射精の量が少ない、出ない…逆行性射精でも妊娠できる?治療方法と原因について

逆行性射精は、本来は尿道から排出されるはずの精液が、膀胱へ逆行してしまう症状です。子宮に到達する精子の量が少なくなったり、全くなくなったりするので、不妊の原因となります。痛みなどの自覚症状はなく、不妊以外の悪影響はありませんが、改善がない場合は人工授精がすすめられます。ここでは、逆行性射精について詳しく解説します。

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目次

  1. 逆行性射精(ぎゃっこうせいしゃせい)って何?
  2. 逆行性射精の原因
  3. 治療はどんなことをする?
  4. 妊娠はできる?
  5. その他の男性不妊の原因は?
  6. 精液が少ないと感じたら早めの受診を
  7. あわせて読みたい

逆行性射精(ぎゃっこうせいしゃせい)って何?

不妊の原因のひとつに、男性側の射精に関するものがあります。いったいどのような症状が考えられるのでしょうか。男性だけではなく、女性も知識として知っておくことで、パートナーとの信頼関係が深まるはずです。

症状はどんなもの?

「逆行性射精」とは、精液が陰茎から放出されずに、逆方向に流れてしまう症状をさします。「空打ち」と呼んでいる人もおり、男性側からすると、射精の感覚はあるのに精液が出てこないという状況です。

オルガズムを感じ取ることは可能ですが、射出される精液量が減るので、不妊の原因となります。精液全部が逆流するパターンと、一部が逆流する部分逆行性射精があります。

上記の陰茎の逆方向は、膀胱にあたります。つまり、本来なら出て行くべき精液が膀胱にまでさかのぼってしまうので、尿に精子が混ざって出て行くことになるのです。

まず、精子は精巣でつくられ、オーガズムを感じると、男性の精子は精管をとおって射精管をとおり、最後は尿道をとおって放出されます。尿も精液も、最後の通路は一緒というわけです。

精液と尿、どちらが出るのかわからなくなってしまいそうですが、男性は自分でコントロールできていますよね。それは、基本的には射精と排尿は一緒に起こらないからです。

射精するときは内尿道括約筋という筋肉が収縮し、膀胱の一部を閉じてくれます。しかし、逆行性射精の場合は、この膀胱の一部が開いたままになってしまい、本来なら尿道を通って排出されるはずの精液が膀胱に入っていってしまうのです。

痛みはある?

逆行性射精では精液が膀胱に戻りますが、基本的に傷みはありません。排尿のときに染みることなどもないようです。精子は尿と一緒に排出されるので、不妊の原因以外、特に体に悪い影響もありません。それゆえ、自覚症状がないのが逆行性射精の特徴ともいえます。

自分でわかる症状としては、精液の量が少ない、まったく精液が出ない、射精の後の尿が白くにごっているなどがあげられます。精液量の正常値は1.5mLといわれているので、1mLより少ないと逆行性射精の可能性もあります。なお、1mLは、小さな注射器ぐらいの分量です。

尿から検査できる

逆行性射精かどうかは、尿検査で調べることが可能です。ただし、いつの尿でもよいわけではなく、射精直後の尿を検査する必要があります。精液の量が気になるときは、病院で相談してみましょう。

射精後の尿に多くの精子が認められれば、逆行性射精と診断されます。似たような症状に「閉塞性無精子症」がありますが、こちらは睾丸が大きくなっていたり精巣上体の腫大があったりするので、専門機関ですぐに見わけることができます。

逆行性射精の原因

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逆行性射精と診断されても、原因のほとんどが不明であることが多いようです。しかし、なかにはハッキリとした原因が考えられることもあります。

病気や手術の影響

逆行性射精の原因で多いものとしては、まず糖尿病が考えられます。逆行性射精の診断を受け、あらためて糖尿病が発覚するという逆のパターンもあるようです。糖尿病は多くの神経障害をひきおこすだけでなく、下腹神経などの末梢神経を障害し、内尿道括約筋の閉鎖を不十分にしてしまいます。

また、脊髄などの損傷でも、神経が切断されるために逆行性射精の原因となりえます。腹部や骨盤部の手術で神経を切断してしまったときにも起こります。逆行性射精は、内尿道括約筋が収縮しないことが要因なので、なんらかの事故や病気で交換神経系に異常があったときに症状としてあらわれるようです。

内尿道口自体に物理的な問題がある可能性もあります。たとえば、前立腺の手術です。前立腺を切除して尿道を広げた結果内尿道口の締まりが悪くなり、逆行性射精をひきおこすと考えられています。

ユリーフなどの薬の副作用

薬の影響で逆行性障害が起こることもあります。とくに有名なのが「ユリーフ(シロドシン)」です。ユリーフは、前立腺肥大症の治療薬として知られており、一部の病院では、早漏予防としても使われるようです。

前立腺肥大症になると排尿障害が起こるため、ユリーフで尿路平滑筋をゆるませ、尿を出しやすくします。しかし、同時に尿道を拡張してしまうことになり、射精時に膀胱に精液が逆流しやすくなるのです。もし夫婦で子供を希望しているのなら、ユリーフなど一部の薬の使用には注意しなければなりませんので、主治医に相談しましょう。

治療はどんなことをする?

