子宮筋腫の漢方薬治療の効果は?副作用は?保険適用できる?

子宮筋腫は子宮に良性の腫瘍ができる病気です。自覚症状がなく治療の必要がないケースが多いですが、過多月経や貧血といった症状がでた場合は治療に漢方薬を使うことがあります。ここでは、子宮筋腫の漢方薬治療の効果や副作用、保険が適用されるのかについて解説します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 子宮筋腫とは
  2. 子宮筋腫の治療法
  3. 漢方からみた子宮筋腫
  4. 子宮筋腫に効果がある漢方薬
  5. 漢方薬の副作用は?
  6. 漢方薬を処方してもらうには?保険が適用される?
  7. 漢方薬による体質改善を検討してみては
  8. あわせて読みたい

子宮筋腫とは

子宮筋腫とは、硬いこぶのような良性の腫瘍が子宮の筋肉にできる病気です。子宮筋腫自体が生死にかかわることはなく、ほとんどの人は自覚症状がでません。しかし、筋腫がある場所や大きさによってはさまざまな症状を引き起こします。主な症状は「過多月経」「過長月経」「貧血」「不正出血」「生理痛」「頻尿」です。また、まれに「不妊」の原因になることもあります。

子宮筋腫が発生する原因は明確になっていません。しかし、30代以上の女性が多く発症し、閉経が近づくと筋腫が小さくなることから、女性ホルモンのエストロゲンが筋腫の発生や成長に関与しているといわれています。

子宮筋腫の治療法

子宮筋腫があっても、症状が軽く日常生活に支障がないようなら、治療を行わず「経過観察」にとどめます。ただし、筋腫が大きくなったり、症状が強くなったりしてきたら、薬物療法や手術療法を検討します。

薬物療法

薬物療法は「対症療法」と「ホルモン療法」にわけられます。対症療法では筋腫そのものは治療せず、貧血や生理痛といった症状を薬で改善させます。鎮痛剤や増血剤の他、女性ホルモンのバランスを整える低用量ピルを使います。体質の根本的な改善を目指す漢方薬も対症療法に含まれます。

ホルモン療法はホルモン剤によってエストロゲンの分泌を抑え、筋腫を小さくする療法です。副作用のリスクがあるため、6ヶ月以上は続けられません。手術前に少しでも症状を改善したい場合に選択されることが多いようです。

手術療法

筋腫が大きい場合や薬物療法では症状が改善されない場合には、手術療法を検討します。手術療法は、筋腫部分だけを取り除く「筋腫核出術(きんしゅかくしゅつじゅつ)」と、子宮を全部切除する「単純子宮全摘術」があります。

「筋腫核出術」は、妊娠を希望しており、子宮筋腫以外に不妊の原因が考えられないケースで行います。子宮を残すため、再発するリスクが約20%あるとされています。「単純子宮全摘術」は筋腫が急速に大きくなっている場合や多発している場合に選択されます。妊娠を望めなくなりますが、再発するリスクはありません。

漢方からみた子宮筋腫

子宮筋腫の治療に使う漢方薬は、漢方に基づき処方されます。

漢方とは?

漢方は中国の伝統医学である「中医学」が5世紀ごろに日本に伝わったのが始まりです。西洋医学が局所的な治療を行うのに対し、漢方は体質や生活習慣なども含めて患者の状態を総合的にとらえ、漢方薬で身体全体のバランスを整えていくのが特徴です。

漢方には「気・血・水(き・けつ・すい)」という概念があります。「気」は元気や気力といったエネルギー、「血」は血液、「水」は血液以外の体液を指し、これらのバランスが整っている状態が心身ともに健康です。病気や身体の不調は「気・血・水」のいずれか、あるいは複数が異常をきたし、3つのバランスが乱れることで起こると考えられます。

子宮筋腫は「血」の異常

漢方では、子宮筋腫は主に「血」の異常で起こるといわれています。血の流れが滞って血行不良になると「瘀血(おけつ)」と呼ばれる病的物質が生まれます。瘀血によって腫瘍が発生し、不正出血や痛みといった症状があらわれるとされています。

