【産婦人科医監修】つらい妊婦の胃腸炎!症状や薬などの対処法、影響は?
下痢や嘔吐、腹痛に発熱といったつらい症状が出る胃腸炎は、症状がつわりと似ている部分もあり、妊婦には判断がしにくい病気のひとつかもしれません。つらい嘔吐や下痢などに薬を処方してもらえるのか、病院は何科にかかればいいのか、気になる胎児への影響などを解説します。
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目次
胃腸炎とは?
胃腸炎とは、胃や腸などの消化管に炎症が起こっている状態のことを指します。胃腸炎は大きく分けると、細菌やウイルスが原因となる「感染性胃腸炎」と食物アレルギーなどが原因となる「非感染性胃腸炎」があります。ウイルスで感染する胃腸炎はロタウイルスやノロウイルスが有名で、毎年秋から冬にかけて流行する傾向があります。細菌で感染する胃腸炎は腸炎ビブリオ、O-157などが有名です。
原因により異なりますが、一般的には嘔吐、腹痛、下痢、発熱、食欲低下などの症状が出る場合が多いです。ウイルス性胃腸炎の場合、潜伏期間は1〜3日程度が多く、症状には個人差があります。なかには軽い風邪のような症状のみの人やまったく症状が出ない人もいるため注意が必要です。食べ物などから感染する細菌性胃腸炎の場合、潜伏期間は菌によって数時間〜数日程度で、下痢の症状を訴える人が多いです。
妊娠中の下痢、吐き気などの症状は胃腸炎?悪阻?
胃腸炎の症状とつわりの症状には共通しているものがあるため、妊娠中の胃腸炎は判断しにくいという声があります。妊娠中は免疫力が低下することから胃腸炎になりやすいともいわれているため、注意が必要です。一方で、主な胃腸炎の症状である吐き気・胸焼けをはじめ、腰痛や発熱も妊娠中のつわりと共通した症状となるため、たしかに判断は難しいかもしれません。
胃腸炎とつわりの判断がつかない場合に重要なことは、自己判断せずに医師に相談することです。感染性の胃腸炎である可能性がゼロでなければ、他の妊婦に感染しないよう、まずは電話でどうすべきか病院に相談してみましょう。お腹の張りや便秘、貧血など妊娠中によくある症状でも、いつもと違う点がある場合は念のため相談すると良いでしょう。出血がある場合は、出血箇所にもよりますが、万が一のことを考えてはやめに病院に相談しましょう。
妊婦の胃腸炎、胎児への影響はある?
胃腸炎はさまざまな原因が考えられるため、原因によって影響範囲は異なります。非感染性胃腸炎の原因のひとつである「虚血性腸炎」の場合、高血圧の人が発症する可能性が高いため、妊娠高血圧症候群の可能性を考慮すると胎児への影響はゼロではないでしょう。しかし、妊婦が「虚血性腸炎」を発症するケースは非常に稀で、ほとんどありません。
細菌性胃腸炎、ウイルス性胃腸炎では、胃腸炎の症状以外に体調の変化はないかを確認しておくと良いでしょう。胎動やお腹の張りなど、妊娠初期・中期・後期、いずれの時期においても、いつもと違う点があればすぐに医師に相談するようにしましょう。
妊婦の胃腸炎、吐き気止めや抗生物質の薬は使える?
一般的に胃腸炎は数日で自然に治癒する場合が多く、治療としては経口補水液などでこまめに水分補給するといった対症療法がとられます。妊娠中に胃腸炎にかかったとしても、必ずしも薬が処方されるわけではありません。
ただし、原因や症状によっては吐き気止めや下痢止め、細菌性胃腸炎の場合には抗生物質などが治療として用いられる場合があります。妊婦は薬の服用に制限があるため、気軽に市販の薬に頼ることはできません。薬を希望する場合には医師の診断を受け、妊婦でも飲める薬を処方してもらうようにしましょう。
妊娠中はできるだけ薬を飲みたくないという人もいますが、その場合には漢方薬の処方はできるのかを医師に相談してみても良いでしょう。胃腸炎で下痢などが長く続くと、脱水になったり、腸の動きで子宮も張りやすくなったりすることもあります。むやみに薬を避けるのではなく、症状などに応じて適切に薬を使用することも、赤ちゃんやママの健康管理にはとても大切です。
妊婦の胃腸炎、ビオフェルミンなどの整腸剤は使える?
整腸剤は、名前の通り腸を整えることで便通を改善することを目的とした薬です。主に便秘や軟便などに用いられることが多いです。胃腸炎の場合に、対処法として整腸剤を用いる場合もあります。しかし、胃腸炎の原因にもよるため、自己判断で使用するのは危険です。
妊娠中に胃腸炎の症状が出て整腸剤を服用したいときには、必ず医師へ確認してから服用しましょう。
妊婦の胃腸炎、病院の診察を受けるべき?
