中期中絶の手術方法・費用・痛み・後遺症は?火葬の手続きは?中絶後に妊娠できる?

中期中絶とは、妊娠12週以降に行う人工妊娠中絶のことです。手術が分娩方式のため、妊娠12週未満の初期中絶に比べて心身への影響が大きく、経済的な負担も相当です。しかし、さまざまな理由からこの時期に中絶を考えなければならない方も多いでしょう。ここでは、中期中絶の費用や痛み、手術後の火葬、妊娠への影響について解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 中期中絶とは?
  2. 中期中絶できる病院は?
  3. 中期中絶の手術方法と分娩時間は?
  4. 中期中絶の費用は?
  5. 中期中絶のリスクや後遺症は?術後の痛みや出血は?
  6. 中期中絶後の心のケアは?
  7. 中期中絶後に妊娠できる?生理はいつから?
  8. 中期中絶を選んだ人・やめた人の体験談
  9. 自分の心と身体のためにも中期中絶はなるべく避けて
  10. あわせて読みたい

中期中絶とは?

中絶は母体保護法で規定

そもそも中絶とは、やむを得ない理由で妊娠を継続できなくなったときに、病院で人工的に流産(人工流産)させることです。正式には「人工妊娠中絶」と言います。

中絶は母体保護法により行える条件が定められており、妊婦さんの求めに応じて自由に行うことはできません。母体保護法では「母体の身体的または経済的な理由により、妊娠の継続や分娩が困難な場合」と「暴力や脅迫による妊娠の場合」に中絶が適応されるとしています。

たとえば、出生前診断をしてダウン症などの染色体異常が疑われる場合、染色体異常そのものを理由に中絶を行えません。しかし、妊娠を継続して出産することが母体にとって身体的もしくは経済的に大きな負担になると判断されると、中絶が許可されます。

いつまで中絶が行えるのかという点も母体保護法で定められています。中絶手術が受けられるのは妊娠22週未満で、妊娠21週6日を過ぎると、いかなる理由があっても実施が認められません。

時期は妊娠12週から22週未満

中絶は時期によって「初期中絶」と「中期中絶」に分類されます。妊娠12週未満に実施する中絶が「初期中絶」と呼ばれるのに対し、中期中絶とは、妊娠12週以降22週未満の期間に行う中絶のことです。

中期中絶は、妊娠週数が経過して胎児の成長が進んでいる分、身体への負担が大きなものになります。

死産届と火葬が必要

妊娠12週を過ぎてからの中期中絶の場合、「死産」として扱われ、「死産届」を市区町村の役場に提出しなければなりません。これは、妊娠12週以降に自然に流産してしまった場合も同様です。

死産届の提出期限は分娩した日から7日以内です。死産届が受理されると、火葬許可証が発行されるため、亡くなった赤ちゃんを火葬してもらいます。

病院によっては、役所での手続きや火葬・埋葬の手配を行ってくれる葬儀社を紹介してくれるようです。

中期中絶できる病院は?

中期中絶は初期中絶と同様、母体保護法に基づいて都道府県医師会が指定した医師しか行うことができません。ただし、中期中絶は分娩方式の手術になり、初期中絶よりもリスクが高くなるため、指定の医療機関であっても中期中絶が対象外のことがあります。

どんな理由があるにせよ、中絶を選ぶのは妊婦さんにとって大変重い決断です。答えがなかなか出せず、悩み苦しむあいだに時間が経ってしまうかもしれません。しかし、中期中絶できる病院は限られているため、中絶を決心した後に病院が見つけられず、中絶できる時期が過ぎてしまうという事態にならないように注意が必要なのです。

中期中絶を実施している病院の中には、女性医師による手術が受けられるところや、24時間診療体制を整えているところもあります。

中期中絶の手術方法と分娩時間は?

人工的に陣痛を起こして分娩する方法

中期中絶は、初期中絶と手術の方法が異なります。

初期中絶の場合、麻酔を投与しながら、器具を使って腟から子宮内の胎児や胎盤を取り出す「子宮内容除去術」を行います。

一方、中期中絶の場合、子宮内容除去術を行うには胎児が成長し過ぎており、母体の負担が大きくなります。そのため、子宮収縮剤で陣痛を起こし、通常の分娩と同じように胎児などを排出します。強制的に子宮口を開き、陣痛を誘発するため、強い痛みや出血を伴うことがあります。

入院期間

初期中絶が日帰りで手術できるのに対し、中期中絶は人工的に分娩させ、手術後に子宮の回復の状態もみるため、入院が必要です。入院期間は手術後の身体の状態や医療機関の方針によって異なりますが、2~3日間が一般的です。

