「毒親本」が売れているらしい。毒親とは?過干渉な親と縛られる子どもの関係
親と子の関係は単純なようでいてとても複雑です。大人になっても親とのかかわり方に悩み、苦しんでいる人は少なくありません。こうした中、共感を集めているのがいわゆる毒親本です。親との関係を見直し、自由になるための解決法を知る手立てとなるもので、本を読んで毒親育ちを自覚する人もいます。毒親とはなにか、毒親本を通して紹介します。
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目次
今、毒親本が売れている?
「毒親」という言葉が生まれるきっかけになった本が日本で発売されたのは、1999年のことでした。それから約20年のあいだに、脳科学者や心理学者など多くの研究者や当事者の手により数々の毒親本が出版されてきました。
最近でも体験談を描いたコミックエッセイや著名人による告白本の出版が相次いだことで、再び毒親本に注目が集まっています。
毒親とは?
トラウマの原因となる親
毒親はスーザン・フォアード氏による著書「毒になる親(Toxic Parents)」のタイトルに由来する言葉です。その後日本で「毒親」という言葉が広まると、当初の概念とは別にさまざまな解釈が生まれ、数多くの書籍が出版されるようになりました。
これらの中で語られる毒親像はひとつではありません。外では良い人で子どもに対しては絶対君主のようにふるまう親、過干渉で子どもをコントロールしようとする親、ネグレクトする親、言葉の暴力で追い詰める親、肉体的な暴力をふるう親などいくつかのタイプがあります。
共通しているのは、こうして子どものころに繰り返された親の言動により、それがトラウマとなって子どもの人生をも支配していることです。トラウマを植え付けられたまま成長した人は、大人になっても自己否定感が強く、価値判断の基準が親におかれていることが少なくないのです。
毒親サバイバー
毒親に育てられながらも成長し、自らの人生を歩み始めた人は「毒親サバイバー」と呼ばれます。毒親に育てられた人の中には、自分の親が毒親だとなかなか気づかない人もいます。書籍やメディアではこうした毒親サバイバーの体験談がまとめられており、共感の声を集めています。
毒親ブームとしての問題点
親子の確執は、成長の過程や家庭の環境で一時的に生まれることがあるものです。いやな記憶がわだかまりとして残ってしまうこともあるでしょう。
しかし、これらは本来毒親とは区別される問題であることが多く、毒親という言葉をブームのように使い「すべてが親のせい」と片づけてしまうのは健全とはいえないですね。
最近では「親ガチャ」というネット用語が話題となりました。経済状況により与えられる教育の質が変わることから出てきた言葉ですが、親ガチャや毒親という言葉を使って親子関係を軽いネタとして扱う場面も生まれており、こうした傾向を危惧する声もみられます。
ままのて編集部に寄せられた毒親体験談
コントロールする親
先日、とある施設で行われたキャンドル作り体験に参加したときのことです。キャンドルの作り方は紙コップの中にカラフルなロウの小さなかけらをたくさん入れて、上に飾りをつけ、透明なロウをその中に垂らして全体を固めるというもの。小さな子でも取り組めるように、簡単な工程となっていました。
我が家の隣に座っていたのは、小学校高学年だと思われる女の子です。その後ろに付き添う親の姿もあります。その周りでは隣の子よりはるかに幼い子どもたちが自由にキャンドル作りを楽しんでおり、親たちはその姿を黙って見守っています。
ところが隣の大きな女の子の親は、逐一口出しをするのです。
「こんな色を選んだら汚いじゃないか」
「もっときれいにいれなさい」
「あんたセンスないね!」
「だからいつもダメなんだよ!」
と、こんな具合で終始ダメだし。隣にいる私が怖くておびえるほどの勢いです。「ロウを入れるのにセンスとか汚いとか、そんなの好きにやらせてあげなよ…」そう思っていた矢先に、その親は入れたものを全部取り出し、入れ直しをさせていました。
子どものキャンドル作りにそこまで指示しなくても良いでしょう。口出しをしたいのなら、自分も一緒に参加すれば良いのにと思ったできごとでした。
祖父から母に連鎖した毒親
私は毒親というより毒祖父、そして几帳面で神経質な母に完璧を求められて育てられました。何かあると「わがままでいうことを聞かない悪い子」だといわれ、新しいことに挑戦するたびに親の中に知識のないものは否定されました。そして、中学で不登校に。
かろうじて入学した高校で人間関係に恵まれ、そのおかげで人間らしい生活を取り戻したのです。「今しか家を出るチャンスはない!」と、大学は遠方の学校を受験。自分で家から逃げました。
しかしその後も、自由だと思っていてもふとした瞬間に記憶が蘇ってきて動けなくなったりつらくなったり、社会人になってまた心を病む時期がありました。
