いつかは離れる親友「イマジナリーフレンド」とは?子どもにとってどんな友達?特徴や対処法について解説
「皆には見えないけれど自分にだけ見える友達がいる」このようなことを子どもが言い出したら驚きますよね。これは病気ではなくイマジナリーフレンドという幼少期によくある現象の場合があります。ぬいぐるみが喋ったり妖精が見えたりする子どももいるそうです。どのような現象なのか、病気との区別や親の対処法について現在の見解を紹介します。
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目次
イマジナリーフレンドとは?
空想上の友達のこと
子どもがママやパパの目には見えない相手と話していることはありませんか。心理学や精神医学にはこうした目に見えない遊び相手を示す言葉があります。それが「イマジナリーフレンド」です。
イマジナリーフレンド(Imaginary Friend)は言葉通り架空の存在を指すもので、イマジナリーコンパニオン(Imaginary Companion)とも呼ばれます。日本語では「空想の遊び友達」や「想像上の仲間」といわれることもあります。
イマジナリーフレンドは本人しか感じることができない特別な存在です。ほかの人は感じることができません。そのため、子どもが誰もいない場所で話している様子をママやパパは不審に思うこともあるでしょう。しかし、イマジナリーフレンドの存在は著名な心理学者であるジャン・ピアジェをはじめ何人もの研究者が、子どもの発達の段階で見られる正常な現象だと報告しています。
心理学上の定義がある
空想の友達と話す現象について学術的な研究が進められるようになったのは、19世紀後半~20世紀初頭にかけてです。比較的新しいテーマということもあり、いまもまだ研究が続けられています。
研究者のあいだでさまざまに議論されているイマジナリーフレンドですが、その中で多くの研究者が取り上げているのが、 Svendsen(スヴェンセン)による定義です。定義では「名前を持ち、数ヶ月間継続して、ある種のリアリティーを伴って子どもが相互作用する目に見えない存在のことを言う(※1)」とされています。子どもは本当の友だちのように感じているのですね。
※相互作用…互いに働きかけ、影響をおよぼすこと
病気とは区別される
イマジナリーフレンドは幻覚のようなものなのかというと、そうではありません。幻覚は実際にはない音やにおいなどを感覚的に感じたり見たりすることを指しますが、イマジナリーフレンドを持つ子どもはイマジナリーフレンドが自分の想像から生まれた現実にはいない存在だということをしっかり理解しているようです。
自分の人格と混同していたり、人にも見える・聞こえると信じて「そこにいる」とその存在を誰かに訴えたりする性質のものではないのですね。とはいえ空想をコントロールできない幼少期には「こうだったら良いな」という気持ちが「実際に起こった記憶」にすりかわるように、現実と空想の世界を混同してしまうこともあるようです。
日本の研究では統合失調症や解離性同一性障害などの精神疾患と区別するために、通常の物忘れでは説明できないような健忘(けんぼう)を伴わないことや、空想の友達が子どもの行動を統制、つまりコントロールしたり何かをするように命じたりすることはないことを加えています(※2)。
こうした疾患が幼少期にあらわれることはほとんどありませんが、日常生活で気になることがあれば医師や自治体の窓口で相談するようにしましょう。
※健忘…過去の経験を部分的または完全に想起できなくなること
イマジナリーフレンドとはどんな友達?
子どもの見え方
子どもが作りあげた空想上のお友だちは、いったいどのような姿をしているのでしょう。人なのでしょうか。動物なのでしょうか。研究によると、イマジナリーフレンドの多くは人の姿をしていることが多いようです。なかには動物や妖精のように、人の姿ではないイマジナリーフレンドもいます。
イマジナリーフレンドは目に見えない友だちであると定義されていますが、近年ではぬいぐるみや人形に対して人格を与えたものも空想の友だちに含むことがあります。目に見える形があるイマジナリーフレンドは「Personified Object ( PO)」と呼ばれます。
研究者によると、形があるPOであっても、子どもの目にはその姿のまま写っているとは限らないのだそうです(※1)。子どもの空想の世界はなんとも奥が深いですね。
いつまで友達でいるの?
