妊娠高血圧症候群とは?原因と治療法、予防法
妊娠中になりやすい病気のひとつに「妊娠高血圧症候群」があります。妊娠高血圧症候群は、妊娠した誰もがなる可能性がある病気です。妊娠前に健康そのものだったからといって他人ごとではありません。ここでは、妊娠高血圧症候群の原因や予防法などを解説します。
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目次
妊娠高血圧症候群とは
妊娠高血圧症候群とは、妊娠中から出産後(妊娠20週から産後12週まで)に高血圧になることで、尿たんぱく、血管障害、臓器障害などを発症する病気のことです。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていました。妊娠高血圧症候群が悪化すると、母体や赤ちゃんの命にかかわる危険もはらんでいます。
原因
妊娠高血圧症候群の原因は、はっきりとはわかっていません。胎盤が作られるときに、胎盤の中にある血管がうまく作れなかったことが原因と考えられているなど、いくつかの説があります。何らかの原因で赤ちゃんにうまく血液がいきわたらず、無理に母体から赤ちゃんに血液を流そうとすることで、血管に圧力がかかって高血圧になってしまいます。
妊娠高血圧症候群の発症しやすさは遺伝する可能性が指摘されています。母親が妊娠高血圧症候群だった場合、その子も発症する可能性は、親が妊娠高血圧症候群でなかった人に比べて2~5倍高くなるといわれています。
種類
妊娠高血圧症候群は、症状の発症した時期や病型によって分類されています。病型は「妊娠高血圧」「妊娠高血圧腎症」「加重型妊娠高血圧腎症」「子癇」の4つです。
特に妊娠20週~32週未満で発症したものを「早発型」といい、妊娠32週以降に発症したものを「遅発型」と分類します。さらに、症状の程度によって「軽症」「重症」の2分類もあります。
妊娠高血圧症候群になりやすい人
妊娠高血圧症候群の原因ははっきりとはつかめていませんが、「妊娠高血圧症候群になりやすい人」はわかってきているようです。それは以下ようなの人たちです。
糖尿病・高血圧・腎臓病の人
糖尿病、高血圧、腎臓病にかかっている人や、かかったことのある人、家族にこの病歴を持っている人がいる場合も、妊娠高血圧症候群になりやすいようです。
太りすぎ・痩せすぎの人
太りすぎや痩せすぎの場合も妊娠高血圧症候群になりやすいようです。中でも、太っている人は注意が必要です。太っていると血管にもともと負担がかかっているので、高血圧になりやすいのです。
35歳以上、または15歳以下の人
35歳以上の高齢で初産の場合、妊娠高血圧症候群になりやすくなります。また、15歳以下の若年者でも妊娠高血圧症候群になりやすいようです。
多胎妊娠の人
多胎妊娠の場合は、より母体への負担が大きいため、さまざまなリスクがあります。妊娠高血圧症候群も併発しやすい症状のひとつです。
初産の人
妊娠高血圧症候群は、経産婦より初産婦に多く見られる病気であることがわかっています。
過去に妊娠高血圧症候群だった人
経産婦でも、以前の妊娠で妊娠高血圧症候群だった人は要注意です。妊娠高血圧症候群は、繰り返すことが多いといわれています。
妊娠高血圧症候群の症状
高血圧
妊娠中の高血圧は、最高血圧140mmHg以上で最低血圧が90mmHg以上のことをいいます。
尿たんぱく
妊娠高血圧症候群となると、腎臓の機能が低下してタンパクが漏れ、尿に出てくることがあります。尿に検査紙をつけ、タンパクの量を調べるのです。およそ30mg/dl以上のタンパクが出ていれば陽性となります。
むくみ
現在は妊娠高血圧症候群の定義から外されていますが、むくみも妊娠高血圧症候群を知る手掛かりとなります。妊娠高血圧症候群の場合は、一晩寝てもむくみは取れません。妊娠後期はむくみやすくなるため、そのむくみが妊娠高血圧症候群によるものかどうかが判断しにくくなりますが、朝起きたときにもまったくむくみが取れてないようなら注意が必要です。
そのほかの症状
頭痛、めまい、倦怠感(だるさ)、目の前がキラキラするなども妊娠高血圧症候群の症状のひとつです。妊娠高血圧症候群の症状でご紹介したもののうち、どれかの症状が当てはまる場合は、主治医に相談してみましょう。
妊娠高血圧症候群の治療法
妊娠高血圧症候群の根本的な治療は、妊娠の中断です。妊娠34週を過ぎている場合で症状が重い場合は、すぐに赤ちゃんを取り出すなどの処置がとられることもあります。しかし、軽症の場合や妊娠週数が34週以下の場合は、安静にした上で食事療法や薬物療法がとられます。
食事療法
緊急性のない軽症の段階であれば、食事療法をとります。塩分は特に高血圧に影響しやすいので、1日に7~8gの量となります。タンパク質は1日に「理想体重×1g」で、それ以外は、BMI値にあわせて食事量を調整します。
薬物療法
重症で緊急性がある場合は、入院ののちに、食事療法と薬物療法がとられます。症状が落ち着かない場合は、分娩となります。妊娠週数が34週以下であっても、母体が最優先のため、分娩を行うこともあるのです。
妊娠高血圧症候群の予防法
ストレスをためない
妊娠高血圧症候群の予防法は、まずストレスをためないことです。ストレスは血管を縮めて腎臓の血流を悪くし、腎機能を低下させる可能性があるので、尿たんぱくが出やすくなります。ストレスのかからない生活を心がけましょう。まったくストレスをなくす生活というのも難しいので、適度なストレス発散法を見つけるのも有効な手段です。
塩分控えめのバランスの良い食事を心がける
高血圧の天敵は塩分です。食事療法でもあるように、塩分は1日7~8gを目指し、バランスの良い食事を心がけましょう。バランスの良い和食でも、しょうゆの使い過ぎには注意してください。
適度な運動をする
妊娠中でも適度な運動をすることで、ストレスの発散になります。太りにくくもなるので、妊娠高血圧症候群を予防することができます。
十分な睡眠をとる
十分な睡眠をとることもストレス発散になり、妊娠高血圧症候群を予防することができます。妊娠中はゆっくり睡眠をとるように心がけましょう。
妊娠高血圧症候群の影響
胎児
妊娠高血圧症候群がおこす胎児への影響はいくつかあります。まず、胎盤や子宮内の血流が悪くなり、十分な酸素や栄養がいかずに、赤ちゃんが育ちにくくなることです。酸素がいかない時間が長くなればなるほど低酸素状態が続き、赤ちゃんの脳にも影響が出ることがあります。最悪のケースでは、酸素が足りずに赤ちゃんが死亡してしまうケースも考えられます。
また、妊娠高血圧症候群が重症となり、母親が危険な状態となれば、34週以下であっても出産となる場合があります。母体の安全が最優先されるために、最悪死産や重篤な症状が赤ちゃんに出る可能性もあるのです。
母体
血圧が上がり、体内の血管や心臓に負荷がかかるため、心機能が落ちて血管から水分がしみ出し、「肺水腫」となることがあります。また、血圧が上がりすぎることで脳出血が起こり、母子ともに命の危険にさらされる事態も想定されます。
母体がけいれんを起こす子癇を引き起こすこともあります。妊娠高血圧症候群になることによってさまざまな影響がおよぼされるのです。
妊娠したら妊娠高血圧症候群の予防を心がけて
妊娠した誰もがなる可能性があるのが「妊娠高血圧症候群」です。発症しまうと、母体や赤ちゃんにまでさまざまな症状や影響があります。妊娠高血圧症候群にならないように、予防することを心がけましょう。