胎児動脈管早期収縮とは?妊娠中のポリフェノールの取りすぎが原因?自覚症状や予防方法【産婦人科医監修】
胎児動脈管早期収縮(たいじどうみゃくかんそうきしゅうしゅく)は、胎児の健康に影響をおよぼす可能性がある病状です。近年になり、ポリフェノールの影響が疑われる症例が報告されていることから、取りすぎへの注意喚起がなされています。胎児動脈管収縮とはどのような病状なのか、赤ちゃんへの影響やママの自覚症状などについて解説します。
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この記事の監修
目次
胎児動脈管早期収縮とは?
胎児ならではの循環システム
大人は鼻や口から取り込んだ空気を肺で酸素と二酸化炭素を交換し、再び体外へと排出しています。肺の中で酸素を取り込んだ血液は、肺静脈を通って心臓の左心房(さしんぼう)から左心室(さしんしつ)へと送られ全身に運ばれていくのです。
全身をめぐり二酸化炭素や老廃物を回収した血液は心臓の右心房(うしんぼう)から右心室(うしんしつ)に戻り、再び肺へ送られます。こうして大人は血液を循環させていますが、胎児は臍帯(さいたい)を通じて胎盤で酸素と二酸化炭素を交換しているため、大人とは血液の流れが異なります。このような胎児特有の循環を「胎児循環」といいます。
胎児循環では、臍帯から送られた血液は胎児の心臓にそのまま運ばれます。そして肺を経由せずに、卵円孔(らんえんこう)や動脈管(どうみゃくかん)という通り道を使って全身へと送り出されます。
※臍帯(さいたい)…へその緒
出生前に動脈管が収縮することで起こる
胎児循環で使われる卵円孔は、右心房と左心房を隔てる心房中隔(しんぼうちゅうかく)という壁に生じた孔(あな)の名称です。左心房と右心房を卵円孔がつなぐことで、血液の循環が行われるのです。動脈管は肺動脈と大動脈をつなぐ血管を指します。出生後に肺呼吸が開始されると、卵円孔と動脈管は役割を終え、数日かけて閉鎖されるのが通常です。
しかし、なんらかの要因で出産前のママのお腹にいるあいだに動脈管が収縮し、完全閉塞もしくは狭窄(きょうさく)が起こることがあります。この病状を胎児動脈管早期収縮(たいじどうみゃくかんそうきしゅうしゅく)といいます。
胎児動脈管早期収縮は胎児水腫(すいしゅ)、子宮内胎児死亡、新生児遷延性肺高血圧症(しんせいじせんえんせいはいこうけつあつしょう)などの原因となることがあるため(※1)、発症を予防するための注意喚起がなされています。
※狭窄(きょうさく)…十分に開かず、狭いこと
※胎児水腫(たいじすいしゅ)…胎児の全身がむくんでしまっている症状
※新生児遷延性肺高血圧症(しんせいじせんえんせいはいこうけつあつしょう)…肺に十分な量の血流が行きわたらず、血流中の酸素量が不足してしまう症状
胎児動脈管早期収縮になる原因は?
妊娠中の薬物投与
胎児の動脈管が閉じずに開通した状態なのは、プロスタグランジンという生理活性物質と一酸化窒素(NO)などの血管拡張作用によります。このプロスタグランジンの産生を抑える作用を持ち、胎児動脈管早期収縮を引き起こす可能性があるのが解熱鎮痛などに使われる非ステロイド性抗炎症薬です。
胎児動脈管早期収縮が認められた症例では、インドメタシンやアセトアミノフェンを服用していたケースがありました。ケトプロフェンを含む外用湿布剤を大量に使用していた症例も報告されています(※1)。
ポリフェノールの過剰摂取
近年になり、ルイボスティーやプルーンなどの食品に含まれるポリフェノールが原因と考えられる症例がいくつか報告されています。実際の症例では、妊娠36週から2週間、毎日ルイボスティーを煮だして飲み続けていた妊婦さんの胎児に動脈管の早期収縮の兆候が見られました(※2)。
胎児動脈管早期収縮は母体に自覚症状はある?
胎児動脈管早期収縮はママ自身が自覚するような痛みや体調の変化に乏しいものですが、赤ちゃんの胎動が普段と比べて弱く感じられたことで産科を受診し、診断につながったケースがあります。
通常は妊婦健診などのエコー検査で異常が発覚することが多く、異常がみとめられた場合は、より詳しく調べるために胎児心臓超音波検査が行われます。
胎児動脈管早期収縮の予防方法は?
薬を服用するときは医師や薬剤師に相談する
市販されている解熱鎮痛剤などの経口薬をはじめ、湿布剤などの外用薬でも胎児動脈管早期収縮を引き起こす可能性があります。薬を使用するときは医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
アセトアミノフェンのように妊娠中でも安全に使用できるといわれている薬も、服用に際しては自己判断を避け、医師や薬剤師に相談してから薬を服用すると安心です。
ポリフェノールの過剰摂取を避ける
ポリフェノールは玉ねぎやトマトといった一般的な食品に含まれる成分で、通常量であれば赤ちゃんへの影響を気にしすぎることはないでしょう。
そうなると、気になるのは一日の摂取量の目安です。これまでのところ妊娠中の目安となるポリフェノールの摂取量は定められていませんが、ルイボスティーが影響を及ぼしたとされる症例では、1日500mLを毎日飲用していたことが報告されています(※3)。
胎児動脈管早期収縮を防ぐためにも、ひとつの食品にかたよって毎日過剰に摂取し続けることは控え、食事や飲料はバランスよくとることを心がけたいですね。
妊婦健診を定期的に受診する
胎児動脈管早期収縮は早期に発見して治療すれば、その後は比較的良好な経過をたどります(※4)。早期発見に有効なのが、妊婦健診などで行われるエコー検査です。定められた妊婦健診は必ず受診し、赤ちゃんの状態を定期的に確認していきましょう。
赤ちゃんの胎動が普段と違うように感じたときは、妊婦健診のタイミングではなくても早めに医師の診察を受けることが大切です。
胎児動脈管早期収縮はバランスの良い食事で対策を
ルイボスティーにしてもアセトアミノフェンにしても、妊婦さんに安全であると紹介されているため、どの情報に従えば良いのか迷ってしまいますね。特にポリフェノールは身体に良いものとされ多くの食品にも含まれていることから、摂取量の明確な基準がないことを不安に感じる場合もあるでしょう。
ポリフェノールの影響が疑われる症例は近年に入り報告がまとめられるようになったもので、発症のメカニズムは明確になっていません。ポリフェノールの摂取や薬剤の服用歴がない場合の症例も報告されていることから、心配しすぎないことも大切なポイントです。
食品を制限しすぎると栄養がかたよってしまい、精神的にもストレスになります。気になることは主治医に相談しながら、バランスよく食事をとり普段通りの生活を意識していきましょう。
※この記事は2022年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。