想像力は人生を豊かに彩り未来を切り開く力となっていくものですが、いつまでも目に見えない相手と話しているのを不安に感じるママやパパもいることでしょう。一般的にはイマジナリーフレンドは3~4歳頃までに出現し、ピークは4歳頃だといわれています(※1)。
ほかにイマジナリーフレンドがいる時期は2~10歳までと幅広い時期を示している研究結果もあり、見解はまだ定まっていません(※2)。
ベストセラーとなっている「アンネの日記」は、アンネが日記帳にキティという名前を付け、友だちに宛てた手紙のような形式で書かれたものです。そして、日記を書いていた当時のアンネは13~15歳でした(※3)。
アンネにとっての日記がイマジナリーフレンドであったように、青年期においてもイマジナリーフレンドがいることを示唆する研究もあります。
イマジナリーフレンドがいる子どもの特徴は?
イマジナリーフレンドがいる子どもは、ひとり遊びをする時間が多いことが特徴としてあげられます。たとえばひとりっ子や第一子にはその傾向がみられるようです。
さらに、子どもがママやパパとの遊びを通じ想像力を働かせたファンタジーな世界に触れることが多いと、イマジナリーフレンドが出現しやすいという報告もあります。
言語機能や社会的な認知力についてすぐれているという点も特徴といえるでしょう。イマジナリーフレンドとの遊びを通じて、自分のイメージを具現化する力が養われているのかもしれませんね。
イマジナリーフレンドがいると気づいたときの対処法
イマジナリーフレンドは、たくましい想像力で楽しさを感じると同時に、孤独や不安に対処する「移行対象」の性質を持っています。
移行対象はラミナスの毛布とも呼ばれるもので、不安を取り除き安心を得るものとして存在するものです。移行対象が物であるのに対し、イマジナリーフレンドは人格があるという違いがありますが、安心を得るという役割は共通しています。
そのため、子どもがイマジナリーフレンドと遊んでいても否定的な対応はしないようにしましょう。イマジナリーフレンドが子どもの思いを代弁していることもあるので、メッセージに耳を傾けることも大切です。
子どもがママやパパの注意を聞かないときは、イマジナリーフレンドの存在を逆手に取るのもひとつの方法です。「○○ちゃんが悲しんでるよ」「○○ちゃんはこう言っているよ」と、その存在を共有してみるのも良いかもしれません。
イマジナリーフレンドの体験談
ままのて編集部に寄せられた、イマジナリーフレンドの体験談をご紹介します。
イマジナリーフレンドの記憶がいくつかあります。幼稚園に入る前のころ、祖母と一緒の布団で寝ていたのですが、寝る前に天井に虹色の動物が来ていたのを祖母に話したことがあります。
車に乗ると必ず現れる子もいました。車と同じ速度で飛び跳ねながらついてきているのが面白くて、いつも窓の外を楽しみに見ていました。
さらに…、寝る前に現れるローラさんという友達にも毎晩挨拶して寝ていました。自分では幼いながらも変な妄想癖だと思って誰にも言ったことがなかったのですが、このような言葉があることを知り、よくあることなのだと驚き半分安心半分という気持ちです。
第二子である娘が3歳頃の話です。私が兄の相手をしているあいだ、しばらくひとりで過ごしていました。「何して遊んでいたの?」と聞くと、「ななみちゃんと遊んでいた」と言います。娘にななみちゃんというお友だちはいません。詳しく聞くと、背が高く、いつもは駅にいるのだそうです。追いかけっこをして遊んでいたそうです。
思わず名古屋駅のシンボルが浮かびましたが、我が家は名古屋から遠く離れた場所にあり、娘はその存在を知りません。しばらくななみちゃんと遊ぶ様子がありましたが、気付いたらななみちゃんの名前を口にすることはなくなっていました。10歳になった今、ななみちゃんの存在はすっかり忘れています。
いつかは離れていく親友、貴重な時間を温かく見守って
日本ではもともと自然を神格化してまつったり、長い年月を経た道具をつくも神として大切にしたりする土壌がありました。目に見えない存在や物に宿る人格が心の支えになることは、ごく当たり前のことなのかもしれません。
子どもが社会や人に触れ、実在する人とのコミュニケーションが活発になればその存在が消えていくのも自然なことといえるでしょう。ママやパパは子どものイマジナリーフレンドを不思議に思う必要はなく、空想の世界を子どもと一緒に楽しんでみてくださいね。
※この記事は2022年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。