急激な下腹部痛!卵巣出血の原因、治療、予防方法とは

卵巣から出血が起こる卵巣出血は、排卵があれば誰にでも起こる可能性があります。大半は自然に止血が望め、安静と経過観察のみで解決しますが、出血量が多い場合には緊急手術となります。卵巣出血の原因には何が考えられ、治療法にはどんなものがあるのでしょうか。

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目次

  1. 急な下腹部痛を伴う「卵巣出血」とは
  2. 卵巣出血の診断
  3. 卵巣出血の治療方法
  4. 卵巣出血の予防方法
  5. 卵巣出血は出血の程度で対応が大きく変わる
  6. あわせて読みたい

急な下腹部痛を伴う「卵巣出血」とは

卵巣出血とは、何らかの理由で卵巣内に傷ができて、卵巣内の血管に断裂が起こり、腹腔内に出血することをいいます。

出血が起こる理由によって起こる時期は異なりますが、総じてみれば、生理周期全体を通していつでも起こる可能性があります。20〜30代の女性に発症しやすいとされていますが、12歳〜52歳頃まで、どの年齢にも起こる病気です。

卵巣は左右にふたつ存在する臓器です。卵巣からの出血は、左右を比較すると右側卵巣の発症率が高いとされています。左側卵巣はS状結腸がそばにあり、S状結腸がクッションのような働きを担っているために出血が起きにくくなっているとの説があります。なお、右側卵巣からの出血は、全体の90%を占めています。

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卵巣出血の症状

卵巣出血の主要な症状は、下腹部痛です。痛みの程度は出血の程度やそのときの状態により、救急車を呼ぶほどの激痛にさいなまれるケースもあります。出血が少なければ、軽い排卵痛や生理痛程度で終わることもあります。

出血が多い場合には、以下のような症状が見られやすくなります。

・下痢
・吐き気
・貧血
・ショック

3種類の卵巣出血

卵巣出血は、出血の原因によって、大きく次の3つに分かれます。

・特発性出血
・内因性出血
・外因性出血

【種類1】特発性出血

特発性出血とは、何らかの生理的な原因によって卵巣内に出血が起こることをいいます。何か特定の疾患や異常があるのではなく、月経のメカニズムに何らかの要素が加わって出血が起こると考えられます。

通常、排卵時や排卵の前後では、多少の生理的出血が起こってもおかしくありません。卵巣出血として問題が表面化したのは、生理的出血が重症化したものともとらえられます。3つの分類の中では、特発性出血は最も多くなっています。

【種類2】内因性出血

内因性出血は、何らかの出血しやすい因子を持っている場合に起こる卵巣出血をいいます。血液が固まりにくい病気の方や、血液を固まりにくくする薬を使用している方が該当します。

また、内因性出血では、急性腹症による出血も考えられます。急性腹症は、急激な腹痛を伴う状態の総称で、場合によっては緊急手術を要します。婦人科領域では、次のような症例が急性腹症を引き起こします。

・子宮外妊娠
・卵巣嚢腫が原因で起こる茎捻転や破裂
・子宮内膜症
・子宮筋腫
・子宮頸がん
・子宮体がん  など

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【種類3】外因性出血

外因性出血は、外部からの影響を受けて卵巣が出血することです。外傷や体外受精時の採卵などが原因です。

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症例数は特発性出血の黄体出血がトップ

卵巣出血の症例数は、特発性出血が最も多くなっています。特発性出血は、生理のメカニズムからさらに次の3つに分けられます。

・卵胞出血
・黄体出血(黄体嚢胞性卵巣出血)
・妊娠黄体出血 

このうち、黄体出血が全体の症例数の約90%を占めます。

【特発性】卵胞出血とは

卵胞出血とは、排卵時や排卵前後の時期に、排卵をきっかけとして出血することです。排卵時に卵子は卵胞から飛び出ます。卵子が飛び出すときに、卵巣皮質の小動脈が損傷して出血が起こると考えられています。

一般的に排卵日前後には、卵巣部分で多少の出血が起こりやすくなっており、卵胞出血は、排卵時の出血が通常よりも多かった状態ともいえます。

出血量自体は少なく、痛みも少ないのが特徴です。さらに時期を細分化すると、卵胞期卵胞出血性卵巣出血、排卵期卵胞出血性卵巣出血に分かれます。

【特発性】黄体出血とは

黄体出血は、黄体期(月経予定の1週間前)に起こる出血をいいます。

卵胞期の出血で残った血液が黄体内に貯留すると、血腫を形成して嚢胞状、いわゆる袋状になる場合があります。これを「出血性黄体嚢胞」といいます。黄体期に出血性黄体嚢胞が破れると出血が起こります。

【特発性】妊娠黄体出血とは

黄体出血が妊娠初期にあらわれるのが、妊娠黄体出血です。子宮外妊娠との区別を考慮する必要があります。胎嚢は、妊娠4週後半から5週前半までにほぼ100%確認できるので、その時点で子宮内に胎嚢が確認できない場合は注意が必要です。

卵巣出血の診断

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卵巣出血の検査や診断は、次の手順で行われます。

・妊娠の有無の確認
・エコーで出血の状態を確認
・CTなどで腹水の様子を観察(一般的には正常妊娠でなかった場合のみ)
・ダグラス窩(腹腔内で最も下にある、子宮と直腸の間の空間)に腟経由で注射器を入れ、出血の有無を確認