妊娠中に胃腸炎で病院を受診する際、何科を受診すべきか悩む人は多いようです。まずは妊娠の経過をよく知っている産婦人科の医師に相談するのが良いでしょう。産婦人科を受診することで、母子の健康に関わることはあるかなどを確認することができます。産婦人科とは別に、かかりつけの内科がある場合には妊娠している旨を明確に伝えて相談してください。
産婦人科を受診する際は特に、感染性の胃腸炎の可能性がある場合には他の妊婦への配慮として、まずは電話で相談してから受診すると良いでしょう。胃腸炎の症状がひどい場合、症状によっては点滴を受けたり、入院をして様子を見たりといった対応がとられることもあります。
胃腸炎で食べられないとき、食事や水分はどうする?
胃腸炎では、嘔吐や吐き気により食事や水分が満足にとれない場合があります。妊娠していないときであれば仕方がないと片付けることもできるかもしれませんが、妊娠中はお腹の子どものことを考えると無理にでも食事をした方がいいのか悩んでしまいますよね。胃腸炎の原因や症状にもよるため、妊娠中の胃腸炎の際の食事・水分摂取については、医師の指示に従ってください。
胃腸炎の原因にもよりますが、一般的には下痢や嘔吐が治るまでは胃腸に負担をかけない方が良いといわれています。胃腸炎では脱水症状に十分な注意が必要となるため、まずはスポーツドリンクを飲むようにしましょう。下痢や嘔吐が治ってきたら、胃腸に負担をかけないようにおかゆなどから食事をとるようにしましょう。
胃腸炎の予防策!家族がかかったときの対策は?
ノロ・ロタなどのウイルス性胃腸炎の場合
ウイルス性胃腸炎はウイルスに汚染された食品を食べる、感染した人の便や嘔吐物から感染するといったケースが多いです。まずは乳幼児がいる家庭であれば、子どもにロタウイルスの予防接種を受けさせることで家庭にウイルスが持ち込まれる機会を減らしましょう。
ノロウイルスには予防接種はありませんが、感染予防としては手洗いが基本となります。トイレの後・調理時・食事・嘔吐物や便の処理の際などには必ず水と石鹸で手を洗いましょう。
家族がウイルス性胃腸炎にかかった場合、特に気をつけるべき点は嘔吐物や便の処理です。処理する人が感染しないようにする、ウイルスが残らないように消毒することが大切です。使い捨ての手袋、マスク、ガウン(エプロン)などを着用して処理し、毎回破棄すると良いでしょう。
手洗い後に使用するタオルは家族間で共有せず個別で分ける、調理器具は熱湯食毒する、生ものや和え物を避けて十分に加熱した食品を食べるといった点にも注意しましょう。子どもが残したものを食べて、ママの感染につながるケースもあります。きょうだいがいる家庭では、妊婦の胃腸炎予防のためにも食べ残しは捨てるようにしましょう。
カンピロバクター、O-157などの細菌性胃腸炎の場合
細菌性胃腸炎は食べ物や調理器具、ペットなどから感染するケースが多いです。菌によって対策方法が異なり、黄色ブドウ球菌のように加熱しても分解されない毒素を持つものもある点に注意が必要です。予防法としては、冷蔵庫などの低温の状態で菌の増殖を抑える、調理前には手を洗う、材料や調理器具の洗浄・殺菌の徹底、加熱する際には中心部まで確実に加熱するといった点に注意しましょう。
家族が細菌性胃腸炎にかかった場合も、感染している家族の嘔吐物や便の取り扱いに注意が必要です。使い捨ての手袋、マスク、ガウン(エプロン)などを用いて処理し、家庭内での感染の拡大を防ぎましょう。調理前・食事の際の手洗いや調理器具の消毒、食材の十分な洗浄・加熱を普段から意識したいですね。
胃腸炎といえども原因・対処法はさまざま
胃腸炎のイメージとしてノロウイルスやO-157が原因であるという認識があっても、対処方法が原因により異なるという点は浸透していないかもしれません。ノロやロタといったウイルス性胃腸炎は対処療法、サルモネラや病原性大腸菌といった細菌性胃腸炎は抗生物質(抗菌薬)が用いられるケースが多いようです。それぞれの原因に対して適切な対処を行うことが重要になるため、むやみに判断せず病院に相談するのが良いでしょう。
妊婦の場合には胃腸炎による影響や体力の低下が気になるところですが、ひとりで思い悩むよりは専門家である医師の指示を受けた方が安心できるのではないでしょうか。大切な身体と赤ちゃんを守るためにも、ひどい症状の場合には早めに病院に相談しましょう。
※この記事は2024年4月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。