【産婦人科医監修】早産で生まれた赤ちゃんの生存率は?妊娠何週で生まれると早産になる?原因や予防策を解説
妊娠が判明してから赤ちゃんが無事に誕生することを願い、妊娠に気付いてから流産や早産の予防に気を配りますよね。早産とは妊娠22週~36週での出産のことをいいます。医療の進歩により赤ちゃんの生存率は上がっていますが、実際の生存率やその後の経過も気になります。データをもとに、早産の原因と予防策を産婦人科医監修で解説します。
本ページはプロモーションが含まれています
この記事の監修
目次
早産・後期早産とは?
在胎週数 | 名称 |
---|---|
22週未満の妊娠の中断 | 流産 |
22~37週未満の出産 | 早産 |
37~42週未満の出産 | 正期産 |
42週以後の出産 | 過期産 |
早産/妊娠22〜37週未満の出産
正常な妊娠では、受精卵が着床する卵期、身体の器官が形成される胎芽期、身体が成熟する胎児期をへて出産という経過をたどります。出産予定日は最終月経開始日、排卵日、胎児の大きさなどから算出されますが、一般的な妊娠期間は40週です。
日本では妊娠37週0日から妊娠41週6日までの出産を「正期産」といいます。それよりも早い妊娠22週0日から妊娠36週6日のあいだの出産は「早産」に分類されます(※1)。正期産の時期を過ぎ、出産が妊娠42週0日以降になると「過期産」と呼ばれます。
後期早産/妊娠34〜37週の早産
妊娠34週を超えるとお腹の中の赤ちゃんの皮下脂肪が増え、より人間らしい身体つきになります。そのため、出生時の体重が2,000g以上だった場合、特別なケアを必要としない場合もあります(※2)。
しかし正期産児と比べると、おっぱいに吸いつく力や飲み込む力が弱いなど、未成熟な特徴もみられます。そこで34週0日から36週6日までの早産は「後期早産」と定義され、母子に対するケアやサポートの重要性がうたわれています(※3)。
早産と切迫早産の違いは?治療法は?
切迫早産は早産になる可能性がある場合
早産は妊娠22週から妊娠36週6日のあいだの出産を指しますが、切迫早産とは早産にはいたっていないものの今後早産になる可能性がある状態のことをいいます。日本産科婦人科学会の見識では「子宮収縮(お腹のはりや痛み)が規則的かつ頻回に起こり、子宮の出口(子宮口)が開き、赤ちゃんが出てきそうな状態」とされています(※1)。
切迫早産の治療法
切迫早産と診断された場合、症状の程度によって自宅安静か入院による治療が選択されます。主な治療法としてあげられるのは、薬剤の投与や子宮頸管縫縮術(しきゅうけいかんほうしゅくじゅつ)です。
薬剤投与では、早産の進行を抑えるための子宮収縮抑制薬(しきゅうしゅうしゅくよくせいざい)や赤ちゃんの成熟をうながす副腎皮質ステロイドを使用します。細菌感染があれば抗菌剤が投与されることもあります。子宮頸管縫縮術は子宮頸管が短くなる子宮頸管無力症がみとめられたとき行われる治療法です。
※子宮頸管縫縮術…子宮口を糸で縛る手術。手術の方法は、子宮頸管の長さや状態に応じて医師が決定する
早産の割合は?
2019年の人口動態調査によると、全体の出生数のうち早産となった割合は5.6%、48,538人でした(※4)。そのうち妊娠32週~36週の出産が42,430人ともっとも多くなっています。
妊娠全体からみると決して高い割合ではありません。しかし、早産で生まれた場合、赤ちゃんの状態によってNICUでの長期入院が必要になったり、その後の発達に問題が生じたりする可能性が残ります。妊娠後期に入っても、妊娠中期までと変わらずに早産にならないよう意識して生活することが大切です。
早産で生まれた赤ちゃんの生存率は?
