【産婦人科医監修】妊婦の新型コロナウイルス!厚生労働省の妊娠中の感染症対策まとめ

2019年に新型コロナウイルスによる感染症が確認されて以来、感染拡大防止に向けた社会的な取り組みと一人ひとりが感染しないための対策が並行して進められてきました。変異を繰り返すウイルスの特性により感染への不安がぬぐえない中、新たな知見も蓄積されています。厚生労働省により更新された妊婦さん向け情報をわかりやすく紹介します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 新型コロナウイルス感染症とは
  2. 妊婦さんなどに向けた新型コロナウイルス感染症対策
  3. 厚生労働省がまとめた妊婦さん向けのリーフレットの概要
  4. 自分の健康を第一に考えて妊娠・出産を乗り切ろう
  5. あわせて読みたい

新型コロナウイルス感染症とは

新型コロナウイルス感染症の正式名称は「COVID-19」といい、急性呼吸器症候群と定義されます。2019年に中国の武漢(ぶかん)で確認されて以来、世界各国で猛威を振るってきました。日本でも6回の流行の波が押し寄せ、感染者数は累計で約780万人を超えています(※1)。

主な症状は発熱、咳、全身倦怠感などの感冒様症状で一部が呼吸困難や肺炎に進行しますが、重症化や死亡の割合は以前と比べ低下しています。年代別でみると重症化する割合は50歳代以下で0.03%、60歳代以上で2.49%です(※2)(※3)。

ウイルスは変異する性質を持ち、新型コロナウイルスもその例外ではありません。現在までに複数の変異株が特定されており、ベータ株、アルファ株、デルタ株など流行がうつっています。現在主流のオミクロン株も新たな変異株に置き換わる可能性があります。

感染対策として、これまでにも「新しい生活様式」の実践やワクチンの接種が進められてきましたが、この方針は流行が置き換わっても継続されるでしょう。妊婦さん向けの対策は、厚生労働省がリーフレットやホームページなどで情報をまとめて発信しています。こうした情報を頼りに予防策や注意点などを確認して、できるだけ安心・安全な過ごし方を心がけたいですね。

妊婦さんなどに向けた新型コロナウイルス感染症対策

公益社団法人日本産科婦人科学会は、2020年4月に妊婦さんへの感染症対策をまとめ普及活動や職場での配慮、周産期医療に関する指針を示しました。これに基づき厚生労働省では妊婦さんに向けたリーフレットを作成し、変化する状況に合わせて情報をアップデートしながら感染対策の周知を行っています(※4)。

リーフレットには感染が妊娠に与える影響や、相談窓口を確認できるサイトのURLが記載されています。相談窓口を知りたいときに役立つため、すぐに取り出せるところに保管しておくと安心です。リーフレットは各自治体の保健センターや産科などの医療機関で配布しています。

【新型コロナウイルス】妊娠中の対応策 日本産婦人科感染症学会や厚生労働…

厚生労働省がまとめた妊婦さん向けのリーフレットの概要

コロナウイルスの感染が妊娠に与える影響

新型コロナウイルス感染症が拡大し始めた当初は、妊娠後期に感染しても妊娠の経過や重症度は妊娠していない人と変わらないという見解が示されていました。しかし現在は、妊娠後期に新型コロナウイルスに感染すると早産率が高まり、妊婦本人も一部は重症化すると周知されています。

特に高年齢での妊娠、肥満、高血圧、糖尿病などの背景があると重症化リスクが高まるという報告もあるため、感染予防をしっかり行うようにしてください。一般的には、基礎疾患を持たない場合、感染しても同年代の妊娠していない女性と経過は変わらないと考えられています。

これらの情報は第5波を含む2022年1月31日までの症例をまとめた「COVID-19妊婦レジストリ」で詳しく確認できます。レジストリの解析結果では、31歳以上、22週以降、妊娠前のBMI 25以上、診断時のBMI 30以上が重症化リスクである一方で、第5波では30歳未満の中等症 II ・重症例が増加したと報告されています(※5)。

※中等症 II …呼吸不全があり、酸素投与が必要な状態

胎児や新生児に与える影響について

リーフレットでは胎児への影響についてもまとめられています。これによると、新型コロナウイルスに感染した妊婦から胎児への感染はまれだと考えられています。

さらに妊娠初期または中期に新型コロナウイルスに感染した場合に、ウイルスが原因で胎児に先天異常が引き起こされる可能性は低いとされています。ただし、症例がまったくないわけではないため、妊娠期間を通じて感染予防対策に注意していきたいですね。

