人工妊娠中絶の方法・費用・時期は?手術後の後遺症・出血・痛みは?薬は使えない?
人工妊娠中絶をどうしても選択せざるを得ない場合、さまざまな不安が生まれます。いつまでに、どんな方法で処置を行うのでしょうか。手術ではなく中絶薬を選ぶことはできるのでしょうか。また、手術後に後遺症が残り、将来的に妊娠できないということはあるのでしょうか。ここでは、中絶にまつわるさまざまな疑問に答えていきます。
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目次
人工妊娠中絶とは?
人工妊娠中絶とは、何らかの理由で妊娠を継続できなくなったときに、病院で人工的に流産させることです。一般的には「中絶」といわれています。
中絶は母体保護法という法律により条件が定められており、いつ・誰でも自由に行うことはできません。
行える期間は妊娠21週6日まで
中絶が行える期間は、倫理面や母体への影響を考慮し、妊娠21週6日までと母体保護法で決められています。妊娠22週以降はどんな理由があっても中絶が認められず、妊娠を継続することになります。
正当な理由なく中絶できない
中絶は、妊婦さんの身体的または経済的な理由で妊娠・出産が困難な場合か、性的暴力や脅迫によって妊娠してしまった場合のみに実施できると定められています。病院では、この条件に合致しているか確認するため、医師から中絶したい理由を聞かれることになります。ただし、詳しい状況までは話す必要がないので、安心してくださいね。
たとえば、赤ちゃんに染色体異常がある可能性が高く、重い障害が残るかもしれないことが羊水検査などで判明した場合、染色体異常そのものを理由に中絶することはできません。ただし、妊娠の継続や出産が、妊婦さんの身体的もしくは経済的な負担を大きくすると判断されると、中絶が認められます。
指定の病院以外では受けられない
中絶は、母体保護法に基づいて都道府県医師会が指定した医師しか行えません。ただし、指定の医療機関であっても、妊娠12週以降の中期中絶は対象外のことがあります。これは、妊娠週数が進むごとに、中絶手術の母体へのリスクが高くなるからです。
中絶するかどうか考えるのは、とてもつらく、大変なことで、決心するのに時間がかかるのは無理がありません。ただ、中絶すると決めてから病院探しを始めたものの、なかなか見つけられず、中絶できる時期が過ぎてしまわないように注意が必要です。
未成年は親の同意書が必要
母体保護法では、女性本人と配偶者(パートナー)の同意が得られなければ、病院は中絶を行えないとしています。病院から渡された同意書にふたりとも署名・捺印し、手術当日までに提出しなければなりません。ただし、相手の男性がわからない場合や意思確認ができない場合は、女性の同意だけで手術を行えます。
未成年の中絶については、母体保護法で年齢制限や保護者の同意に関する規定はされていません。法的には、未成年の女性は親の同意なしで中絶を行えるようになっています。しかし、ほとんどの病院は母体へのリスクや費用面を考慮し、親など保護者の同意を求めています。また、女性だけでなくパートナーも未成年だった場合、パートナーの保護者の同意も必要になるようです。
中期中絶は死産届と火葬が必要
妊娠12週以降の中絶は「中期中絶」と呼ばれ、「死産」として扱われます。死産の場合、「死産届」を市区町村の役所に提出しなければなりません。死産届の提出期限は手術した日から7日以内と決まっているので注意しましょう。なお、死産届をした赤ちゃんは戸籍には残りません。
死産届が受理されると、火葬許可証が発行されるため、亡くなった赤ちゃんを火葬してもらい、納骨する流れです。
中期中絶は母体の負担が大きく、手術後に体調が回復するまで時間がかかることが考えられます。したがって、事務手続きなどはできる限りパートナーや家族にお願いすると良いでしょう。
中絶の方法は?手術か薬?
日本国内では、中絶の方法は手術しか認められていません。海外では、妊娠中絶薬を使って人工的に流産させる方法がフランスやアメリカなどで認められていますが、日本では行えません。妊娠中絶薬は痙攣(けいれん)や大量出血など重い副作用が起こる可能性があり、母体に深刻な健康被害をもたらしかねないからです。妊娠中絶薬が認められている国でも、医師の厳重な管理下で服用するように決められています。
日本では妊娠中絶薬が認可されていないため、海外から個人輸入して服用することも禁止です。また、妊娠した本人を含め、指定医以外の人が中絶した場合、「堕胎罪」として罰せられることがあります。人には言いにくい事情があって、誰にも知られずに妊娠中絶薬で中絶したいという女性もいるかもしれませんが、まずは中絶の指定医に相談するようにしてください。
中絶できる時期は?妊娠初期と中期で異なる?
