【産婦人科医監修】妊婦の手足などの蕁麻疹、原因や対処法・胎児への影響は?
蕁麻疹(じんましん)や湿疹、痒疹(ようしん)といった肌トラブルに悩む妊婦は少なくないでしょう。なかでも一時的にひどいかゆみとともに肌に赤いポツポツが現れる「蕁麻疹」は、さまざまな原因が考えられることからなかなか治らずに悩んでいる人もいるようです。妊婦の蕁麻疹の原因や赤ちゃんへの影響、薬の注意点などを解説します。
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目次
妊婦も悩む、蕁麻疹(じんましん)などの肌トラブル
手足の肌のかゆみ・赤み、顔に肌にポツポツしたものができた、お腹や背中などがカサカサしてしまったといった肌トラブルは、多くの人が経験したことがある症状でしょう。肌トラブルといっても、さまざまな皮膚病があります。湿疹や皮膚炎・蕁麻疹(じんましん)や皮膚掻痒症(ひふそうようしょう)などが有名かもしれません。
皮膚病の症状としては、かゆみ・赤みの有無、症状が一時的なものから長く続くもの、ポツポツとした湿疹ができるものもあれば、目で見える変化はないのにかゆみを感じるものもあります。なかには皮膚の症状だけでなく、呼吸困難や体重減少といった全身に影響与える深刻な状態を引き起こすものもあります(※1)。
身近なトラブルだからこそ放置してしまうケースも多いかもあるかもしれませんが、症状が続く・改善しないといったことがあれば、重症化する前にきちんと専門医を受診しておくのが大切でしょう。
妊娠中に蕁麻疹を経験する人は少なくない
突然の「蕁麻疹(じんましん)」にどう対処すべきか困ってしまった経験はないでしょうか。妊娠中に蕁麻疹を経験する人は少なくないといわれていますが、薬を気軽に使えない妊婦は、突然のかゆみ・赤みにどの薬を使えば良いのか、薬以外の効果的な方法は何なのかといったことで悩んでしまうかもしれません。
蕁麻疹とは、皮膚の一部に赤または薄いピンクのブツブツとした盛り上がりができている状態を指します。ブツブツの形や大きさはさまざまで、ひどいかゆみを感じることが多いです。長くても半日から1日程度でブツブツとした盛り上がりは消えることがほとんどですが、次から次にブツブツが盛り上がりができることで、常に蕁麻疹が出ているように見えることもあります。
ただし蕁麻疹ができた後に色素沈着してしまった、表面がガサガサしているといった場合には、蕁麻疹とは別の病気の可能性があります。湿疹や皮膚炎、皮膚掻痒(ひふそうよう)など、肌トラブルは症状によって対応が異なり、自己流の対処法で悪化するケースも珍しくありません。我慢できないかゆみ・痛みなど気になることがあれば、自己判断せずに専門医に診てもらうことが大切でしょう。
妊婦は手足などに蕁麻疹が起こりやすい?
蚊に刺されたように皮膚の一部にかゆみを伴う赤や淡いピンクのぶつぶつが一時的にできる「蕁麻疹」は、さまざまな原因の可能性があり、さまざまな部位に症状が起こります。
物理的刺激、細菌やウイルス、食べ物、太陽の光、寒さ、ストレスなどの原因が考えられます。原因がひとつだけであるとは限らず、複数の原因によって起こっている場合もあります。妊婦の蕁麻疹では、お腹や手足・顔・太もも・胸・首・妊娠線といった一部のみに蕁麻疹が出るケースと身体全体に出るケースがあるようです。首などのやわらかい部分に蕁麻疹が起こった場合、呼吸しづらくなり息苦しさを感じることもあります。
約4週間以内で治るものを「急性蕁麻疹」、それ以上続くものを「慢性蕁麻疹」と呼びます。慢性蕁麻疹は、なかなか蕁麻疹が治らず、原因が明らかにならないことも多いようです。一般的には夕方や夜に症状が強くなり、翌日の朝から午前中ごろにはかゆみがなくなる傾向があります。皮膚のかゆみ以外に関節痛や発熱などがある場合には、内臓の病気を疑っても良いかもしれません。かゆみを感じない蕁麻疹、唇やのどがひどく腫れる血管性浮腫と呼ばれる蕁麻疹といった特殊なケースもあるため注意が必要です。
妊婦の蕁麻疹などの肌トラブル、いつまで続く?
