シュタイナー教育とは?内容・教具&メリット・デメリットは?モンテッソーリ教育との違いを紹介
俳優の斎藤工さんが学んだことでも知られるシュタイナー教育は、「自由への教育」とも呼ばれます。何を目的としているのか、どのような人間に育つのか、その複雑かつ独自の考え方である教育法について、特徴やメリット・デメリットをご紹介します。よく比較されるモンテッソーリ教育との違いについても解説します。
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目次
シュタイナー教育とは?
数々のアーティストや文化人を輩出
シュタイナー教育とは、オーストリアやドイツで活動した哲学者であるルドルフ・シュタイナーが提唱した教育法です。1919年に労働者の子どもたちのために設立された学校からはじまり、今では世界60ヶ国以上に広がりを見せています。
これまで芸術や教育の世界で活躍する人を多く輩出し、俳優の斎藤工さんや村上虹郎さん、「モモ」などの多くの作品がある小説家のミヒャエル・エンデさんら著名人がシュタイナー教育学校を巣立っています。
真に自由な人間を育てる教育
哲学者であり神秘思想家でもあったシュタイナーは、宇宙をも包含する世界の中で、欲や利にとらわれることなく、自分のやるべきことを自覚し実行にうつせる人を「真に自由な人間」であると説きました。
シュタイナー教育では子どもにはそのような人間になる素質が備わっていると考え、自由な人間になるための教育を理念に掲げています。
「真の自由」を獲得するために重視しているのが、自然の中での体験や芸術活動体験を通じて学ぶことです。既存の教科書を使わず、自己の内面と向き合う芸術的な科目が多いのもシュタイナー教育の特徴といえるでしょう。
シュタイナー教育の内容&教具は?
身体・心・精神を順番に育てる
シュタイナー教育の理論では、人間は身体(肉体)、心(魂)、精神(霊性)の3つの領域から構成されており、この3つの領域を順序よく育てていくことがバランスの良い大人になるために大切なこととされています。
そのため、発達の段階を0~7歳の幼児期、7~14歳の児童期、14~21歳の思春期・青年期の三つの7年期で分け、それぞれの段階に則した教育カリキュラムを実践しています。
6歳から小・中・高までの12年一貫教育であり、8年間などの長期担任制をとっているため、きめ細かな指導が受けられるのもポイントです。
発達段階に則したカリキュラム
0~7歳の幼児期は、健全な身体と五感を育て「意思」を形成する時期としてとらえられています。身体に良い物を食べ、自然の中で身体を動かし、生活のリズムを整え、大人の模倣をするごっこ遊びを通じて基礎を作ります。
7~14歳の児童期は心が発達する時期です。「世界は美しい」という言葉をキーワードに、芸術体験を通じて豊かな「感情」を蓄えるよう指導します。イメージを絵や音楽で表現することなどで、その後の知的な成長へとつなげていきますよ。
14~21歳の思春期・青年期は「深く思考する力」が形成されます。ものごとを論理的に組み立てられるようになり、知的な活動に取り組んだり人間関係を形成したりできる力が備わる時期です。授業では物理や歴史などの学習に加え、職業実習や卒業演劇などの課題に取り組み、自分と世界との関係性を学びます。
芸術的な要素を含む授業科目
シュタイナー教育では、国語・算数・理科・社会の主要教科のほかに、園芸や演劇、手の仕事といった特徴的な独自カリキュラムを取り入れています。そのすべての科目に、芸術的な要素が含まれていることも特徴のひとつといえるでしょう。
カリキュラムの核となっているのは、オイリュトミーとフォルメン線描と呼ばれるふたつの授業です。オイリュトミーは身体を使って音の響きを表現する舞踊を学び、フォルメン線描は身体を動かすことでさまざまな線や形が生まれることを体感します。
こうした独自のカリキュラムを通じ、リズム感、平衡感覚、自然科学の基礎を養い、社会性を身につけていきます。
自然素材を使った教室や備品
本物に触れ感覚を養うという観点から、教室や授業で使う備品には自然素材のものや手作りのものが多く使われています。木のぬくもりを感じる弦楽器「ライアー」や鈴に似た「ムジーククーゲル」など、音楽に使われる楽器は特別に考案されました。
1年生はピンク、最終学年の12年生は紫というように、学年によって成長過程にふさわしい色で統一する工夫も施されています。
シュタイナー教育は家庭での生活も指導が必要?