中期中絶の流れと分娩時間

まず血液検査やエコー検査、尿検査を行い、手術日を決めます。このときに同意書を渡されるので、手術当日までに本人とパートナーが署名・捺印し、持参します。同意書は中絶を行うために必ず提出しなければならないものですが、パートナーがわからない場合や意思確認ができない場合は、女性本人の同意だけで手術を行えます。

中期中絶の1~2日前に、ラミナリアやラミセルと呼ばれる特殊な棒を子宮頸管に挿入し、時間をかけて子宮頸管を拡げていきます。初産の方や、経産婦でも帝王切開の経験しかない方、中絶や流産を複数回経験した方などは、子宮頸管を無理に拡げようとすると裂傷してしまうリスクがあるため、細心の注意が必要です。


手術当日、子宮収縮剤を投与して人工的に陣痛を起こします。陣痛の間隔が短くなってきたら、分娩台に上がって胎児を娩出します。分娩時間は個人差がありますが、まれに陣痛の間隔が短くなるのに時間がかかり、1日で娩出できないこともあります。ただし、胎児が小さいため、陣痛が強く規則的に来るようになってから娩出までの時間は短いのが一般的です。

娩出後、エコーなどで確認しながら子宮内に残っている胎盤などを取り除きます。

退院後は決められた診察をしっかりと受け、医師からいわれた安静期間はしっかりと守るようにしましょう。

無痛中絶について

初期中絶が全身麻酔をして眠った状態で手術を行うのに対し、中期中絶の場合、基本的に麻酔をしないため、分娩時に痛みを感じます。しかし、病院によっては、麻酔下で手術する「無痛中絶」に対応した中期中絶を受けられることがあります。

ただし、「無痛」といっても、麻酔の効き方には個人差があるため、陣痛を感じる場合もあるようです。また、ラミナリアなどで子宮頸管を拡張する処置の際や、手術後に麻酔が切れたときに、痛みがあらわれることも考えられます。

中期中絶の費用は?

初期中絶より高い

人工妊娠中絶は基本的に健康保険が適用されず、全額自己負担です。中期中絶の場合、分娩方式で手術しなければならない分、初期中絶に比べて費用が高くなります。病院によって異なりますが、手術前検査と手術、入院の費用をあわせて30~50万円程度必要です。妊娠週数が進むほど検査が増えるなどして、費用負担も大きくなるといわれています。

病院での支払いの他、火葬の料金や、葬儀社に死産届の提出代行や赤ちゃんの安置を依頼する場合はその費用もかかります。

出産育児一時金が出る

中期中絶は、通常の出産と同じくらい費用がかかってしまいますが、健康保険から支給される「出産育児一時金」を申請することができます。出産育児一時金とは、健康保険の被保険者や被扶養者が出産した際に、赤ちゃんひとりにつき42万円が支給されるものです。この制度では、妊娠12週(4ヶ月)以降の流産や早産の他、人工妊娠中絶も対象になります。

中期中絶のリスクや後遺症は?術後の痛みや出血は?

中期中絶のリスクや後遺症

中期中絶は、子宮収縮剤によって陣痛が強くなり過ぎてしまうことがあるのがリスクです。陣痛が強過ぎると、非常にまれではあるものの、子宮破裂を起こす可能性もあります。

また、子宮頸管を拡げる処置の際に子宮頸管裂傷が起こったり、子宮内に残った胎盤などを取り除くときに子宮や腟が傷ついたりするリスクもあります。子宮が傷つく後遺症として、子宮の内側が癒着する「アッシャーマン症候群」を発症すると、不妊症になったり、次回の妊娠で胎盤のトラブルが起こったりしかねません。

中期中絶後の痛みや出血

中期中絶後はお腹の痛みや少量の出血があらわれる場合があります。これは、子宮が妊娠前の状態に戻るのに伴って起こるものです。退院後も、1週間~10日間程度は生理痛のような腹痛や出血がみられますが、多くの場合、大きな問題にはなりません。鎮痛剤や抗生物質が処方されるため、きちんと服用するようにしましょう。

ただし、大量に出血していたり、発熱を伴ったりする場合、子宮内感染などの術後の合併症を発症している可能性もあるため、病院を受診した方が良いでしょう。

中期中絶後の心のケアは?

