イエナプラン教育とは?日本でも普及してる?イエナプラン20の原則&家庭で実践できる方法を紹介
イエナプラン教育とは、これからの多様性の時代に注目を集めている教育のひとつです。ドイツで始まりオランダで発展した歴史をひもときながら、イエナプラン「20の原則」にまとめられたそのコンセプトや実践法について解説します。日本でイエナプラン教育が受けられる学校もぜひ参考にしてください。
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目次
イエナプラン教育とは?
イエナプランのはじまり
イエナプラン教育は、ドイツの教育学者ペーター・ペーターゼンがイエナ大学附属の実験校で研究と実践を重ね提唱したものです。1927年に国際新教育学会で発表され、この報告をもとにイエナプラン教育のバイブルともいえる「小さなイエナプラン」が刊行されました。
「小さなイエナプラン」に共感し、普及に尽くしたのがオランダで新教育学会の秘書をしていたスース・フロイデンタールです。オランダの教育制度に合うよう実践方法を発展させ、1960年代に現在日本でも広まるイエナプラン教育の基礎を築きました。
イエナプラン教育はその後もオランダで発展を続け、1990年~2000年代にかけてイエナプラン教育のコンセプトである「20の原則」やイエナプランスクールの目指すべき目標となる「コア・クオリティー」などがまとめられています。
イエナプランの日本での広まり
日本でイエナプランが広がったのは2000年代に入ってからです。オランダの教育を通してイエナプラン教育が紹介されると、各地で講演会やワークショップが開かれようになりました。
こうして草の根的な広がりを見せ、私学の小学校や幼稚園が開校していく中、2022年には広島県に公立校として初めてイエナプラン教育を実践する小学校が誕生する予定です。
イエナプラン教育の特徴
イエナプラン教育の根幹をなすのは「自分自身の関係・他者との関係・世界との関係」からなる「コア・クオリティー」と、「人間について・社会について・学校について」からなる「20の原則」です。このふたつをベースに、「一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶ教育(※)」を作りあげています。
自律と共生を学ぶために取り入れられているのが、異年齢グループによるクラス編成です。みんなにはそれぞれ違う特性があることを知り、お互いに個性を認め合うという経験を積みます。子どもたち一人ひとりが自由であると同時に、グループの人たちに対して責任を持つことをルールにしており、集団の秩序が保たれるのも特徴です。
1日の時間割は「対話・仕事(学習)・遊び・催し」という4つの基本活動を循環させながら進めます。経験・発見・探求することを目的に科目横断的な総合学習を行う「ワールドオリエンテーション」や、自分に合った方法・内容でカリキュラムを作成し自立学習を行う「ブロックアワー」も特色のひとつです。
イエナプランの「20の原則」とは?
イエナプラン教育のコンセプト
イエナプラン教育は定型的なメソッドとしてではなく、思想や理念に等しいものとして解釈されています。その根幹をなすのが、イエナプラン教育のコンセプトとなる「20の原則」です。20の原則は、人間について・社会について・学校についてという3つの分野で構成されます。
人間について
全部で5つの項目があります。どの人も世界にたったひとりしかいない人として尊重され、自分らしく成長する権利があることなどが掲げられています。
社会について
それぞれの人が持つ価値を尊重し合い、成長したり変化したりすることを受け入れる社会を作ること、さらに地球と世界を大事にすることが5つの項目でうたわれています。
学校について
学校がどうあるべきか、教師はどのように子どもたちとかかわっていくのかなどが10の項目でまとめられています。イエナプラン教育の特徴である異年齢グループや4つの基本活動、ワールドオリエンテーションについても指針が示されています。
子どもの成長過程がどうであるかという観点から、成績評価が子どもとの話し合いで行われるとしている点も注目したいポイントです。
イエナプラン教育のメリット&デメリットは?
