更新日:2017年07月21日

精巣が痛い!子供の精巣捻転の症状と手術について。将来の不妊への影響は?

精巣が痛む原因のひとつに、精巣捻転症(せいそうねんてんしょう)があります。精巣捻転は、発症したら早急に処置が必要な怖い病気です。症状はどのように表れるのか、子どもが訴える痛みや治療法、ママにとってわからないことが多い子どもの精巣のことをひとつずつ解説していきます。

監修 : mamanoko 医師・専門家
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精巣捻転は救急治療が必要な病気

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子供の腹痛や精巣痛には要注意

精巣捻転(せいそうねんてん)は、陰嚢周辺に急激な痛みと腫れを引き起こします。しかし、子どもが小さいうちは、お腹や足、股の痛みを訴えることも少なくありません。子どもが下腹部や太ももなど、精巣や陰嚢に近い場所の痛みを訴えたときには、その痛みがどこからくるものなのか注意深く観察しましょう。

受診するなら手術も可能な泌尿器科へ

陰嚢周辺に急激な痛みや腫れを引き起こす疾患はいくつかあり、診断は簡単ではありません。しかし、痛みの原因が精巣捻転であれば早急な手術が必要です。早めに対応するためにも、外科的処置ができる泌尿器科か小児外科医がいる医療機関を受診してください。

どこにかかれば良いかわからない場合は、かかりつけの小児科から適切な病院を紹介してもらうこともできます。受付で精巣付近の急激な痛みであることを伝え、早めに診察を受けられるように伝えましょう。

休日夜間でも早急に対応を

夜間や休日など、診療時間外に痛みが起きたときは、救急外来を受診してください。夜が明けるまで待っていたり、落ち着くまで様子を見ていたりすると手遅れとなるかもしれません。診療時間外の救急外来は、自治体のホームページや電話サービスなどで確認できます。

厚生労働省の小児救急電話相談事業では「#8000」に電話をすると、各都道府県の相談窓口に転送され、小児科医や看護師の助言が受けられるサービスを行っています。不安なときにはサービスを利用して相談してみるのも良いでしょう。ただし、地域によっては深夜の受付を行っていないこともあります。

知っておきたい精巣の基礎知識

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精巣とは陰嚢の中にある睾丸のこと

精巣とは俗にいう「タマタマ」のことで、睾丸とも呼ばれます。陰嚢の中にある丸い膨らみを指し、生まれたときから10歳頃の思春期を迎えるまでの間、大きさはほとんど変わりません。思春期を迎えるころに、急激に成長します。

精巣は精子を作る器官

女性の卵巣が卵子を作るように、精巣は精子を作ります。卵子は既に卵子のもととなる細胞が全てできていますが、精子は細胞分裂によって新しい細胞を生み出せるため、生涯にわたって新しい精子が作られます。

精子のもととなる原子生殖細胞は、出生時から精巣内に存在しています。生後3週間~3ヶ月頃には男性ホルモンであるテストステロンが分泌され、脳の性差や大人になったときに性の成熟や精子を作る機能に影響を与えることがわかっています。乳児期の精巣内にある細胞は未成熟ですが、この時期から将来的に精巣機能がはたらくよう機能しているのです。

陰嚢内には複数の組織が詰まっている

陰嚢の中には精巣だけではなく、精子の製造や輸送にかかわる様々な器官が収納されています。精巣の上に続くのは精巣上体と呼ばれる器官です。精巣で作られたままの未成熟な精子は、精巣上体を通過する間に受精する力を獲得します。

精巣上体からその先には精管が続き、鼠径部(足の付け根)へとつながります。精管はリンパ管や静脈、動脈などと一緒にうすい皮膜で覆われており、この部分は直径1cmほどの細長いひも状になっています。ちょうどひもで精巣をつりさげているような状態で、ひも状の部分を「精索」といいます。

ねじれを起こすのは精索部分

精索の長さは、精巣上体から鼠径部までの約11~12cmです。精巣捻転でねじれを起こすのはこの精索部分で、精巣そのものがねじれたり、陰嚢が圧迫されたりするわけではありません。精索内部には複数の動脈と静脈、リンパ管や神経といった重要な器官が走っているため、ねじれが起きると急激な症状となって表れるのです。

精巣捻転の種類

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新生児に多い鞘膜外捻転

精巣捻転は出生すぐから生後28日までの新生児期と、性の成長が始まる思春期に発症しやすい疾患です。新生児期に多く見られるのは「鞘膜外捻転」で、70%は出生前からすでに発症していると考えられています。残りの30%で、出生時か出生後に症状が現れます。

鞘膜は精巣の前面を覆う膜で、生後3~4週頃までに陰嚢に固定されます。しかし、生まれて間もない新生児では接着がまだ十分ではなく、精巣が動いた結果、精索にねじれが生じることがあります。

