男性不妊検査とは?検査の方法は?検査の流れ、チェック内容、費用を解説

不妊の原因の約半数は男性にも原因があるもの。まさか自分が不妊症だとは考えていない男性もいるかもしれません。しかし、不妊の原因が男女どちらにあった場合でも、不妊治療は早めに開始することが成功への近道です。ここでは男性の不妊検査の方法や検査の流れ、費用などを解説します。

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この記事の監修

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産婦人科医
清水 なほみ

目次

  1. 精液検査
  2. 男性不妊一般検査
  3. 男性不妊のその他の検査
  4. 男性不妊検査にかかる費用
  5. まずは男性から検査を受けよう
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精液検査

一般的に、不妊検査の一貫として男性側は精液検査を行います。精液検査では、精液の量や精子濃度、精子の運動率や精子の形など、精子の状態をチェックするものです。

これから夫婦揃って不妊治療をはじめる場合や、パートナーがすでに産婦人科で不妊治療を受けている場合には、パートナーと一緒に産婦人科や不妊専門のクリニックで検査することが多いでしょう。

女性が多い産婦人科やクリニックでの受診に抵抗がある場合は、男性不妊専門の泌尿器科を受診するのもおすすめです。

精液検査の流れ

精液検査は、一般的に下記の流れで行われます。


1.2~7日禁欲する
2.病院内の採精室(個室)でマスターベーションする
3.専用の容器に精液を採取する
4.精液を全量提出する
5.検査

精子の正確な状態を確認するために、射精後の精液の温度管理や時間管理が大切なため、原則的には病院内で精液を採取します。病院内でのマスターベーションに抵抗がある男性もいるかもしれません。しかし多くの専門の病院では、個室の採精室があり、プライバシーに十分配慮されています。

ただし、一部の病院ではトイレで採精する場合もありますので、事前に病院のホームページを確認するか、問合せをしておくと安心ですね。

また、一部の病院では、自宅で採取した精液を持参することもできます。その場合は、精液を20~30℃程度に保ち、採取してから2時間以内に検査することが必要とされています。

また、男性の精子は日々体内で作られており、体調やストレス、環境によって精子の状態も大きく変動します。そのため、精液検査は複数回行うことが望ましいでしょう。

精液検査でチェックすること

採取した精液は、室温で15~60分間静かな状態で置き、液化・均一化させて検査します。採取した精液に血液や膿が混じっていないかを確認したり、精液量や精子の数、精子の運動率などを顕微鏡を使って観察します。

多くの病院では、WHO(世界保健機関)の基準値を参考に精液や精子の状態をチェックしています。WHO(世界保健機関)の基準値は下記の通りです。


・精液量:1.5mL以上
・精子濃度:1,500万/mL以上
・総精子数:1回の射精で3,900万以上
・前進運動率:32%以上
・総運動率:40%以上
・正常精子形態率:4%以上
・白血球数:100万/mL未満

上記の基準値は、妊娠するための最低限のレベルだとされています。ただし、精液検査で基準値を超えなかったから妊娠できないとも限りません。精子の状態は体調やストレスなどによる影響を受けるので、悪い結果が出た場合でも再検査をすると問題ない場合もあります。

男性不妊一般検査

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不妊治療の専門のクリニックでは、精液検査のほかに、血液検査や尿検査、視診・触診、エコー検査などを行います。精液以外の点からも検査をすることで、男性不妊の原因を特定していきます。

精液検査以外の検査に関しては、クリニックの方針により受ける検査項目はかわります。

視診・触診

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精巣(睾丸)などの男性器の診察を行います。具体的には精巣の大きさを測ったり、精巣を触って硬さを確認したりします。精巣上体と精管を触診し、精子の通り道に閉塞がないか、腫れや痛みがないかを確認します。

精巣の大きさは14mL以上が正常とされています。精巣が小さくて柔らかいと精子を作る働きが弱い可能性があります。逆に精巣のなかに硬いものがあったり、精巣が急に大きくなったりした場合には、腫瘍がある疑いもあるため詳しい診察が必要です。

