子宮筋腫とは?症状や検査・治療の方法は?妊娠への影響は?

子宮筋腫は子宮に腫瘍ができる病気で、成人女性の4~5人に1人が発症しているといわれています。ほとんどが良性ですが、不妊の原因になったり、流産のリスクが高まったりするため、定期的に検査を受けたほうが良いでしょう。ここでは、子宮筋腫の種類や症状、検査や治療の方法について解説します。

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この記事の監修

藤東 淳也
産婦人科医
藤東 淳也

目次

  1. 子宮筋腫とは
  2. 子宮筋腫の種類
  3. 子宮筋腫の症状は?
  4. 子宮筋腫の検査法
  5. 子宮筋腫の治療法は?どんな場合に手術する?
  6. 子宮筋腫の妊娠への影響は?
  7. 子宮筋腫は身近だけど、リスクも忘れずに
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子宮筋腫とは

「子宮筋腫」は子宮の筋肉の一部に発生する硬いこぶのような腫瘍です。複数できることが多く、大きさは米粒ほどのものからメロンより大きなものまでさまざまです。

子宮筋腫は女性にとって身近な病気で、妊娠できる年齢の女性の20~30%がかかっているといわれています。基本的には良性で、子宮筋腫自体が生死にかかわることはありません。しかし、放置すると大きくなり、不正出血などの症状を引き起こすことがあります。また、ごくまれに子宮肉腫などの悪性の腫瘍に変化します。

子宮筋腫ができる原因ははっきりとわかっていませんが、女性ホルモンのエストロゲンが子宮筋腫の発生や成長に影響しているようです。そのため、エストロゲンの分泌がさかんな30代以上の発症が目立ち、閉経後は腫瘍が小さくなります。

子宮筋腫は、同じくエストロゲンが関わっているとされる「子宮内膜症」や「子宮腺筋症」と同時に発症することが多いようです。

子宮筋腫の種類

子宮筋腫は発生する場所によって「筋層内筋腫」「漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)」「粘膜下筋腫」の3つに分類されます。

筋層内筋腫

「筋層内筋腫」は子宮の筋肉の中にできる筋腫で、子宮筋腫全体の70%を占めています。小さいうちは自覚症状がほとんどないですが、大きくなるにつれ、子宮を変形させて収縮をさまたげるようになり、生理が長引く「過長月経」などの症状を起こします。

漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)

「漿膜下筋腫」は子宮の表面をおおう漿膜の下にできます。子宮の外側にこぶのように飛び出すのが特徴で、お腹をさわってしこりがわかるくらいになっても症状がほとんどありません。

きのこのような茎がある「有茎漿膜下筋腫(ゆうけいしょうまくかきんしゅ)」ができることがあり、まれに茎の部分がねじれて急に強い痛みを起こします。

粘膜下筋腫

「粘膜下筋腫」は子宮内膜のすぐ下にでき、子宮の内側に向かって発育します。発生の割合が最も低いですが、小さなものでも経血の量が増えるなど、症状がでやすい筋腫です。

茎をもつ「有茎粘膜下筋腫」ができ、その筋腫自体の重みで子宮口に垂れ下がることがあります。すると、筋腫を排除しようと子宮が強く収縮し、筋腫が子宮口から腟内に飛び出します。この状態を「筋腫分娩」と言い、垂れ下がった茎の部分がねじれて腹痛が起こったり、筋腫の子宮内膜面から不正出血したりします。

多発性筋腫

3種類の筋腫のうち1種が多発したものや、複数の種類が同時に発生しているものを「多発性筋腫」といいます。子宮筋腫の60~70%は多発性で、3種類の筋腫が10~20個できることもあるようです。

子宮筋腫の症状は?

子宮筋腫の症状は筋腫の種類や大きさによってさまざまですが、主なものは「過多月経」「不正出血」「貧血」です。漿膜下筋腫や筋層内筋腫の場合は症状がないこともよくあります。

過多月経、レバー状の塊が混じる経血

粘膜下筋腫に多い症状は、生理の量が増える「過多月経」です。筋腫内の血行障害により充血したり、筋腫の発育に伴い子宮内膜が引き伸ばされて薄くなったりして、出血しやすい状態になり、過多月経が起こります。また、経血にレバーのような塊が混じることがあります。

不正出血

粘膜下筋腫が大きくなって子宮内膜を圧迫することにより、生理中以外の不正出血や血が混じった茶色いおりものがみられるようになります。「有茎粘膜下筋腫」が腟まで垂れ下がる「筋腫分娩」の状態になると、陣痛のような痛みが起こり、不正出血時の血の量が多くなります。