早産となった場合、ママやパパが気がかりなのは早く生まれた赤ちゃんが生存できるのかどうか、ということではないでしょうか。
2008年~2012年の在胎週数別NICU死亡退院数・率をまとめたデータによると(※3)、妊娠22~23週での出産は生存率が66.1%なのに対し、30~31週になると97.5%まで上昇します。
在胎週数 | 生存率 | 人数 |
---|---|---|
22~23週 | 66.1% | 997人 |
24~25週 | 86.5% | 2,861人 |
26~27週 | 94.0% | 4,248人 |
28〜29週 | 96.7% | 5,524 人 |
30〜31週 | 97.5% | 4,850 人 |
もし早産になったら?
近年の周産期医療の進歩により赤ちゃんの生存率は向上しています。その一方で、正期産と比べると早産の赤ちゃんはNICUに入院して特別なケアを行ったり、退院後に在宅医療を必要としたりする頻度が高いのも事実です。
早産で出生した低出生体重児は、呼吸器疾患や視覚・聴覚の障害がみられることもあります。正期産と比べると、学童期に学習障害や行動障害の頻度が上がるという報告もあり、長期的に発達の経過を見守ることが重要です(※6)。
在胎期間によってさまざまなリスクを残す可能性がありますが、適切な診断を受けて早めに治療やリハビリをはじめることで、障害を最小限にくいとめることができますよ。ひとりで悩んだり自己診断したりせずに、主治医や地域の保健師などに相談することが大切です。
早産になる原因は?
早産となる原因はさまざまです。早産のリスクを高める原因として以下のことがあげられます。
・多胎妊娠
・流産・早産の既往がある人
・子宮頸がんなどの治療のために円錐切除術(えんすいせつじょじゅつ)を受けている人
・子宮筋腫や子宮の奇形
・高齢妊娠
・歯周病
・喫煙習慣
・身体の冷え
医療的な観点から早産を選択することも
胎児を包んでいる卵膜に炎症がおきる絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)や細菌性腟症、さらに子宮頸管がゆるんでしまう子宮頸管無力症、妊娠高血圧症候群、胎盤がはがれてしまう常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)は医療的な観点から早産を選択することがあります。
早産は、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離とともに胎盤関連産科合併症(たいばんかんれんさんかがっぺいしょう:PMPC)と呼ばれており、このPMPCの発症は、葉酸やビタミンB類の摂取が関係しています。
これらの成分が不足するとPMPCを発症する場合がありますが、葉酸やマルチビタミンを摂取するとPMPCの発症を抑制されることも報告されています(※6)(※7)。
早産の主な兆候
お腹の張りや痛み、出血、水っぽいおりもの
普段とは違う定期的なお腹の張りや痛み、性器出血が切迫早産の兆候にあげられます。また、水っぽいおりものが継続して出るときは、破水している可能性があります。
月経痛のような子宮収縮をともなう痛み、これまでにない背部痛、おりものの変化を感じたときは迷わず医師や助産師の診察を受けましょう。
自覚症状がない場合も
子宮口が開大する前段階で子宮頸管が短くなってしまうこともあります。子宮頸管の短縮は自覚症状がないまま進行することがあるため、妊婦健診による観察が欠かせません。
早産の予防方法
妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症や細菌感染があれば、医師の指示に従い治療を行いましょう。
早産は冷えやストレス、長時間の労働、疲れ、喫煙などの環境が影響することもあります。ハイリスクとなる生活習慣を避け、栄養バランスが整った食習慣を心がけたいですね。歯科治療を受け、歯周病をケアすることも早産予防につながります。
既往歴や年齢などから早産になりやすいことが指摘されている場合は、無理をせずにリラックスして過ごすことが大切です。妊婦健診をしっかりと受け、医師や助産師の管理のもと心配を取り除いていきましょう。
妊娠中期・後期は早産予防を心にとめよう
妊娠24週に入ると妊婦健診の間隔が4週ごとから2週ごとに短縮されます。健診の頻度があがるのは、出産に備えてママや赤ちゃんの状態をこまめに確認するためです。
早産はママの意識だけで抑えられるものではありませんが、生活習慣が乱れたり疲れがたまったりすることは避け、身体の変化があれば早めに医師に相談できるよう意識しておきたいですね。
赤ちゃんが早産で生まれても自分を責めず、家族でサポートしあうことが大切です。心配なことや悩みがあれば医師や自治体の窓口に相談するようにしましょう。
※この記事は2022年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。