子どものしつけで叩いたことがあるパパ・ママが5割以上!怒鳴るママ・怒鳴られる子どもの気持ちと体験談
国際NGOのセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの調査によると、半数以上のパパ・ママが過去に「しつけのために叩いたことがある」ことがわかりました。一方で、調査結果からは本当は怒鳴ったりたたいたりしたくないパパ・ママの姿もみえてきます。ここでは、子どものころ叱られた体験談と、しつけに悩むママの声とともに調査結果を紹介します。
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目次
大人と子どものしつけにおける体罰等に関する調査概要
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、子ども支援専門の国際NGOです(※1)。子どもの生きる・育つ・守られる・参加するという4つの権利が実現される世界を目指して活動を続けています。
この活動の中で、全国の大人を対象にした子どもの体罰等に関する調査を行っています。調査は2017年に続き2021年に2回目が実施されました(※2)。20歳以上の男女2万人が意識調査に参加し、その中から抽出した0~18歳までの子どもを持つ男女1,000人が実態調査に回答しています。
意識調査 | 男女、子どもの有無が同数となり、かつ年齢に偏りがないように抽出した大人 2 万人 |
実態調査 | 意識調査回答者の中から子どもをもつ者を第一子の年齢別に同数になるように抽出した大人 1,000人 |
子どもをしつけのために叩いた経験があるパパ・ママが多数
子どもをたたいたことがある人の割合は5割以上
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ16】 P15(回答者=1,000))
実態調査では、55.4%の人がしつけの一環として過去に子どもをたたいた経験があると回答しています。前回の調査(※3)から全体では約15ポイント減少していました。
一方で、日常的にたたいているという割合は2.8%と約1ポイント上昇しています。また「時々たたく」「1~2回たたいた」のはそれぞれ約26%という結果でした。
しつけのためにたたく場所は「おしり」「手の甲」を選ぶパパ・ママが多い
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ17】 P16(回答者=1,000))
過去3ヶ月以内にしつけのための具体的な行為でもっとも多かったのは「おしりをたたく(29.2%)」でした。次に「手の甲をたたく(17.9%)」が続きます。「頬を平手でたたく」「ものを使ってたたく」もありました。
今回の調査では、どのようなときにたたいているかを聞いていませんが、頭や顔を避けていることから、パパ・ママなりにしつけの深刻度、子どもの年齢などでたたく場所を配慮している様子がうかがえます。パパ・ママも「体罰としつけ」のあいだで揺れ動いているのでしょう。
どのような状況であれたたくことは良いとはいえません。しかし、たたいてしまったパパ・ママが「たたいてしまったこと」に悩んでいるのだとしたら、本当に必要なのはパパやママに対する助けやアドバイスなのかもしれません。
子どものしつけの仕方に日本の大人は寛容?
