妊娠中のクラミジア、妊婦健診で検査できる?原因や治療法、薬の影響は?
日本でもっとも感染数が多い性感染症である「クラミジア」は、若い人を中心に感染者が増加しています。妊婦健診でも検査項目に含まれている場合がありますが、妊娠中にクラミジアが判明した場合、妊婦さんの身体や胎児に何か影響はあるのでしょうか。クラミジアの原因や検査法、治療法、予防法について解説します。
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目次
クラミジアとは?妊婦への影響は?
「クラミジア」は日本でもっとも感染者数の多い性感染症です。(※1)名前だけは一度は耳にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか。「クラミジア・トラコマティス」という病原体に感染することで起こる病気で、正式名称は「性器クラミジア感染症」と言います。クラミジアはそもそもどのような病気で、妊婦さんにとってどのようなリスクがあるのでしょうか。
自覚症状がない場合が多い
クラミジアは症状が軽く自覚症状があらわれない人もいるため、無自覚のまま他の人にうつしてしまう危険性が高い性感染症です。近年では若い女性を中心に感染者が増加しており、不妊の原因のひとつにもなっています。本人が気づかず病院で診断を受けないままパートナーや出産児に感染させてしまうケースや、婦人科検診でたまたま病気が見つかるケースもみられます。
おりもの、不正出血、下腹部痛に注意
自覚症状がみられない場合が多いとはいえ、兆候がまったくないというわけではありません。おりものの増加や生理以外の性器からの出血(=不正出血)、下腹部痛といった症状がみられた場合には、クラミジアも原因のひとつとして疑ってみると良いでしょう。
こうした症状はホルモンバランスの変化など他の原因によっても起こる可能性があるため、症状だけでクラミジアだと予想をつけるのは困難かもしれません。たまたまだろう、と病院に行くのを先延ばしにしてしまう人がいることも考えられます。迷っているあいだに状態が悪化したり感染を広めてしまったりする可能性があるため、気になる症状があるときは念のため病院に行くようにしてくださいね。
妊婦に感染するとさまざまなリスクがある
クラミジアは妊婦さんのあいだにもしばしばみられる病気で、妊婦健診では正常な妊婦さんの3~5%にクラミジアが見つかります。(※1)自覚症状が少ないため、健診で初めて発覚するケースがよくあるようです。
妊娠中にクラミジアに感染すると、まれではありますが「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)を発症して流産や早産につながることがあります。出産時までにクラミジアが治っていなければ、産道感染によって新生児に感染してしまうこともあるでしょう。クラミジアが新生児に感染すると、新生児肺炎や新生児結膜炎といった病気の原因となることが考えられます。妊婦さんにとっても胎児にとってもリスクのある病気であることがわかりますね。
妊娠中のクラミジアの原因
妊娠中であってもそうでなくても、大人がクラミジアに感染する場合の感染経路は性行為です。クラミジアに感染している人とコンドームを使用せずに性行為をすることで感染します。口を使って性行為をすることで咽頭に感染する例もあるようです。
性行為をするときはコンドームを正しく使用すること、性行為のあとはしっかりシャワーで身体を洗うことなど、性感染症対策を徹底するよう心がけましょう。複数の相手と性行為をしている人や過去にクラミジアなどの性感染症にかかったことのある人など、リスクの高い人との性行為は控えるほうが良いでしょう。安心できる特定のパートナーとのみ性行為をするようにしてくださいね。
なお、妊娠中には性行為自体が母体や胎児に影響を与えるのではないかと気になっている人もいるかもしれません。性行為は妊娠中には絶対にしてはいけないというわけではありませんが、不正出血やお腹の張り、下腹部痛がある人や過去に切迫流産や切迫早産の経験がある人などは性行為を控えるようにしてください。
こうした症状がまったくない人であっても、深い挿入はしない、無理な体位はとらないなど、最低限気を付けたほうが良い点があります。性行為をする場合は、無理のない範囲でパートナーとのスキンシップを楽しめると良いですね。
