精子の量が少ない乏精子症とは?自然妊娠できる?数を増やすには?原因や検査、治療法について

乏精子症は、精液中に含まれる精子の数が基準値を下回る状態をさします。男性不妊の原因の約9割を占める造精機能障害といわれる乏精子症の治療は、精索静脈瘤があるかどうか、ホルモン値に異常はないかどうかがポイントです。自然妊娠の確率は下がるものの、人工授精や顕微授精などで妊娠できる可能性がある、乏精子症について解説します。

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目次

  1. 乏精子症は精子の数が少ない状態
  2. 乏精子症の原因
  3. 乏精子症の治療
  4. 乏精子症と妊娠
  5. その他の男性不妊の原因は?
  6. 【対策】セルフケアで精子の状態を良くする
  7. 乏精子症でもホルモン投薬や人工授精などさまざまな方法がある
  8. あわせて読みたい

乏精子症は精子の数が少ない状態

男性の生殖メカニズム

精子は男性の精巣内で絶えず作られており、精子の元である精子細胞は、約74日かけて精子になります。でき上がった精子は、副睾丸の精巣上体まで14日かけて移動し、射精されるのを待っています。

1回の射精で放出される精子の数は数億に上ります。しかし、そのうち腟を抜けて子宮内へ入れるのが数千、さらに奥まで進み卵子と出会えるような強い精子はたったの数百です。機能的に優れ、形も正常な1匹の精子のみが、卵子と受精して受精卵へと変わります。

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乏精子症とは

乏精子症とは、精液内に含まれる精子の数が継続的に標準値よりも少ない状態のことです。乏精子症は精子を作るシステムに問題がある造精機能障害のひとつで、男性不妊の90%以上を占めています。

精子の数が少なければ、卵管膨大部で待つ卵子と出会える精子の数も少なくなり、妊娠の可能性が低くなるおそれがあります。

乏精子症の基準

1mL中の精子の数の最低基準値は1,500万以上、精液全量中の総精子数の最低基準値は3,900万です。1mLあたりの精子濃度が1,500万に満たない場合を「乏精子症」と呼びます。

不妊要素のない男性が1回の射精で出す精子の数は数億個といわれ、乏精子症の場合の精子量と比較すると、大きな差がみられます。精子の数が多ければその分卵子に出会う可能性は高くなり、自然妊娠のためには精子濃度が4,000万/mL以上あることが望ましいとされています。

乏精子症の検査項目

乏精子症は精液検査によって発見されます。検査には、病院検査もしくは郵送で臨床検査技師の検査が受けられるOES精液検査が正確ですが、自分で結果を判定する手軽なキットなども販売されています。

病院での精液検査は、通常3週間程度の期間を開けて3回程度行います。これは、精液の状態が体調などによって左右されやすいためです。複数回検査を行うことで、より正確で詳細な検査結果が期待できます。

一般的な精液検査項目は、次の通りです。

・精液量
・pH
・精子濃度
・総精子数
・精子運動率
・前進運動率
・形態
・生存性
・白血球数

乏精子症は、検査項目中の「精子濃度」や「総精子数」が参考材料になります。その他の項目も、乏精子症の診断には関係ないものがありますが、その後の不妊治療の方針をたてる参考となる重要な数値です。

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【触診】精索静脈瘤の有無

乏精子症がどうして起こっているのかを診断するために、「精索静脈瘤」の有無が所見となります。精索静脈瘤とは、精巣や精巣上部にある精索部に静脈瘤ができている状態です。

本来、精巣は体温よりも2℃ほど低い温度が適温で精巣は体幹よりも少し離れた位置にありますが、精索静脈瘤があると精巣の温度が上昇しやすくなってしまいます。精巣温度の上昇は、精液や精子の状態の悪化と深い関わりを持っています。


現在の研究では、乏精子症と精子運動率低下のうち35%が、精索静脈瘤によるものだと考えられています。精索静脈瘤の程度やカップルの不妊の状況によって手術を行うかどうかが決められ、精索静脈瘤の手術後は、51%~78%の確率で精液の状態に改善が見られているとのことです。精索静脈瘤の手術は、以下の条件を全て満たした場合に適応されます。

・夫婦が不妊症を認識している
・妻の妊娠機能が正常か妻の不妊原因が治療可能な場合
・精索静脈瘤が触知される、または触知が疑われ超音波検査で確認できた場合
・精液所見が悪い場合

手術の方法はいくつかありますが、最近では、日帰りで行える顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術がオーソドックスとなっています。

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乏精子症には自覚症状がない

乏精子症は自覚症状を伴わず、精液の成分は目で確かめることができません。痛みや不快感などの症状がないため、発見が遅くなることも多々あります。

乏精子症の原因

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精索静脈瘤

精索静脈瘤とは、精巣やその周辺部分に静脈瘤ができる状態をいいます。静脈瘤は静脈の血管にできるコブのことで、精巣周辺にできると精液状態の悪化を招く傾向にあります。一般男性の約15%、不妊男性の約40%にみられる症状です。