人工妊娠中絶は、手術を行う時期によって「初期中絶」と「中期中絶」に分類され、処置の方法も異なります。中絶は一般的に妊娠週数が進むごとにリスクが高くなるため、妊娠初期のあいだに受けた方が良いとされています。
初期中絶
妊娠初期に行うのが初期中絶です。初期中絶が行えるのはおおよそ妊娠11週6日までで、器具を使って腟から胎児などの子宮内容物を取り出す「子宮内容除去術」を行います。
子宮内容除去術の方法としては、ハサミ状の器具で子宮内容物を出す「掻爬(そうは)法」と、吸引器を子宮内に挿入して子宮内容物を吸い出す「吸引法」があります。
手術は麻酔薬を投与しながら眠った状態で行うため、手術自体の痛みは感じません。ただし、手術前にラミナリアと呼ばれる医療器具を使って子宮頸管を拡げる処置を行う際や、麻酔が切れた後に痛みを伴う場合があります。
中期中絶
中期中絶を実施する時期は、妊娠12週以降22週未満です。つまり、妊娠初期の後半から妊娠中期の途中にかけてということになります。妊娠12週以降になると、初期中絶と同じように麻酔下で胎児を取り出すには胎児が成長し過ぎており、母体のリスクが高くなります。したがって、子宮収縮剤で子宮を収縮させ、人工的に分娩させます。強制的に子宮口を開き、陣痛を起こすため、強い痛みや出血を伴います。
中期中絶は、成長が進んだ胎児を通常の分娩と同じ方法で取り出すため、初期中絶に比べて手術が難しく、身体への負担が大きいです。また、死産届など術後の手続きも多く、精神的なストレスもいっそう抱えやすくなります。中絶するかどうか決めるのは簡単なことではなく、時間が足りないと思うかもしれません。出生前診断の結果が出るタイミングなどによっては、中期中絶を受けざるを得ないこともありますが、できる限り早く決断するようにしましょう。
中絶手術の流れ・費用は?
手術前の検査を行う
中絶を行っている指定医で問診や血液検査、エコー検査などを受け、身体に異常がないか、正常妊娠かどうかといったことを確認します。問題がなければ、手術日を決めます。
初期中絶は日帰りでの手術が可能ですが、中期中絶は人工的に分娩させ、手術後に子宮の回復の状態もみるため、2~3日間の入院が必要です。いずれにせよ、仕事をしている女性の場合、会社を休まなければなりません。しかし、休む理由を職場に伝えるのがつらいという人は多いかもしれません。その場合、無理に正直に話さず、「婦人科系の病気の治療のため」などと言っても差し支えないでしょう。
手術前に子宮頸管を拡げる
手術の1~2日前か手術当日に、ラミナリアやラミセルと呼ばれる特殊な棒を子宮頸管に挿入し、子宮頸管を拡げていきます。無理に拡げようとすると裂傷してしまうリスクがあるため、時間をかけてゆっくりと処置を行う必要があります。
また、基本的に手術前日の夜9時以降は絶飲絶食です。
初期中絶と中期中絶で手術当日の処置が異なる
初期中絶の場合、麻酔薬を点滴で投与しながら、器具を使って胎児や胎盤などの子宮内容物を除去します。手術自体は30分程度で終わりますが、手術後は病室で休み、麻酔が切れるのを待ちます。麻酔が切れ、出血が少ないこと、お腹の痛みが強くないことが確認できたら退院です。麻酔が切れる時間は個人差がありますが、退院までは3~5時間程度かかることが多いようです。
一方、中期中絶の場合、子宮収縮剤を投与して陣痛を誘発し、陣痛の間隔が短くなってきたら、分娩台で胎児を娩出します。通常の分娩と同様、基本的に麻酔は行わないため、娩出の際に強い痛みを伴います。手術後は経過観察のために2~3日間は入院し、退院後も医師から指示された期間は自宅で安静にするようにします。
中期中絶は初期中絶よりも費用が高い
妊娠12週未満に行う初期中絶の場合、手術と手術前の検査の費用を合わせて7万~15万円程度が目安です。一方、中期中絶の場合、分娩方式で手術しなければならない分、初期中絶に比べて費用が高くなります。手術と手術前検査、入院の費用の合計が30万~50万円程度になるようです。さらに、初期中絶、中期中絶ともに、手術後の薬の処方代や診察代など、手術費以外の費用もかかります。
いずれの費用も基本的に健康保険が適用されず、全額自己負担になってしまいます。ただし、中期中絶の場合、健康保険から支給される「出産育児一時金」が申請でき、赤ちゃんひとりにつき42万円を受け取れます。
中絶のリスク・後遺症は?痛みや出血がある?
