精子無力症とは?妊娠するための治療方法や検査内容について

精子無力症とは、精子の運動率が極端に低い状態です。精子の運動率は、病院の精液検査で測定が可能です。先天的なものがほとんどですが、大人になってからのおたふくかぜや、精索静脈瘤が原因となることもあります。治療には漢方やサプリが使われますが、総運動精子数が少ない場合は、人工授精や体外受精がすすめられます。

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目次

  1. 精子無力症(せいしむりょくしょう)とは
  2. 精子無力症の原因
  3. 治療方法は?
  4. その他の男性不妊の原因は?
  5. 食生活を見直しながら人工授精などの治療を併用しよう
  6. あわせて読みたい

精子無力症(せいしむりょくしょう)とは

男性不妊症の原因として、「精子無力症」というものがあります。聞きなれない言葉ですが、じつは男性側の不妊原因の多くを占めています。精子の量ではなく、質が問題となる、精子無力症。一体どういった症状なのでしょうか。

どんな病気なの?

精子無力症とは、精子の運動率が一般的なものより低い症状を指します。つまり、精子が元気に動き回る力、前に進む力が弱い状態ですね。具体的には、精子運動率が40%以下が精子無力症の定義とされています。ちなみに、健常な一般男性の場合、精子運動率は60%~80%ということです。

精子は、女性の腟内に出されると、子宮から卵管をとおり、最終的には卵管膨大部という場所にたどりつきます。何かに流されて動くわけではなく、精子自らの鞭毛を動かし、卵子を目指していくのです。ここで卵子に入り込むのですが、運動率が低い精子は、この卵管膨大部までたどりつくことができません。

また、せっかくたどりついても、卵子に入り込む力がないこともあります。そのため、運動率の低い精子を多く含む精液は、受精率が低下し、不妊の原因となります。男性側が原因の不妊の場合、この精子無力症が8割をしめるといわれています。

どんな検査でわかる?

精子無力症の発見には、触診検査、超音波検査、内分泌検査などいろいろな検査方法がありますが、一般的には精液検査が行われます。病院の方針にもよりますが、2日から7日間の禁欲期間を設け、そのあと精液採取室などで精液を採取し、検査します。一般的に、検査の結果が出るまでに一時間ほど時間がかかるようです。

精液の状態は、ストレス、食事、生活習慣などさまざまな要素によって変動します。そのため、二回以上の検査を行う病院が多いようです。精液検査では、精液の量、ph、精子濃度、精子生存率、精子運動率などを測定し、それぞれの基準値と照らしあわせて原因をさぐっていきます。

自然妊娠は可能?

自然妊娠できる可能性は、総運動精子数というもので判断されます。これは、精液量と精液濃度、それに精子運動率の積で決まります。この数値が一定以上あればタイミング療法での自然妊娠がすすめられます。一定値を下回る程度により、人工授精、体外受精、顕微受精の順で治療方針がより高度な医療技術を必要とするものに変化していきます。

精液量と精子濃度が十分あり、精子運動率がある程度あれば、自然妊娠は可能といえるでしょう。しかし、妻の年齢が高い場合や、不妊の期間が長いケースでは、人工授精や体外受精をすすめられることが多いようです。

精子無力症の原因

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先天的なもの

精子無力症の多くは先天的なものとされています。研究では、ヒトGALNTL5遺伝子の変異がひとつの原因なのではないかといわれ、他にもさまざまな遺伝子が影響しているのではないかとされています。

急速に研究が進められている分野ですが、まだまだわからないことも多いようです。先天的な精子無力症において、決定的な治療法はいまだ見つかっていないのが現状です。

病気による高熱

過去の病気で、高熱を出した場合も精子無力症の原因となりえます。代表的なものがおたふくかぜです。おたふくかぜは、症状が回復しても、ムンプスウイルスと呼ばれるウィルスの影響で精巣に炎症を起こすことがあり、精子をつくる細胞が壊れ、運動率が落ちるなどして将来不妊につながる可能性があるのです。

とくに思春期以降にかかったおたふくかぜには注意が必要です。急性精巣炎になってしまっても、全ての人が不妊になるわけではありません。ほとんどの場合、一週間ほどでおさまりますが、長期化すると危険なので、早めの受診が必要です。

精索静脈瘤や前立腺の炎症

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)も精子無力症の一因といわれています。これは、精子無力症だけではなく、乏精子症の原因ともなります。精子の運動率低下と乏精子症の35%がこの精索静脈瘤からくるものとされています。精巣やその上部の静脈が広がり、精巣機能が低下してしまうのです。これは手術などで改善させることが可能ですが、実際に妊娠するための機能が回復するかどうかはやってみないとわかりません。

また、前立腺の炎症も問題です。精子が存在する精液は、前立腺などの分泌液も混じったものです。このため、前立腺に炎症が起こると精液の成分が変化し、精子の運動率が低下する可能性があります。

原因がわからないことも

男性不妊は、その半分ほどは原因がわからないとされています。精子無力症も、原因を特定できないことがしばしばです。精子の運動率の低下は、数十年前にくらべると世界的に進んでいるという研究結果もあります。現代におけるストレスやライフスタイルの変化、環境ホルモンなどが関わっているのではないかと推測されています。

治療方法は?