「血」の滞りは、血を身体中に循環させている「気」の流れが悪くなることでも起こります。気と血のめぐりを同時に良くすることで、子宮筋腫の症状をより効果的に改善できると考えられています。

子宮筋腫に効果がある漢方薬

漢方薬は、自然界にある植物や鉱物などの「生薬(しょうやく)」を複数組み合わせて作られた薬です。子宮筋腫の治療では、「血」や「気」の流れを改善する生薬を含む漢方薬が、患者の体質や症状によって分類した「証(しょう)」をもとに処方されます。

子宮筋腫の治療に使われる主な漢方薬は以下になります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

「桂枝茯苓丸」は瘀血を改善する「駆瘀血剤(くおけつざい)」の代表的なものです。血行を促進して身体を温める「桂皮(けいひ)」、子宮の収縮を抑制して瘀血を散らす「牡丹皮(ぼたんぴ)」、利水作用のある「茯苓(ぶくりょう)」、鎮痛作用のある「桃仁(とうにん)」などが配合されています。比較的体力があり、下腹部の痛みや肩こりといった症状がある患者に対し、生理痛や月経異常の改善が期待できます。

婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)

「婦宝当帰膠」に最も多く含まれている生薬は、血行を促進し、補血、強壮に効果がある「当帰(とうき)」です。その他、利尿や食欲促進作用のある「党参(とうじん)」、子宮下垂と冷え性に効くとされる「黄耆(おうぎ)」などが含まれています。婦宝当帰膠は造血や血行促進の作用があり、子宮や卵巣の働きを高めてくれるとされています。

血府逐瘀丸(けっぷちおがん)

「血府逐瘀丸」は、活血や強壮の効果がある「川芎(せんきゅう)」や「紅花(こうか)」、鎮痛・鎮静の効果がある「柴胡(さいこ)」や「桔梗根(ききょうこん)」、利尿作用のある「牛膝(ごしつ)」などが含まれています。

血府逐瘀丸の「逐」とは、「血液の流れを良くして質の悪い血液を取り除く」という意味があります。肩こりや頭痛の改善が期待できる漢方薬で、子宮筋腫の治療には、腫れやしこりを取るとされる「田七人参(でんしちにんじん)」を併用することが多いです。

西洋医学も併用して

漢方薬は患者の身体全体を整えて治癒力を高めることで、子宮筋腫に伴う症状を和らげたり、新たな子宮筋腫ができにくいような身体を作ったりするものです。漢方薬を服用し始めてから子宮筋腫が小さくなったという人もいますが、漢方薬はあくまでも対症療法で、完治はできないと考えられます。子宮を取り除かない限り、子宮筋腫は大きくなったり、再発したりする可能性があるため、西洋医学を併用し、定期的に筋腫の状態をチェックするのが望ましいでしょう。

漢方薬の副作用は?

漢方薬は生薬を使い、効き目が穏やかなものが多いことから、西洋薬に比べて副作用が少ないというイメージを持っている人が多いかもしれません。これは誤りで、漢方薬にも副作用はあります。漢方薬メーカーの株式会社ツムラによると、まれに重大なアレルギー反応が起こることがあるようです。

漢方薬を処方してもらうには?保険が適用される?

漢方薬を処方してもらうには、漢方薬治療を取り扱っている婦人科を受診する方法があります。医師により医療用漢方製剤を処方してもらった場合、健康保険が適用され、患者の費用負担は3割で済みます。

漢方薬局で症状に応じて処方してもらう方法もありますが、その場合は保険が適用されず自費になることが多いようです。

漢方薬による体質改善を検討してみては

漢方薬で子宮筋腫の完治はできませんが、体質を根本的に改善することで、子宮筋腫ができにくい身体に変える効果が期待できます。他の婦人病を予防することにもつながるため、漢方薬を一度試してみるのもおすすめです。ただし、身体にあわない場合があるので、必ず医師や薬剤師の指示のもと服用するようにしましょう。

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