安定期(妊娠中期)の流産の確率・原因は?気づかない場合も?【産婦人科医監修】
安定期(妊娠中期)は体調が良くなる妊婦さんが多く、家事や仕事を頑張ってしまいがちです。しかし、妊娠初期ほどではないものの、安定期も流産が起こるリスクがあるため、決して無理はしないようにしましょう。ここでは、安定期に流産が起こる確率や原因、流産の兆候、流産後の妊娠について産婦人科医監修で解説します。
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目次
安定期(妊娠中期)の流産とは?
妊娠中期(妊娠16週~27週)に入ると一般的に「安定期」といわれています。安定期は胎盤が完成する時期で、多くの妊婦さんは体調が落ち着き、つわりが軽くなるようです。流産する可能性も妊娠初期に比べて低くなりますが、リスクがまったくないわけではありません。
安定期の流産が起こる時期
そもそも流産とは、赤ちゃんが子宮で成長できず、妊娠22週に満たずに妊娠が中断されることです。妊娠22週以降は生まれても育つ可能性があるため、早産として区別されています。
流産の中でも、妊娠12週未満に起こる流産を「早期流産」、妊娠12週以降から22週未満に起こる流産を「後期流産」と言います。したがって、安定期の流産は後期流産ということになります。
後期流産は死産とされ、役所に死産届を提出する必要があります。
安定期の流産の分類
流産は症状によって「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」と「進行流産」に分類されます。
□稽留流産
稽留流産とは、胎児が死亡し、子宮内にとどまった状態ですが、母体に自覚症状がありません。
□進行流産
出血がみられ、子宮内容物が外に出てきている状態です。流産の進行の程度により、胎児とその付属物が完全に排出された「完全流産」と、子宮内容物が完全に排出されず、子宮内に一部が残っている「不全流産」に分類されます。
安定期(妊娠中期)に流産する確率
全妊娠に対する流産の確率は約15%とされ、決して珍しいことではありません。母体の年齢が上がるにつれて発生頻度は高くなり、40歳以上の流産率は25%にも達します。
流産のほとんどは早期流産ですが、約20%は妊娠12週以降に起こるといわれています。安定期は母子の状態が安定してきているとはいえ、引き続き流産するリスクはあるということです。
安定期(妊娠中期)に流産する原因
早期流産は、染色体異常など胎児側に原因がある場合がほとんどです。一方、後期流産では母体の異常によって起こる場合も多くなります。
子宮奇形
子宮の形が先天的に正常と異なる「子宮奇形」が流産の原因になることがあります。子宮の形態に異常があると、血流が滞る部位ができてしまいます。そこに受精卵が着床すると、受精卵が育てず、流産しやすくなるのです。
子宮筋腫
子宮筋腫とは、子宮の筋肉の一部に発生する良性の腫瘍です。もともと子宮筋腫を持っている方が妊娠すると、腫瘍への血液供給が途絶え、腫瘍が壊死することがあります。これを「筋腫の変性」と言い、強い痛みがでて子宮の収縮を起こし、流産の原因になる可能性があります。
子宮頸管無力症
子宮頸管無力症とは、子宮口と腟をつなぐ子宮頸管が弱くなり、赤ちゃんが大きくなるにつれて子宮口が開いてしまう病気です。子宮頸管無力症の発生率は0.05~1%とされていますが、流産・早産の原因の約20%を占めています。また、3回以上流産を繰り返してしまう「習慣流産」の原因のひとつでもあります。
絨毛膜羊膜炎
子宮の中で赤ちゃんを包む絨毛膜と羊膜が細菌感染し、炎症を起こすことを「絨毛膜羊膜炎」と言います。通常、腟内は酸性に保たれ、細菌が増殖しないようになっています。しかし、妊娠中は免疫力が低下していることから細菌性腟炎になりやすく、細菌感染と炎症が絨毛膜と羊膜にまで波及するリスクが高まります。
絨毛膜羊膜炎になると、子宮頸管が軟らかくなったり、子宮が過度に収縮したりすることから、流産しやすくなります。
生活習慣やストレス
母体への強いストレスが後期流産の原因になる可能性があります。また、激しい運動や、喫煙、肥満、飲酒、カフェイン摂取といった生活習慣も流産のリスク因子として報告されています。
安定期に入ると、つわりが軽くなる分、急に家事や仕事を頑張ってしまう妊婦さんが多いですが、くれぐれも無理をしないようにしましょう。
安定期(妊娠中期)の流産の兆候
安定期に起こる後期流産の兆候は以下の通りです。