思春期以降に多い鞘膜内捻転

思春期に起きる精巣捻転は「鞘膜内捻転」が多いのが特徴です。鞘膜内捻転は、通常は精巣と精巣上体の前面だけを覆っている鞘膜が、精索の高い位置に付着することで起こります。鞘膜が袋状になることで、付着部分を支点として精索が鞘膜の内部でねじれてしまうのです。

注意したいのは鞘膜内捻転が起きていない側の精巣にも、精巣の懸垂異常や付着異常が認められることがある点です。精巣捻転が起きたときは、医師の判断により反対の精巣も予防的処置が行われることがあります。

症状の現れ方

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多くは思春期に起こる

男の子の思春期は、平均で14歳頃から出現します。精巣捻転の発症時期も13~14歳が最も多く、症例のうち6~70%がこの時期に当てはまります。しかし、精巣捻転がどれくらいの頻度で起こるのかは、いまのところ解明されていませんが、成人男性の4000人に1人くらいの割合で起こるという報告があります。

発症前に痛みが生じることがある

精巣捻転の症状が現れる前に、痛みが一度現れて消失するといったケースがあります。これは短時間のうちに精巣捻転が起き、自然に戻ってしまったケースと考えられています。

発作的な精巣捻転は繰り返し起きることがあります。子どもが精巣や陰嚢の痛みをたびたび訴えるようであれば、短時間のうちに収まったとしても、一度医療機関を受診するようにしてください。

左側の精巣に起こりやすい

精巣は左右にひとつずつ付いているものですが、左右が全く対象というわけではなく、医学的にみると右側の精索のほうが長い構造となっています。精巣捻転の発症例は左側が多いことから、精索の長さが関係していると考えられています。

夜間や寒い季節は注意

精巣捻転は昼間よりも、就寝時や起床するタイミングで発症例が多いというデータがあります。また、精巣捻転は寒い季節に発症頻度が高くなるといった報告もあります。寒い時期に発症が増えるのは、精巣を包む精巣挙筋などの筋肉が、寒さで収縮するためだとされています。

一方で季節は発症に影響しないという説もあることから、ナーバスになりすぎないことが大切です。寒い時期に現れる精巣周辺の痛みに気を払いながらも、陰嚢を温めることはしないようにしましょう。陰嚢は、体温より低いのが正常です。精巣が精子を作るのに適している温度は、32℃とされており、そのため体幹からは少し離れた位置にあります。精巣を温めると、精子を作る機能が低下する可能性があるため注意してください。

精巣捻転の痛みや症状

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陰嚢部の強い痛み

精巣捻転の痛みは急激で、大人でも転げまわるほどの痛みです。精巣からお腹に響くような疼痛であることが多く、立っていることも難しい状態になります。しかし、新生児は痛みが出ているのか判断しづらいため、むずかったり陰嚢が腫れて黒ずんでいたりすることで精巣捻転を疑います。

陰嚢部の発赤や腫れ

陰嚢は徐々に赤みを帯び、次第に精巣が腫れてきます。精巣の向きや位置にも変化が見られ、精巣がねじれると、精巣は横向きに倒れていつもより上方に移動します。これを「横位挙上」といいます。精巣捻転の症例のうち、25~30%ほどに腫れが起きないことがありますが、横位挙上はほとんどの症例で見られることから、診断の判断材料となるのです。

思春期を迎えるころになると、母親でも子どもの陰嚢周辺をまじまじと眺めることは少なくなるのではないでしょうか。しかし、痛みの訴えがあったときには、子供に声をかけながら様子を観察することが大切です。

嘔吐や吐き気を伴うことも

腹腔の神経が刺激され、吐き気をもよおしたり実際に嘔吐してしまったりという症例が多く報告されています。陰嚢や精巣に現れる病気はほかにもいくつかありますが、吐き気や嘔吐を訴えるのは精巣捻転にほぼ限定されるため、診断の際の大きなポイントです。

発熱が起こるのはまれ

尿路感染症などでは発熱を伴うことがありますが、精巣捻転では高熱が出ることはほとんどありません。発熱したとしても微熱程度で、おしっこが出にくかったり溜められなかったりといった「下部尿路症状」が起きることもまれです。

最悪の場合は細胞が壊死

精巣捻転は、精巣につながる血管がねじれてしまうため、精巣に血液や酸素が届かなくなります。ねじれを回復するまでに時間がかかると、最悪の場合、精巣の細胞が死んでしまいます。細胞が壊死した精巣は、そのままにしておくことはできず、摘出しなければなりません。子どもの将来に影響が残らないように、正しく対処したいものです。

精巣捻転となる原因は?