痛みや出血が一定期間続く可能性がある
中絶を決心したものの、痛みが怖いという女性は多いかもしれません。中絶の痛みとしてまず考えられるのは、ラミナリアなどで子宮頸管を拡張するときのもので、「激痛だった」といった体験談も聞かれます。しかし、子宮頸管を拡張するときの痛みは個人差が大きく、まったく痛みを感じなかったという人もいます。処置前に緊張することで余計に痛みを感じてしまう可能性もあるため、できる限りリラックスするように心がけてください。
手術自体の痛みについては、初期中絶では麻酔薬を点滴で投与する際に痛みを感じることがありますが、手術中は痛みなしです。一方、中期中絶では基本的に麻酔なしで胎児を取り出すため、手術中にやや強い痛みを伴います。妊娠週数が進んで赤ちゃんが大きくなると、この痛みは強くなるといわれています。
手術後は、初期中絶、中期中絶ともに生理痛のような鈍痛や少量の出血がみられる場合があります。これは、子宮が妊娠前の状態に戻る「子宮復古」の過程で起こるもので、1週間~10日間程度続く人が多いようです。退院時に痛み止めの薬や抗生物質が処方されるため、きちんと服用するようにしましょう。
手術後の腹痛や出血は、ほとんどの場合、大きな問題にはなりませんが、大量出血や発熱を伴う場合、術後の合併症を発症している可能性もあり、注意が必要です。
子宮や腟が傷つくといったリスクがある
中絶手術のリスクとしては、子宮頸管を拡げる処置の際に子宮頸管裂傷が起こることが考えられます。また、胎盤などを取り除くときに、子宮壁に穴が開いてしまう子宮穿孔(しきゅうせんこう)が起こったり、腟が傷いたりすることがまれにあります。
さらに、手術で子宮内容物を取り出しきれず、子宮内に残ってしまうという可能性もゼロではありません。
それらの傷や遺残物から子宮内感染を起こす場合もあるため、術後も指定された日に必ず通院するほか、気になる症状があらわれたらすぐに病院を受診してください。
また、中絶の後遺症として、子宮の内側が癒着する「アッシャーマン症候群」を発症する可能性もあります。アッシャーマン症候群になると、不妊症のほか、次回妊娠時、流産や胎盤のトラブルが起こるリスクが高まるとされています。
中絶は身体的な後遺症が残る可能性がある一方、精神的なダメージを受けることも考えられます。中絶後はホルモンバランスがくずれやすいこともあって、ふさぎこみやすくなります。つらい気持ちをひとりで抱え込まず、心療内科医やカウンセラーなど、専門家に頼ることも検討してくださいね。
中絶後の妊娠・生理は?中絶2回以上は不妊のリスク?
中絶後の生理は、約30~50日経ってから来るのが目安となります。ただし、中絶後はホルモンバランスが乱れやすく、この目安より早く生理が来たという女性や、数ヶ月間生理が止まったという女性もいます。中絶後、2ヶ月以上生理が来ない場合、治療が必要なこともあるため、病院に相談してください。中絶後の性行為については、生理が再開するまでは控えた方が良いとする医師が多いようです。
中絶を経験すると、将来、赤ちゃんを授かりたくなったときに不妊のリスクはあるのでしょうか。中絶の後遺症として、子宮内感染が起こったり子宮が傷ついたりすることがあり、こうした症状が重いと、妊娠しにくくなる可能性があると指摘されています。中絶を2回以上繰り返している場合、後遺症が残る確率は高まるため、中絶の経験が1回だけの人に比べて不妊になりやすくなると言えるかもしれません。
ただし、中絶と不妊の因果関係については、医学的に明らかにされていません。中絶が不妊の直接的な原因になるとは限らず、実際に中絶後に妊娠できたという女性もたくさんいるため、心配し過ぎないでくださいね。
しかし、中絶の経験があると、妊娠できた場合も、前置胎盤や癒着胎盤といったトラブルが起こるリスクが高くなるといわれています。そのため、妊婦健診の問診では過去の中絶について尋ねられることがあります。
中絶後の供養は?
中絶後の供養は、亡くなった赤ちゃんに「産んであげられなくてごめんなさい」という想いを伝えたり、天国で幸せに暮らしてほしいという祈りを捧げたりするために行なうものです。中絶する理由が何であれ、小さな命を死なせる決断をするのはつらく、強い罪悪感や悲しみをもつものです。供養を行なうのは、自分自身のこうした気持ちに整理をつけるためでもあります。
中絶や流産でこの世に生まれることができなかった赤ちゃんを供養することを「水子供養」と言い、お寺や神社で行なうことができます。もちろん、水子供養を行なわなかったからといって、たたりなど怖い目にあうといったことはありません。亡くなった赤ちゃんの記憶を心の中に大切にしまってさえすれば、お寺や神社に供養をお願いしないでも十分かもしれません。
中絶後は自分の気持ちと向きあう時間に
中絶を選択する事情は人それぞれにあります。その分、中絶後の想いも人によってさまざまでしょう。後悔の気持ちでいっぱいの人もいれば、安心したという人もいます。中絶後しばらくは、そうした自分の気持ちと向きあう時間が必要かもしれません。
ただ、どんな理由があったにせよ、中絶によって心と身体は多かれ少なかれダメージを受けているのですから、これ以上自分を責めて傷つけるようなことはしないでくださいね。亡くなった赤ちゃんも、ママが苦しむことを望んでいないはずです。