フレーベル教育とは?幼稚園の原点?内容&教具はどんなもの?メリット・デメリット&受けられる場所を紹介
フレーベル教育は幼稚園の基礎となっている教育論です。世界中に広まっているこの教育論について、生まれた背景や教育の目的、メリット・デメリットなどを解説します。教具として使われている恩物や、庭づくり・運動遊びといった特徴的な活動についても実践例を交えて紹介していきます。
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目次
フレーベル教育とは?幼稚園の基礎?
幼稚園の基礎となる教育論
フレーベル教育は、ドイツの教育家であるフリードリヒ・フレーベルが生んだ教育論です。1839年、フレーベルは世界で初めて幼児教育の指導者を育成するための機関として6歳以下の幼児を集めた「遊びと作業の教習所」を創設し、翌年にはその施設をKindergarten(幼稚園)と改名しました。これが現代の幼稚園の基礎となっているといわれています。
積み木の原型である「恩物(おんぶつ)」を作ったのもフレーベルです。その後フレーベル教育は世界中に広がり多くの幼稚園が作られたため、フレーベルは幼稚園の生みの親ともいわれています。
人間的な成熟を目指す教育
フレーベルが生きたのはキリスト教の教えが人々に深く根付いていた時代です。フレーベル教育の根底にも宗教的な考え方が流れており、フレーベルは「人間の教育」という著書の中で「すべての人間には神性が宿っている」という考えを示しました。
これは「人はひとりの人間として完全で唯一の独立した存在である。それと同時に、人類の一部であり自然界の一部でもある」ことを意味しています。
フレーベル教育はこのような「個」と「全体」が同一であるという考えのもと、子どもたちが社会の中で一人ひとりの使命をみつけ、人間的に成熟するような教育を目指しています。
遊びを通じた学びを実践
幼児期の子どもは石や花、人形、動物に話しかけて遊ぶことがありますね。こうした発想は物には命があり、感じる心や話を聞く力があると信じているからこそ生まれるものです。
このように遊びながらたくさんの言葉を発することは、自分の内面に生まれたものを外に表現する第一歩につながります。そのためフレーベル教育では、遊びを通じて幼児特有の豊かさを育てる学びを実践しているのが特徴です。
指導者は遊びを強制したり命令したりするのではなく、子どもの自発性が発揮されるように環境を整え、関心が高まるように働きかける取り組みを行っています。
フレーベル教育の内容&教具は?
積み木の原型となった恩物
フレーベル教育では、恩物(おんぶつ)と呼ばれる教育遊具が使われています。第1~第20までの体系化された教材であり、第1~第6までは球体・立方体・円柱の形をした今でいう積み木のような形状をしています。第7~第10では色板・棒・環・粒という細かな構成となり、第11以降は手技工作に適した折り紙や粘土などで展開されます。
恩物を使った遊びは1から2、2から3へと子どもの発達に合わせて進んでいき、数が増えるごとに構造が複雑になります。手先の細かな動きも徐々に求められるようになり、遊びを通じて自発性や創造性、集中力が養われます。数学的な感性や美的感覚も磨かれますよ。
子どもの創造性を育てる運動遊び
幼児期の子どもは、ボールが転がったり跳ねたりする様子を見て自分の身体を同じように動かしてみたいと考えます。このように、遊びを通じて目の前で起こることを知覚し、考え、行動したいと欲することを手助けするのがフレーベル教育の運動遊びです。
たとえばボールを使って遊んだり真剣にごっこ遊びをしたりすることで、自己表現力や創造性を伸ばすことができますよ。
感性と情操面に働きかける歌
フレーベル教育は歌にも力をいれています。規則的なリズムで歌ったり踊ったりすることは、数字や空間の概念を学ぶことにつながるからです。集団で歌うことは仲間意識や楽しさを芽生えさせ、情操面にも働きかけます。
自然の法則を学ぶ庭づくり
恩物での作業や運動遊びでの活動を通じ、子どもたちは物を作りたい・生み出したいという「作業衝動」や、やってみたいという「活動衝動」が培われます。それをさらに発展させるべく行われるのが「庭づくり」です。
庭づくりではみんなの土地と自分の土地を決め、花や野菜を育てることを体験します。みんなの土地では共同で作業し、自分の土地では自然相手に試行錯誤を繰り返す経験を得ます。芽が出てから枯れるまでの過程を知り、自然の営みを肌で感じることも庭づくりの貴重な学びです。
フレーベル教育のメリット&デメリットは?