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はっきりとした原因は解明途上

精巣捻転は発症例がそれほど多いものではなく、なにがきっかけで起こるのか、どういう人に起こりやすいかなど、まだわかっていないことが多くあります。

ただし、陰嚢にボールが当たったなどの強い衝撃が原因で、精巣捻転が起こるという報告があります。陰嚢に外傷を受け、我慢できないほどの痛みが1~2時間以上ひかないときは、精巣捻転が起きていないか医師による診断を受けたほうが賢明といえるでしょう。

精巣周辺組織の形状異常が理由のひとつ

鞘膜外捻転の場合は、鞘膜と陰嚢の固定が緩いことで起きるため、構造上の異常はないと理解されています。鞘膜内捻転では鞘膜が正常の位置とは別の場所に付着しており、形状異常があることがわかっています。とはいえ、症状が出るまでは異常があることもわからないため予防的措置をとることは難しく、症状が現れてから速やかに対処するしかないのが現状です。

思春期における精巣の成長も影響

思春期前は1mLほどしかなかった精巣の容積は、思春期を迎えると約10mLまで一気に大きくなります。精巣は重みを増すため、捻転を引き起こしやすいのではないかと推測されています。買い物袋が、持ち手の部分からくるくる回ってしまうのと似ていますね。

精巣捻転の診断はどのように行うの?

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視診と触診による身体所見

精巣捻転の診断では、問診にて既往症や痛みの状態、発症時間などを確認した後、陰嚢や精巣を視診と触診で直接観察します。特に診断に有益なのは「精巣挙筋反射」の反射です。精巣捻転が起きると、90%という高い割合で筋反射が失われます。

超音波による画像診断

精巣捻転と似た症状を持つ急性陰嚢症はいくつかあり、ほかの症状と区別するために超音波による画像診断が有力とされています。検査はグレースケールで精巣や精索など陰嚢内部の構造を、カラードプラで血流を確認します。

超音波による診断は習熟が求められ、子どもの年齢や症状の重症度によっては正しい結果が出ないことも少なくありません。診断には身体的な所見がとても重要となるため、子どもの訴えによく耳を傾けましょう。

血液検査や尿検査

精巣捻転があっても、血液や尿に反応は出ないものです。それでも検査が行われるのは、精巣捻転以外の病気の可能性を取り除くためです。検査の結果に異状が認められれば、ほかの疾患を疑って診察が進められます。

どんな治療方法があるの?

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手術をしない用手的整復

専門的な知識を持つ医師であれば、触診で精索にねじれが認められた場合、陰嚢の外から指を使ってねじれが治るか試みます。ねじれが元に戻ると、その瞬間から痛みや腫れは治まります。手による整復は手術よりも負担が少ない一方で、痛みが増すこともあり、元に戻らなかった場合は手技が中断され、手術に切り替わります。

陰嚢を切開してねじれを治す手術

身体所見や画像で精巣捻転と診断されたとき、手技での整復が難しいときは、早急に手術に踏み切ります。また、身体所見や画像で診断がつかないときも、すみやかに試験的な切開が行われます。ねじれが戻り、血流が改善されれば精巣の温存も可能です。

再発を防ぐ精巣固定術

精巣捻転は再発リスクがあるため、精巣を陰嚢内に縫い付けて固定します。精巣捻転は両側の精巣に起きると考えられるので、反対側の精巣も固定し予防します。手で整復した場合も、両側の固定術が必要です。

血流が改善しない場合は精巣摘出も

ねじれをもとに戻す処置を行っても、血流が回復しないと精巣の温存は難しく摘出手術となります。また、処置までに24時間以上の時間が経過すると、精巣の萎縮などが見られ、反対側の精巣に悪影響を及ぼすと指摘されています。将来的な不妊症を予防するためにも、捻転が起きた方の精巣が摘出されます。

将来的な不妊への影響は?予後をよくするためにはどうする?

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処置をするまでのタイムリミットは6時間

精巣捻転が発症してから、精巣機能が維持できるタイムリミットは6~8時間といわれています。症例の報告では、ねじれの程度が大きく、360度以上回転している場合は、4時間以内に手術を行っても精巣の萎縮がみられます。ねじれが180~360度以内で、処置までの時間が12時間以内に収まっていれば、精巣萎縮が起きないこともあります。

早期の治療で妊孕性は維持できる

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精巣捻転が起きても、早急に対処をすれば精巣機能は維持されます。精巣の大きさは精子の生産性に大きくかかわっているため、精巣萎縮や摘出を防ぐためにもできるだけ早く医療機関を受診しましょう。

子どもの痛みのサインを見逃さないようにしよう

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思春期前の子どもであれば、腹痛や鼠径部の痛みを訴えたときに、精巣捻転の可能性に気付くことがとても重要です。また、恥ずかしさなどから親に症状を伝えるのが遅れると、診察を受けるまでに時間が経過してしまって手遅れになりかねません。思春期に差し掛かったら、男の子に起こりうる疾患について、日ごろから親子で話し合うことが大切です。

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