卵巣炎・卵管炎の原因や治療方法は?自覚症状はある?

卵巣炎や卵管炎は、炎症が起こっていても気づきにくい病気のひとつです。放置しておくと不妊の原因ともなることから、適切な対処が必要です。どのような症状があらわれるのか、治療法や予防法とともに見ていきましょう。

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目次

  1. 卵巣炎とは
  2. 卵巣・卵管の基礎知識
  3. 卵巣炎の原因
  4. 卵巣炎の症状
  5. 卵巣炎の治療法
  6. 卵巣炎の予防法
  7. 不妊への影響
  8. 身体からのサインを見逃さずに重症化を防ごう
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卵巣炎とは

卵巣に炎症が起きた状態

卵巣炎とは文字通り、卵巣に炎症がある状態のことをいいます。生理用品の長時間の使用や、性行為による性感染症、出産・中絶といった、女性にとっては身近なことがきっかけで発症する病気です。

適切な治療を受けないと不妊につながる可能性があり、症状や対処法を正しく理解しておくことが大切です。

卵管炎と一緒に起きる

卵巣炎は卵管炎が卵巣におよんで発症するため、卵巣炎が単体で起こることはまずありません。必ず卵管炎も起きています。しかも、腟炎、子宮頸管炎から炎症が広がる上行感染を起こしていることも珍しくありません。

卵管も卵巣も子宮の奥にある臓器です。炎症が起こっても簡単には治療ができないことから、不調を感じたら早めの対処が必要です。

卵巣・卵管の基礎知識

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卵巣と卵管は子宮付属器

子宮は膣の奥にあり、果物の洋ナシを逆さにしたような形をしています。卵巣は子宮の左右にひとつずつぶら下がっており、排卵や女性ホルモンの分泌を行っています。卵管は子宮の左右から延びる管です。ラッパ状になっている先端で排卵した卵子をとらえ、子宮へと届けます。

卵巣と卵管はともに子宮に付随した臓器なので、2つあわせて「子宮付属器」といいます。卵巣炎と卵管炎は子宮付属器に起こる炎症を指すため、総称して「子宮付属器炎」と表すことがあります。

卵巣は沈黙の臓器

卵巣が持つ別名は「沈黙の臓器」です。炎症や腫瘍が起こっても症状が表にあらわれにくく、病気の発見が遅れることがしばしばあることから、この名前がつきました。

卵巣があるのは子宮の奥の広い腹腔内で、卵巣自体は親指大くらいの小さな臓器です。周りにはスペースがあり、少し腫れたり肥大したりするくらいでは、ほかの臓器を圧迫することがほとんどありません。自覚症状に乏しいのは、こうした配置が関係しているのではないかと考えられています。

卵管はもっとも炎症が起きやすい女性性器

卵管は全体が約10cmの器官で、子宮の方から順に間質部、峡部、膨大部、漏斗部の4つの部位に分かれています。子宮とつながる間質部は、直径が1mmほどしかありません。この細い管の中に、腟を通じて外から細菌や微生物が侵入するため、卵管は、骨盤内にある臓器の中でもっとも炎症が起こりやすい場所といわれています。

卵巣炎の原因

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免疫力低下や不衛生な環境による細菌感染

卵巣炎は、大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌といった一般的な細菌が原因で発症することがあります。これらの細菌は、体の表面などに普段から存在していて害をおよぼすことはありません。しかし、免疫力が低下したり、腟内が不衛生になっていたり、傷がついてしまったりすると、体が攻撃されてしまうのです。

不衛生な場所での性交や、腟や子宮に刺激を与えすぎるような行為、分娩、流産後の性交、ナプキンやタンポンの長時間の使用などは腟の健康を損ない、卵巣炎や卵管炎の原因となります。

また、腟はもともと自浄作用があり、外から侵入した菌を退治するは働きを持つ器官です。ビデの使い過ぎなど、腟内の環境をこわさないようにすることも大切です。

病原菌や病原性微生物の感染

結核菌や淋菌、クラミジアも卵巣炎や卵管炎の原因となります。特にクラミジアは性感染症の中でもっとも感染者数が多いにもかかわらず、自覚症状に乏しいのが特徴です。性交によって知らないあいだにパートナーからパートナーへと感染する可能性が高く、卵巣炎になってはじめて感染に気付くケースもあります。

