【産婦人科医監修】妊娠超初期に飲酒しても大丈夫?アルコールの赤ちゃんへの影響は?

女性でお酒を飲める人の割合が増え、女性にもお酒は身近な存在になっています。そのような中で妊娠に気づかず飲酒してしまったという人も少なくありません。気づかなかったとはいえ、妊娠超初期の飲酒は赤ちゃんの発達に害がないのか心配になってしまいますね。妊娠3週・4週頃に飲酒した場合の赤ちゃんへの影響について見ていきましょう。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 妊娠超初期とは?飲酒はNG?
  2. 妊娠超初期の飲酒の赤ちゃんへの影響は?
  3. 妊娠中の飲酒による胎児性アルコール・スペクトラム障害とは?
  4. 妊娠超初期に控えるべきものは飲酒だけではない?
  5. 妊娠が判明したら禁酒・禁煙しよう
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妊娠超初期とは?飲酒はNG?

妊娠超初期とは、0~4週のことをいいます。具体的には28日周期であれば、妊娠0週はまだ最終月経期であり、妊娠2週で排卵・受精、妊娠3週で着床が起こります。妊娠4週で次の生理予定日となり、生理が来ないことで妊娠に気づくかもしれません。

早い人では妊娠超初期の時期に頭痛や下腹部痛といった妊娠の前兆となるようなさまざまな症状がでることがありますが、このような症状は誰もが感じるものではなく、妊娠検査薬はまだ反応しません。そのため、妊娠に気づかずにお酒を飲んでしまったということもあるでしょう。

妊娠超初期は胎盤がまだ完成しておらず、飲酒した場合でも胎児への影響はないものとされています。しかしこの考えは万が一影響があった場合は気づかないうちに流産しているだろうという可能性を示すもので、実際にどのような影響があるのかよくわかっていません。

厚生労働省の発表した「国民健康栄養調査」では、週に3回以上、1日当たり1合(ビール500mL、缶チューハイ520mL)以上の飲酒習慣がある女性の割合は8.8%でした(※1)。妊娠初期の飲酒は催奇形性を高めることから、妊娠の可能性があるときはお酒を控えることが望ましいといえます。また、妊娠を望んでいる場合は、生理周期を踏まえてお酒を飲む時期を調整することも大切です。

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妊娠超初期の飲酒の赤ちゃんへの影響は?

飲酒は胎児に悪影響をおよぼす可能性があるので控えるべきですが、一体、どのような影響があるのでしょうか。妊娠中に母親がアルコールを摂取すると、「胎児性アルコール・スペクトラム障害」につながる可能性があります。

胎盤ができる前は赤ちゃんに影響が出にくいといわれていますが、胎盤は妊娠超初期の段階から作られ始めることから、妊娠を望んだ時点で気を付けていきかなければなりませんね。

妊娠中の飲酒はいつくらい、どのくらいの量であれば大丈夫などの明確な基準はありません。厚生労働省では時期や量に関係なく、妊婦または妊娠の可能性がある場合には飲まないことを推奨しています。

妊娠中の飲酒による胎児性アルコール・スペクトラム障害とは?

アルコールによる胎児の先天異常の総称

大量にお酒を飲むと、生まれてくる赤ちゃんに異常が起こりやすいことが知られています。アルコールの摂取よって引き起こされる子どもの先天異常には、胎児性アルコール症候群やアルコール関連神経発達障害、アルコール関連先天異常といった症状があり、これらを総称して「胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)」と呼びます。

妊娠中のアルコールについては、過去に「少量であれば飲酒しても赤ちゃんに影響がない」といわれていましたが、近年ではどのような時期・量であっても、飲酒すると赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があることが分かってきました。

顔の奇形や低体重、脳障害を引き起こす

胎児性アルコール・スペクトラム障害の中で主な疾患は「胎児性アルコール症候群(FAS)」です。胎児性アルコール症候群の子どもには、小頭症、小さな目、薄い唇といった特徴的な顔貌があらわれます。胎児のころから発達遅滞がみられ、生まれてからも低体重・低身長となりやすいのも特徴です。

また、中枢神経系の障害を引き起こし、視覚・聴覚障害や学習障害、知的障害、運動の遅れといった症状があらわれます。特に妊娠初期の飲酒は奇形や低体重、妊娠中期~後期は脳障害につながる傾向があると発表されています。

アルコールと同様に喫煙も奇形や発達遅滞をきたし、アルコールにタバコが加わると脳の形成異常が増強されることから、飲酒習慣、喫煙習慣がある人は、妊娠したら早期に禁酒・禁煙する必要があります。

ADHD(注意欠陥多動性障害)やうつ病の原因になることも

胎児性アルコール症候群の診断基準に満たなくてもアルコールに起因する異常はさまざまにあらわれ、行動障害などがみられる「アルコール関連神経発達障害」や腎臓などの組織に異常が起こる「アルコール関連先天異常」と診断されることがあります。

出生後しばらく経ってから、ADHD(注意欠陥多動性障害)やうつ病を発症したり、成人後の依存症のリスクが高まったりするなど、のちにも影響が出てくることがわかっています。

妊娠中は少量であっても飲酒は控える

厚生労働省の報告では、1日の純アルコール摂取量が60mL以上だと胎児性アルコール症候群を発症しやすいとされています。純アルコール60mLは、ビールでは1250mL、ワインでは500mL相当となり、一見すると「自分はそこまでの大量飲酒ではないから安心」と感じるかもしれません(※2)。

しかし、胎児性アルコール・スペクトラムはどの程度の飲酒量で発症するのかわかっていないため、妊娠超初期の飲酒が胎児へ与える影響は限定的とはいうものの、妊娠が判明したら少量であっても飲酒は控えるようにしましょう。

妊娠超初期に控えるべきものは飲酒だけではない?

