産婦人科医監修|臨月の頭痛の原因と対処法!陣痛と関係ある?頭痛薬を飲んでも大丈夫?

臨月に頭痛が起こると陣痛の兆候ではないかとそわそわする人もいるかもしれません。頭痛にはいくつかの種類があり、安静にしていれば改善できるもの、頭痛の原因となる症状に対して治療が必要なものと、それぞれ対処法が異なります。頭痛の原因と自分でできる対処法を探り、臨月を快適に過ごしていきましょう。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 臨月とは?頭痛がひどい?
  2. 臨月の頭痛の原因は?
  3. 臨月の頭痛は吐き気や貧血を伴う?
  4. 臨月の頭痛は陣痛の兆候?
  5. 臨月の頭痛の対処法!
  6. 臨月に頭痛薬を飲んでも大丈夫?
  7. 臨月の頭痛があるときはリラックスを心がけて
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臨月とは?頭痛がひどい?

妊娠10ヶ月に入ると、まもなく出産予定日を迎えます。この10ヶ月に入ってからの約1ヶ月を臨月といいます。妊娠週数でいうと、36週0日から39週6日までの期間にあたりますね。

ひとつ覚えておきたいのが、出産予定となる月とはいえ、36週は正期産から外れることです。正期産は予定日前後2週間の37週から42週です。臨月に入っても、すぐに出産となるわけではありません。

しかし、身体は出産に向け少しずつ変化していきます。体調が安定していた中期のころと比べ、頭痛や不眠などに悩まされることが多くなってきます。臨月はお腹が一段と大きくなり、赤ちゃんと会えるのが楽しみな半面、不安も入り混じる時期かもしれません。少しでも気持ち良く過ごせるよう、体調を整えておきたいですね。

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臨月の頭痛の原因は?

鉄分不足

頭痛の原因のひとつに、鉄分が不足することがあげられます。鉄分は血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の材料となる成分です。赤ちゃんはママから送られてくる血液から鉄分を摂取し、自分の血液をつくっています。

妊娠中は赤ちゃんに血中の鉄分が吸収されるため、ママの鉄分が不足しやすい状態です。さらに、血液の循環量は増加するのに、赤血球の数はあまり増えません。赤血球の割合が低下し、鉄が不足して起こる鉄欠乏性貧血になりやすいのです。

ヘモグロビンは酸素と結びつき、体内に酸素を運ぶはたらきをします。鉄分が不足して貧血になると、十分な量のヘモグロビンがつくられず、全身に運ばれる血液量が低下します。身体は十分な量の酸素が得られず、酸欠状態になるのです。酸欠はさまざまな症状を引き起こします。頭痛も貧血によってあらわれる症状のひとつです。

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水分不足

人の身体は体重の50~80%が水分でできています。水分は血液の原料となるため、赤ちゃんに血液を送っている妊娠中は、しっかりと水分補給をしたいものです。

しかし、頻尿や胃部不快感があったり、むくみの症状が出ていたりすると、水分の摂取量は減少してしまいがちです。結果として体内の水分不足が起こり、熱が体内にこもったり身体に運ばれる酸素量が不足したりして、頭痛が引き起こされると考えられています。

睡眠不足

大きくなったお腹の重みや激しい胎動などの影響で、妊娠後期は眠りが浅くなったり、なかなか寝付けなかったりということが起こります。睡眠不足は、脈拍のようにズキンズキンと拍動する痛みが特徴の片頭痛を引き起こすことがあります。

一方で、片頭痛は睡眠が過剰なときにも起こるものです。睡眠が乱れがちな妊娠後期は、睡眠の時間が影響して痛みがあらわれているのかもしれません。

女性ホルモンの作用

女性に多くみられる頭痛に、脈打つように頭が痛む片頭痛があります。片頭痛は脳梗塞や脳腫瘍といった脳の病気をみとめない機能性頭痛の一種です。

生理周期にともない、痛みが良くなったり悪くなったりする傾向があることでも知られています。この痛みの変化は、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌と関係があると考えられており、もともと片頭痛を抱えている人は、妊娠によって痛みの改善や消失がみられたという報告もあります。