虫垂炎などの下行感染も一因に

腟から子宮、卵管へと感染が上の臓器へと広がっていくのを上行感染というのに対し、上にある臓器から下にある臓器へと感染が広がるものを下行感染といいます。卵管炎では、まれに下行感染がみられます。

その発症例が虫垂炎や腎盂炎(じんうえん)、流行性耳下腺炎(おたふく)です。血流にのって菌が卵管に運ばれると、炎症が卵管におよびます。虫垂炎や腎盂炎などの症状に続いて卵管炎を疑う症状が現れたら、早めに主治医に伝えて適切な治療を受けるようにしましょう。

卵巣炎の症状

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急性期は高熱や腹痛が現れる

卵巣は炎症が起こっていても自覚しないことがありますが、淋菌などの毒性が強い菌に感染した場合、症状が急激にあらわれます。ズキズキとした激しい疼痛で触診ができないこともあるほどです。

痛みで触れられないほどではないにせよ、突然の40度近い高熱に加え、下腹部を押したときに左右どちらかの痛みを感じたら、卵巣に炎症が起こっているサインかもしれません。また、吐き気や嘔吐がみられるのも特徴です。下腹部痛は徐々に移動し、腰痛をともなうこともあります。

出血や膿のようなおりものの増加

性器からの不正出血や、黄色い膿のようなおりものも卵巣炎の症状のひとつです。卵巣炎によるおりものは、粘り気があって色も強いことから異常に気づきやすいものですが、中にはホルモンバランスの乱れや月経周期の変化と勘違いしてしまうケースもあり、発見が遅れることもあります。

普段から下着などについたおりものの状態を確認し、いつもと違うと感じたときは早めに産婦人科を受診するようにしましょう。

重症の場合は腹膜炎や敗血症に

卵巣炎が重症化した場合、症状は腹膜にまで達することがあります。腹膜まで炎症が広がると、おりものは粘性を帯び、黄色い膿のようになります。そのまま進行した場合、敗血症や骨盤内の腫瘍に発展することも考えられます。重症化を防ぐためにも、早めに対処をしたいものですね。

亜急性期は痛みがやわらぐ

亜急性期は症状が安定し、回復期と同じ意味で扱われます。悩まされていた痛みや熱がやわらぎ、症状が改善されたと思ってしまいがちなのもこの時期です。しかし、卵巣にはまだ炎症が残っている状態です。この時期に無理をして体を動かしたり、治療を途中でやめたりすると、炎症が慢性化してしまうことがあります。

医師が完治と判断するまでは服薬をやめず、安静につとめるようにしましょう。無理は禁物です。

慢性化すると周辺臓器と癒着もある

卵管炎を治療せずに放置した場合、症状は慢性化して周囲の臓器との癒着を招きます。子宮と癒着すると月経痛や性交痛が、癒着が大腸に及ぶと排便痛が生じます。癒着の場所によって、さまざまな痛みをうむ原因となるのです。

慢性化というと、数週間~数ヶ月症状が続いたあと、痛みなどが定着するイメージがあるかもしれません。しかし、卵巣炎の場合は急性期から1~2週間で慢性化することもあるため、すみやかな処置が必要です。

卵巣炎の治療法

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抗生物質や消炎剤の服用

卵巣炎の治療で使用されるのは、抗生物質と消炎鎮痛剤、解熱剤が主です。内服薬では効果が弱い場合は、入院して点滴治療となります。卵巣炎と診断された場合、原因菌の特定が必要ですが、正確な菌の特定には時間がかかります。そのため、問診や検査による所見から判断し、診断的治療を行いながら薬を投与します。