貧血

過多月経や不正出血により、貧血症状がでることがあります。貧血に伴いだるさや立ちくらみ、めまいといった症状も起こりやすくなります。

おりものが増える

粘膜下筋腫の場合、サラサラとした水っぽい薄黄色のおりものが増えます。

生理痛

生理痛は粘膜下筋腫と筋層内筋腫の症状です。粘膜下筋腫では、子宮が筋腫を排除しようとして強く収縮することで生理痛が起こります。筋層内筋腫では、子宮が変形して子宮筋の収縮がさまたげられ、経血がうまく排出されなくなり、生理時の下腹部痛や腰痛、過長月経といった症状がでます。

頻尿、便秘、腰痛、足のしびれや痛み

筋層内筋腫や漿膜下筋腫が大きくなると、子宮の周辺を圧迫するようになり、さまざまな症状がでます。膀胱の圧迫による頻尿や排尿障害、尿管の圧迫による水腎症(すいじんしょう)や尿閉(にょうへい)、直腸の圧迫による便秘やおなら、骨盤神経の圧迫による腰痛や足のしびれ・痛みが主な症状です。

お腹のふくらみ

筋腫が人の握りこぶしくらいの大きさになると、お腹のふくらみやしこりを感じるようになります。漿膜下筋腫は痛みや不正出血といった症状がないままに、2kgもの大きさになることがあり、妊娠や肥満と間違えることがあります。

不妊

粘膜下筋腫と筋層内筋腫は不妊の原因になることがあります。筋腫で子宮がでこぼこしている状態になると着床障害が起こりやすくなるほか、筋腫が卵管を圧迫した場合、精子や受精卵が通過しづらくなります。漿膜下筋腫はサイズが4~5cmを超えなければ妊娠への影響は少ないとされています。

子宮筋腫の検査法

子宮筋腫の検査は、一般的に問診、内診、超音波検査を行います。

内診検査

内診では、腟から指を入れてもう片方の手でお腹を押さえ、子宮の大きさや硬さ、痛みの具合などを調べます。筋腫があれば子宮が大きくなっており、でこぼこやしこりに触れることができます。

超音波検査

超音波検査は、お腹の上から器具をあてる経腹超音波検査と腟内に器具を入れる経腟超音波検査があり、いずれの検査も筋腫のタイプや数、大きさなどをより正確に診断するために行います。

MRI検査

場合によっては、子宮肉腫や子宮腺筋症との区別をつけるため、MRI検査を行うことがあります。また、「ヒステロファイバースコープ」という細いカメラを使う「子宮鏡検査」で、粘膜下筋腫の有無や、筋層内筋腫が子宮内腔にどの程度突き出ているかを調べられます。

その他の検査方法

子宮内に造影剤を入れてX線撮影する「子宮卵管造影」は不妊の場合に行われる検査で、筋腫による卵管通過障害がないかどうかを診断します。子宮の内膜組織を採取し、がんや肉腫がないか調べる「子宮内膜組織検査」もあります。

子宮筋腫の治療法は?どんな場合に手術する?

子宮筋腫を完全に治すためには手術で子宮を摘出する必要があります。ただし、子宮筋腫はそれ自体が命を脅かす病気ではないため、筋腫の種類や大きさ、症状、妊娠を希望するかどうかといったことを総合的に判断し、患者一人ひとりにあう治療法を選択していきます。

経過観察

筋腫の直径が8cm未満で、子宮の大きさが握りこぶしより小さく、痛みや貧血などの症状が軽い場合、とくに治療を行わず経過をみていく「経過観察」となります。放置すると筋腫が大きくなるといった恐れがあるため、3~6ヶ月ごとに検診を受ける必要があります。子宮筋腫の女性のほとんどは、経過観察になることが多いです。

対症療法

対症療法は、筋腫そのものは治療せず、貧血や過多月経などの症状を薬で改善させる療法です。貧血を改善する増血剤や痛みを抑える鎮痛薬など、症状に合わせて薬を服用します。また、低用量ピルでホルモンバランスを整えて、症状を和らげたり筋腫の成長スピードを遅らせたりします。漢方薬を使って根本的な体質改善を目指す場合もあります。対症療法のあいだも定期的に検診を受け、筋腫の様子を観察しなければなりません。

ホルモン療法

ホルモン療法は、Gn-RHアゴニストというホルモン剤でエストロゲンの分泌を抑えて閉経状態にし、筋腫を小さくしたり貧血を改善したりします。ただし、ほてりやのぼせといった更年期のような症状がでやすく、骨粗しょう症のリスクも高まるため、6ヶ月間しか治療できません。また、ホルモン剤の服用をやめると筋腫の大きさが元に戻ってしまいます。
そのため、ホルモン療法は手術前の準備として症状を少しでも改善したいときや、閉経が近い女性が閉経までのあいだに症状を抑えたい場合に行います。

筋腫核出術(きんしゅかくしゅつじゅつ)

