流産の確率が高い時期は?心拍確認後はどうなる?年齢が高いとリスクが上がる?

流産の確率は全妊娠の約15%といわれていますが、特に流産しやすい時期はあるのでしょうか。また、心拍確認後は流産のリスクが下がるというのは本当でしょうか。ここでは、妊娠週数や年齢別の流産の確率について解説します。流産は予防できませんが、流産のリスクを下げるためにできることはあります。ぜひ普段の生活で実践してくださいね。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 流産とは
  2. 流産の確率が高い時期は?
  3. 心拍確認後の流産の確率は?
  4. 年齢が高いと流産の確率が上がる?
  5. 流産を繰り返す確率は?
  6. 二人目の妊娠は流産しやすい?
  7. 流産は予防できる?
  8. 穏やかな気持ちで過ごすことを大切に

流産とは

流産とは、エコー検査でお腹の赤ちゃんを包む「胎嚢(たいのう)」を確認後、妊娠22週未満に妊娠が中断してしまうことです。流産が起こると、残念ながら妊娠を継続することができません。

流産には、自然に妊娠が終わる「自然流産」と、人工的に流産を起こす「人工流産」がありますが、「流産」といえば一般的に自然流産を指します。それに対し、人工流産とは、いわゆる「人工妊娠中絶」のことです。

流産は、胎児や胎盤などの子宮内容物の状態によって種類が分かれ、あらわれる兆候・症状も異なります。医学的には流産と分類されないものも含めると、大きく分けて以下のようになります。

進行流産

進行流産とは、子宮内容物が外に流れ出てきている状態です。排出の程度により、子宮内容物の一部が子宮内に残っている「不全流産」と、子宮内容物が完全に排出された「完全流産」に分けられます。

不全流産では、生理に似た茶褐色や鮮血の出血に、陣痛のような下腹部痛やお腹の張り、腰痛の症状を伴います。妊娠初期には、妊娠が正常に経過していても出血や腹痛がみられることがあります。しかし、痛みが周期的にあらわれる、しばらく安静にしても症状が治まらないような場合は流産の兆候かもしれません。

出血や腹痛の他、つわりや妊娠初期症状が突然なくなる、基礎体温が下がる、おりものが変化するといった兆候がみられる場合もあります。

完全流産では、子宮内容物がすべて排出されるまでは症状があらわれますが、完全流産後は症状がなくなるか軽減します。

稽留流産

稽留流産の読み方は「けいりゅうりゅうざん」です。胎児が子宮内で死亡し、子宮内容物が子宮外に排出されずにとどまっている状態で、腹痛や出血といった自覚症状があらわれません。自分で流産に気付きにくく、妊婦健診のエコー検査で初めて判明するケースがほとんどです。

稽留流産を放置すると、子宮内容物が排出される「進行流産」に移行し、症状があらわれ始める場合があります。

切迫流産

切迫流産とは、流産にはいたっていないものの、流産の危険性が高い状態を指します。切迫流産の兆候は、少量の不正出血や軽度の腹痛、腰痛などです。妊娠初期の切迫流産には有効な治療法はないものの、妊娠を継続できる可能性もあることから、医師に安静にするよう指示されます。

化学流産

妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、エコー検査で胎嚢が確認できる前に妊娠が中断してしまうことを化学流産(生化学妊娠)と言います。医学的には流産に分類されません。生理のような出血がみられる場合がありますが、妊娠検査薬を試していなければ、妊娠して化学流産にいたったことに気付かず、生理だと勘違いしてしまうこともあります。

流産の確率が高い時期は?

流産は、すべての妊娠のうち約15%で起こるとされていますが、特に流産しやすい時期はあるのでしょうか。

流産は、発症する時期によって「早期流産」と「後期流産」に分けられます。早期流産は、エコー検査で胎嚢が確認できてから妊娠12週未満に起こる流産です。一方、後期流産は妊娠12週以降22週未満に起こります。

流産の多くは早期流産とされ、全流産の約80%を占めています。早期流産の原因は、受精卵の染色体異常であることが多く、残念ながら、もともと流産することが決まっていたと言えます。

後期流産が起こる確率は約20%とされ、その原因は「絨毛膜羊膜炎」や「子宮奇形」など母体側にあるケースが多くなります。一般的に妊娠初期は流産のリスクが高いといわれていますが、安定期と呼ばれる妊娠中期(妊娠16~27週)にも後期流産に注意が必要です。

なお、妊娠週数別の「自然流産の頻度」は、妊娠5~7週では22~44%、8~12週では34~48%、13~16週では6~9%というデータがあります(※1)。

化学流産については、妊娠検査薬の精度が向上して早い段階で妊娠に気付くようになったことで、化学流産の認知度が高まっています。一説によると、30~40%の確率で化学妊娠が起こるとされています。

心拍確認後の流産の確率は?

すべての流産のうち約80%は妊娠12週未満に起こる早期流産です。中でも最も多いのが、エコー検査で心拍確認ができる前の流産で、心拍確認後は流産の確率が低下するといわれています。昔から「心拍確認ができればひと安心」といわれているのは、こうした理由からです。

しかし、近年の検査機器の向上により、早期に心拍確認ができるようになった分、心拍確認後の流産のリスクも見過ごせなくなっています。心拍確認の時点で元気だった赤ちゃんが、その後、成長できなくなることがあるのです。

経腹エコーの場合、妊娠8週頃までに心拍確認ができ、一度心拍確認ができれば95~99%の確率でその後順調に妊娠を継続できるとされています。ただし、現在、妊娠初期の妊婦健診では経腟エコーが主流です。経腟エコーによる心拍確認は早ければ妊娠5週頃にできますが、心拍確認後の流産率は、全流産の16~36%とされ、決して低い数字ではありません。

年齢が高いと流産の確率が上がる?