出血
安定期は妊娠初期に比べて出血することが減ります。もしも出血がみられたら流産の可能性がゼロではないことを知っておきましょう。進行流産の場合、多量の出血や陣痛のような下腹部痛が症状としてあらわれます。まだ流産はしていないものの、その危険性がある「切迫流産」の場合も、少量の出血と軽い下腹部痛があらわれることがあるため、出血に気が付いた時点で産婦人科を受診することが大切です。
お腹の痛みや張り・腰痛
妊娠中期も疲れや便秘などが原因でお腹の痛みや張り、腰痛が起こることはあります。しかし、陣痛のように周期的に症状が出る、しばらく休んでも症状が治まらない、出血を伴うといった場合は、子宮の収縮が起こっている可能性があり、注意が必要です。
おりものが変わる
流産を引き起こす原因となる絨毛膜羊膜炎は、重症化すると、おりものが生臭くなったり、灰色がかったりといった症状があらわれます。この他、陰部のかゆみや発熱を伴うこともあります。
自覚症状なしの場合も
亡くなった胎児が子宮内にとどまったままの稽留流産の場合、自覚症状がないことが多く、流産していることに気付かない可能性があります。
一方、胎児やその付属物がすべて自然に出てしまった完全流産になると、それまでにあった出血や腹痛が治まったり軽くなったりするようです。
安定期(妊娠中期)の流産では手術が必要?
早期流産では、腟から器具を入れて子宮内の残存物を掻(か)き出す「掻爬(そうは)法」を用いて「子宮内容除去術」を行うのが一般的です。一方、後期流産では、掻爬法を行うには胎児が大き過ぎて、母体に大きな負担がかかります。そのため、陣痛促進剤によって人工的に陣痛を起こし、通常の出産と同様に胎児と胎盤を娩出します。
強制的に産道を開いたり、子宮収縮を起こしたりするため、手術中や手術後数日間は激しい痛みや出血を伴う場合があります。掻爬法による子宮内容除去術が日帰りで行えるのに対し、陣痛誘発による処置は数日間の入院が必要です。
後期流産の処置は、子宮収縮薬によって子宮に過度の負荷がかかるため、非常にまれながら「子宮破裂」が起こる可能性があります。また、子宮頸管を拡げる際に子宮頸管が切れてしまう「子宮頸管裂傷」のリスクもゼロではありません。
なお、妊娠中期以降の切迫流産の場合、子宮収縮がみられれば子宮収縮抑制薬を用いて、妊娠の継続を図ります。
流産後の妊娠はどうなる?
流産を繰り返す頻度
一度流産してしまうと、また流産してしまうのではないかと不安になるかもしれません。
流産を2回繰り返す「反復流産」の頻度は4.2%、3回以上繰り返す「習慣流産」の頻度は0.88%といわれています。しかし、一度目の流産が引き金となって流産が何度も引き起こされるのではなく、染色体異常や子宮奇形など、何らかの原因がもともとあるケースが考えられます。
流産の処置によって、長期的な合併症として習慣流産や生理不順、不妊症が起こるリスクも予想されますが、医学的には明らかになっていません。
流産後の生理
流産後の生理は、流産してから3~6週間後に起こる人が多いようです。ただし、流産は心に大きな負担がかかるわけですから、ホルモンバランスがくずれやすく、生理の再開が遅れるといったことは珍しくありません。あくまでも目安として考えて、まずは心と身体を回復させることを第一に考えてくださいね。
流産後の妊活のタイミング
流産後、少し気持ちが落ち着くと「また赤ちゃんを授かりたい」と思うようになるのは自然なことです。妊活を再開するタイミングについては、流産後の身体の状態は個人差があるため、厳密に決められていません。ただ、流産後、少なくとも1~2回は生理を見送るよう医師に指導されることが多いようです。これは、生理再開直後は子宮の状態が妊娠に向けて完全に整っていない場合があるからです。
無理に元気になろうとしないで
流産で亡くなった赤ちゃんのことを思うと、悲しみや無力感、罪悪感など、さまざまなつらい感情が押し寄せてきます。しかし、流産はどんなに気を付けて過ごしていても、起こるときは起こってしまうものなので、決して自分を責めないでくださいね。
流産後は身体も心も不安定になるのは当然です。しかし、「早く元気にならなきゃ」と思わないで良いのですよ。自分ひとりで抱えこまず、周りをどんどん頼りながら、「いつの間にか少し元気が出ていたな」と思える日を待ちましょう。
※この記事は2022年11月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。