体罰を容認する大人の割合が6割から4割に減少
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ1】 P6(回答者=20,000))
2万人を対象に行った意識調査では、しつけのために子どもへの体罰を「容認する」とした人は41.3%と4割を超える一方で、「決してするべきではない」と答えた人は58.8%と6割に迫っています。
2017年の調査では容認する人が6割、決してするべきではないという人が4割という結果であり、2021年にはその割合が逆転していることがわかります。
しつけのためにたたくのは子どもに理解させるため
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ9】 P10(回答者=9,098))
それではしつけのために子どもをたたくのが仕方ないと考える理由には、どのようなものがあるのでしょうか。子どもをたたく行為を容認すると回答した9,098人にその理由を聞いています。
「口で言うだけでは子どもが理解しない」(44.7%)「すぐに問題行動をやめさせるため」(25.4%)「痛みを伴う方が子どもが理解する」(18.3%)というのがその主な理由でした。「たたく以外にしつける方法がわからない」(3.8%)という回答もありました。
若い世代では体罰を回避する傾向に
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ3】 P7(回答者=20,000))
体罰に対する考え方は、年代によっても変化が見られます。体罰を決してするべきではないと答えた人の割合は、50代で54%、40代では55.1%となり20代では68.5%に増加します。世代が若くなるほど体罰はするべきではないと考えているようです。
しつけのために「怒鳴る」「にらむ」など態度で示すことも多い
怒鳴った経験があるパパ・ママは約4割
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ20】 P18(回答者=1,000))
体罰とは肉体的な痛みをともなうものを指しますが、しつけのための罰には心に傷をつけるものも存在します。それが、怒鳴ったりにらみつけたりといった行為です。
調査の結果では、実際に手をあげることがなくても37.1%のパパ・ママは最近3ヶ月以内に「怒鳴る」ことがあったと回答しています。
怒鳴る行為は子どもの自己肯定感に影響を与える可能性がある
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ33】 P27(回答者=20,000))
体罰でなければ、怒鳴る、にらむという行為は許されるものなのでしょうか。セーブ・ザ・チルドレンは今回の調査で、「子どもの意見を聞くこと」について、大人2万人および子ども344人に質問しています。
その結果、大人は「子どもの意見を聞き一緒に判断する」と考える人ほど体罰を決してすべきではないと考える割合が71.0%ともっとも高くなりました。
子どもへの調査では、なぐられたり怒鳴られたりしたことがある子どもよりも、そうした行為を受けたことがない子どものほうが、身近な大人に自分の意見を聞いてもらっているという意識が高くなっています。
意見を聞いてもらえるということは、相手に存在が認められているという自己肯定感につながります。たたいたり怒鳴ったりすることで子どもをコントロールするのではなく、ひとりの人間として話を聞くことの重要性が感じられます。
日本の子どもは国際的にみて自己肯定感が低い
ここでもうひとつ取り上げたいのが、国立青少年教育振興機構が高校生に対して行った調査です。調査の結果、「自分をダメな人間だと思うことがある」と回答した日本の高校生は72.5%にものぼり、アメリカ(45.1%)や中国(56.4%)、韓国(35.2%)と比較して自己肯定感が低い現状が浮き彫りとなりました(※4)。
自己肯定感はしつけの有無だけで決まるものではありません。しかし、しつけのためと思って投げかけた言葉が長く子どもの心に残ること、将来の自己肯定感に影響する可能性があることについて、パパやママは意識する必要がありそうです。
2020年4月「児童福祉法」「児童虐待防止法」の一部が改正
2020年4月、「児童福祉法」「児童虐待防止法」の一部が改正されて家庭での体罰が禁止となりました。これは、2019年6月に児童福祉法等改正法が成立したことで、親権者は児童のしつけのために体罰を加えてはならないことが法定化されたということです。
しつけと体罰の違いについては、厚生労働省が発行するリーフレットにも下記のようなことが記載されています。
■体罰
・言葉で3回注意注意したけれど言うことを聞かないので、頬をたたいた