上のグラフは、厚生労働省が公表している自然流産に関するデータをもとに作成したものです(※2)。35歳~39歳の妊婦さんの流産率は20.7%、40歳以上では41.3%となり、25~34歳の妊婦さんと比べて流産率が大きく上昇していることがわかります。

30代後半以降に流産率が上がる要因として考えられるのは、受精卵の染色体異常率の増加です。早期流産の原因となる染色体異常は、母体が高齢になるほど起こりやすく、30~36歳の発生率は19%なのに対し、37~41歳では46%に上昇します。

流産を繰り返す確率は?

流産を一度経験した人が、また流産してしまう可能性はどれくらいあるのでしょうか。流産を2回繰り返すことを「反復流産」と言い、4.2%の頻度で起こるとされています。3回以上繰り返すと「習慣流産」と呼ばれ、その頻度は0.88%です。

流産を繰り返してしまう場合、流産の処置の影響があるともいわれていますが、医学的に明らかになっていません。一方、染色体異常や子宮奇形など、何らかの原因がもともとあって、反復流産や習慣流産を起こしていることも考えられます。そのため、反復流産や習慣流産では、「不育症」という観点から男性、女性ともに検査をして、原因を探る必要があります。

不育症に関する治療を何も行わなかった場合、流産を2回経験した後に、次の妊娠で再び流産する確率は23%、流産を3回経験後の流産率は32%にもなるといわれています。

二人目の妊娠は流産しやすい?

上の子の授乳中に二人目を妊娠すると、流産しやすいという噂を耳にしたことがある方がいるかもしれません。これは、母乳を放出させる働きがあり、授乳期間に分泌量が増えるオキシトシンというホルモンに、子宮収縮を促す作用があるためです。

現状では、妊娠中の授乳によって流産の確率が上がることが医学的に証明されているわけではありません。妊娠初期の授乳は母体に影響を与えないという考えの専門家もおり、意見は分かれるところです。

もし妊娠中も授乳を続けたい場合は、担当の医師にあらかじめ相談しておくと安心です。しっかりと妊婦健診を受け、お腹の張りといった症状があらわれたら、授乳を中断して産婦人科を受診するようにしましょう。

流産は予防できる?

流産は胎児側に問題がある場合が多く、確実に予防することができません。しかし、普段の生活で以下の点に気を配ることで、流産のリスクを下げられる可能性があります。

ストレスをためない

最新の研究では、過度のストレスが長期間続くことによって、母体の血行不良が引き起こされ、それが赤ちゃんにも影響を与える可能性があることが指摘されています。

妊娠初期はホルモンバランスが急激に変わり、つわりがあらわれるなど、心身に大きなストレスがかかりやすくなります。周りに協力してもらいながら、仕事や家事の負担を減らしたり、休めるときに休むようにしたりして、できる限りストレスをためない生活を心がけてくださいね。

栄養バランスのとれた食事をとる

妊娠中は、栄養バランスのとれた食事を規則正しくとることが大切です。そうは言っても、つわりがひどくて食事がなかなかのどを通らないこともありますよね。そんなときは無理をして1日3食きっちりと食べようとせず、食べられるときに少量ずつ口にするようにしましょう。

妊娠中はバラエティに富んだ食材でさまざまな栄養素を摂ることが大切ですが、特に積極的に摂りたいのがビタミンEと葉酸です。

ビタミンEは血行を良くしたり、女性ホルモンの分泌を促進したりする効果が期待できます。一方、葉酸は赤ちゃんの細胞の形成を助けて、神経障害の予防にも役立ちますので、妊娠初期にしっかりと摂取するようにしましょう。この2つの栄養素が豊富なキウイフルーツやホウレンソウなどを日々の食卓に積極的にとり入れてみてくださいね。食事でとることが難しい場合は、補助的にサプリを使用しましょう。

厚生労働省は妊娠可能性のある女性に対し、食事からの摂取に加えて1日400μgの葉酸を摂取するよう推奨しています。

身体を温める

身体の冷えは子宮の収縮を引き起こし、赤ちゃんへの栄養や酸素の供給を滞らせ、流産のリスクを高めてしまう可能性があります。足湯を楽しんだり、マッサージで血行を良くしたりしながら、冷え性を改善しましょう。良い気分転換にもなりますよ。

また、根菜やりんごなどの身体を温める働きのある食べ物を積極的に食べるのもおすすめです。無理のない範囲で、適度な運動も生活に取り入れてみてくださいね。

穏やかな気持ちで過ごすことを大切に

すべての妊婦さんのうち、10人に1人は流産を経験するといわれています。筆者の周りにも、実は流産したことがあるというママがたくさんいます。多くの女性は、流産が起こると自分のせいだったのではないかと後悔してしまうものです。しかし、流産は染色体異常などが原因で避けられない場合が多いため、もしも流産してしまっても自分を責め過ぎないでほしいのです。

流産を確実に防ぐことはできませんが、流産のリスクを少しでも下げるよう食事や睡眠に気を配ることはできます。もちろん、妊娠中の体調によっては、思うように生活習慣が整えられないこともあるでしょう。あまり神経質になり過ぎてもストレスがたまってしまうため、「できることをやっていこう」というスタンスで、穏やかな気持ちで過ごすことを最優先してくださいね。