精神的につらい状態が続く場合

退院後、数日間は安静にするよう指導されます。早く普段の生活に戻って仕事や家事を再開しなければという焦りが生まれるかもしれませんが、手術後で体力が落ちているため、無理は禁物です。

中絶手術は身体への負担が大きいのはもちろん、自分自身が思っている以上に精神的なダメージも受けるものです。中期中絶の場合、お腹の中で赤ちゃんを育てた時間が長く、また、取り出された赤ちゃんと対面することになるため、より強く罪悪感をもつかもしれません。それに加え、手術後につわりがなくなると、中絶したことを余計に実感し、「産んで育ててあげられずごめんね」と苦しむ妊婦さんも多いようです。

また、中期中絶後はホルモンバランスが急激に変化するため、わけもなくイライラしたり、うつっぽくなったりしやすくなります。こうした症状が続く場合、中絶の後遺症として心の病気を発症している可能性もあるため、心療内科やカウンセリングを受けることを検討してみてください。

赤ちゃんの供養について

中絶する理由が何であれ、産声を聞かずに赤ちゃんを死なせてしまうのは、妊婦さんにとってつらいことです。「ごめんなさい」という気持ちや、天国で幸せに暮らしてほしい気持ちなどを込め、赤ちゃんを供養してあげると良いでしょう。

中絶や流産でこの世に生まれずに亡くなってしまった赤ちゃんを供養することを「水子供養」と言い、お寺や神社で受け付けてくれます。供養後には納骨できる場合も多いですが、水子供養料と別途でお布施や管理料が必要です。

中期中絶後に妊娠できる?生理はいつから?

中期中絶を行なうと、その後、生理はいつごろ再開するのでしょうか。一概には言えませんが、30~50日後くらいに生理が来る女性が多いようです。ただし、中期中絶後は精神的なストレスなどでホルモンバランスが崩れやすく、半年以上生理が止まってしまったというケースもあります。2ヶ月以上生理が来ない場合、必ず医師に相談するようにしましょう。

また、中期中絶を経験すると、将来赤ちゃんを授かりたくなったときに妊娠できるか不安になるかもしれません。中期中絶後、妊娠することは十分可能なので、安心してくださいね。ただし、手術によって子宮内が傷ついたり、感染したりすると、不妊症のリスクが高まる恐れがあります。妊娠できた場合も、前置胎盤や癒着胎盤などを起こして赤ちゃんと母体に影響を与える可能性があることは考慮に入れなければなりません。

中期中絶を選んだ人・やめた人の体験談

中期中絶後も赤ちゃんのことを考えてしまう

筆者の友人は、三人目の子を妊娠6ヶ月でやむを得ない理由で中期中絶しました。産声の聞こえない分娩はとてもむなしく、つらかったそうです。その後、ずっと赤ちゃんのことが頭から離れなかったと言います。

流産した子が戻ってきたと思い、中絶をやめた

筆者の母は、中期中絶の瀬戸際までいきましたが、思いとどまって出産したという経験があります。筆者は当時18歳だったため、そのときのことはとてもよく覚えています。

筆者は5人きょうだいの長子です。5人目の妊娠を知らされたとき、母は40歳でした。年齢的にも経済的にも、とても産む余裕はないと母は思っていたそうです。もしも自分に何かあったら、今いる4人の子どもを残していかなければならないのも怖かったと言います。

しかし、父は、せっかく授かった命なのだから、どうしても産んでほしいと頼みました。母も迷いに迷ったのでしょう。最終的に中絶を決めたときはすでに妊娠5ヶ月になろうとしていました。気持ちが変わらないうちにと産婦人科を受診し、中絶の意思を伝えたところ、「白木の箱を準備してください」といわれ、泣き崩れてしまったそうです。

母はその前年、流産していました。そのことも頭をよぎったのでしょう。あの時の子が戻って来てくれたに違いないと思った母は中絶を思いとどまり、死にものぐるいでも出産して育てると決断したそうです。

その第5子が今ではもう中学校3年生になりました。母は「あのとき産まなければ絶対に後悔していた。産んだ限り、どんな苦労でも買ってやろうと思った」と話しています。

自分の心と身体のためにも中期中絶はなるべく避けて

中絶するかどうか判断するのは大変つらいことです。赤ちゃんの命が自分やパートナーの手に委ねられていると思うと、怖い気持ちにもなるかもしれません。後悔しないようギリギリまで考えたいと思うのは自然な感情ですが、中絶のリスクは妊娠週数が進むにつれて高くなり、妊婦さんの身体にとても負担がかかってしまいます。妊娠中期にもなると、赤ちゃんは人間らしい姿に成長し、胎動も感じるようになるため、心への影響も大きいでしょう。中期中絶にならないよう、できる限り早く決断することが重要です。

熟考したうえで中期中絶にいたっても、手術後は罪悪感にさいなまれることが多いかもしれません。しかし、天国にいる赤ちゃんはママがいつまでも苦しむことを望んでいないのではないでしょうか。小さな命の記憶を胸に抱きながらも、まずは自分自身が笑顔で幸せに暮らせるよう、心と身体を回復させることを大切にしてくださいね。

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