急性期を過ぎると痛みや熱から解放されますが、卵巣炎は静かに体内でくすぶっていることもあるのです。医師からの指示があるまでは服薬を続け、慢性化を防ぎましょう。

入院して安静を保つ

卵巣炎には安静も治癒には欠かせない治療となります。女性の場合、家で安静を保つのが難しいこともあるでしょう。安静にできないときは状況に応じて入院し、絶対安静に努めます。また、症状が急激なときも入院の措置がとられます。

外科的手術をすることも

薬を投与しても症状の改善が見られない場合や、膿がたまってダグラス窩膿瘍などに発展している場合には、腟から注射器を挿入したり開腹したりして、膿を出すための処置が施されます。

卵巣は左右にひとつずつあるため、炎症があるほうの卵巣を摘出することもあります。もう一方の卵巣が残っていれば妊娠は可能ですが、治療法に不安があるときは、医師からしっかり説明を受けると安心です。

卵巣炎の予防法

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規則正しい生活

身体の免疫力が低下すると、常在菌に身体が攻撃されて炎症が起きやすくなります。免疫力を高めるには、疲れがたまらない生活習慣や栄養のバランスに気を付けることがとても大切です。バランスの良い食事と、しっかりとした睡眠を心がけましょう。

また、腟内環境のバランスが崩れるのも、卵巣炎になりやすい条件のひとつです。タンポンを長時間使用して不衛生な状態にしたり、ビデを使い過ぎて腟の自浄作用を妨げたりしないように注意してください。

性感染症の予防

卵巣炎の一因となるクラミジア感染症は、近年、感染者が増加傾向にある性感染症のひとつです。感染しても自覚症状に乏しいことから、性交を介して気付かぬうちに感染を広げている可能性があります。

性感染症の予防のためにも、オーラルセックスは避け、妊娠を望まない性交では避妊具を正しく装着することが大切です。また、パートナーのどちらかに感染が発覚した場合は、ふたりで性感染症の治療に臨み、その間の性交は控えるようにしましょう。

不妊への影響

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卵管の閉塞が不妊症の原因に

卵管内で癒着が起こると、菅が狭くなって卵子や精子の通り道をふさぎます。また、周囲の臓器と癒着した卵管では、動きが制限されて排卵した卵子を取り込みづらくなる「ピックアップ障害」が起こります。いずれも不妊症の要因となることから、妊娠を望む場合は癒着を取り除くための外科的処置が施されます。

卵管留水症などの合併症に注意

卵管が閉塞すると、その影響で卵管内に炎症性の浸出液や膿がたまりやすくなります。卵管液がたまった状態は卵管留水症(卵管留水腫)、卵管に膿がたまった状態は卵管留膿症(卵管留膿腫)です。

卵管の閉塞と同様にピックアップ障害が起こるほか、卵管にたまった液が影響し、体外受精の成功率が下がったり流産率が上昇したりという報告もあります。しかも、卵管留水症の治療を行っても、子宮外妊娠の確率は高いままというデータもあるため楽観視はできません。

卵管留水症を合併すると、おりものの異常や不正出血、下腹部痛があらわれます。排卵日間近のおりものとの違いに注意し、おかしいと感じたら医師に伝えるようにしましょう。

完治するまでは性交を控えて

性交による刺激や新たな細菌の侵入で、症状が悪化する可能性があります。また、性感染症の場合、症状がなくても病原体は性器内に存在していることがあり、完治しないうちの性交は症状を長引かせる原因となります。

症状が治まっているように思えても、無理や焦りは禁物です。完治するまでは性交を控え、治療に専念しましょう。

身体からのサインを見逃さずに重症化を防ごう

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卵巣や卵管は症状が現れるまでに時間がかかる器官です。しかし、腟炎や子宮頚管炎から波及することも多く、腟や外陰部に何らかのサインが現れている可能性があります。

女性器に違和感があっても、我慢できる程度だったり忙しかったりするとついつい受診や健診を後回しにしてしまいがちですが、症状がひどくなる前に治療を始めることが健康な体への近道です。早期発見、早期治療のためにも身体のサインを見逃さず、いつもと違うと感じることがあれば、早めに医療機関を受診しましょう。

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