フレーベル教育のメリット
フレーベル教育は自分の内と外との関係を重視しています。そのため、家庭や社会といった環境の中にいる自分を強く意識する力が自然と身につき、社会性が育ちます。親との関わりも強く、自己肯定感や情緒の安定につながるでしょう。
恩物での遊びや庭づくりは創造力も養います。リズム遊び、歌遊び、恩物による創作などの活動により、芸術的な感性の育成にも役立ちます。
フレーベル教育のデメリット
フレーベル教育は「遊びを通じた学び」を中心に考えているため、読み書きや計算、英会話といった学習を取り入れたいときは物足りなさを感じることがあるでしょう。また、多くの幼稚園がフレーベル教育を基礎とした教育を実践していることから、特徴的な教育を受けさせたい人には不向きかもしれません。
最近ではフレーベル教育とほかの教育メソッドを組み合わせ、独自のカリキュラムを提供している保育園・幼稚園も多くあります。フレーベル教育を取り入れた園選びの際には、園の考え方や教育方針を調べておくと良いでしょう。
フレーベル教育はどこで受けられる?
フレーベル教育の実践園が日本で初めて誕生したのは明治9年(1876年)のことです。東京女子師範学校(現在のお茶の水女子大学)の付属幼稚園としてフレーベル教育が導入され、日本の教育になじむように少しずつ改良されていきました。
現代では社会に広く深くなじんでいるため、フレーベル教育の実践をあえてうたう保育園や幼稚園は少なくなっています。しかし、園庭で花を育てたり歌やリズム体操を行ったりしている園がほとんどで、このことから今でも教育の基礎として根付いていることがわかります。
慣らし保育や見学の際には、毎日の活動の中でどのような遊びに取り組んでいるのか、子どもへはどのように働きかけているのか、フレーベル教育の実践にたけた指導者がいるかを確認してみましょう。
フレーベル教育は家庭でも実践できる?
赤ちゃんが自分の身体を認識したり言葉を覚えたりするのは、パパやママが赤ちゃんの身体に触れ、たくさんの言葉で語りかけるからですよね。フレーベルは、幼児期における家庭内での働きかけが赤ちゃんの発達にとってとても重要なことだと説いています。
たとえば、赤ちゃんの身体に触れながら歌う手遊びは、自分の身体にたくさんの部位があることを気づかせてくれますよ。ママの動作を見てまねるまねっこ遊びも、自分の身体を動かすという意識を芽生えさせます。幼児期にはボール遊びや積み木遊びを取り入れてみましょう。手先の器用さや創造力、社会性の基礎などが身につきます。
フレーベル教育のおすすめ本と教具
発売日:2014年12月
著者/編集: マルギッタ・ロックシュタイン, 小笠原道雄
出版社:福村出版
ドイツにあるフリードリヒ・フレーベル博物館長であるマルギッタ・ロックシュタインが記した解説本です。フレーベルの教育遊具と遊びについて、写真をふんだんに使ってまとめられています。フレーベル教育の概要を知りたいときにおすすめです。
フレーベルの恩物も販売されています。第一恩物の六球はフレーベルが考案した1~20の恩物のうち、最初の教材となるものです。第二恩物は三体、第三~第六恩物は積み木と、恩物を通じて球や立方体などの形や色に触れる体験ができるよう構成されています。遊びを通じて、子どもの興味をたくさん引き出してみましょう。
フレーベル教育で子どもの可能性を広げよう
子どもは純粋で吸収力があり、大人とは違った目線で物事を観察しています。フレーベル教育はこうした子どもの特徴に沿って展開されています。
幼児期に全身全霊を込めておもいっきり遊ぶことは、その後の発達に良いように働くと考えられていることから、フレーベル教育を取り入れた保育園・幼稚園で楽しく遊び、子どもの可能性を広げていきたいですね。
※この記事は2024年7月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。