子どもを産んで一番に思ったのが、「人生リセットできた」ということです。子どもと一緒に自分も新しい人生をやり直している気がします。家族に対して不信感があったので「子どもも結婚もいらないなぁ~」と思っていたのですが、結婚して、子どを三人も産めて、本当に良かった。
そう思うようになってから、親との関係もだんだん良好になってきました。自分が苦しんできたことを周りに普通にいえるようになるまで何十年もかかりましたが……。
毒親について学べる編集部おすすめの本
毒になる親-完全版-
発売日:2021年3月
著者/編集:スーザン・フォワード、玉置 悟
出版社:毎日新聞出版
本著は1999年に日本での初版が刊行された「毒となる親」の完全版です。「毒親」という言葉が生まれるきっかけとなった本で、セラピストのスーザン・フォワードがカウンセリングで得た知見をもとにまとめたものです。今回、20年のときを経て未訳分が収められました。
毒になる親はどのような親か、なぜそのような行為に走るのか、そして毒親に苦しめられて育った人が自分の人生を歩むためにどうしたら良いのかが、具体的にわかります。「あなたはもう親を許さなくても良い」というメッセージが背中を押してくれる一冊です。
毒親 毒親育ちのあなたと毒親になりたくないあなたへ
発売日:2020年3月
著者/編集:中野信子
出版社:ポプラ社
医学博士・脳科学者の著者が毒親を科学した新書です。母親と父親の双方に焦点を当てながら、性差によって子どもに対する心情がちがう点を述べており、親子関係をさまざまな事例を用いてわかりやすく分析しています。
毒親を客観的な視点で紐解き新しい概念を導いている点は、親子の関係を考えるうえで参考になります。
気づけない毒親
発売日:2019年6月
著者/編集:高橋リエ
出版社:毎日新聞出版
心理カウンセラーである高橋リエ氏による書籍です。自らがアダルドチルドレンだと自認し毒親でもあったことに気づいた体験や、心理療法を学びカウンセラーとして得た経験から、親子の新しい関係を築くための方法をわかりやすくまとめています。毒親診断ができるチェックシートも掲載していますよ。
そんな親、捨てていいよ。~毒親サバイバーの脱出記録~
発売日:2022年3月
著者/編集:尾添椿
出版社:KADOKAWA
毒親サバイバー体験記「生きるために毒親から逃げました。」の著者である尾添椿氏が、10人の当事者を取材して描いたコミックエッセイです。
毒親から離れられた人、現在進行形で毒親と闘う人、それぞれの体験を通して読者に気づきや解決法を授けます。自分の生活がおかしい、その原因は親にあるとわかったとき、親から自分を解放して良いのです。
汚部屋そだちの東大生
発売日:2021年3月
著者/編集:ハミ山クリニカ
出版社:ぶんか社
毒親と共依存の関係に陥ってしまった作者が普通の生活をつかむまでを描いた半自伝的マンガです。
リアリティーがありながらもマンガであるからこそ「自分ではない誰かの物語」というある種の虚構性が生まれ、比較的ライトな気持ちで読み進められます。毒親と向き合うための導入編として、気持ちを整理するきっかけになるかもしれません。
母
発売日:2021年5月
著者/編集:青木さやか
出版社:中央公論新社
毒親とまではいかないのかもしれない、でも明らかに親子のへだたりや確執があると感じている人は少なくないでしょう。本著はそうした確執を抱えていたひとり、タレントの青木さやかさんが書いたエッセイです。
壮絶な毒親体験記ではないかもしれません。しかし、母と自分の人生を少しずつほぐしていく過程は、読む人の心もほぐしてくれるはずです。
毒親本を読んで苦しくなってしまった人は
毒親本を手に取り読み進めるのは、当事者にとって勇気がいることかもしれません。読んでいる途中で過去を思い出し、苦しくなることもあるでしょう。そのようなときは無理をせず、休息をとりましょう。自分の気持ちを整理しながら、少しずつ向き合うことが大切です。
トラウマがフラッシュバックして心身に不調をきたすようなことがあれば、医師やカウンセラー、自治体の窓口に相談するのもひとつの方法ですよ。
毒親本をヒントにそれぞれの人生を大切にしよう
最近ではヤングケアラー問題や宗教二世問題が少しずつ表面化していますが、家族の問題はなかなか表にあらわれないものです。こうした中、機能不全家族のもとで育ちひとりで振り回されていた人にとって、当事者や専門家の手による毒親本は心強い支えとなることでしょう。
もうひとつ、毒親本は「毒親というほどではない親」や「付き合い方に悩む親」との関係についても、ヒントを与えてくれるかもしれません。
「自分の親が毒親かもしれない」「自分が毒親かもしれない」という人は、多種多様な毒親本からヒントをみつけ、親と子の関係を冷静にとらえるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
※この記事は2022年9月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。