妊婦は葛根湯を飲んでいい?頭痛や風邪で漢方は飲める?【産婦人科医監修】
風邪には葛根湯というイメージがある方は多いのではないでしょうか。妊婦が頭痛・咳などの症状が気になる場合には、薬の服用に慎重にならなければいけないことはよく知られているかもしれません。一方で、葛根湯などの漢方薬を妊婦が飲めるのかに関しては知らない人も多いようですね。葛根湯などの漢方を服用する際の注意点を解説します。
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目次
妊婦が飲める薬・飲めない薬
一般的に「妊娠すると薬を飲んではいけない」というイメージは強いかもしれません。正確には「妊娠中は避けた方が良い・使用する際には慎重に検討するべき薬もある」という表現が正しいでしょう。素人には、どの薬を使うことができ、どの薬は使うことができないのかを判断することは非常に困難です。このため「薬を飲んではいけない」という誤ったイメージが広まってしまったのかもしれません。
妊娠中は身体や心の変化が多く生じるといわれており、つわり・お腹の張り・むくみ・頭痛・肩こり・腰痛・精神的な不安など、薬に頼りたいと思うケースは少なくないでしょう。また妊婦も風邪をひくケースがあるでしょう。妊娠中だからといって風邪などの症状を我慢して薬を飲まないよりも、症状緩和のために薬を飲みたいのであれば主治医とよく相談することが大切かもしれません。薬局などで買うことができる市販薬も処方薬も、まずは担当の医師と副作用などの影響を確認しながら症状緩和を目指すと良いかもしれませんね。
風邪の症状?頭痛や咳・吐き気に発熱、鼻水
頭痛や咳・吐き気や鼻水・発熱・喉の痛みなどを感じたとき、まず真っ先に疑うのが「風邪」ではないでしょうか。風邪はウイルスが鼻や喉にくっつくことで、さまざまな症状を引き起こすことを指す言葉です。風邪というと「早く薬を飲まなければ」と考える人も多いかもしれませんが、市販の風邪薬や葛根湯などの漢方薬などは、さまざまな風邪にまつわる症状を緩和するのが目的であり、風邪を治す際に頼れるのは自分の免疫力だけです。
またもうひとつ注意したいのが、あまりにも身近な病気のひとつであるがために、さまざまな症状が起こったときにまず真っ先に「風邪ではないか」と勝手に判断してしまうケースが多い点です。頭痛や鼻水は花粉症などのアレルギー反応の可能性もあるかもしれません。特に妊娠中は心や身体にさまざまな変化を与え、つわりのような吐き気・体内の血液増加によるむくみなどを引き起こす場合があります。重大なケースの兆候である可能性もあるため、風邪だと決めつけず、具体的な症状について医師に相談することが大切でしょう。
漢方薬は普通の薬と比べて安全?副作用がない?
吐き気や頭痛、鼻水といった症状で風邪を疑っているときは、薬の服用をためらう人は多いかもしれません。眠気などの副作用、服用中の他の薬と一緒に飲んで良いのかといったことが気になる人もいるでしょう。そんなときに候補として上がるのが「漢方」かもしれません。漢方は中国の伝統医学を基に日本で独自に発展したものです。漢方医学は自然の植物・動物・鉱物からなる「生薬(しょうやく)」を原料に、科学的に合成されたものは含んでいません。
西洋医学では各病気に対して治療を行なっていきますが、漢方医学では各症状に対して患者にあわせて処方を行います。昨今では漢方に用いられる「生薬」を原料とする生薬製剤・健康食品・サプリメント・民間薬があり、内服液やドリンク・錠剤などさまざまな形で販売されています。これらと漢方薬を混同する人が多い点には注意が必要かもしれません。効果に関しては、西洋医学の薬と同じように100%効果があると保証することはできません。漢方薬も薬であることには変わらず、副作用などのリスクがある点にも十分に注意が必要です。
西洋医学では食後に飲む薬が多いですが、漢方の漢方薬のエキス剤などの飲み方としては、食前または食間の空腹時に服用するものが多いといわれています。同じ薬とはいえ、西洋医学の薬とは異なるものであるという認識を持ち、必ず使用上の注意を確認する必要はあるでしょう。
風邪に葛根湯などの漢方は効果がある?
