【産婦人科医監修】サイトメガロウイルスとは?妊娠中は注意が必要?感染経路や母子感染のケースも紹介
サイトメガロウイルスは身の回りに存在するありふれたウイルスです。多くの人が抗体を持っていますが、ごくまれに母子感染を引き起こすことがあるため妊娠中は感染予防対策をしっかりとることが大切です。どのようなことに気をつけたら良いのか、感染経路や予防法のポイントを見ていきましょう。感染症の症状や治療法についても解説します。
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目次
サイトメガロウイルスとは?
ヘルペスウイルス感染症の一種
サイトメガロウイルス(CMV)は、1型から8型まであるヒトヘルペスウイルスのうち5型にあたるウイルスです。ヒトヘルペスウイルスは世界中でよくみられるありふれたウイルスで、6型は赤ちゃんがかかる突発性発疹を引き起こすことで知られています。
サイトメガロウイルスも乳幼児期のうちにほとんどの人が感染し、抗体を保有しています。
疫力が低下すると感染症を発病しやすい
乳幼児期にサイトメガロウイルスに感染しても、ほとんどの場合は無症状か軽い風邪のような症状で、感染していることに気づかないことが少なくありません。
しかし、一度感染するとウイルスはそのまま体内に潜伏するため、病気や薬で免疫力が低下したときにウイルスが再び活性化し、サイトメガロウイルス感染症を発病する可能性があります。
妊娠中の感染に注意が必要
このウイルスに感染すると、血液の中に感染を防ぐための抗体が作られます。日本では成人女性のうちの約70%が抗体を保有していると考えられています(※1、※2)。
しかし若いうちにサイトメガロウイルスに感染しないこともあり、30%の人は抗体を持たないまま成人します。抗体がない人は、抗体を持つ人よりも大人になってから感染するリスクが高くなります。
妊娠中にはじめて感染したり、免疫力が落ちてウイルスが再活性化したりした場合、ママが無症状であっても胎盤や血液を通じてウイルスが胎児に移行し感染することがあるため、ママの感染を予防することが重要になってくるのです。
サイトメガロウイルス感染症の症状は?
健康な人がサイトメガロウイルスに感染しても、症状が出ることはほとんどありません。
思春期を過ぎてからはじめて感染した場合は、発熱、肝機能障害、リンパ球の増加など伝染性単核症と似た症状がみられます。筋肉痛や疲労感があったり、発熱が1週間以上続いたりするのも特徴のひとつです。
妊娠中にサイトメガロウイルスに感染した場合は?
サイトメガロウイルスは感染しても気になるような症状があらわれず、大多数は感染に気づかないまま経過します。しかし、ママに症状がなくても、血液を介して胎児の先天性感染が起こる可能性があることが非常にやっかいなウイルスなのです。
胎児がウイルスに感染して先天性サイトメガロウイルス感染症を発病した場合、症状は低出生体重、黄疸、小頭症、白内障など多岐にわたります。ごくまれに、流産や死産にいたる重篤なケースも発生します。
出生時に無症状であっても、成長してから難聴や精神発達遅滞、視力障害が起こる場合もあります。とはいえ、抗体を持たないママがサイトメガロウイルスに感染する確率は1~2%と低く、胎児に先天性感染が起こるのはそのうちの40%です(※1、※3)。胎児がサイトメガロウイルスに感染してもほとんどは症状もなく正常に発達するので、心配しすぎないことも大切です。
赤ちゃんへの感染はエコーでわかる?
エコー検査で胎児に小頭症や脳内石灰化、脳室拡大といった頭部の異常が認められた場合、先天性サイトメガロウイルス感染症が疑われます。
胎児腹水、肝脾腫も典型的な症例となるため、エコー検査でこうした所見がみられたときは、ママの血液による抗原検査が行われます。
サイトメガロウイルスの感染経路は?
サイトメガロウイルスは唾液、尿、血液、精液、腟分泌液などに含まれ、唾液による飛沫感染、キスや性行為、輸血などで感染が広がります。授乳や分娩で母子感染が起こることもあります。
子どもが感染しやすいのは、ほかの子との接触機会が多い幼稚園や保育園です。外で感染してきた子どもの世話をしているときにママが感染するケースも見られるため、兄弟がいる家庭の妊婦さんは注意が必要です。
一度ウイルスに感染すると、ウイルスは数年にわたって体内に居座り続け、尿や唾液中に排出されます。症状がなくても感染させるリスクは続くので、普段から感染しないように心がけるようにしましょう。
サイトメガロウイルスの検査方法は?
サイトメガロウイルス感染の検査方法はいくつかあり、検査時に感染しているかを調べる「抗原検査」や「PCR検査」、過去に感染したことがあるかを調べる「抗体検査」を症状や目的にあわせて実施します。検査の検体には血液、唾液もしくは咽頭ぬぐい液、尿が用いられます。
先天性サイトメガロウイルス感染症が疑われる赤ちゃんに対しては、生後3週間までに尿や血液を採取し検査を行います。検査の結果、さらに詳しい検査を必要と判断されれば、頭部超音波やCTを使った脳画像検査、聴力検査、眼底検査により症状の有無調べ診断を確定させます。
サイトメガロウイルスの治療法は?
ウイルスに感染してもほとんどの場合は無症状のため、治療は必要としません。軽い症状があったとしても、免疫が働き自然治癒します。
サイトメガロウイルス感染症を発病した場合は、経口の抗ウイルス薬が処方されるか、点滴静脈注射による治療が行われます。
新生児に対しても同様の治療が選択されますが、薬の副作用が強く出るため治療には慎重な判断が求められます。胎児に対する治療法は確立されておらず、さまざまな角度から検討が進められています。
サイトメガロウイルスの予防法は?
新型コロナウイルス感染症の予防策として推奨されている石けんやアルコールを使った手洗いは、サイトメガロウイルスの感染予防にも効果的です。外出から帰ってきたときや食事前の手洗いはもちろん、子どものおむつ替えや鼻や口を拭いたあとは石けんやアルコールでしっかりと手を洗いましょう。
食事のときは子どもと箸やコップを共有することは避け、ひとり分を取り分けておくと良いでしょう。子どもが残した食べ物や飲み物は口にしないように気を付けたいですね。洗えないおもちゃや家具はアルコールで拭くと感染対策になります。
シーツや枕カバー、布団はおもらしやよだれで汚れやすい場所です。サイトメガロウイルスは乾燥に弱い性質があるので、洗濯して清潔を保ち、布団などの大物はしっかり天日干しをして乾燥させましょう。
サイトメガロウイルスの感染予防を心がけよう
子どもからママへの感染があることから、兄弟がいる家庭では心配になることもあるかもしれません。しかしサイトメガロウイルスは多くの人が抗体を持っているウイルスです。気にしすぎることなく、正しい知識をもって感染対策をとるようにしたいですね。
スキンシップは唾液がつきにくいおでこにキスしたり、ハグをたくさんしたりして工夫してみましょう。心配なときは検査により抗体の有無が確認できます。かかりつけ医に相談してみると安心ですね。
※この記事は2021年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。