イエナプラン教育のメリット
イエナプラン教育は一人ひとりの個性を尊重するため、自己肯定感が育ちやすい環境です。対話を重視した日々の活動を通じ、コミュニケーション能力が養われ、思いやりや責任感も芽生えるでしょう。
総合学習型のワールドオリエンテーションと自立学習型のブロックアワーは、課題解決や意思決定に必要なプロセスを経験できる貴重な時間です。工夫と探求を繰り返しながら課題に臨むことで、ものごとに対し意欲的に取り組むための基礎を築きます。
子ども、学校、家庭はひとつの共同体という考えから、保護者が教育に参加する機会が多く、子どもの成長に深くかかわれることも魅力のひとつといえます。
イエナプラン教育のデメリット
イエナプラン教育は世界的に注目されている教育ですが、日本で実践している教育機関は限られています。イエナプラン教育を受けるために、学校がある地域へ転居しなければならない可能性も考えられます。
イエナプラン教育を受けた子どもたちが将来的にどのような進路をとるのかというデータも十分ではなく、将来についての不安を感じることもあるかもしれません。
その時々に何をするべきか自分で自覚する力が育っていれば受験も乗り切れると考えられますが、場合によっては高校・大学への進学に向けて家庭でのサポートが必要になることもあるでしょう。
イエナプラン教育は日本のどこで受けられる?
日本でイエナプラン教育を実践しているのは、2019年に長野県佐久穂町に開校した「大日向小学校」です。学校法人茂来学園が運営し、2022年には新たに中学校が設置される予定です。大日向小では私学にかかわらず入試制度を設けていません。定員以上の応募があった場合は抽選を行い、その結果をもとに入学者を決定します。
2020年4月には神奈川県の逗子・葉山エリアにイエナプラン教育とデンマークの教育、日本の教育を融合させた「ヒミツキチ森学園」が開校しました。愛知県豊田市には「たいようの子ども園」が誕生しています。
公立では2022年4月、広島県福山市にイエナプラン教育校を設置する計画が進んでいます。教育改革の一環として視察や研修を実施する自治体もあり、今後の広がりが期待されます。
イエナプラン教育は家庭でも実践できる?
イエナプラン教育の20の原則やコア・クオリティーを理解し、子どもをひとりの人格を持った人間として尊重することで家庭での実践につなげられます。
たとえば、忙しかったり正解を知っていたりすると、親はついつい手や口を出してしまいそうになりますね。しかし、これでは子どもが自主的に考え工夫する芽をつぶしてしまいます。親が子どもをコントロールしないように、子どもの意見や思いにじっくりと耳を傾けることが大切です。
地域で行われるイベントに参加することも、社会や世界を知ることにつながります。お祭りや運動会で地域の人たちと交流しながら、本物の自然や文化に触れていきましょう。
イエナプラン教育のおすすめ本
発売日:2020年10月
著者/編集:フレーク・フェルトハウズ(著), ヒュバート・ウィンタース(著), リヒテルズ 直子(訳)
出版社:ほんの木
オランダで発刊されたイエナプラン教本の翻訳本です。学校運営を担う人向けに教育理論やコンセプト、実践に役立つアイデアがまとめられています。家庭で実践できるヒントもあり、イエナプラン教育に関する理解が深まりますよ。
発売日:2019年08月
著者/編集:リヒテルズ直子(著)
出版社:教育開発研究所
オランダ・イエナプランを日本に広めたリヒテルズ直子さんによるイエナプラン教育のガイドブックです。イエナプラン教育の理論と実践がまとめられています。子どもにとっての学びとは何か、どのような教育が望ましいのかを考えるきっかけになりますよ。
イエナプラン教育で豊かな未来を描こう
イエナプラン教育は、誰もが大切にされ幸せであるための生き方を学ぶ教育です。自分が自由であると同時に人や社会に対して責任ある行動がとれる人が増えれば、未来が明るくなりますね。
まだ実践している教育機関は多くありませんが、今後日本各地にイエナプラン教育を取り入れる機関が増えていく可能性があります。多様性の時代に合ったイエナプラン教育の考え方に触れると、ママとパパ、そして子どもの人生がより豊かなものになるかもしれません。ぜひ参考にしてくださいね。
※この記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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