新型コロナワクチンの接種について

新型コロナウイルス感染症の予防対策として、一般的にワクチン接種が推奨されています。妊娠中および授乳中においても、妊娠していない人と同様に新型コロナウイルスのワクチン接種ができます。日本で承認されているワクチンは、接種することで妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響をおよぼすという報告はありません。

新型コロナウイルス感染症は感染力が強く、家庭内感染が多く報告されています。妊婦さんにうつさないためにも、家族も感染しないよう対策することも重要です。

また各自治体では、妊娠中のワクチン接種について相談できる窓口を設置しています。気になることはかかりつけの医師や自治体で確認してみましょう。

受診の目安と相談窓口について

日ごろから感染予防に努めていても、目に見えないウイルスには誰もがいつ感染してもおかしくありません。発熱や咳などの比較的軽い風邪症状でも妊娠中は重症化のリスクを考え、早めにかかりつけ医や身近な医療機関に電話で相談するよう推奨されています。

各都道府県では、新型コロナウイルス感染症の陽性が判明した妊婦さんが安心して分娩できるよう、医療提供体制の整備を進めています。新型コロナウイルスに感染した場合でも過度に心配しすぎないでくださいね。

なお妊娠36週以降に感染した場合、施設の状況により分娩方法が選択されます。第5波までは軽症~中等症であっても、半数でCOVID-19を適応とした帝王切開が選択されました(※5)。必ずしも帝王切開になるわけではありませんが、無痛分娩など希望する分娩方法が選択できない可能性について理解しておきましょう。

また、各都道府県では「受診・相談センター」もしくは「診療・検査医療機関」を設置しています。かかりつけ医がいない、相談先がわからない場合もこちらで相談が可能です。

各都道府県の相談窓口の設置について

新型コロナウイルス感染症は感染拡大と縮小を繰り返してきました。変異株の出現もあり、対策が一筋縄ではいかない状況です。そのような中、帰省先での分娩が取りやめになるなど、分娩施設の確保について不安を抱く妊婦さんもいることでしょう。

各都道府県や一部の自治体では、新型コロナウイルス感染症に関して不安を抱える妊婦さんに向けて相談窓口を設置しています。関係団体と連携し、妊婦さんに寄り添ったサポートを提供しています。

帰省して出産する予定の場合は、現在の居住地のかかりつけの産婦人科医や帰省先の分娩機関とも十分に相談しながら、もしものときに備えて連絡先を確認しておくと安心ですね。

妊婦の働き方について

新しい生活様式では、密を避けることやマスクなしでの会話を控えることがうたわれていますが、通勤時や職場で人と接する機会があれば、感染リスクを感じる場面に遭遇することもあるのではないでしょうか。

妊娠中の働き方については男女雇用機会均等法第13条に定められています。2020年5月にこの指針が改正され、新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の取扱いが追加されました。

これにより、妊婦さんが職場での作業などに対して感染の不安を感じそのストレスが母体や胎児の健康に影響があると主治医や助産師が判断して指導を受けた場合、妊婦さんは時差通勤、テレワークの活用、休暇の取得などについて勤務先に申し出ることができます。

事業主はこの申し出に基づき、必要な措置を講じることが義務付けられています。新型コロナウイルス感染症に関する措置の適用期間は令和2年5月7日~令和5年3月31日までです。各都道府県の労働局には、新型コロナウイルス感染症に関して働き方や通勤の悩みを相談する窓口が設置されています。匿名で相談することもできるため、妊娠中の働き方に不安がある場合には安心して問い合わせてくださいね。

自分の健康を第一に考えて妊娠・出産を乗り切ろう

新型コロナウイルス感染症が発生してから、社会の在り方は大きく変化しました。妊娠中や小さな子どもがいる生活の中で、多くの方は感染への不安を抱えて過ごしてきたのではないでしょうか。

しかし、健康が大きく損なわれる可能性がある感染症は新型コロナウイルスに限りません。また、極度に人を避ける生活はコミュニケーションや運動機能にも影響が出るでしょう。近ごろは新しい生活様式が少しずつ定着し、法整備や医療体制の整備、ワクチン接種が進んだことでウイルスとの共存を模索しながらも社会は動き出しています。

心配しすぎることなくかといって油断せずに、感染症に正しく向き合って対策することが大切ですね。リーフレットなどで発信される最新の情報を集め、相談窓口や制度を適切に利用しながら健康第一でおだやかに妊娠生活を過ごしましょう。

※この記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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