・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・他人のものを取ったので、お尻をたたいた
・宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
・掃除をしないので、雑巾を顔に押しつけた
※厚生労働省「体罰等によらない子育てを広げよう!」リーフレットより
子どもをしつけるときは、子どもの発達しつつある能力に合った方法で行う必要があるとされています。体罰で押さえつけてしまうと子どもの心が傷つきます。どうすれば良いのかをパパ・ママが言葉や手本を示して、子ども本人が理解できる方法で伝えていくことが必要といえるでしょう。
しつけの経験は子どもの心に残る
ままのてに寄せられた幼少のころの「叱られた体験談」からは、親がなぜ怒っているか理解しようとする子どもの姿がみられました。
心配のあまり怒った様子や、叱った後の親の接し方で、子どもには反省する気持ちが芽生えるようです。また、親に怒りっぽい時期があったとしても、親の子育てに対する思いや他の家族からの優しさに、目を向けるたくましさもあるようです。
普段子育てや家事に追われてイライラし、子どもをつい怒鳴ってしまったというパパ・ママもいることでしょう。もちろん反省は必要ですが、あまり思い詰めるよりは子どもに愛情を伝え続けることを心がけると良いかもしれません。
一方で、あまりにも強い怒りの表現や日常的にたたく行為は、子どもの心に傷を残すようです。今回の体験談でも、大人になってカウンセリングが必要になったという例が紹介されています。
私が幼稚園の年長のころだったか、隣に住んでいた1歳上の女の子と「家出ごっこ」をしようということになり、夜7時くらいに家をこっそり出たら、すぐに母親に見つかり家に連れ戻され、お尻をぺんぺんたたかれて怒られました。そのときは泣きながら「なんて悪いことをしてしまったんだ」と反省しました。
母はわりと怒鳴る怒り方をする人でした。ただ、私が反省して「ごめんなさい」をした後には、必ず抱っこをしてくれました。怒られて嫌だったという感情よりも、自分が悪いことをしたんだなと反省する気持ちが大きかったように思います。
子どものころ、父からよく叱られていました。父が不機嫌なときに八つ当たり的に怒られることがあったので、当時はあまり父に近づかないようにしていました。母から叱られることはほとんどなかったので、叱り役は父、見守り役は母、と両親のあいだで(結果的に)うまく役割分担をしていたのではないかと思います。
母は怒りっぽく、怒鳴ったり手をあげたりすることがしょっちゅうでした。そんな母を見て育ったからか、小学校低学年のころは友達に対してキツイ言い方で怒鳴ってしまうことが多く、学校の先生から注意されることがよくありました。その経験もあってか、物心がついてから、自分に子どもができたら叱り方には気を付けようという気持ちが芽生えました。
ただ、母は子どもに厳しい試練を与えて這い上がらせる教育方針だったらしく、私の好奇心の芽を摘まずに何にでも挑戦させてくれたことには感謝しています。また、父は礼儀やマナー、「人としてこうあるべき」というような部分では厳しいほうですが、基本は穏やかで優しい人でした。このように両親のタイプが違っていたことで、緩和された部分もあったと思います。
叱ること自体は必要なこともありますが、叱るポイントや叱り方は子どもの情緒の安定や心の成長に影響するので、慎重に考えて欲しいと感じます。
わりと母親はヒステリック気味に怒鳴ることが多い人でした。高校生ぐらいから人は怒りの感情では動かないし、動いたとしてもそれは本質的な解決につながってないと思い、僕自身はあまり怒らないようになりました。
ただ、中学生で友達と万引きをして警察に連行されたときには、親が泣きながら怒ったのを見て、法律は守っていこうと心から誓いました。
夫は子どものころに父によくげんこつされていたそうで、そのときの話を聞こうとすると「つらいから思い出したくない」と言っていました。義姉もやはり手をあげられることが多かったようで、大人になってからカウンセリングを受けていたそうです。義姉は「うちのきょうだいはみんなアダルトチルドレンだと思う」と言っていました。
本当は叩かない・怒鳴らない育児をしたいパパやママが多い
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ28】 P23(回答者=1,000))
実体調査では叩いたり怒鳴ったりせずに子育てをしているかという質問に対し、そのような子育てを実践している人の割合は46.4%と、2017年から約11ポイント上昇しました。
その一方で「たたいたり怒鳴ったりせずに子育てをしたいし、その方法も知っているが、実践は難しい」と感じているパパ・ママも3割ほど存在します。