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逆行性射精の研究が進み、今ではいろいろな治療法が行われています。

薬で治ることも

膀胱の一部を閉じる作用がある薬を投与することで、改善がみられることもあります。治療に使われているのは、「アモキサピン」「フェニレフリン」「イミプラミン」などです。薬による治療は、逆行性射精の患者の約3分の1には有効だといわれています。

ただし、これらの薬は副作用があるものがほとんどです。アモキサピンは交感神経系を活発にして内尿道口を閉じてくれますが、性交前に服用すると眠気が出てくることがあります。フェニレフリンは血圧を上昇させるので、高血圧のひとにはおすすめできません。イミプラミンは多用するとEDになるリスクがあります。薬による治療は、効果の個人差が大きいといえるでしょう。

糖尿病が原因で起きている場合は、まずは糖尿病の治療が優先です。血糖値が安定すれば、逆行性射精は自然治癒する可能性もあります。原因が薬剤であることがわかっている場合は、薬を止めれば治癒することもあります。

改善のためにできること

逆行性射精の予防や改善は、難しいとされています。糖尿病などに付随して起こるため、規則正しい生活や、栄養バランスを考えた食生活をおこなっていれば、間接的な予防にはなるでしょう。

逆行性射精を放っておいても痛みや体への悪影響はないので、そのままにしておいても問題はありません。ただし、射精時に精液が出ないことに違和感を覚えるかもしれません。ほとんどの場合、逆行性射精の自然治癒は難しいとされています。妊娠をのぞむのであれば、早めに専門の病院で診てもらいましょう。

妊娠はできる?

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自然妊娠の可能性はある

逆行性射精と診断されても、100%自然妊娠ができないということはありません。たとえば、精液の一部が逆流してしまう部分逆行性射精であれば、射精される精子の量は減りますが、精子が子宮に入り込む余地はあります。

妊娠できるかどうかは、精液の量とそのなかの精子の数、精子の運動性によって変わってきます。精液の量は普通より少なくても、含まれる精子の数が多く、元気に前に進む力があるなら、自然妊娠の可能性はあがります。しかし、精子の量や力は自分では判断できないことなので、検査をしてみる必要があります。

完全に精液が逆流してしまって全く放出されない状態では、やはり自然妊娠は難しいといえるでしょう。薬による治療がすすまない場合は、精子を採取する人工授精をすすめられるのが一般的です。

人工授精をすすめられることも

症状が逆行性射精のみの場合、精子の生産はされているので、精子の回収さえできれば人工授精(AIH)や体外受精が可能です。尿に含まれる精子を回収すればよいと思うかもしれませんが、酸性である尿に触れると精子は死滅してしまいます。このため、特別な回収方法が必要です。

回収方法はいくつかあります。一番簡単なのは、一度排尿した後に水を大量に飲み、膀胱内を新鮮な尿にしてから射精し、尿中の精子を回収する方法です。ただし、尿と精子は触れてしまうので、運動精子が得られる確率としては低めです。

より確率を高めるならば、膀胱内の残尿をカテーテルで全て抜き、膀胱内に培養液を注入する方法があります。こちらの方法では、射精後に培養液をカテーテルで回収して精子を採取し、うまく精子が回収できれば女性の子宮内に直接注入します。女性側に不妊の症状がなければ、人工授精は有効です。

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その他の男性不妊の原因は?

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不妊理由が男性側にあるとき、逆行性射精だけが原因とは限りません。他にもさまざまな原因が考えられます。

無精子症

「無精子症」とは、射精した精液に精子が一匹もいない状態です。精子は作られているけれど、精管が閉塞してしまっている「閉塞性無精子症」と、精子をつくる機能に障害が生じている「非閉塞性無精子症」にわかれます。無精子症は不妊の原因であり、自然妊娠は不可能だといわれています。

無精子症の場合、精液を精巣や精巣体上体から直接回収して治療を行うことが必要です。回収するときは精巣や精巣上体を切開しピペットで精子を吸い取り、さらに顕微授精を試します。

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精子の異常

精子の数が少ない、精子の動きが悪いといったことも、不妊の原因となってしまいます。精子の異常は大きく3つにわけられ、精子の数に異常があるものが「乏精子症」、精子の運動性に問題があるものが「精子無力症」、精子がまったく動かない状態が「精子不動症」です。

これらの異常は、精液検査によって診断され、症状が軽い場合は、食事の改善や、サプリ、薬、漢方などが試されます。より重度の場合、人工授精や体外受精が第一の選択肢となるでしょう。

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性交障害

単純に、セックスができないという状態も不妊理由になります。男性側がセックスができない性交障害は大きく分けて、病気によるものと、精神的なもののふたつです。病気の代表格はEDで、男性不妊の30%近くがEDによるものという調査結果もあります。

また、腟内射精障害も最近増えてきているようです。マスターベーションでは射精できても、腟内では射精できないという症状で、過度の刺激が原因となっていることもあります。うつ病や、高血圧、糖尿病なども性交障害の要因になります。

精神的なものでは、疲れやストレス、妊娠へのプレッシャーなどがあります。薬やカウンセリングで改善しなければ、人工授精がすすめられるでしょう。

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精液が少ないと感じたら早めの受診を

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逆行性射精は、薬や原因となっている病気の治療で改善することもありますが、それでも妊娠できないときは、特別な方法で精子を回収してからの人工授精という手段をとることになるでしょう。精液の量が少ないと感じたら、まずは早めの受診をおすすめします。

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