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漢方での治療

精子無力症の改善を目指す場合、漢方を処方する病院も多いようです。漢方医学で「精」とよばれる生殖活動に欠かせないエネルギーを補給する生薬、男性器にとって重要な血流をうながす生薬などが配合される漢方が中心です。素材としては、鹿の角や地黄、山茱萸、枸杞子などです。

血の巡りを良くし、精子の質の改善に使われている漢方としては「八味地黄丸」や「補中益気湯」などがあります。牡蠣肉抽出ペプチドに人参根を加えたものなども臨床実験が進められ、漢方医学を使った精子無力症の治療に注目が集まっています。

サプリで改善することも

軽度の精子無力症の場合、病院で薬物治療がすすめられることもあります。使われる薬は、クロミフェンやビタミン剤などで、運動率の改善が期待できます。さらに身近なものとして、コエンザイムQ10が近年では有望視されています。女性の美容サプリとしても有名ですよね。

精子の中心部にはミトコンドリアがあり、そのエネルギーによって精子は動いています。このミトコンドリアは抗酸化作用が少なくなるとエネルギーが落ち、同時に精子の動きも悪くなります。抗酸化酵素を補うことでそれを防げるといわれ、それに最適なのがコエンザイムQ10という抗酸化酵素なのです。

サプリでも改善の可能性はありますが、医療用の薬のほうがさらにコエンザイムの含有量が高いようです。より高度な治療をのぞむなら、病院で処方してもらいましょう。

食事にも気をつけよう

普段の食事でも、精子の運動率を高めるとされている成分に「カロテノイド」というものがあります。カロテノイドにもコエンザイムQ10のように、抗酸化作用があるからです。

カロテノイドは赤やオレンジ、黄色などの天然色素なので、人参やカボチャ、マンゴーなどの色鮮やかな食べ物に多く含まれます。海老やカニ、卵黄などにも含まれているようです。

リラックスしてストレスをためない

精子の質を高めるためには、過度の活性酸素の発生を抑え、抗酸化力を高める必要があります。そのためには、規則正しい生活や、適度な運動、質の良い睡眠が重要となります。重度なストレスも活性酸素の発生と抗酸化力のバランスを大きくみだすといわれています。

生活習慣を見直し、できる限りリラックスして、ストレスをマネジメントできるように心がけることが大切ですね。身も心も健康的なライフスタイルが、精子の運動率につながるといえるでしょう。

一般的なのは人工授精や体外受精

精子の運動率が40%を下回る、深刻な精子無力症においては、人工授精をすすめられるのが一般的です。排卵日に、女性の子宮に細いチューブのようなもので精子を直接注入する方法です。

腟内は弱酸性のため、動きの悪い精子は奥にいくまでに死んでしまうのですが、人工授精では子宮奥に注入されるため、受精の確率が上がります。スタート地点が、よりゴールに近いと考えるとわかりやすいですね。

さらに運動率が低く、10%に満たない場合は、体外受精や顕微授精をすすめられることもあります。体外受精は採取しておいた精子と卵子をシャーレで混ぜ合わせる方法です。顕微鏡下で精子を卵子に刺して注入するのが顕微授精といわれます。

その他の男性不妊の原因は?

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乏精子症

精子の動きが悪いのが精子無力症ですが、精子そのものの数が少ないことを乏精子症と言います。1mlの精液中の精子数が1500万個以下だと、診断できます。

精子数が少ないと受精率も下がるので、これも男性不妊の原因の多くを占めるといわれています。精子無力症と同じく、高熱による精巣炎や精索静脈瘤などが原因とされています。軽度の乏精子症であれば、人工授精や体外受精、重度の場合は顕微授精が治療としてすすめられます。

無精子症

精液中に精子がまったく見られない症状を指します。複数回の精液検査で、精子が見つからない場合に診断されます。全男性の1%ぐらいに見られるようです。原因としては、先天的に精巣が小さかったり、おたふくかぜなどで精巣が腫れたり、精子の通り道が詰まっているなどが考えられます。

治療方法としては、薬物治療、ホルモン治療のほかに、手術で精巣内から精子を採取し、顕微授精をするなどがあげられます。

精子奇形症

精子の量や運動率が一定以上あっても、受精能力のない奇形の精子が多い症状を指します。一般的に、正常な精子の形態率が4%より下回ると、この精子奇形症と診断されます。

原因はまだよくわかっていませんが、他の精子異常と同じように、精索静脈瘤などからくることもあるようです。治療法としては、正常な精子を選んで採取し、顕微授精するというものがあります。

勃起不全などの性交障害

性交を行うのに十分な勃起ができない、いわゆるEDも不妊の原因となります。EDにはストレスなどの「心因性」と体に何らかの問題がある「器質性」、さらにその混合があるとされています。カウンセリングや薬の処方で改善できるといわれています。

また、ED以外にも、射精ができない射精障害や、精液が膀胱に逆流してしまう逆行性射精などが考えられます。これらも薬物療法や、人工授精や体外受精といった治療法が取られています。

食生活を見直しながら人工授精などの治療を併用しよう

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精子無力症は、精子の動きが悪くなっている症状です。男性不妊の大きな要因とされますが、原因はまだわからないことも多いようです。治療には、漢方やサプリを使ったものがあり、体の抗酸化力と活性酵素発生のバランスが重要となってきます。

抗酸化力が大きい食べ物を取り入れるなど、普段の食事から見直していきましょう。精子の運動率が極端に低い場合は、人工授精などが一般的に採用されるようです。自分でできることと、医師からのアドバイス、どちらも取り入れながら治療を目指していきましょう。

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