絨毛膜羊膜炎の症状と原因は?おりものでわかる?治療法・予防法も解説

腟からの細菌感染が広がり、お腹の赤ちゃんを包む卵膜に到達する「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」。早産の主要な原因のひとつですが、治療によって予定どおり出産できるケースもあります。絨毛膜羊膜炎の症状や原因、治療法、予防法、出産や胎児への影響について見ていきましょう。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 絨毛膜羊膜炎とは?
  2. 絨毛膜羊膜炎の症状と診断基準・方法は? 
  3. 絨毛膜羊膜炎の原因は?
  4. 絨毛膜羊膜炎の治療法は?無事出産できる? 
  5. 絨毛膜羊膜炎の胎児への影響は?
  6. 絨毛膜羊膜炎の予防法は? 
  7. 絨毛膜羊膜炎は進行する前に治療を
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絨毛膜羊膜炎とは?

卵膜への細菌感染によって起こる

お腹の赤ちゃんを包む「卵膜」のうち胎児由来の膜である「絨毛膜(じゅうもうまく)」と「羊膜(ようまく)」に細菌が感染し、炎症が起こることを「絨毛膜羊膜炎」と呼びます。もともとは腟の炎症だったものが子宮まで広がり、さらに絨毛膜や羊膜にまで到達してしまうというケースが多いため、絨毛膜羊膜炎にいたる前に発見して治療を行うことが大切です。

早産の原因としてもっとも多い

絨毛膜羊膜炎は早産の原因としてもっとも多く、症状が出た場合は数日中に早産にいたるといわれています。早産とは、妊娠週数22週~36週までに赤ちゃんが体外に出ることで、全妊娠の約5~6%を占めます。

絨毛膜羊膜炎は32週未満の早い段階での早産に多くみられます。早産になると赤ちゃんが十分に成長していないため、低出生体重児として生まれる可能性が高くなります。

不顕性と顕性に分類される

絨毛膜羊膜炎には「不顕性」と「顕性」の2種類があり、症状や治療法、予後(治療や病状の見通し)が異なります。不顕性は症状がほとんどなく、顕性は子宮内に感染が広がり症状があらわれている状態です。

不顕性は顕性の前段階に相当し、放置すると顕性に進行しますが、早めに治療を行えば進行を防ぐことができます。一方顕性の場合は治療を行っても妊娠を継続することが難しく、多くの場合は早産となります。

絨毛膜羊膜炎の症状と診断基準・方法は? 

絨毛膜羊膜炎になるとどのような症状があらわれるのでしょうか。不顕性と顕性それぞれについて、診断基準や方法とあわせて確認していきましょう。

不顕性の絨毛膜羊膜炎

「不顕性」という名前のとおり、自覚症状がほとんどありません。そのため自ら絨毛膜羊膜炎であることを予想するのは困難であり、妊婦健診で兆候がみられた場合に詳しく検査を行うことで発見される場合が多いといえるでしょう。

妊婦健診で腟の炎症や子宮頸管の短縮といった兆候がみられる場合には、腟や子宮頸管からの分泌液(おりもの)を採取して細菌数などを調べることになります。

腟内を健康に保っている乳酸菌の数が減り、逆に細菌数や顆粒球エスタラーゼと呼ばれる酵素が増加している場合などにおいては、症状がなくても不顕性の絨毛膜羊膜炎を疑うことになるでしょう。

顕性の絨毛膜羊膜炎

顕性の絨毛膜羊膜炎になると、おりものの検査で異常な数値が出るだけでなく、以下の症状・兆候があらわれるようになります。

1.38℃以上の発熱
2.子宮を圧迫されるような痛み
3.毎分100回以上の脈(母体頻脈)
4.おりものからの悪臭
5.白血球数(WBC)の増加

38℃以上の熱があり、2~5の症状うちひとつが認められる場合や、発熱がなくても2~5の症状がすべて認められる場合には、顕性の絨毛膜羊膜炎と診断されます。

絨毛膜羊膜炎の原因は?

