羊水過多症の原因と症状は?羊水過多が赤ちゃんが障害児やダウン症になる可能性は?【産婦人科医監修】

「羊水過多症」とは、先天異常や妊娠糖尿病などが原因で、羊水が多くなりすぎてしまい、お腹の張りなどの自覚症状があらわれるものです。妊娠中は早産の可能性、出産後も赤ちゃんに障害が残る可能性があるなど、さまざまなリスクがあります。ここでは、羊水過多症の原因・症状のほか、ダウン症や障害との関係について解説します。

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この記事の監修

浅川 恭行
産婦人科医
浅川 恭行

目次

  1. 羊水過多症(ようすいかたしょう)とは?
  2. 羊水が多くなりすぎる原因
  3. 羊水過多症の症状
  4. 羊水過多症は先天異常(ダウン症)の可能性がある?
  5. 羊水過多症の診断法
  6. 羊水過多症の治療法は?入院する?
  7. 生活習慣を整えて羊水過多症のリスクを減らして
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羊水過多症(ようすいかたしょう)とは?

妊娠中、お腹の赤ちゃんは子宮内を満たす羊水に守られながら誕生のときを待ちます。羊水は、お腹の外から赤ちゃんにかかる衝撃を和らげたり、赤ちゃんの体温を保ったり、肺の発達を促したりする役割があります。

羊水の量は妊娠8週頃から増え始め、妊娠30~35週頃に最大約800mLとなります。その後はしだいに減っていき、出産のころには200~400mLくらいになるのが正常です。

日本産科婦人科学会では、妊娠の時期を問わず、羊水の量が800mLを超えた状態を「羊水過多」と定義しています。羊水過多に伴い、お腹の張りや体重の急激な増加といった自覚症状があらわれた場合に「羊水過多症」と診断されます。

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羊水が多くなりすぎる原因

羊水は、妊娠初期には母体の血液や羊膜からしみ出してきたもので構成されていますが、妊娠中期以降には胎児が羊水を飲み込んで尿として排泄する胎児尿が主成分になります。羊水の量は通常、胎児が吸収する量と排泄する量のバランスが保たれていて、過剰には増えません。しかし、先天異常などが原因となって羊水が過剰に産生されたり、胎児の羊水の吸収量が低下したりすると、羊水過多を引き起こす可能性があります。

ただし、羊水過多の約60%は原因不明とされています。

羊水の産生が過剰になる

羊水の産生が過剰になる原因のひとつに「妊娠糖尿病」があります。母体の血糖値が高いと、母体から栄養をもらっている胎児も高血糖になります。高血糖によって、胎児の血液の浸透圧が高まって血液量が増える結果、尿量が増加すると考えられています。

また、双子で胎盤を共有している「一絨毛膜二羊膜双胎(いちじゅうもうまくにようまくそうたい)」の場合も羊水過多の可能性が高まります。一絨毛膜二羊膜双胎の約10%は、胎児のあいだを行き来している血液のバランスが崩れる「双胎間輸血症候群(TTTS)」を発症するといわれています。TTTSによって、血液が余分に流れてくる方の胎児(受血児)が多尿になることで、羊水過多になってしまうのです。

一方、以下の病気が原因で胎児の脳脊髄液(のうせきずいえき)が漏れ出し、羊水過多になることもあります。

□胎児の頭蓋骨の上部と脳が欠ける「無脳症」
□脳脊髄液が過剰にたまる「水頭症」
□脊髄の形成に異常が生じる「二分脊椎(にぶんせきつい)」

羊水の吸収量が低下する

胎児の羊水の吸収量が低下する原因には、「食道閉鎖症」「十二指腸閉鎖症」「横隔膜ヘルニア」などによって消化管の通過障害が起こることがあげられます。また、「無脳症」「水頭症」「二分脊椎」などが原因で嚥下(えんげ)障害が起こり、胎児が羊水をうまく飲み込めなくなる場合もあります。

なお、十二指腸閉鎖症の場合、ダウン症候群などを合併することが多いとされています。

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羊水過多症の症状

羊水過多になると、子宮が大きくなるため、妊娠中から分娩後にかけてさまざまな症状や合併症があらわれます。

妊娠中

妊娠中の自覚症状としては、お腹がパンパンに張る、頻尿になるといったことがあげられます。これは、大きくなった子宮が胃や膀胱など周囲の器官を圧迫するためで、重症化すると呼吸困難や吐き気、嘔吐などもあらわれるようになります。

体重や腹囲が急激に増加した場合も、羊水過多症の可能性があるので注意が必要です。

羊水が多いと、胎児と子宮壁の距離が遠くなるため、胎動を感じにくくなるという妊婦さんもいます。

また、羊水が増えることで子宮下部が過剰に引き伸ばされると、「切迫早産」のリスクが高まります。羊水を包む卵膜が薄くなるため、本陣痛が始まる前に破水してしまう「前期破水」にも要注意です。