ほとんどは痛みなどの自覚症状もなく、コブができていたとしても異常に感じない場合もあるため、精液検査を受診した際に初めてわかる場合も少なくありません。自分でできるセルフチェックの方法は以下の通りです。

・精巣や陰嚢のサイズに左右で違いがある
・陰嚢の表面がでこぼこしている

これらの所見があった際には、一度泌尿器科を受診してみましょう。

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ホルモン分泌異常

ホルモン分泌異常による乏精子症では、以下のようなホルモン値が異常を示します。

・FSH(卵胞刺激ホルモン)
・LH(黄体化ホルモン)
・PRL(プロラクチン・乳汁分泌ホルモン)
・テストステロン(男性ホルモン)

FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)の分泌が少ないと、造精機能が低下します。また、プロラクチン値が高い場合には、性欲や性腺機能の低下、勃起障害(ED)などが症状として現れます。プロラクチン値の上昇は、向精神薬、一部の胃薬の服用服用やストレスなどでも引き起こされるので、心あたりがある場合には、一度受診しておくと安心です。

ホルモン分泌に異常が見られた場合には、ホルモン療法を行います。ホルモン治療は、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)の分泌を促し、テストステロン(男性ホルモン)の分泌促進を目的としています。精子が作られるには約3ヶ月の期間を要すため、ホルモン治療は3ヶ月スパンで考えるのが一般的です。

停留精巣

胎児の精巣は、最初はお腹の中に隠れています。男性器が外に出始めるのは、妊娠9週頃からです。それにあわせて精巣も下に降りていきます。

「停留精巣」は、胎児の頃に行われるはずの精巣の下降が不完全のままになる状態で、特に、在胎期間37週未満の赤ちゃんや2500g未満の低出生体重児に起こりやすい症例です。

新生児期は5%の赤ちゃんに停留精巣が見られますが、1歳までなら自然に下降してくるケースもあります。下降が見られない場合には、生後6ヶ月〜2歳までに手術を行います。手術をしたとしても、生殖能力は、通常に比べて片側で70〜80%、両側で50%程度まで低下することがあります。

おたふくかぜによる精巣炎

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)は通常幼少期に罹患する病気で、患者の80%は15歳以下だといわれています。一度罹患すると体内に抗体ができるため、基本的には再度罹患しません。

しかし、初回の罹患が思春期以降に起こる場合が稀にあります。思春期以降の罹患は、高熱による精巣炎を合併するリスクが高く、その後の造精機能にダメージをきたすと指摘されています。男性でおたふく風邪にかかった経験がない人や抗体がない人は、予防接種等の対策を講じておくと安心です。

原因不明の場合も多い

乏精子症の原因で最も多いのは「原因不明」です。調査結果では、精索静脈瘤や停留精巣など、明らかに乏精子症のリスクをあげると思われる因子を覗いても、そのうちの4分の3は原因不明だといわれています。

生活改善や投薬で改善が見られない場合には、人工授精などの生殖補助治療も視野に入ります。

乏精子症の治療

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ビタミン剤や漢方の処方

FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)、プロラクチンなどのホルモン分泌に異常が見られない場合には、ビタミンEや漢方での改善が図られます。比較的軽度の乏精子症にも同じようにビタミンEや漢方が処方され、ビタミンEは最低でも6ヶ月服用を続けて様子を見ます。

カップルの年齢や状況次第で女性側の治療の場合も

男性側の造精機能の改善に時間を費やせない場合は、女性側も同時に何らかの治療をスタートするケースは少なくありません。カップルの年齢や子が生まれてくるときの環境などを考慮し、早めに妊娠を望むときには、人工授精へのステップアップも同時に検討します。

乏精子症と妊娠

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自然妊娠の可能性は?

乏精子症であっても、精液中の精子の数が0ではない限り自然妊娠の確率はあります。しかし、たとえ不妊要素のないカップルが排卵日に避妊せずに性行為をした場合でも、1年内に妊娠する確率は約80%(20〜29歳の場合)しかありません。

精液所見に問題がなくても約20%のカップルは妊娠に至らないのですから、乏精子症の場合であれば妊娠する確率は当然低くなります。

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人工受精の適応範囲

人工授精が適応される条件は主に以下の通りです。

・軽度の乏精子症や軽度の精子運動率低下のとき
・ヒューナーテストの結果が良くないとき
・性交障害、勃起不全など性機能障害がある場合
・タイミング療法で妊娠せず原因がわからないとき
・年齢等で1日も早い妊娠を望むとき

よって、乏精子症は人工授精の適応範囲となります。

人工授精継続の目安は概ね5〜6周期です。人工授精で妊娠したカップルのうちの80%が3周期以内に妊娠しているため、6周期を超えても妊娠しない場合には、体外受精へのステップアップを検討します。