絨毛膜羊膜炎はある日突然発症するわけではなく、多くの場合が「上行性感染」と呼ばれる感染によるものです。上行性感染とは、細菌性腟症→腟炎→子宮頸管炎→絨毛膜羊膜炎と腟から少しずつ上に感染が広がっていくことをさします。

最初のきっかけとなる「細菌性腟症」は10~30%もの女性が感染しているといわれており、性成熟期の女性にとっては決して珍しくない病気です。腟が何らかの細菌に感染し、魚の腐ったようなにおいがするおりものがみられる点が特徴ですが、大半の場合は自覚症状がありません。

細菌性腟症の原因としては、ホルモンバランスの崩れや腟内の洗いすぎ、陰部の衛生状態の悪化などがあげられます。まずホルモンバランスの崩れや腟内の洗いすぎによっておりものが減ると、腟内を細菌から守っている乳酸菌が減少してしまうことが考えられます。また、下着やおりものシートを汚れた状態で放置すると陰部の細菌が繁殖し、細菌感染のリスクが高まるため、細菌性腟症につながることがあるのです。

絨毛膜羊膜炎の治療法は?無事出産できる? 

不顕性の絨毛膜羊膜炎

初期の段階なので、治療を行って進行を止めることができます。進行を止めることができれば、妊娠を継続して予定どおりに出産することが可能です。

不顕性の絨毛膜羊膜炎の治療では、子宮内感染や胎児感染を防ぐために妊婦にも投与できる抗菌薬を投与します。さらに、早産の予防をするために子宮収縮抑制薬を投与したり、お腹の赤ちゃんの肺の成熟を促すために副腎皮質ステロイドを投与したりしながら分娩まで管理を行います。顕性に進行していないかどうかを調べるため、体温や白血球数などを計測することもあるでしょう。

治療しても完治していなければ繰り返す可能性があるため、慎重に経過を見つつ分娩までしっかり管理することが大切です。

顕性の絨毛膜羊膜炎

顕性の絨毛膜羊膜炎では子宮内感染が起こっており、治療を行っても進行を止めることが困難な状態です。多くのケースで前期破水や早期陣痛、頸管熟化(子宮頸管がやわらかくなること)が起こり、早産となります。

26週未満で胎児が未成熟な場合には、できる限り妊娠を継続するように処置が行われることもあります。ただ治療を行っても進行を止めることは難しいといわれています。顕性の場合に早産の予防を目的として使用される子宮収縮抑制剤薬は、胎児感染を引き起こす可能性があることから使用されません。

分娩の方法は、分娩を誘発して陣痛が起こるのを待つ場合もあれば、帝王切開となる場合もあります。感染の広がりや母体・胎児の状況から、個別に判断されることになるでしょう。

絨毛膜羊膜炎の胎児への影響は?

不顕性の絨毛膜羊膜炎

不顕性の場合には子宮内感染やその先の胎児感染まではいたらない状態です。そのためしっかり治療を行って進行を止めることができれば、基本的には赤ちゃんに大きな影響を与えることはありません。早産にならずに出産まで妊娠状態を維持できれば、低出生体重児になるといった早産による影響も受けることなく生まれてくることができるでしょう。

顕性の絨毛膜羊膜炎

顕性の場合は子宮内感染を引き起こしており、早産になる可能性が高くなります。必ずしも全員にあてはまるわけではありませんが、子宮内感染およびその後の早産は、お腹の赤ちゃんに影響を与えるリスクが高いといわれています。

まず、子宮内の炎症が起こっている場所からは「炎症性サイトカイニン」という物質が放出されており、この物質が胎児にも炎症を引き起こすことが考えられます。胎児に直接細菌が感染していなくても、このように炎症が引き起こされることで胎児の臓器に障害が生じることがあります(=胎児炎症反応症候群:FIRS)。

また、早産になることで低出生体重児(2500g未満)や、極低出生体重児(2000g未満)、超低出生体重児(1500g未満)となるリスクが高くなることが考えられます。特に早期の早産で赤ちゃんの成熟度が低いケースでは、障害や病気、死産といったリスクをともなうことがあります。

ただ、早産の時期や程度によってはその後の治療で正常な体重で生まれた赤ちゃんの成熟度に追いつくケースも多くみられます。実際にどのようなリスク・可能性があるのかについては医師からしっかり説明を受けて理解しましょう。

絨毛膜羊膜炎の予防法は? 