妊婦の皮膚のトラブルは妊娠中のどの時期でも起こり得るものですが、中期から後期にかけて悪化する傾向はあるようです。妊娠初期であればお腹の胎児の身体の器官ができる大切な時期であり、妊娠後期は臨月に向けていよいよ出産が現実的になることで不安が増す時期かもしれません。
妊娠中は全期間を通してそれぞれ重要な意味合いを持ちます。かゆみ・赤みなどの症状が続くようであれば病院に相談し、ストレスをためないように症状緩和を目指すのも大切でしょう。
妊婦の蕁麻疹、考えられる原因はさまざま
妊娠中の皮膚のトラブルの原因を突き止めたいと考える人は多いでしょう。妊娠による身体の変化のせいなのか、食べ物やストレスなどが原因なのか、できれば原因を突き止めて対処したいと考えますよね。
蕁麻疹はさまざまな原因が考えられ、細菌やウイルスなどの感染・疲労・夕方から夜や明け方ごろまでの時間帯・ストレス・刺身など特定の食べ物や薬などのアレルギーといったものがあげられます(※2)。特殊なものでは、お風呂の後や冬に多い「寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)」と呼ばれる寒さが引き金となるものも有名でしょう。
「妊娠で蕁麻疹などの肌トラブルが起こると男の子を妊娠しているのでは」といったジンクスを聞いたことがある人もいるかもしれません。がお腹の赤ちゃんの性別についていわれているものですが、真偽は確かではありません。
妊娠中に皮膚に異変を感じる人は珍しくなく、生まれてくる性別の可能性が半々であることから生まれた説かもしれませんね。妊娠と直接的な関係はない皮膚の異変が妊婦に現れるケースもありますが、妊娠中の免疫の変化、ホルモンバランスの変化、妊娠のストレスが原因で変化が起こるという意見もあるようです。
妊婦の蕁麻疹、胎児への影響は?
蕁麻疹は原因がわからないことも多いため、お腹の胎児への影響や流早産などを引き起こす重大な病気が隠れているのではないかといった不安を抱く妊婦もいるかもしれません。
蕁麻疹そのものは、数分から48時間程度のあいだで赤いポツポツとした盛り上がりがかゆみを伴って現れること指しますが、蕁麻疹が繰り返すことでずっとかゆみ・赤みが続いているようにも見えることから不安が強くなる人もいるでしょう。妊娠に蕁麻疹そのものが影響して急激に何かを引き起こす可能性は高いとはいえませんが、蕁麻疹への対処法によっては影響を与える可能性が考えられます。
特に注意したいのは薬による胎児・ママへの影響でしょう。妊娠初期にはお腹の胎児の器官形成への影響、妊娠中期から後期にかけては胎盤を通して胎児に薬の影響が出る点(※3)に注意が必要でしょう。また、蕁麻疹の症状を我慢してしまうことでストレスによる影響が出ることもあるかもしれません。飲み薬だけでなく塗り薬なども自己判断で使用しない、気になる症状があれば専門の医師に相談することが大切でしょう。
妊婦の蕁麻疹、塗り薬・飲み薬の注意点はある?
妊娠中は薬に気をつけなければいけないという認識を持っている妊婦は多いでしょう。しかし具体的にどのように気をつけるべきかを把握していない人も少なくありません。薬は妊娠初期に胎児の器官形成に影響を与える可能性があり、妊娠中期・後期には胎盤を通じて薬がお腹の胎児に影響をおよぼす可能性がある点に注意が必要だといわれています(※3)。
これは市販薬にも当てはまることで、かゆみの症状に効くといわれるレスタミンや肌のトラブルがあったときに頼る人が多いオロナインやムヒなどの軟膏・塗り薬でも同様です。薬には副作用・影響がある程度は認められることが多く、どのような可能性があるのかを知っておくことは大切でしょう。
医師に処方されるケースもあるポララミン、ステロイド、漢方薬なども疑問点があれば専門医ときちんと話して、理解することが大切です。蕁麻疹が出やすいのであれば、いつも使っている市販薬の使用許可をあらかじめ医師にもらっておくのも良いかもしれませんね。
妊婦の蕁麻疹、薬以外では冷やすなどの方法は有効?