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体外受精・顕微授精の適応範囲

体外受精は、卵巣から成熟した卵子を取り出し、体外で夫の精子を振りかけて受精させる方法です。受精後一定期間培養したのち、子宮腔内に移植して着床を待ちます。

顕微授精は体外受精のひとつで、極細の針で卵子に1個の精子を直接注入させて受精させる方法です。近年では、卵子の細胞質内に注入するイクシー法が主流となっています。精子の数がひとつでも受精の可能性があるため、これまで妊娠できる確率が非常に低かった乏精子症の人にも希望をもたらしました。

体外受精の適応範囲は以下の通りです。

・卵管に障害がある
・排卵障害がある
・重度の子宮内膜症
・乏精子症や精子無力症で人工受精では妊娠しなかった

よって、乏精子症は体外受精の適応範囲です。顕微授精は、体外受精でもなかなか妊娠を見込めない場合や、カップルの状況に応じて医師から提案されます。

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その他の男性不妊の原因は?

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造精機能障害と性機能障害

男性の不妊原因には、「造精機能障害」と「性機能障害」に大きくわけられます。

造精機能障害とは、精子を作る機能に問題がある状態を指します。精子の数が少ない乏精子症もこの造精機能障害のひとつです。

性機能障害とは、性欲、勃起、性交、極致感のいずれかひとつ以上欠ける状態をいいます。具体的には、勃起障害(ED)、射精障害、性欲減退などがあげられます。

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【造精機能障害】無精子症・精子無力症

造精機能障害には、精子の数が少ない乏精子症の他、精子の数が極めて少ない「無精子症」、精子の運動率が悪い「精子無力症」が代表的です。他にも「奇形精子症」「膿精子症」「精子死滅症」「精子不動症」なども造精機能障害に含まれます。

いずれも状態に応じてホルモン治療を行ったり、人工授精・体外受精に挑んだりして妊娠の可能性を上げます。精索静脈瘤や精管閉塞など原因がはっきりしている場合には手術で改善を試みる場合もあります。

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【性機能障害】勃起障害(ED)・腟内射精障害など

性機能障害には、勃起ができないもしくは維持できない「勃起障害(ED)」や腟内での射精が困難な「腟内射精障害」、膀胱内に精液が逆流してしまう「逆行性射精障害」などがあります。

治療にはふたつの方向性があります。ひとつは、投薬などで状況の改善を行う方法です。EDならばバイアグラなど、逆行性射精障害なら膀胱頸部を閉じる作用のある薬を使用します。

もうひとつは、妊娠と性行為とを分けて考え、状況の改善よりも人工授精に委ねる方法です。カップルの年齢や考え方を十分尊重して治療を進めます。

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【対策】セルフケアで精子の状態を良くする

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精液の状態は、健康状態やストレス、環境などによって左右されやすい特徴を持ちます。妊娠しやすい状態を整えるために、男性側もセルフケアをすることが大切です。

禁煙

日本産科婦人科学会の研究では、喫煙と精子の機能の低下は、活性酸素の増加を原因とした深い関係があると指摘しました。造精機能を良い状態に保つには、禁煙が好ましいといえます。

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精巣を高温環境にさらさない

精子は高温に弱い性質を持ち、精子や精巣は、体温よりも2℃ほど低い環境が適しています。長時間のサウナや熱を発するものを下半身近くに置くのは危険です。

また、高熱にも注意です。特に思春期以降のおたふく風邪の罹患は、造精機能に障害をもたらす確率が高いと指摘されています。日ごろの生活では、なるべく精巣の温度を上げすぎないように注意しましょう。

風通しの良いトランクスがオススメ

精巣の温度上昇を防ぐためには、ブリーフやボクサーよりもトランクスがおすすめです。帰宅後のリラックスタイムだけでも良いので、日々の生活にトランクスを取り入れてみましょう。

禁欲しすぎない

私たちは、禁欲した方が精子濃度は高まり、妊娠の確率が上がるようなイメージを抱きがちです。しかし、禁欲があまりに長いと、逆に精子の運動率が悪くなるなど質を落とすことにつながりかねません。禁欲期間は1〜2日程度で射精サイクルを作る方が、元気な精子を循環させられます。

乏精子症でもホルモン投薬や人工授精などさまざまな方法がある

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現在の不妊治療は非常に発展しており、たとえ精子の数が少なくても妊娠の可能性はあります。程度やカップルの状況にあわせ、いくつもの方法から適した方法が選べるのです。

乏精子症は自覚症状がなく、精液検査をして初めてわかります。2人目不妊を理由に男性側が受診をしてやっと知る場合もあるでしょう。

男性不妊の約9割は乏精子症というデータもあり、つまり、男性側不妊の理由としては極めてオーソドックスな理由です。治療方針や期間、かける費用などについては、夫婦で十分に話し合うことが大切です。

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