子どものしつけに奮闘するパパ・ママの多くは、叩いたり・怒鳴ったりすることが正解とは思っていないようです。ままのてにも、しつけに悩んだり、工夫したりするママの体験談が寄せられています。
息子が3歳後半から4歳のころ、とにかく癇癪がひどくてほとほと手を焼いていました。「死ね」「死ぬ」という言葉もどこで聞いたか口にするようになり、その言葉が出たときは手をあげたこともあります。今思うと、私が単にイライラしていたのでしょう。
私の母から「この子は何の問題もなく育っている。ただ心と頭の成長のバランスがくずれるときがあるだけ。あなた(私)が叱りさえしなければ、自分で成長していく」と言われ、しばらく怒鳴ることも自重するようになりました。そのためかあるいは時が解決したのか、だんだん息子の言動も落ち着いてきました。
娘がイヤイヤ期まっただ中です。身の危険に関わることや、他人を傷つけること以外は、好奇心や自尊心を尊重するようになるべく叱らないように努めています。
とはいえイライラして怒ってしまうこともあり、そのたびに「また子どもの好奇心を削いでしまった…」と反省して落ち込みます。
一人目の子どもということもあり、自分の育て方が正しいのかどうか、しつけの仕方については日々悩みがつきません。
4歳の息子がいます。言葉がある程度わかるようになってからは、何か注意したり怒ったりする場合に、できるだけ理由も一緒に伝えるようにしています。
たとえば、「こら!片付けなさい!」ではなく「片付けしないと、おもちゃを踏んで足を怪我しちゃうかしれないよ」というような感じです。最近息子が「片付けしないとパパがおもちゃ踏んで足が痛くなっちゃうから」と言って自ら片付けるようになり、成長を感じました。(もちろんいつもではないですが…。)
また、「なんで〇〇するの!」と詰めるような言い方はなるべくしないように気を付けています。なんでと言われても、子どもの行動に深い理由なんてないだろうし、説明できないことが多いかなと思うので…。
子どもにはなるべく怒鳴るのではなく冷静に諭すようにしたいと思いつつも、子どもがいうことを聞かないことが続くと、自分の気持ちに余裕がなくなり、イライラしてしまうことがたびたびあります。そのようなときには「お母さんだって疲れているのにご飯も作らなきゃいけなくて本当に大変なんだよ!」とやや感情的に子どもに訴えます。(子どもが癇癪をおこす横で私も癇癪をおこす感じです)
そうすると子どももハッとするようで「お母さん、ごめんね」と謝ってくれて、私も「お母さんもごめんね」で仲直りということがあります。こうなるとしつけではなく喧嘩ですが、ときには母も人間で感情があるということを伝えるのは悪いことではないのかなと思っています。
しつけのためにたたく背景に孤独や家事と仕事の両立に悩む姿も
データ出典:公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、「子どもに対するしつけのための体罰等の意識・実態調査結果報告書」、2021年3月(【グラフ23】 P20(回答者=1,000))
育児中心の生活は子どもに寄り添える喜びがある反面、自分のキャリアや家事との両立について不安に思うこともあるでしょう。このことは調査結果にもあらわれており、日常で「孤独」や「育児、家事、仕事の両立の難しさ」を感じているパパ・ママほど、たたく頻度が高いという傾向がみてとれます。
男女比では、たたいた経験があるのは女性のほうが男性よりも多くなりました。子どもと一緒にいる時間が長い分、ひとりで抱え込んでしまうことが多いのかもしれませんね。
しつけがヒートアップしてしまうのは、気持ちがいっぱいいっぱいになっているあらわれでもあります。心がSOSを発しているのだと考え、家族や周りの人を頼りましょう。家族がSOSを見逃さず、話をしっかりと聞いてサポートすることも大切です。
ママやパパが安心して相談できることが大事
今回紹介したセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの報告書でも、体罰に頼らない子育ての考え方や方法を伝えること、支援することの重要性を訴えて結んでいます。
初めての子育てをしているパパ・ママはもちろん、何人もの子どもを育てた経験があっても、自分のしつけが正しいとはなかなか確信が持てないのではないでしょうか。
子どもは、パパ・ママの叱る姿だけではなく、普段の様子もちゃんとみてくれています。一度感情的に怒ったからといって思い詰めずに、素直に子どもに謝ってみてはいかがでしょうか。また、怒りに任せて子どもをたたく前に、家族や友人、保育園や幼稚園の先生、保健師さんに弱音を吐いてみてくださいね。
※この記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。