以下の4つがあります。

内診

腟や肛門から指を入れて子宮の形や大きさ、周辺の臓器の状態などを確認します。子宮が大きくなっていたり通常とは異なる形をしていたりする場合には、精密検査に進むことになります。

細胞診

専用のブラシやチューブのような器具を腟から入れて子宮の入り口や奥にある細胞を採取し、染色液をつけて顕微鏡で観察します。細胞を採取するときに痛みや出血を伴う可能性があります。細胞診で子宮肉腫の疑いがある場合には組織診に進むことが多いでしょう。

組織診

必要に応じて子宮の入り口や奥の小さな組織を専用の器具で削りとり、細胞診と同様に顕微鏡で観察して悪性かどうかを判断します。組織診も痛みや出血を伴う場合があり、場合によっては麻酔を使用することが考えられます。

画像診断(CT、MRI、超音波)

CTやMRI、超音波(エコー)を用いて子宮肉腫の位置を正確に把握したり、子宮がんや子宮筋腫との判別を行ったり、転移しているかどうかを確認したりすることがあります。画像診断が治療方法を決める手がかりとなることもあります。

子宮肉腫は治療で完治する?手術するの?

子宮肉腫と検査で診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。子宮肉腫は症例が少ないためまだはっきりとした治療法が確立されておらず、治療をしたからといって必ず治るとは言いにくい病気です。子宮体がんの治療にならった治療をしたり、いくつかの方法を試したりして様子を見たりすることになるでしょう。

手術

子宮肉腫の治療の中心となるのは外科手術です。子宮全体を摘出したり、卵巣や卵管を切除したり、リンパ節を取り除いたりする手術を行います。術後には切除範囲によって、排尿・排便しにくくなる、足がむくむ、更年期障害のような症状があらわれるといった変化が起こることが考えられます。

放射線治療

X線を身体の外から、あるいは腟からチューブを通して身体の中から照射し、悪性の細胞を傷つけて小さくする治療です。照射による痛みはありませんが、さまざまな副作用があらわれることがあります。主な副作用には、白血球の減少による免疫力の低下や吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振があります。

抗がん剤治療

悪性の細胞を破壊したり増殖を防いだりするために、抗がん剤を内服したり注射したりします。手術や放射線治療とあわせて行うことが多い治療法です。

抗がん剤によってがん細胞だけでなく正常な細胞にまで影響が出ることがあり、白血球・血小板の減少や脱毛、吐き気といった副作用を伴います。副作用が強い場合には使用する抗がん剤の組み合わせを変更したり、治療を休止・中断したりすることがあるでしょう。

ホルモン療法

女性ホルモンの一種である「プロゲステロン(黄体ホルモン)」を投与する治療を行うことがあります。子宮内膜間質肉腫の場合に有効であると考えられています。

子宮肉腫の症状が出たらすぐに病院へ

子宮肉腫の症状である不正出血や下腹部痛は、子宮肉腫でなくてもあらわれることがあり、特徴的な症状とは言いがたいかもしれません。しかしちょっとした兆候を見逃さないようにして早く治療を開始することで、生存率や余命が大きく変わってきます。子宮筋腫だから命には関係ないと放っておいたものが子宮肉腫だったというケースもあるため、少しでも気になる症状があるときにはできるだけ早く病院で検査を受けてくださいね。

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