また、陰のうの上部に「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」がないか、触診します。精索静脈瘤は、精巣のまわりの静脈がこぶ状にふくれたもので、男性不妊症の原因として代表的なもののひとつです。精索静脈瘤があると、精巣の周囲の血流が悪くなり、精巣の温度が上昇することで、精子を作る機能が低下します。

一部の染色体異常では特徴的な外見があらわれるため、身体を全体的に観察し、体毛・恥毛の生え方のチェックをすることもあるでしょう。また、過去の手術によって精管などに傷がついている場合もあるため、手術の跡がないかも確認します。

自分の男性器を直接診られたり、触られたりすることに抵抗を覚える男性もいるでしょう。しかし、痛みなどの苦痛をともなうものではなく、精液検査ではわからない不妊の原因を見つけられる場合も多いため、積極的に受けるようにしましょう。

エコー検査(超音波検査)

探触子(プローブ)と呼ばれる小さな機器を陰のうに当てて、モニター上に映し出された精巣の様子を観察します。精巣の大きさを測定したり、精巣のなかに腫瘍や結石がないか確認したり、精巣や精管を詳しく観察したりすることができます。

男性不妊の代表的な原因のひとつである精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)も、エコー検査で確認することができます。

ホルモン検査

精子がつくられるには、ホルモンの働きが大きく関わっています。血液検査によって、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、プロラクチン(PRL)、テストステロンといった、生殖機能に関係するホルモンの値を測定します。

卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)は、脳の下垂体から分泌されるホルモンで、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)とも呼ばれています。FSHは精巣に精子を作るように働きかけ、LHはテストステロンという男性ホルモンを作るように促します。

プロラクチン(PRL)は、前立腺の発達を促す一方で、プロラクチンが増えすぎると、性欲を低下させED(勃起不全・勃起障害)を引きおこす恐れがあります。

これらのホルモン分泌を調べることで、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症などのホルモン異常が不妊の原因になっていないかを確認します。

尿検査

精子は精液と混じりあい、尿道を通って射精されます。前立腺や尿道に炎症などがあれば、精子の動きに悪い影響をおよぼす可能性もあるのです。尿検査により尿糖、尿たんぱく、潜血、赤血球、白血球などの数値を調べ、腎臓や膀胱、前立腺や尿道に異常がないか確認します。

男性不妊のその他の検査

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精液検査や男性不妊一般検査で異常が見つかった場合などには、より詳しい検査をすることがあります。技術は日々進歩しており、最新の検査を取り入れているクリニックもあります。検査内容はクリニックによってさまざまです。

男性不妊の特殊な検査の一部をご紹介します。

染色体・遺伝子検査

精子の通り道に異常がないにも関わらず、精液中の精子の数が非常に少なかったり、精子がなかったりする場合には、遺伝的な異常がある疑いがあります。血液検査により染色体を調べ、男性不妊の原因となる染色体の異常を見つけることができれば、適切な治療によって妊娠を目指すことも可能です。

男性不妊を引きおこす原因として代表的な染色体異常には、クラインフェルター症候群があります。これは正常の男性であれば性染色体がXYとなるところ、XXYの性染色体を持つというものです。クラインフェルター症候群の男性でも、精巣から精子が見つかれば顕微授精で妊娠にいたるケースもあります。

また最近では遺伝子検査の技術が進歩し、従来の染色体検査では見つけられなかった遺伝子異常を診断することができるようになっています。精子の数が非常に少ない場合には、ごくわずかにY染色体の一部がかけていることがあるとわかっています。

染色体検査や遺伝子検査によって異常が見つかった場合には、カウンセリングを受け、夫婦でしっかりと話し合い、必要に応じて精子回収法や顕微授精を受けると良いでしょう。

尿中精子検査

精液検査をして精液の量が少なかったり、精液が出なかったりする場合には、射精後や射精感があった後の尿を採取し、尿中の精子を調べることがあります。尿中に精子が多く見つかった場合には、膀胱に精子が逆流する逆行性射精と診断されます。

