ブランケット症候群とは?ぬいぐるみやタオルケットが手放せないのは愛情不足が原因?【助産師監修】

ブランケット症候群は、毛布やぬいぐるみタオルなどお気に入りのアイテムで不安な気持ちをしずめる様子を指す俗称です。赤ちゃんが肌身離さずお気に入りを持ち歩く姿はかわいらしいものですが、その時期が長く続くと心配になることがあるでしょう。こうしたママやパパの悩みを解消するために、ブランケット症候群の特徴や対処法を解説します。

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この記事の監修

河井 恵美
助産師・保育士
河井 恵美

目次

  1. ブランケット症候群とは?
  2. ブランケット症候群の原因は?
  3. ブランケット症候群の主な特徴
  4. ブランケット症候群の解決策
  5. ブランケット症候群はやめさせたほうが良い?
  6. ブランケット症候群と感じても温かく見守って
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ブランケット症候群とは?

安心毛布ともいう

愛らしいスヌーピーが登場する人気漫画「PEANUTS」には、水色の毛布を抱えた男の子が登場します。彼の名前はライナス。いつも同じ毛布を抱えています。

ライナスのようにお気に入りのアイテムを肌身離さず持ち歩くことで安心を得ている状態を「ブランケット症候群」と呼びます。そのアイテムがないと強い不安を覚えるのが特徴で、毛布のほかにシーツやタオル、ぬいぐるみなどが対象に含まれます。

ブランケット症候群はここ5~10年ほどのあいだに広まった俗称です。PEANUTSのキャラクターそのままの「ライナスの毛布」という呼び名や「安心毛布」、「セキュリティ・ブランケット」という用語が使われることもあります。

母親に代わり心を落ち着かせるもの

発達心理学や精神分析の分野では、母子関係や愛着に関するさまざまな研究が進められてきました。そのひとつにイギリスの小児科医・精神科医であるドナルド・ウッズ・ウィニコットが1953年に提唱した「移行対象」があります。

ウィニコットは乳幼児が特別な愛着を示すものを移行対象、その所有物に夢中になる様子を移行現象と名付けました。移行対象は赤ちゃんにとってママに代わるものであり、心を落ち着かせるものと考えられています。

ブランケット症候群の毛布やタオルはまさに移行対象といえるものです。そのため、ブランケット症候群を説明する言葉として、移行対象が用いられることもあります。

病気ではない

名称に「症候群」とついていると、病気ではないかと心配になりますね。そもそも症候群とは、同時に発生している心理的・精神的な変化に対してその原因が不明だったり単一ではなかったりするときに、病名に代わるものとして用いられています。

人に起こる症候だけでなく、社会的な現象に対して使われることもあります。名づけられた後に原因が解明された疾患もあり、現在はさまざまな症候群が混在している状態です。

さらに、国際疾病分類第10版(ICD-10)において精神および行動の障害に分類される「分離不安障害」があることも、ブランケット症候群が病気なのではないかと心配になる要因かもしれません。

分離不安障害はママをはじめとする養育者から離れることを極度に恐れ不登校になるなど生活に支障が出る疾患であり、通常の発達段階においてママたちから離れるときに不安を感じることとは区別されます。

ブランケット症候群の原因は?

赤ちゃんが生まれてから、ママはおっぱいやミルクを与えたり抱っこをしてあやしたり、赤ちゃんの欲求を満たすために努力していますね。ウィニコットによると、こうしたママの献身が赤ちゃんに自分の心のままの世界=内的世界があるという錯覚を起こさせるのだそうです。

ところが成長するにつれ、赤ちゃんは自分の思い通りにいかない現実=外的現実があることを知るようになります。内的世界ではママと一体かのようにとらえていた自分が、現実の世界ではママから分離独立した不確かな存在であることに気づくのです。

このような心もとない状況を埋めるのが、移行対象とされるブランケットやぬいぐるみです。これらは内的世界と外的現実を橋渡しする役割を果たし、ママの代わりに落ち着きを与えてくれます。