妊娠後期は、出産に向けてホルモンバランスが変わる時期です。そのため、これまで頭痛が見られなかった人や頭痛症状が改善していた人も、痛みを感じる傾向がみられます。

ストレスや疲れ、不安

機能性頭痛のうち、もっとも患者数が多いのが緊張型頭痛と呼ばれるものです。緊張型頭痛は締め付けられるような痛みが特徴で、お風呂に入って血管が拡張されると痛みがやわらぐ傾向があります。

緊張型頭痛の主な原因は、ストレスや不安、疲労の蓄積により筋肉がこわばってしまうことにあると考えられています。臨月で外出を控えることから、運動不足による血行不順が起こっていることも一因です。

また、ストレスは三叉神経と視床下部に異常をきたすことが最近の研究でわかってきました。日本頭痛学会では、ストレスを受けることによって神経伝達物質が持つ痛覚シグナルを抑制する作用が減少してしまうことが報告されています。

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妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降になって初めて発症する高血圧症状をいいます。特に妊娠32週以降の発症例が多く報告されている病気です。妊娠高血圧症候群は自覚症状に乏しいことが多く、血圧を測定して気づくケースも少なくありません。

妊娠高血圧は重症化すると、常位胎盤早期剝離や赤ちゃんの発育不全が起こることがあります。頭痛や倦怠感が長く続く場合は、妊娠高血圧の可能性もあります。早めに医師による診察を受けましょう。

臨月の頭痛は吐き気や貧血を伴う?

臨月から分娩、産褥期にかけては身体が大きく変わっていく時期です。不安や心配が重なって精神的な緊張が高まり、頭痛や吐き気、貧血が悪化したと訴えるケースもでてきます。

精神的なことが原因で症状が悪化している場合、検査をしても異常はみとめられません。リラックスを心がけることで、時間の経過とともに症状が軽快することでしょう。

しかし、注意が必要な頭痛や吐き気もあります。もともと蛋白尿などの妊娠高血圧症状があると痛みが急速に悪化したり、けいれんや意識障害をともなう子癇(しかん)を発症したりすることがあるため、症状の見極めが肝心です。

また、我慢できないほどの激しい頭痛や吐き気、嘔吐、視覚障害がみとめられた場合、HELLP症候群(へるぷしょうこうぐん)を発症している可能性があります。HELLP症候群は早急な処置が必要な状態です。異変を感じたときには我慢せず、医療機関に連絡をとりましょう。

臨月の頭痛は陣痛の兆候?

妊婦さんの経験談の中には、陣痛前に頭痛を感じたという声や、胃痛に悩まされたといった声が聞かれます。出産前に頭痛や胃痛を感じている妊婦さんが多いことから、頭痛や胃痛を陣痛の兆候としてとらえる向きもありますが、この説は医学的に立証されているわけではありません。

頭痛や胃痛は、ストレスや緊張によってももたらされます。特に初産ともなると、出産はまったく未知の世界です。おしるしはいつくるのか、前駆陣痛と陣痛を見分けられるのかといった不安がピークに達し、頭痛が起こっている可能性が考えられます。

頭痛があるからといって、必ずしも出産が迫っているわけではありません。お腹の張りやおりものの量など、他の要素も焦らずに確認しましょう。

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臨月の頭痛の対処法!

鉄分補給

妊娠後期は妊娠していない時期と比べ、1日に必要な栄養摂取量が増加します。成人女性に必要な鉄分量は通常で1日に10.5mgですが、妊娠後期は25.5mgの摂取が推奨されています。バランスの良い食事で、ママと赤ちゃんの健康を維持したいですね。

腸管での吸収が良いのは、動物性食品に多く含まれるヘム鉄です。ヘム鉄が多く含まれるのは豚レバーや鶏レバーで、豚レバーには100mgあたり約13mgの鉄分が含まれています。マグロやカツオなどの赤身の魚も含有量が多い食品です。

野菜や乳製品に含まれる鉄分は、非ヘム鉄と呼ばれます。腸管での吸収率はヘム鉄より劣りますが、ビタミンCや動物性たんぱく質と一緒にバランス良く摂取すると、吸収率が高くなります。ヘム鉄を多く含むのは、小松菜やホウレン草といった緑黄色野菜が中心です。小松菜は100gあたり2.8mgの鉄分が含まれています。

