【産婦人科医監修】子宮頸管無力症の症状・原因・手術を解説!予防できるの?
子宮頸管無力症とは、分娩時以外で子宮口が開いてしまう状態を言います。妊娠中期の流産・早産の原因のひとつになっています。痛みなどの自覚症状はないことが多く、病院での検査で診断する必要があります。子宮頸管無力症と診断された場合、どのような治療や手術が必要になるのでしょうか。
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目次
子宮頸管無力症とは
胎児のベッドとなる子宮は、いくつかの部位にわかれています。子宮の下部で腟につながる細い部分を子宮頸部(けいぶ)、子宮頸管より上で卵管や卵巣につながる太い部分を子宮体部と言います。胎児を育てる役目を子宮体部、胎児を保持する役目を子宮頸部が担います。子宮頸部の内部には細長い子宮頸管があり、上端は内子宮口、下端は赤ちゃんが生まれてくる外子宮口です。
子宮頸管無力症とは、出血や子宮収縮(陣痛)などの切迫流早産の兆候がないにもかかわらず、本来赤ちゃんをとどめておく子宮頸管が緩み、子宮口が開いてしまう状態を言います。妊娠中期とよばれる妊娠16~27週頃にみられ、妊娠中期の流産・早産の原因の約20%を占めています。
しかし日本での発症率は低く、全妊婦の0.05~1%程度と推定されています。最近では子宮頸管の細かい変化を早期に診断できるようになりましたが、子宮頸管無力症以外の症状と区別が難しいケースもあるようです。
子宮頸管無力症の症状
子宮頸管無力症では、まだ子宮口が閉じていなければならない時期に子宮口が開いた状態になります。しかし、子宮口開大に伴う痛みや出血などの自覚症状がないため、自分で気づくことは難しいこともあります。子宮頸管の感染症が発症原因となっているときは、お腹の張りを感じることがあるかもしれません。
自覚症状がほとんどないため、子宮頸管無力症の発見には定期的な内診や超音波検査が必要になります。明確な診断基準はありませんが、子宮頸管無力症の場合、検査では子宮頸管の短縮や子宮口の広がり、羊水腔の突出などが認められます。
子宮頸管無力症の原因
子宮頸管無力症は、頸管裂傷などの外傷が原因の場合、先天的な原因で引き起こされる場合がありますが、その他のものに起因する可能性もあり、メカニズムは明確になっていません。
先天的な原因
生まれつき子宮頸管の組織が弱いことが、子宮頸管無力症につながることもあります。子宮から腟につながっている子宮頸管の筋肉組織が体質的に弱いため、妊娠中期以降に子宮頸管が柔らかくなり、子宮口が突然開くケースもみられます。
また、子宮頸管が生まれつき短かったり、子宮の一部に奇形があったりすることが要因となることもあります。一般的に、正常な妊婦の子宮頸管の長さは妊娠中期で約40mmといわれており、30mm以下であれば切迫早産の兆候であるため注意して経過を観察することになります。25mmを下回った場合には早産のリスクがあるとされ、入院管理となる場合が多いようです。
子宮頸管の長さや筋組織の強弱は先天的な要素が強いため、改善や予防は難しいといえるかもしれません。
過去の分娩や手術
過去の人工中絶や流産手術による子宮頸管の拡張、子宮頸部の切除(子宮頸部円形切除術)、子宮内容除去術を行ったときの子宮頸管の拡張、前の出産による子宮頸管の裂傷が子宮頸管無力症の原因となる場合もあります。子宮頸管の筋肉組織が弱まったり、瘢痕化(はんこんか:手術などによってできた欠損・傷が治ったあとに痕が残ること)したりすることが一因となります。
小さな頸管裂傷は、縫合しない場合がほとんどです。大きな頸管裂傷の場合、次の妊娠で子宮頸管無力症になるリスクを防ぐため、出血が少なくても縫合することもあります。
子宮頸管無力症の治療法(手術)
子宮頸管無力症と診断された場合、まずは子宮頸管の短縮や子宮の開大に注意しながら経過観察をすることになります。自宅で安静にする場合もありますし、トラブルにすぐに対応できるように入院が必要な場合もあります。超音波検査で子宮頸管や子宮全体を診ながら、赤ちゃんが成熟するまで安静に過ごします。
症状の進行などによっては、子宮口を縛る手術を行います。流産や早産の可能性があるときは、なるべく早く「マクドナルド法」や「シロッカー法」といった子宮頸管縫縮術を行います。シロッカー法は子宮頸部の前方と後方を切開して糸をかける手術で、マクドナルド法は切開せずに子宮頸部に数方向の縫合を入れる手術です。より効果が確実なのはシロッカー法ですが、マクドナルド法のほうが比較的簡便なので、通常分娩に持ち込みやすいといわれています。
妊娠10ヶ月を超えていつ分娩に入っても問題ないと判断された時点で子宮口を縛ったところを抜糸し、出産に備えます。抜糸の当日~数日以内に分娩が始まることが多いようです。医師からの指示がなければ、手術後も普通に妊娠生活を過ごすことは可能です。手術が赤ちゃんに与える影響もほとんどないといわれています。
子宮頸管無力症の予防法
子宮頸管無力症は自覚症状もほとんどなく、先天的な体質や過去の手術が原因になることもあり、基本的に予防は難しいとされます。しかし、きちんと妊婦健診をうけることで、早期発見の可能性は高まります。
早期に子宮頸管無力症と診断されれば、経過観察や手術などで早産や流産を防ぐこともできます。初産で子宮頸管無力症と診断されたことがあるママは、予防として早めに子宮頸管を縫って縮める手術をすることもあるでしょう。
二人目での子宮頸管無力症
子宮頸管無力症は、突然発症する可能性があるため、初産でトラブルがなかったママも、二人目から発症する可能性はあります。初産で子宮頸管無力症と診断されたママは、二人目以降の出産で子宮頸管無力症を発症するリスクはより高くなります。
子宮頸管無力症の既往歴があるママは、検査や内診で注意深く子宮頸管の状態を観察する必要があります。医師の方針によっては、予防的に子宮頸管縫縮手術を行うこともあります。医師に相談し、治療方針を十分に話しあうことが大切です。
子宮頸管無力症は定期的な検査や健診が大事
子宮頸管無力症は、妊娠中期以降自覚症状がないまま子宮口が広がっていく症状です。流早産の原因となりますが、発症率は高くはありません。定期的な妊婦健診で、早期に発見することが可能です。
早産の可能性がある場合は手術が必要になることもありますが、経過に問題がなければ普通の生活を続けることができます。安静にすることが必要なため、仕事などがあるママは医師とよく相談しましょう。手術は保険が適用されますが、数万円かかるのが一般的です。民間の保険適用は契約内容によって違うので、事前によく確かめておきましょう。