筋腫核出術とは、腫瘍のある部分だけを切除する手術の方法で、以下のケースで選択されます。

・薬では症状が改善しない
・筋腫によって子宮の大きさが握りこぶしを超える大きさになっている
・妊娠を希望しており、子宮筋腫が不妊や流産の原因になっているとみられる
・子宮を残しておきたい

筋腫核出術の方法は、従来はお腹を切り開いて筋腫を切除する「開腹手術」が主流でした。現在は、手術後の痛みが軽く回復も早いことから、お腹に小さな穴を開けて腹腔鏡を入れる「腹腔鏡下手術」が選ばれるようになっています。なお、粘膜下筋腫の場合には、子宮口から「レゼクトスコープ」という切除用内視鏡を入れる「子宮鏡下手術」が行われます。

筋腫核出術は、子宮を残すため再発する恐れがあり、手術後に妊娠すると帝王切開になることがあります。

単純子宮全摘術

子宮を全部切除する「単純子宮全摘術」は以下のケースで選ばれます。

・筋腫の直径が8cm以上ある
・筋腫が急速に大きくなっている
・MRI検査で悪性が疑われる
・多発性筋腫で一つひとつの筋腫を切除することが困難
・妊娠を希望しない

単純子宮全摘術の方法は、摘出する子宮が大きい場合は開腹手術、小さい場合には腹腔鏡下手術や腟から摘出する腟式手術が選択されます。

単純子宮全摘術は子宮筋腫の再発や子宮がんにかかる心配はなくなりますが、妊娠は望めなくなります。

集束超音波治療(FUS)と子宮動脈塞栓術(UAE)

お腹に傷を残さないで子宮筋腫を小さくできる新たな治療法が登場し、選択の幅が広がっています。

「集束超音波治療(FUS)」は超音波をレンズで子宮に集中させ、筋腫を焼いて組織を破壊する治療法です。麻酔なしで行えて身体への負担が少ない一方、残った筋腫が再び増大することがあります。

「子宮動脈塞栓術(UAE)」は筋腫への栄養を絶って筋腫を縮小させる治療法です。太ももの付け根から挿入したカテーテルを筋腫に血液を送っている子宮動脈まで進め、ゼリー状の詰め物を注入します。入院期間が短く、筋腫が再発する可能性も少ないものの、まれに合併症を起こします。

子宮筋腫の妊娠への影響は?

子宮筋腫で不妊になる?

子宮筋腫があっても基本的に妊娠、出産はできますが、筋腫の位置や大きさによっては不妊の原因になります。筋層内筋腫や粘膜下筋腫が卵管を圧迫する場所にあると、精子と受精卵が通過できなくなり、卵管性不妊となります。また、筋腫によって子宮内膜が薄くなったり子宮の内側がでこぼこに変形したりすることで、受精卵が着床しづらくなることもあります。

子宮筋腫以外に不妊の原因が考えられなければ、筋腫核出術を検討します。ただし、手術をして無事妊娠に至っても、子宮筋腫が再発する可能性はあります。また、手術で子宮筋に傷がつけられていたら子宮破裂のリスクがあるため、出産は帝王切開が推奨されます。

子宮筋腫が妊娠中に判明したら?

妊娠してから子宮筋腫が見つかり、無事に出産できるか不安に思う女性は多いかもしれません。妊娠中に子宮筋腫が悪影響をおよぼすことはあまりなく、ほとんどはそのままにして経過をみます。

早産や流産のリスクは?

まれに、妊娠することで、筋腫への血液供給が途絶え、筋腫が石灰化するなどして壊死することがあります。これを「筋腫の変性」と言い、強い痛みがでて、流産や早産のリスクが高まります。また、子宮筋腫がある位置に胎盤が付着すると、胎盤への血流がさまたげられ、「子宮内胎児発育遅延」や「常位胎盤早期剥離」につながることもあります。一方、筋腫が多数存在し、子宮腔を変形させてしまうと、逆子になりやすくなります。子宮筋腫により妊娠の継続が難しい場合には、妊娠中であっても筋腫核出術が行われるケースがあります。

子宮筋腫の出産への影響は?

子宮筋腫が子宮の出口付近にある場合、赤ちゃんが産道を通るときのさまたげになり、帝王切開になることがあります。また、筋腫が大きい場合や多発している場合、子宮の収縮がさまたげられ、陣痛が弱くなる「微弱陣痛」の状態になったり、分娩直後の出血量が増えたりすることも考えられます。また、子宮の収縮がうまくいかないことで、産後の子宮の回復が遅れる「子宮復古不全」になる可能性もあります。

子宮筋腫は身近だけど、リスクも忘れずに

子宮筋腫は女性のほとんどがかかっているといわれる身近な病気です。基本的には良性で、経過観察で済みますが、筋腫の位置や大きさ、数などによっては不妊などのリスクが生じ、手術が必要な場合もあります。自分の子宮筋腫にはどのようなリスクがあり、どのような治療が選択できるのかということについて医師によく確認することが大切でしょう。

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