水分補給

人の身体は50~80%が水分で占められています。成人女性の体重あたりの水分量は約55%で、そのうち2.5Lの水分が毎日汗や尿で排出されています。

食事や体内の代謝によって補給できる水分量は一日1.3Lほどのため、残りの1.2Lは飲み物でまかなう必要があります。コップ一杯の水を朝・昼・晩の食事時、起床後と睡眠前、食事のあいだやスポーツ、入浴後に飲むように心がけると、一日に必要な水分を補給できます。

汗をたくさんかいたときは、塩分も一緒に体外へ排出されています。経口補水液を利用するなどして、塩分や糖分もあわせて摂るようにしましょう。

十分な睡眠

お腹の重みで寝苦しかったり、尿意で夜に何度も目が覚めたりと、臨月になるとまとまった睡眠を十分にとることが難しいかもしれません。睡眠が不足しているときは、昼間に休息をとって足りない分の睡眠を補いましょう。

眠れないことを気にしすぎると、余計に目がさえてしまうこともあります。眠いときに眠る感覚で、身体を休めてくださいね。

ストレス解消

緊張型頭痛の場合は、身体を温めて血管が広がると痛みがやわらぐ傾向があります。お風呂に入ったり、ウォーマーで温めたりすると、筋肉の緊張がほぐれリラックスできますよ。

体調が良ければ、軽いウォーキングやお散歩にでかけてみるのも、気持ちがリフレッシュされて良いかもしれません。外に出かけるのが難しいときは、家の中でストレッチをするだけでも効果が期待できます。

ただし、片頭痛の場合は、血行が良くなると頭痛が悪化する傾向があるので注意してくださいね。

安静にする

ゆったりとした時間を過ごすことは、頭痛には効果的だといわれています。アロマの香りで癒やされたり、好きな音楽を聴いたりしながら、リラックスを心がけましょう。上の子がいるときは、子どもと一緒に昼寝をしたり本を読んだりして、精神的なストレスから解放されるよう工夫してみましょう。

片頭痛の場合は、光や音に敏感になっていることがあります。暗い静かな場所で安静にしていると、症状がやわらいでくるでしょう。

痛む部分に冷たいタオルをあてる

片頭痛では血管が拡張すると痛みが悪化してしまいます。脈打つような痛みが頭の片側に現れたときは、冷たいタオルで痛む場所を冷やしましょう。血管が縮小され、痛みが軽減されるかもしれません。

臨月に頭痛薬を飲んでも大丈夫?

勝手に市販薬を飲まない

風邪による発熱時など、アセトアミノフェン系の消炎鎮痛剤は妊娠中であっても処方されることがあります。アセトアミノフェンは比較的安全性の高い薬剤とされていますが、妊娠中の使用に関して安全性は確立されておらず、有益性が上回る場合のみ投与するとされています。

また、一部の消炎鎮痛剤では、羊水過少や新生児の出血などの影響をおよぼすおそれがあるため、妊娠予定日12週以内の妊婦には、消炎鎮痛剤を使用しないこととしている薬剤師会もあります。自己判断では使用しないようにしましょう。

頭痛がひどいときは病院へ

頭痛の原因が貧血や高血圧だった場合は、原因となる症状を改善するための対処が必要となります。貧血や高血圧症状が悪化し、重篤な状態に進行してしまう可能性もあります。たかだか頭痛といって我慢せず、医師に相談するようにしましょう。

臨月の頭痛があるときはリラックスを心がけて

頭痛があると、痛みの影響で気分がふさいでしまったり、何も手につかなかったりと生活に支障がでてしまいがちです。気持ちが不安定な状態になると余計にストレスを感じてしまうかもしれませんが、焦りすぎず、自分の身体のことを一番に考えて過ごしましょう。

頭痛は身体からの休もうというサインです。できるだけリラックスすることを心がけ、家事や子育てで手を抜けるところは抜いていきましょう。臨月になったらママと赤ちゃんを中心に、ゆったりと過ごしてくださいね。

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