「風邪には葛根湯」というイメージがある人もいるほど、葛根湯はメジャーな漢方薬のひとつです。ツムラ・クラシエ・阪本漢方など有名なメーカーが販売しているものもあり、安心して使うことができるイメージが強いかもしれません。葛根湯は
西洋医学の薬のように病気に対して処方するのではなく、各患者の症状にあわせて処方していくのが漢方薬のため、すべての風邪の症状に葛根湯は効き目があると断言するのは難しいかもしれません。一方で、風邪のひき始めに多い「寒気の中に熱っぽい感じがある」「汗は出ない」「頭痛」「首筋のコリがある」といった場合には葛根湯が用いられることが多く、効果に期待ができるようです。「汗が出る」場合には桂枝湯(けいしとう)、「食欲がない」場合には小柴胡湯(しょうさいことう)などが用いられる場合があります。
妊婦は中期や後期など時期によって漢方が飲める?
風邪のような症状がある場合、妊婦はどう対処したら良いのかが気になる人は多いでしょう。「妊娠中は薬を飲んではいけない」というイメージが強いため、薬のイメージが比較的弱い、葛根湯のような漢方薬の使用を検討する人もいるでしょう。しかし、注意が必要なのは漢方薬も薬であるという点です。
西洋医学における薬と同様に、妊娠中はすべての薬を飲んではいけないのではなく、避けるべき薬・使用する際に慎重に検討する必要がある薬があると考えて良いでしょう。妊娠中期・後期であれば大丈夫、または臨月だからダメだといった時期で考えるのではなく、どの段階でも担当医とよく相談し、副作用やリスクを考えた上で漢方薬を含めた薬の使用を検討しましょう。妊婦だからといって風邪などの症状を我慢するのでなく、葛根湯などの漢方を利用できるのであれば利用していくと良いでしょう。
一方で、一般的な薬と同様に、お腹の胎児の各種器官が形成される妊娠初期にあたる妊娠2ヶ月ごろまでに関しては、漢方薬も含めて薬の摂取は控えた方が良いという意見もあるようです。塗り薬や貼り薬などの飲み薬以外でも、成分によっては妊婦が使えないケースがあるため注意しましょう。
妊婦が風邪をひいたら何科に相談すれば良い?
妊娠中に発熱や頭痛など風邪のような症状を感じたら、何科を受診すれば良いのか悩む人は少なくないかもしれません。何科を受診すべきか考える際には、二通りの方法を検討してみてはいかがでしょうか。なお、どの科を受診する場合でも、葛根湯などの漢方薬の使用を検討したい場合には医師に相談しましょう。
まずは妊娠の経過を見てもらっている「産婦人科の担当医に相談する」方法です。風邪の症状だと自分で思っていても、実は妊娠が原因で起こっている症状のひとつである可能性もあります。また担当医であれば妊娠の経過をよく理解していることから、どのような症状に対してどのような対応をするべきかが判断しやすいかもしれません。
一方で、「かかりつけの内科医に相談する」という方法もあるでしょう。かりつけの内科医であれば今までの風邪などの症状の傾向などを把握しているため、今回の症状がどのようなものなのか把握しやすいかもしれません。ただしかかりつけの内科医に相談するのであれば、自分の妊娠の経過を内科医に説明する必要はあるでしょう。
妊娠中の漢方薬も医師によく相談することが大切
漢方薬と聞くと、身体に良い・薬よりも安全といったイメージがある人もいるでしょう。しかし薬であることには関わらず、妊娠中であれば慎重に検討し、医師と相談しながら使うことが大切です。頭痛や鼻づまりなどの風邪のような症状などを我慢する必要はありませんが、お腹の赤ちゃんへの影響は忘れてはいけません。わからないことがあれば、お腹の赤ちゃんのためにも専門家に相談するのが一番安心できるでしょう。
妊婦が身体の不調を訴えた際に、葛根湯などの漢方薬を医師が処方するケースは少なくありません。このため、漢方薬は妊婦でも飲んで良いという誤った認識を持っている人もいるようですが、正しくは「専門の担当医とよく相談した上でなら妊婦でも漢方薬を飲んで良いケースがある」ということです。周囲の人から風邪なら葛根湯が良いよといった具合で漢方を薦められる場合もあるかもしれませんが、妊婦であればすべての薬に対して自己判断で飲まない方が良いということを周囲にも説明してあげても良いかもしれませんね。