絨毛膜羊膜炎になったときの対処も大切ですが、まずは絨毛膜羊膜炎にならないように予防したいですよね。どのような予防法があるのでしょうか。毎日のちょっとした心がけから始められると良いですね。

陰部を清潔に保ちつつも洗いすぎない

絨毛膜羊膜炎にならないようにするためには、まずは腟から細菌に感染しないようにすることが大切になります。妊娠中はおりものが増える傾向がありますが、おりものをケアせずに長時間放置しておくと下着の中で細菌が繁殖しやすくなります。下着やおりものシートをこまめに取り換えたり、陰部を洗い流したりして、陰部をできるだけ清潔な状態に保ちましょう。

ただし、陰部の汚れを洗い流したいからといって何度も洗ったり強くこすったりすると逆効果のケースもあります。おりものには腟内のうるおいを保ったり細菌を繁殖しにくくしたりする作用(自浄作用)があるため、必要以上に洗い流すと余計に細菌が繁殖しやすくなってしまう可能性があるためです。

洗う場合はやさしく洗い流す程度にし、石鹸の使用も1日1回程度に抑えると良いでしょう。ビデの使い過ぎにも注意してくださいね。

性行為の際にはコンドームをつける

コンドームを使用しない性行為は、細菌感染をはじめとするさまざまな性感染症の原因となります。性行為の際には必ずコンドームを着用してください。性行為の後は陰部をシャワーでやさしく洗い流すと良いでしょう。

生活習慣を整える

睡眠不足や栄養不足、不規則な生活など、生活習慣の乱れはホルモンバランスに影響を与えることがあります。ホルモンバランスが乱れると、おりものの分泌量が減って腟内が乾燥しやすくなったり、細菌から身体を守ってくれる自浄作用が低下してしまったりすることが考えられます。基本的な生活習慣を見直し、感染症にかかりにくい身体づくりに努められると良いですね。

とはいえ妊娠中はホルモンバランスに波があり、つわりなどの影響で食生活も変化しやすい時期です。高い目標を掲げて無理をすると、自分を追い詰めることにつながってしまい、逆に体調が悪くなってしまうこともあるかもしれません。眠れるときに寝る、食事は食べられるときに少しずつ食べるなど、無理のない範囲で工夫してみてくださいね。

ストレスをためすぎない

ストレスや疲労もホルモンバランスが乱れる原因となることがあります。妊娠中は体内の変化や将来への不安、周囲の環境の変化、お腹が大きくなることなどさまざまな要素があいまって、精神的・肉体的なストレスや疲労を感じやすい時期です。まったくストレスや疲労を感じずに過ごすことは困難かもしれませんが、ためすぎないように注意したいですね。

悩みをためこまずに誰かに相談する、ときどきひとりでのんびりする時間をつくる、散歩などの軽い運動でリフレッシュするなど、自分にできそうなことから始めてみてはいかがでしょうか。

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絨毛膜羊膜炎は進行する前に治療を

絨毛膜羊膜炎はお腹の赤ちゃんにも影響を与えうる病気ですが、細菌が腟内や子宮頸管にとどまっている段階や不顕性の段階で治療を始めれば進行を防げることもあります。

絨毛膜羊膜炎は腟からの感染が広がって卵膜に到達するケースがほとんどなので、細菌性腟症や腟炎、子宮頸管炎のうちにしっかりと治療を行って完治させれば、感染が卵膜にいたる前に食い止めることができるのです。

細菌性腟症の場合はいつもと違うおりものがみられることで気付けるかもしれません。腟炎や子宮頸管炎の場合は、不正出血や性交時痛などから異変を感じとれることがあるでしょう。妊婦健診でしっかり診てもらうのはもちろんのこと、少しでもおかしいな、と感じたら早めに医師に相談するようにしてくださいね。

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