ダウン症とは?ダウン症の種類と原因、特徴、妊娠中の検査
「ダウン症」と聞いたことはあっても、ただ何となく知っている程度で実際にはよく知らない方も多いのではないでしょうか。ダウン症の子どもはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、ダウン症の特徴、原因、妊娠中に行うことができるダウン症の検査について、医師監修の記事で解説します。
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目次
ダウン症とは
ダウン症の正式名称は「ダウン症候群」と言い、染色体異常で体細胞の21番目の染色体が1本多く合計3本持つことで起こる疾患を指します。遺伝子疾患の中で最も多いのが「ダウン症」とも言われ、国内では新生児約1,000人に対して1人の割合で見られる先天性の疾患です。
出産するママの年齢が高いほどダウン症を発症する割合が高く、ダウン症の子どもの数は年々増加傾向にあるともいわれていますが、高齢出産でなくてもダウン症の新生児が生まれる可能性があります。
ダウン症の種類
ダウン症は「標準型21トリソミー」「モザイク型」「転座型」と、大きく3つに分類することができます。ダウン症の種類別にその特徴を見てみましょう。
標準型21トリソミー
標準型21トリソミー型は、標準トリソミー型ともいわれています。
ダウン症全体に占める割合 |
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全体の約90%~95% |
染色体の特徴 |
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両親は正常な染色体数ですが、通常は22本あるはずの常染色体が1本多く23本です。 |
モザイク型
ダウン症の全体数から見ると一番発生頻度は低い型になります。
ダウン症全体に占める割合 |
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全体の約1%~3 % |
染色体の特徴 |
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両親は正常な染色体数でも起こり、21番目染色体が2本の細胞と3本の細胞が混ざることにより起こります。 |
転座型
親の染色体は正常でも染色体の不分離によって起こる場合と、親のどちらかが転座染色体保因者で「遺伝」によって起こる場合が半々のようです。
ダウン症全体に占める割合 |
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全体の約5%~6% |
染色体の特徴 |
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染色体の特徴:21番染色体のうちの1本が他の染色体(13番・14番・15番・21番・22番)にくっつくこと(転座)で起こります。 |
ダウン症の原因
では、ダウン症はどのようなことが原因になっているのでしょうか。ダウン症は染色体がうまく分離しないことによる「染色体異常」によって起こりますが、なぜ染色体異常が起こるのか、はっきりとした原因は現時点ではまだわかっていないようです。
ダウン症の特徴
全てのダウン症の人に当てはまる訳ではありませんが、一般的に言われているダウン症の子どもの知能・性格の特徴を以下であげます。
知能
・知能・運動能力の発達が遅れている。(理解するのに時間がかかる)
・手先が器用で細かい作業が得意
・話を聞くのが苦手なので、目から入る情報の方が理解しやすい
・観察力に優れているので模倣がうまい
個人差はありますが、知能面では上記のことがよくいわれます。
性格
・優しい
・社交的で明るく誰とでも話せる(人懐っこい)
・頑固な面も持つ(こだわりが強い)
・お世話好き
・いたずら好き
人によって異なりますが、以上が一般的にいわれているダウン症の人の性格です。
ダウン症の身体的特徴
ダウン症には身体的な特徴もあるようです。個人差はありますが、一般的にいわれている身体的な特徴を部位ごとにご紹介します。
顔つき
・丸く平坦な顔つき
・切れ長でつり目
・目と目が離れている(間が広い)
・下顎が小さい
・鼻は幅が広く低い
・後頭部が平ら
・生まれたときからはっきり分かるような二重まぶた
・耳は小さく、下の方に付いていて内側に丸まったような状態
個人差はありますが、以上が主な顔つきの特徴です。
首
エコー写真の段階でも分かると言われているのが「首」の特徴で、首が短く太い(浮腫)などがあります。
手
・手足の指が短い
・小指が短いことが多い(指の関節がひとつ足りない場合もある)
筋肉量の欠如
・新生児のとき(体重がなかなか増えない・泣かない)
・口にしまりがない(開きっぱなし・舌が出たまま)
・言葉が聞き取りづらい
・姿勢が悪い
・運動能力の発達が遅い(歩くのも遅い)
合併症
・先天性の心疾患・消化器の疾患
・難聴
・視覚異常(斜視・眼振)
以上のような合併症が起こることが多いといわれています。
子どもの成長とダウン症の症状
ダウン症の症状は子どもが成長していく上でどのように変化していくのでしょうか。子どもの年代別にダウン症の成長や症状などをご紹介します。
胎児期
血液検査や羊水・絨毛などを採取したもの、エコーなどで、ダウン症かどうかの検査が可能です。
■症状
エコーで胎児の様子を確認すると次のようなことが当てはまるケースがあります。
・体が小さい
・手足が短い
・首の後ろにコブのようなものがある
乳児期(0歳~1歳)
■成長
身体的特徴でダウン症と分かることが多く、療育や医療的なサポートを開始します。
■症状
・あまり泣かない
・力が弱く、指などをうまく握れない
幼児期(1歳~小学校入学まで)
■成長
・ゆっくりと成長(言葉・心・運動機能)
・自分の思いをうまく伝えることができずに手が出てしまう場合もある
・子どもに合わせた療育施設や保育園・幼稚園に通園
■症状
・口の筋肉が弱いので歯が生えるのが遅い
・離乳食を進めるのも遅くなりがち
就学時(6歳~18歳)
■成長
・ゆっくりと成長(発語・発音)
・小学校は、特別支援学校や小学校の知的学級・言語学級に通うことが多い
・中学校は、通常の学級や、特別支援学級に通うことが多い
・高校は、特別支援学校へ通うことが多い
■症状
・発語数や発音の流暢さや明瞭さも、中学から高校生になるまでゆっくりと成長します
成人期(18歳~)
■成長
・短大・大学へ進学、卒業実績もある
・30代を過ぎると老化が進む傾向にある
・仕事をしている人も大勢いる(レジ打ちなど)
・芸術分野などで才能を開花させる人も多い
■症状
若年期のアルツハイマー型認知症などを患うこともあります。
ダウン症はいつわかるの?