愛情不足が原因ではない

移行対象になぞらえれば、ブランケット症候群は現実世界を受け入れるための成長の過程で起こる正常な心理といえます。愛情不足を心配する声が聞かれますが、むしろママとのほど良い関係が築けているとみる向きもありますよ。

ブランケット症候群の主な特徴

ブランケット症候群は、毛布やタオルなどやわらかくて肌触りの良いお気に入りのアイテムを肌身離さず持つことで不安な気持ちをやわらげています。そのため、それを取り上げようとすると子どもは不安に対処できず落ち着かない様子をみせます。清潔を保つために洗濯するのさえ嫌がることもあります。

こうした状態は未就学児に多く見られます。出現時期はまちまちですが、移行対象を調査した研究では毛布やタオルへの愛着は生後7~12ヶ月に生じ、5~6歳頃まで続くといわれています(※1)。ぬいぐるみや人形への愛着は2~3歳頃にはじまり、その使用は4歳以降まで続きます。

きっかけもさまざまで、断乳や引っ越し、きょうだいが生まれたなど愛着を持っていたものと離れる経験から生じている事例があります(※2)。

いずれも分離不安がほかの事柄で発散されたり、自己が確立されたりするようになると自然と消失していきますが、大人のブランケット症候群もめずらしくないため、焦らず向き合うようにしましょう。

ブランケット症候群の解決策

無理に取り上げない

ブランケット症候群は成長とともに消失していくと考えられ、解決する必要はありません。無理に取り上げようとすると愛着が執着に変わり、別の物に執着したり、執着しているのを隠したりすることがあるため注意が必要です。

衛生対策をする

同じものをいつも持ち歩いていると、衛生面が気になりますね。しかし、洗濯するあいだに手元から離れているのすら嫌がる子どももいます。

そのようなときは同じものをふたつ用意して交互に渡したり、「一緒にお風呂に入ろう」と声かけをして工夫しながら洗ったりすることで、衛生問題が解決できるかもしれません。身体に害が出るほど汚れていなければ、多少の汚れには目をつぶることも大切です。

安心感を与える

ブランケット症候群の根底にあるのは、ママからの分離に対する不安です。「ママが今この場にいなくても、また会える」「ママは突然いなくならない」という経験が積み重なれば、離れることへの不安は徐々にやわらいでくることでしょう。

赤ちゃんのそばを離れるときや戻ったときには声をかける、登園などのタイミングでママが不安そうな顔や態度をとらないことなども意識したいですね。

ブランケット症候群はやめさせたほうが良い?

子どもの気持ちを知るきっかけに

子どもがブランケットなどに愛着を示しているときは、甘えたい気持ちや不安な気持ちをおさえているのかもしれません。子どもの気持ちに寄り添い、理解する姿勢を見せることが子どもに安心感を与えますよ。1日に10分でもママの手を止めて、落ち着いて会話する時間を設けてみましょう。

日常生活に支障が出るようなら相談を

分離不安で泣くようなことがあっても多少であれば問題ありません。しかし、不安が大きくて頭痛や吐き気などの身体症状がみられたり、家から出られない状態になったりするようであれば、医師に相談することが望ましいといえます。

受診に悩むときは、自治体が行っている子育て相談で方針を聞くのも良いでしょう。地域によっては医師会が子育てに関する相談を受けつけていることもありますよ。

ブランケット症候群と感じても温かく見守って

慣れ親しんだ環境を離れ、新しい世界に飛び込むのは大人でも緊張しますよね。初めての体験をするときは一緒に行動するパートナーを求めたり、お守りに願いをこめたりすることもあるのではないでしょうか。

赤ちゃんの毎日は、未知なる刺激にあふれています。そう考えると、赤ちゃんがお気に入りのアイテムで不安をしずめるのは不思議なことではありません。ブランケット症候群と感じても、焦らず赤ちゃんのペースにあわせて温かく見守りましょう。

※この記事は2022年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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