妊婦健診でクラミジア検査を受けよう
クラミジア検査の内容
クラミジアは妊婦さんの注意すべき感染症のひとつですが、自覚症状がない場合が多く妊婦さん自ら気づくことは困難な場合が多いと考えられます。病院でしっかり検査してもらうことが、クラミジアを早期発見・治療するためのもっとも手っ取り早い方法であるといえるでしょう。
クラミジアの検査では、綿棒のような器具で腟内の粘液を採取し、病原体がいるかどうかを調べます。比較的簡単かつ短時間で終わる検査なので、あまり身構えないでくださいね。
クラミジアの可能性が低い場合は陰性、クラミジアの可能性が高い場合は陽性となります。陽性反応が出た場合には、できるだけ早く治療が終えられるよう、速やかに治療を開始します。
妊婦健診でのクラミジア検査
妊娠中のクラミジア感染にはさまざまなリスクがあることから、妊娠初期の妊婦健診の項目にはクラミジア検査が含まれている場合があります。厚生労働省の資料では、標準的な妊婦健診の項目のうち「必要に応じて行う医学的検査」の中にクラミジア検査が含まれており、妊娠30週までに1度検査を行うことが記載されています。(※2)
日本産科婦人科学会が作成したガイドラインでは、妊婦全例を対象として妊娠30週までに行うことが記載されているため(※3)、どの病院でもクラミジア検査を実施するのが一般的になっています。クラミジア検査を行う具体的な週数は妊婦さんの状態や病院の方針によって変わってくるため、詳細は検査を行う病院に確認してみてくださいね。
クラミジアの検査キットもある
正式な妊娠判定がまだの人や、妊婦健診でのクラミジア検査は少し先という人、妊婦健診でクラミジア検査を受けてから時間が経過している人のなかにも、クラミジア検査をすぐに受けたいと考えている人がいるかもしれません。産婦人科に行って希望すれば受けることができますが、病院に足を運ぶことを躊躇したり、先延ばしにしたりしてしまう人もいるのではないでしょうか。
忙しくて病院に行けない人や病院に行きづらい人は、自宅で手軽に検査できる検査キットを購入してみるのも良いでしょう。自分で腟の分泌物を採取して検査機関に送付すると、数週間で検査結果が送られてきます。ただし保険は適用されませんし、素人が採取するので正確な結果が出ない場合もあるかもしれません。こうした点も加味しつつも、自分にあった方法で検査を受けることができると良いですね。
妊娠中のクラミジアの治療法と薬の影響
クラミジアの治療では抗菌薬を使用します。抗菌薬にはいくつか種類がありますが、妊婦さんに対しては副作用が少ない「マクライド系」と呼ばれる分類の薬を使用することになるでしょう。妊娠中に薬を飲むと胎盤を通過して胎児にも投与されてしまうことが考えられるため、薬の投与は慎重に行う必要があります。医師の判断に従い、用法用量を守って服用してくださいね。
普段通っている産婦人科とは別の病院を受診した場合には、医師に妊娠していることをはっきりと伝えましょう。妊娠しているかどうかまだわからない段階の人も、妊娠している可能性がある旨を伝えておくと安心です。
性行為をしたパートナーも感染している可能性が高いため、パートナーも同時に治療をしておくと再発のリスクを下げることができます。クラミジアには症状がわかりにくいという難点があり、治らないままパートナー同士で何度もうつしあう「ピンポン感染」が起こることがあるため、本人とパートナー両方が完治するまでは性行為を控えましょう。
妊娠中はクラミジアをしっかり予防しよう
性行為によって感染が広がるクラミジアは、妊娠中はとくにしっかり予防しておきたい病気です。感染している可能性がある人とは性行為をしないこと、どんな相手との性行為であれコンドームを使用すること、性行為後は汚れを洗い流すことを心がけましょう。
クラミジアにはたしかにリスクがありますが、妊婦健診などでクラミジアが見つかったからといって、必ずしも流産や早産、母子感染につながるというわけではありません。早期に発見して治療を受ければ、出産までに完治させることももちろん可能です。早期発見・早期治療で母子への影響をできるだけ小さくできるよう、ちょっとした兆候を見逃さないのはもちろんのこと、兆候がなくても気になるときはしっかり検査を受けるようにしたいですね。