ダウン症は、妊娠中、胎児のときにダウン症かどうかの検査をすることもできます。ただし、検査によって精度は高くても、100%確実ではありません。さらに、検査には「リスク」が付きものです。
妊娠中のダウン症の検査
妊娠中に行うことができるダウン症の検査5つをご紹介します。検査にはメリットもデメリットもあります。母体、胎児にも安全な検査もあれば検査後に流産のリスクも考えられる検査もあるので、検査を受ける際は検査についてよく知ることが大切です。
また、妊娠中に行うダウン症の検査よっては、指定された条件をクリアしていないと受けることができない場合もあるようです。実際に検査を受けたい場合は、夫婦でよく話しあってから決めてくださいね。
母体血清マーカーテスト
血中の3種類、または4種類の成分を測定するテストでダウン症・18トリソミー・開放性神経管欠損症の「確率」を調べる検査です。
■検査方法:妊婦さんの血液を採取する血液検査
■検査推奨時期:妊娠15週0日~21週6日の間
■メリット:通常の血液検査のように血液を採取するだけで検査できる
■デメリット:確率を調べる検査なので、異常の有無は判断できない
超音波検査
妊婦健診時に行う超音波検査で後頭部浮腫(後頭部のむくみ)などの調べる検査で、妊婦さんにはなじみのある妊婦健診時にも行われることが多い検査方法です。
■検査方法:妊婦さんのお腹にエコーをあてて行う検査
■検査を行う時期:妊婦健診時など
■メリット:胎児にも妊婦さんにも危険が無く、最も簡単な検査
■デメリット:エコーで間接的に検査しているので確実とは言えない
羊水検査
妊婦さんの羊水を採取し、羊水に含まれている胎児の細胞から染色体異常を調べる確定診断検査です。
■検査方法:妊婦さんのお臍の下あたりに針を刺して羊水を採取して染色体異常を調べる検査
■検査推奨時期:妊娠16~17週
■メリット:高い精度の結果が出る(精度は99%)
■デメリット:針で胎児や胎盤を傷つけてしまったり、検査後に流産してしまったりする可能性がある(約0.1~0.3%程度)
絨毛検査
妊娠初期に胎盤の一部の「絨毛」を採取して染色体異常などを調べる確定診断検査です。
■検査方法:絨毛を採取する検査で、採取方法はカテーテルを子宮頸部に挿入する方法と、母体の腹壁に針を刺して絨毛を採取する方法の2種類(自分で選択するのではなく、胎盤の位置によって検査方法が異なります。)
■検査推奨時期:妊娠10~13週頃
■メリット:高い精度の結果が出る(精度は99%)
■デメリット:羊水検査と同じように検査後に流産してしまう可能性がある(約1%程度)
新型出生前検査
妊婦さんの血液を遺伝子分解して、お腹の中の胎児の染色体・遺伝子を調べる検査です。新型出生前検査は妊婦さんなら誰でも検査できるわけではなく、決められた条件にあっている人ではないと検査を受けることができません。
■検査方法:血液を採取して検査する
■検査が受けられる人:日本産科婦人科学会の指針による
・出産予定日に35歳以上の人
・過去、ダウン症・18トリソミー・13トリソミーの妊娠や出産の経験者
・担当医に検査をすすめられた場合
■メリット:安全性の高い検査で高い精度の結果が出る
■デメリット:誰でも受けられる検査ではない点、費用が高額
ダウン症は治療できる?
ダウン症の原因は染色体異常なので、治療法はありません。心臓・消化器、視覚障害、難聴などの合併症については治療できる場合もあります。
個性のひとつ
高齢出産が増加していることで、ダウン症の子どもの数も増えているといったニュースを聞くこともありますが、高齢出産でなくてもダウン症の子どもは誕生します。妊娠し出産するひとりの女性として、ダウン症のことを「知る・理解する」ことはとても大切です。
ダウン症の子どもに限らず、一人ひとりの成長のスピードは異なりますよね。大人でも不得意なこともあれば得意なこともあり、それぞれ違います。ダウン症の子どもは他の子と比べると成長のスピードが遅いといわれていますが、それも個性のひとつと捉えて接していきたいですね。