破水時

破水すると、羊水が多いと胎位異常が起こって逆子になりやすく、破水時に胎児よりも先にへその緒が出てしまう「臍帯脱出(さいたいだっしゅつ)」の可能性も高まります。

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分娩時・分娩後

羊水過多で子宮が伸びすぎてしまうと、分娩時に「微弱陣痛」やお産が長引く「遷延分娩(せんえんぶんべん)」のリスクが高まります。

また、分娩後の子宮の収縮がうまくいかず、子宮からの出血が止まらない「弛緩出血(しかんしゅっけつ)」になる場合があります。

さらに、出産後は通常1ヶ月程度で子宮の大きさや硬さが妊娠前の状態に戻るのですが、羊水過多症では子宮の収縮と回復が順調に進まない「子宮復古不全」になる可能性もあります。

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羊水過多症は先天異常(ダウン症)の可能性がある?

羊水過多症の胎児の約20%には、二分脊椎や無脳症などの先天異常があるといわれています。特に、十二指腸閉鎖症が原因の羊水過多症の場合、ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率が高いようです。羊水過多症は前期破水や常位胎盤早期剥離などの異常分娩を引き起こしやすいこともあり、先天異常やダウン症の胎児の周産期死亡率は健常児の約2~7倍にもなります。

また、羊水過多症は早産になりやすいため、未成熟な「低出生体重児」が生まれて、成長してから学習障害や聴覚障害などさまざまな障害が残る可能性も否めません。

羊水過多症の原因が妊娠糖尿病の場合には、胎児の膵臓(すいぞう)からインスリンが過剰に分泌されることで「巨大児」になりやすくなります。巨大児として生まれると、呼吸障害や低血糖、心不全症状を発症する危険性があります。

ただし、とりわけ原因不明の羊水過多症の場合には、無事に出産できて赤ちゃんに目立った障害もなかったという声はたくさん聞かれますよ。

羊水過多症の診断法

羊水の量を実際に測定することは困難ですが、妊婦健診の経腹超音波(エコー)検査で「羊水インデックス(AFI)」か「羊水ポケット」を測って推定することができます。

AFIは、子宮内を4分割してそれぞれの羊水の深さを合計した数値です。一方、羊水ポケットは、羊水腔が最も広くなる断面で、胎児とへその緒を含まずに描く最大の円の直径を指します。AFIが24cm以上、あるいは羊水ポケットが8cm以上の場合、羊水過多と診断されます。

さらに、羊水過多とともに、子宮が急激に大きくなって体重が増えるといった自覚症状がみられると羊水過多症となります。

なお、羊水過多と診断された場合には、エコー検査やMRIを行い、胎児に先天異常があるかどうか詳細に調べていきます。

羊水過多症の治療法は?入院する?

妊娠中

羊水過多症になると、子宮壁が過度に引き伸ばされて、切迫早産や前期破水を起こしやすくなります。そのため、羊水過多症と診断されたら、入院して安静に過ごし、早産を予防します。必要に応じて、子宮収縮抑制薬を投与することもあるでしょう。

さまざまな検査をして羊水過多症の原因を探り、原因がわかればそれに応じた治療も行います。妊娠糖尿病が原因ならば、食事の管理やインスリン療法によって症状の改善を目指します。

先天異常が見つかった場合には、分娩方法や出生後の赤ちゃんに予想される障害、治療計画などについて説明を受けるでしょう。

羊水が増えすぎて呼吸困難などの圧迫症状が強いときは、注射針によってお腹から直接羊水を抜き取ることもあります。羊水が急激に減ると胎盤早期剥離や陣痛が起こるリスクが高まるため、1回につき1000~1500mLを数時間かけてゆっくりと抜くようにします。

分娩時・分娩後

症状が軽く、お腹の赤ちゃんが十分に成熟するまで妊娠が継続できれば、自然分娩が可能なケースもあるようです。しかし、羊水過多症は切迫早産や逆子、臍帯脱出などのリスクが多く、帝王切開の可能性が高くなります。

出産後は子宮の収縮不良で弛緩出血になり、出血が止まらないリスクがあるため、子宮収縮薬の投与や子宮底マッサージを行います。大量に出血している場合には輸血や子宮の摘出を検討することもあります。

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生活習慣を整えて羊水過多症のリスクを減らして

羊水過多症の約60%は原因不明とされ、確実に予防するのが困難です。ただし、妊娠糖尿病が原因のこともあるので、妊娠糖尿病を予防できれば、羊水過多症のリスクを減らすことにもつながるでしょう。妊娠中は栄養バランスの良い食事を心がけ、適度に運動するなどして生活習慣を整えるようにしましょう。

羊水過多症は、妊娠中はもちろん分娩時や分娩後にもさまざまなリスクが予想されるため、不安になってしまうのは無理もありません。しかし、安静に過ごして早産を防ぐなど、妊娠の状態をしっかりと管理することで無事に元気な赤ちゃんを出産できたケースはたくさんあるので、過度に心配しないようにしてくださいね。

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