妊娠超初期の時期に控えたいものとして飲酒をあげましたが、妊娠超初期にはほかにも控えておいた方が良いものもあります。妊娠超初期に控えるべきものを解説していきます。

喫煙

妊娠超初期に特に控えるべきものは「喫煙」です。タバコの煙には、ニコチンだけでなく、一酸化炭素やシアン化合物が含まれていて、胎児毒性や血管収縮作用があります。

喫煙によって胎児の発達遅延が起こることはよく知られていて、喫煙本数とその程度が比例しており、本数が多くなるほど出生体重は軽くなります。喫煙していない人と比べると、100~400gほど出生体重が軽いことも報告されています(※3)。

流産、早産、周産期死亡の発生率も上がります。その頻度は自然流産率が約2倍、早産率が約1.5倍、周産期死亡率が約1.4倍です(※2)。また、妊娠時の喫煙によって、口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)やポーランド症候群などの発生率が増加するとの報告や、乳幼児突然死症候群(SIDS)を引き起こす可能性も伝えられています。

ただし、妊娠早期に少量喫煙しただけの場合の出生時体重はほぼ正常値であることから、妊娠を望む場合や妊娠したと判明したらすぐに禁煙すると、喫煙によるリスクを最小限に抑えられることが期待できます。妊娠が判明した場合はすぐに禁煙を実施していきましょう。

カフェイン

カフェインには中枢神経興奮作用があるため、カフェインを摂ると眠気が抑えられ、頻脈などの症状が現れます。ほかにも、利尿作用や基礎代謝を高めるなどの作用がありますが、カフェインはずっと体内とどまっているわけではなく、分解され排出されていきます。そのため、コーヒーを1杯飲んだだけで、いつまでも眠れない状態になるとは限りません。

妊娠中はカフェインの分解に時間がかかってしまいます。そして、カフェインは胎盤を通して赤ちゃんに届き、ママと同じ血中濃度になってしまいます。胎児は自力でカフェインを排出する力をもっていないため、体内にたまっていきます。

体内に高濃度のカフェインがたまることで、発達が遅れたり、流産や早産、発達障がいなどのリスクが高まったりするという研究結果もあります。ほかにも、毎日8杯以上コーヒーを飲んでいる人の死産リスクが高いという統計結果もあります。

コーヒーや紅茶、緑茶、コーラなどにもカフェインは含まれています。神経質になりすぎる必要はありませんが、コーヒーが好きな場合でも多くて1日1杯程度に収めるようにしましょう。できればノンカフェインのもので、自分の口に合ったものを探すと良いですね。最近は、ノンカフェインコーヒーも多くの種類が発売されていますよ。

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睡眠不足・栄養不足

妊娠超初期は、受精し、着床するころまでの時期です。睡眠不足や栄養不足だとホルモンバランスが乱れ、受精・着床に支障が出てしまう可能性があります。男性の精子の質にも日常生活の影響が出ることがあります。妊娠を望むなら、女性側だけでなく、男性も意識したいところですね。

ストレスのためすぎ

ストレスをためすぎると、ホルモンバランスが乱れたり、血管の収縮につながったりする可能性があります。そのためストレスは胎盤でつながっている赤ちゃんにうまく栄養や酸素が送れなくなってしまう原因になりかねません。

妊娠超初期や初期はつわりが始まることから、ストレスを感じやすい時期でもあります。アルコールも控えたい時期なので、アルコールでストレスを発散するわけにもいきませんよね。軽いストレッチや音楽鑑賞など、自分なりのストレス発散方法を見つけて、ストレスをためすぎないようにしましょう。

妊娠が判明したら禁酒・禁煙しよう

お酒を飲むと気分が高揚し、料理がおいしく感じられますね。お酒を飲む習慣がある人は、晩酌が楽しみという人も多いでしょう。しかし、胎児性アルコール・スペクトラムは「お酒を飲まない」という、「100%の予防法」があります。これは、ほかの病気ではとてもまれなことです。

妊娠を希望する場合は排卵から生理予定日までの期間はお酒を控えるようにしましょう。妊娠超初期に飲酒してしまったら、妊娠が判明した時点で禁酒し、心配しすぎないことも大切です。

妊娠中は「少しなら大丈夫」と考えず、妊娠・授乳期はアルコールを摂取しないことが大前提ですが、禁酒がつらいときは炭酸水を飲んだり、飲酒に代わる趣味を見つけたりして過ごしてくださいね。

※この記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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