逆行性射精であれば、精子を作る機能には問題がありません。薬による治療で逆行性射精が改善されれば自然妊娠も目指せます。自然妊娠が難しい場合でも、人工授精により妊娠が可能になります。

抗精子抗体検査

不妊症の男性では、自分自身の精子に対して抗体をつくっているケースがあるため、精液検査や血液検査で抗体があるかどうかを調べます。抗体が精子に結合すると、精子の運動性がなくなったり、精子の受精能力が失われたりします。精子に対する抗体がつくられている場合は、自然妊娠が難しいため、人工授精や顕微授精を行うことになるでしょう。

HOS(ホス)テスト

精液中に動いている精子がいない場合、精子が生きていれば顕微授精で受精をさせることができます。HOSテストは、精子の受精能力を調べるものです。精子を浸透圧の低い液の中に入れると、生きている精子であれば尾部が膨れて丸まります。

顕微授精をするときに動いている精子が見つからなかった場合、HOSテストによって生きている精子を選び、正常な浸透圧の液に移して精子を元の形に戻し、顕微授精に使います。

男性不妊検査にかかる費用

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男性不妊の検査にかかる費用は、検査を受ける病院やクリニックによって、また受ける検査内容によって違います。

精液検査には健康保険が適用されるため、一般的な精液検査と視診・触診のみを受ける場合は300~1,500円程度で済む場合もあるでしょう。精液検査は2~3回受けることが望ましいとされていますが、検査を何度か受けたとしても、5,000~10,000円の負担で、ある程度の詳しい結果を得ることができます。

しかし、不妊治療の専門のクリニックで検査を受ける場合には、より詳細な検査を行うため、初回の検査で20,000~50,000程度かかる場合が多いようです。この検査のなかには、精液検査のほかに血液検査や尿検査・エコー検査が含まれる場合もあるでしょう。

不妊の原因が一般的な不妊検査で見つからなかったり、より詳しい検査が必要だったりする場合には、特殊な検査を行う場合もあります。その場合には、さらに費用がかかります。

男性不妊の検査や治療には、健康保険の適用がされないものも多いため、検査を受ける予定の病院・クリニックにあらかじめ費用を確認しておくと安心ですね。

まずは男性から検査を受けよう

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不妊症で悩む夫婦のうち、約半数は男性にも不妊の原因があるとされています。しかし、男性のなかには不妊の検査を受けることに対して抵抗を覚える人も多いため、不妊治療を女性が主体となって行う夫婦も珍しくありません。

女性の不妊検査には項目が多く、身体的な負担が大きいものです。一方で、男性側の基本的な不妊検査には、痛みや苦痛を伴うものはほぼありません。そのため、まずは男性から不妊の検査を受けるようにすすめる専門医もいるのです。

不妊の検査を受けることで精子に異常が見るかることに不安を覚える男性もいるかもしれません。しかし、男性の精子の状態は年齢とともに少しずつ変化があるものです。特に子どもを希望する男性は、働き盛りで仕事のストレスを受けやすいケースも多く、精子の状態が悪くなることは、誰にでもおこりうることです。

不妊治療は夫婦の年齢が若ければ若いほど有利です。男性に不妊の原因がある場合には、早めに治療を開始することで、女性が妊娠する可能性も高くなります。女性側に不妊の原因となる問題があった場合でも、精子の質がよくなることで、女性の不妊治療の負担を軽くすることにつながります。

男性が早い段階で検査を受けることは、治療にかかる時間や費用をおさえることにもつながるでしょう。夫婦が協力して不妊治療に取り組むことが、妊娠の近道と考えられます。不妊の疑いがある場合は、まずは男性から検査を受けてみてはいかがでしょうか。

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