妊娠検査で陰性、卵巣内で出血が見られ、またその卵巣内には問題となる腫瘍がなく、ダグラス窩に出血が見られれば、卵巣出血の診断は確定します。

【診断項目】ダグラス窩とは

ダグラス窩は、子宮と直腸のあいだに位置する、腹腔内で最も下にあるくぼみです。子宮の後ろ側にあり、子宮内膜症のできやすい場所といわれています。

卵巣出血では、CTなどでダグラス窩付近に腹水があるかを確認し、腹水があればダグラス窩から吸引を行います。そのとき、月経血のようには固まらない血液が確認できます。

卵巣出血との判別が紛らわしい病気

卵巣出血は、他の病気との診断が紛らわしい病気でもあります。女性が腹痛を訴えて受診した際、婦人科領域の病気はもちろんのこと、内科領域の病気の可能性もあります。


・腹膜炎
・虫垂炎など

腹膜炎や虫垂炎では発熱を伴う傾向にありますが、卵巣出血では発熱はほとんど見られません。また、他にも腹部の手術歴のある女性は、腸閉塞を起こしている可能性があります。



産婦人科領域では次のような可能性があります。

・子宮外妊娠
・チョコレート嚢胞の破裂
・子宮付属器炎(卵巣炎、卵管炎)など

特に子宮外妊娠は、若年層や仕事中心の生活を送っている女性では、妊娠に気づかぬまま週数が経過している場合があるため、注意が必要です。

子宮外妊娠と卵巣出血

子宮外妊娠とは、受精卵が子宮内膜以外の場所で着床することをいいます。全妊娠の1%程度が子宮外妊娠です。妊娠の継続は100%不可能で、、放っておくと母体の安全に関わるため、早急な対処が必要です。子宮外妊娠は卵巣や卵管、腹腔内で起こりますが、98%は卵管で発生します。

本来、受精が成立すると、受精卵は約1週間かけて卵管から子宮内へ向けて移動していきます。その過程で何らかの理由によって子宮内膜までたどり着けず、他の場所で着床してしまったのが子宮外妊娠です。

特に卵管での子宮外妊娠は、受精卵が細胞分裂を繰り返して大きくなればなるほど、卵管を圧迫し、最終的には卵管破裂を起こしてしまいます。妊娠に気づかず、急な腹痛で救急受診をしたら子宮外妊娠だったケースもあります。

卵巣出血と子宮外妊娠は、ともに「急激な腹痛」を第一症状とします。診断の際には、まず妊娠の有無を確認し、子宮外妊娠の可能性がないかどうかを判断します。

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卵巣出血の治療方法

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卵巣出血の治療は、出血量により異なります。出血量が多くなく状態が安定しているようなら、安静と点滴などで自然に出血が治るのを待ちます。卵巣出血の80%は手術を必要としなくても改善が見込める症例です。痛みは、出血が治ると自然に治癒していきます。

患者は安静を心がけて過ごすことが大切です。必要に応じて点滴などを行いますが、ほとんどの場合は短期入院か自宅療養で回復します。

出血量が多い場合

出血量が600mL以上の場合や、血圧が下がるなど他の所見がある場合には、緊急手術によって止血を行います。エコー検査での出血量の推測、血液検査での貧血の程度を参考にします。

開腹手術と腹腔鏡手術の2つの方法がありますが、近年は腹腔鏡手術が一般的です。止血は、電気メスで凝固止血を行う方法と、卵巣の一部分を切除して止血する方法があります。手術方法は出血量や患者の年齢、今後子どもを希望するかなども考慮して選択されます。

【手術】腹腔鏡手術とは?

腹腔鏡手術とは、お臍からガスの注入と内視鏡(身体の中を観察するカメラ)の挿入をし、大きな開腹をせずに行う手術の方法です。カメラ自体は直径0.5cm程度で、開腹手術よりも患者の身体にかかる負担が少なくて済む傾向にあります。

切開部分はへその下や脇腹に0.6cm〜1cm程度で、跡も小さいのが特徴です。ただし、現段階で対象疾患は限られており、手術時間自体は開腹手術よりも長時間になります。また、視野が限られているため、腹腔鏡では困難と考えられた場合には途中から開腹手術に切り替わる場合もあります。

卵巣出血の予防方法

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卵巣出血は予防が難しい病気

卵巣出血は、チョコレート嚢胞や卵巣茎捻転などが関係している場合もありますが、ほとんどの場合は生理的なメカニズムによって起こる黄体出血です。つまり、特定の疾患要素がありません。よって、排卵がある女性であれば、年齢を問わずどの時期にも起こる可能性があり、生理的な現象が発端であるため予防が難しいとされています。

【黄体出血の予防】黄体期の性行為を控える

卵巣出血の80%は、黄体期に起こる出血です。また、卵巣出血による腹痛が原因で受診した女性の多くが、性行為をきっかけに腹痛の症状が現れたと言っています。黄体出血は性行為の刺激で起こりやすいため、生理予定日一週間前からの性行為には注意が必要です。もしも急激な腹痛、吐き気、ふらつきなどの症状が出た際には、早めに婦人科を受診しましょう。

【繰り返す場合】ピルなどの服用も

予防が難しく、排卵がある女性であればいつ起こってもおかしくないのが卵巣出血です。また、一度患っても再発する場合もあります。あまりに何度も繰り返す場合には、ピルなどで排卵を調整する手段がとられます。

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卵巣出血は出血の程度で対応が大きく変わる

卵巣出血は、出血の程度が深刻でなければ医療的処置をせずとも自然に止血・吸収が期待できます。しかし、出血量が多ければ、輸血・手術を含めて緊急を要する状態となります。生理的現象が何らかの影響を受けて重症化したケースがほとんどのため、予防策もあまりありません。

また「急な下腹部痛」は、虫垂炎や卵巣茎捻転、卵巣破裂などその他の緊急を要する疾患との区別が必要になります。痛みが強い場合には、大丈夫だと過信せずに医療機関を受診することが大切です。

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