妊娠中は薬を極力使いたくないという考えから、薬以外での対処法を探す人も多いでしょう。突然現れる蕁麻疹に対しては、かゆみや赤みに対して一時的に冷やすといった方法を試す人も少なくないかもしれません。
妊娠に関係なく蕁麻疹は原因が特定できないことも多く、症状が現れるのも一時的なことが多いといわれています。このため、自己判断で対処してしまうと症状が悪化してしまう可能性がある点には注意が必要でしょう。
蕁麻疹が起こることが比較的多い人は、自己流の対策・対処法を持っているケースも珍しくないかもしれません。蕁麻疹が長く続く、なかなか治らない、痛みがあるなど気になる点があれば専門医に相談することが大切です。蕁麻疹にアロマやお茶などの民間療法を試す人もいますが、原因によって対応すべき方法は異なり、成分による影響も懸念されるため、特に妊婦であれば慎重な判断が必要かもしれません。
妊婦のひどい蕁麻疹、何科にかかるべき?
妊婦がさまざまな症状で病院に行くべきかを考えた場合、多くの人が何科にかかるべきなのか悩む人が多いかもしれません。
基本的には妊婦が蕁麻疹で病院を受診する場合には、かかりつけ産婦人科もしくはかかりつけの皮膚科、どちらを受診しても問題ありません。産婦人科であればこれまでの妊娠の経過を把握しており、かかりつけの皮膚科であればこれまでの蕁麻疹・湿疹などの経過を把握しているでしょう。
かかりつけの産婦人科以外を受診する場合には、妊婦であることを必ず告げましょう。治療方針や処方する薬を選ぶ際に胎児や母体への影響を考える必要があるため、医師にとっては重要な情報です。妊娠の経過を説明するために母子手帳を持参して受診するのも良いでしょう。
原因によっては注射や点滴などの対応を行う場合もあります。薬と同様に治療方法も疑問点や不安点があれば医師に確認するようにしましょう。
妊婦が注意すべき蕁麻疹に似ている症状、病気
風疹
風疹は風疹ウイルスによる発疹性の感染症です。発疹、発熱、リンパ節の腫れが主な症状で、くしゃみや唾液による飛沫感染が原因になります。妊婦が風疹にかかると胎児に先天性風疹症候群と呼ばれる難聴・心疾患・白内障などが発症する可能性が高まります(※4)。
妊娠中は風疹の予防接種を受けることができないため、妊娠を希望する時点で予防接種が必要かどうかを確認しておくと良いでしょう。
妊娠性掻痒(にんしんせいそうよう)
妊娠初期から中期にかけて手足や体幹にかけて発疹ができるのが「妊娠性掻痒」です。最大の特徴としては出産後には治る傾向があることがあげられるかもしれません。妊娠後に症状が現れることが多いため、突然のことに対処法がわからず混乱する人も多いでしょう。ひどい症状に悩んでいるのであれば病院に相談するのが良いでしょう。
他の病気
妊婦特有の肌トラブルとしては、妊娠性掻痒以外では妊娠性疹痒(にんしんせいようしん)・妊娠性掻痒性じんま疹様丘疹(PUPPP)・妊娠性肝内胆汁うっ滞症といったものが妊娠中のかゆみの原因としてあげられるでしょう。
妊娠性痒疹以外では、妊娠後期に症状が現れることが多いかもしれません。強いかゆみがあっても見た目ではわからないもの、明らかな赤みのあるポツポツが現れるなど原因によって症状は異なります。また妊娠が直接的な原因ではない、アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎などの可能性もあります。
妊娠中の蕁麻疹、原因に応じて対応を
肌トラブルは、かゆみ・赤み・痛み・赤いポツポツなど一見すると同じようにとらえられることも多いかもしれません。湿疹や痒疹(ようしん)・かゆみ、蕁麻疹、かぶれなど、実は細かな分類があることを知っておくと良いかもしれません。
症状や原因に応じて対処することが大切なため、自己判断で市販の薬などを用いるのは危険かもしれません。ひどい症状が続く、治らないといったことがあれば、ストレスをためないためにも病院に相談するのが良いでしょう。
※この記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。