子どもが成長する過程において重要なのは、子どもの発達にふさわしい音やリズム、イメージに触れることです。そのため、家庭でも生活習慣を整えたり、テレビやインターネットとのかかわり方を考えたりすることが必要となります。
子どもは大人を真似て成長するので、ママやパパも言葉遣いやふるまいに気を配ることが大切です。一方で、親の考えで「あれをやらせたい」「こうされたら困る」と型にはめることは避けたいものです。遊びの中で子どもが想像力を発揮しているときは、未来を先取りせずに見守ることが求められます。
シュタイナー教育のメリット&デメリットは?
シュタイナー教育のメリット
シュタイナー教育は、自分がなすべきことを自分の力で見つけられる自立した人間の育成を目指しています。変化が激しい現代社会にあって、流されない芯の強さは大きな強みとなることでしょう。
詰め込み型の学習法ではなく、常に自分や社会と向き合いながら学ぶ学習法により、探求心、想像力、調和、忍耐といった総合力が伸びるのもメリットです。演劇などの自己表現を通じて、豊かな感性を引き出し自信を生むことも期待できます。
シュタイナー教育のデメリット
教科書を使わない、詰め込み式ではないという特徴から、従来の教育を基本とした受験対策など学習面に関して足りないと感じる部分があるかもしれません。
しかし、小学1年生から外国語の授業、高校過程では教科書を使った授業も行われていることから、社会に出て必要な知性はしっかり習得できます。国立大学に進学している卒業生もいますよ。
生活面ではテレビやキャラクターを控えたり、できるだけ自然素材のものを取り入れたりするスタイルが推奨されています。そのためママやパパの生活を見直す場面も出てくることでしょう。将来的に仕事などで転居する可能性がある場合、十二年一貫教育がしばりになることもあります。
シュタイナー教育とモンテッソーリ教育の違いは?
教育を届ける時期やタイミング
シュタイナー教育もモンテッソーリ教育も子どもの個性を尊重し、自立した人間を育てるという共通点がありますが、教育を届ける時期やそこにいたるまでの過程に違いがあります。
モンテッソーリ教育ではものごとに高い感受性を示し、世界を広げようとするタイミングを「敏感期」と呼びます。敏感期には大きく分けて6つの分野があり、生後6ヶ月から5歳頃までにかけてそれぞれが異なるタイミングで出現するとされています。
モンテッソーリ教育が幼児期に集中しているのに対し、シュタイナー教育は0歳から18歳までの成長を年齢で分け、大人になった後も精神の発達が続くと考えています。
知的活動に対する考え方
モンテッソーリ教育では教具を使ったワーク(仕事)を通じ、知能を伸ばしていきます。これに対し、シュタイナー教育では7歳までは知的な活動をできるだけ避け、五感を鍛え感性を豊かにする活動に重きをおくという違いがあります。
教師や大人の役割
モンテッソーリ教育では、敏感期に合わせて環境を整えることが教師の役割とされています。そのため、子どもが教具に関心を示したら教師は見守る役割に徹します。
一方のシュタイナー教育は大人は子どもの模範であり成人するまで導く存在であると考えています。自由を大切にしながら、権威としてかかわることも違いのひとつといえます。
シュタイナー教育のおすすめ本
シュタイナー教育に欠かせない手作りおもちゃの作り方だけではなく、シュタイナー教育の複雑な理論がわかりやすくまとめられているため、入門書として役立ちますよ。
マンガと写真や文章による解説がまとまめられた入門書です。シュタイナーの教育論やシュタイナー学校の教育システム、卒業生の声から、シュタイナー教育の全体像をつかむことができますよ。
シュタイナー教育で生きる力を伸ばそう
子どもは自由奔放にふるまったり反抗的な態度を示したりしながら、自分の中の核を育て世界とのつながりを学んでいきます。
シュタイナー教育はそうした子どもが本来持っている力を信じ、身体・心・精神がバランスよく成長するよう導きます。シュタイナー教育を通じて、子どもの自分の力で未来を築いていく力を伸ばしてあげたいですね。
※この記事は2021年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。