【産婦人科医監修】羊水の量・色・成分・においは?羊水検査は必要?
妊娠の進行とともに、羊水の量や成分は変化していきます。羊水は、ママの子宮の中でどのような役割を担い、胎児にどう影響しているのでしょうか。胎児にとって好ましい量や色、においといった羊水の状態について解説します。また、生殖医療技術の進展にともない、近年認知度と必要性が高まってきている出生前診断についても取り上げます。
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目次
羊水の役割と成分は?尿でできている?
羊水は、胎児を包む羊膜の中に蓄えられている液体です。妊娠初期の段階では、母体や胎児の血漿(けっしょう)に由来していると考えられていますが、具体的なことはまだ明らかにされていません。妊娠12~16週くらいになると、羊水の主な成分は、胎児から排出された尿や肺胞分泌液(はいほうぶんぴつえき)となります。
羊水に尿や肺からの分泌液が含まれるのは、胎児が羊水を飲み込んで排尿や肺呼吸の練習を行っているからです。口から飲み込んだ羊水は胃から小腸へと吸収され、一部が腎臓へ、一部は血液に乗って肺まで運ばれます。腎臓に送られた水分は尿として排出され、肺に届けられた水分は、肺胞分泌液として口から排出されます。
肺を使って羊水を循環する一連の運動は「呼吸様運動(こきゅうよううんどう)」と呼ばれます。胸郭(きょうかく)を動かし、肺呼吸の練習をしているのです。こうして羊水は、胎児の肺の成熟に貢献しています。
また、羊水が増えることで胎児の動きやすい空間が作られ、筋肉の発達や骨格の形成が促進されます。さらに羊水は、胎児と羊膜の癒着を防ぎ、外からの衝撃から胎児を守る役割も果たします。胎児の体温維持や、分娩の際の潤滑液、洗浄液としての役割も、羊水の大切なはたらきです。
羊水の量や重さは?多い・少ないときのリスクは?
羊水の量は妊娠初期から徐々に増えていき、妊娠32週頃にピークを迎えます。ピーク時の羊水量は800mLほどです。臨月ころまで羊水量は横ばいで推移しますが、その後少しずつ減りはじめ、妊娠40週頃には400~500mLになります。
羊水の量には個人差があるものの、正常値から外れた場合、妊娠経過の観察や分娩の管理が必要になることがあります。そのため、妊婦健診時には経腹超音波検査(エコー検査)を行い、羊水ポケット(AFP)、羊水インデックス(AFI)、最大羊水深度(MVP)といった計測により羊水量を評価します。
羊水ポケットは、子宮壁から胎児までの距離がもっとも広い場所に円を描き、その直径が何cmかを測定します。2cmに満たないと羊水過少、8cm以上で羊水過多と診断されます。羊水インデックスは子宮を4つに区切り、それぞれの羊水最大深度を測ってその合計値であらわします。AFIが5cm未満は羊水過少、AFI24cm以上が羊水過多です。
羊水過少、羊水過多になる原因はさまざまですが、原因が分からないことも多くあります。また状況によって原因疾患の治療、誘発分娩や帝王切開、産後のNICUでの管理など、症状に合わせた対応が求められます。そのため、エコー検査で羊水の異常が認められた場合は、今後の経過について医師によく確認することが大切です。
羊水の色やにおいは?緑に濁ることも?
羊水の色はもともと無色透明です。しかし、妊娠中期以降になると胎児の皮膚や胎脂が混じり、羊水の色は乳白色に変化していきます。においには個人差があり、破水のときに無臭で気づかなかったという体験談がある一方、生臭さを感じたという感想も見受けられます。
羊水の色は透明から乳白色であれば正常ですが、全妊娠の約14%の割合で羊水が黄色や緑色に混濁することがあります。羊水混濁が起こるのは、胎盤機能の低下や酸素不足で胎児にストレスがかかり、羊水中に胎便を排泄してしまうことが原因です。予定日を超過し妊娠42週を過ぎると、羊水混濁となる割合は増加します。
濁った羊水を胎児が飲んでしまうと、胎便吸引症候群や感染症を発症するリスクが高まります。そのため羊水の混濁がある場合は分娩監視装置を使って赤ちゃんの様子を確認し、異常が見られた場合は帝王切開に切り替えたり、産後の管理が行われたりします。
羊水検査は受けるべき?羊水穿刺とは?
羊水検査は、胎児の染色体異常や先天性異常の有無を調べたり、羊水感染の有無や胎児の肺成熟度を調べたりする目的で行われます。一般的に羊水検査という場合は、出生前検査(しゅっせいぜんけんさ)の確定的検査を指すことが多いでしょう。
羊水検査ではダウン症候群やターナー症候群などの染色体異常を調べ、遺伝子疾患や開放性神経管奇形を検査することもあります。検査方法は「羊水穿刺(ようすいせんし)」をとり、細い注射針を羊膜に挿入して羊水を20mLほど採取します。検査の時期は妊娠15~16週以降です(※1)。
羊水検査はほぼ100%の精度で診断が可能ですが、診断対象の病気は限られており、検査結果が「異常なし」であっても、そのほかの病気や障害の可能性がまったくなくなるわけではありません。また、羊水を採取することで早期破水や流産となるリスクも約0.3%あります(※2)。
羊水検査を含む出生前検査は、結果次第で家族の今後にとって非常に重大なテーマが提示されることとなるため、検査を受けるかは慎重な判断が必要です。一般的には誰もが受ける検査ではなく、夫婦のいずれかが染色体異常があったり、高齢妊娠であったりする場合に実施を勧められることが多いようです。
検査を受ける場合、事前に専門家による遺伝カウンセリングや病院、自治体からのサポートを受け、十分に情報を収集することが大切です。そのうえで、パートナーと一緒に検討を重ね、納得できる答えをみつけていきましょう。
卵膜が破裂する・羊水が漏れると破水?どう対応する?
正常な妊娠では、陣痛が起こり分娩が開始した後に卵膜が破れ破水が開始します。しかし、陣痛より先に破水が起こることがあります。この状態を「前期破水」といいます。破水の際は「風船が破裂したような音がした後に、羊水が勢いよく流れ出た」という人や、「尿漏れかと勘違いするほどの少量が続き、念のため病院にかかったら破水だった」というように、状況は人によってさまざまです。
破水に気づかず、羊水の流出が始まってから分娩までの時間が長く経過してしまうと、胎児の心拍が一時的に低下したり、腟からの細菌感染が起こったりすることがあります。腟からの分泌物(おりもの)がいつもと違うときや、気になる症状があるときは、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
破水に気づいたら細菌が腟から侵入しないようにすることが大切です。シャワーや入浴は避け、できるだけ早く医療機関を受診するようにしましょう。
羊水に関する体験談
筆者が第一子を出産した際は、前期破水から始まりました。里帰り先の実家で両親と夕飯を食べているときに、なんとなくお腹に違和感を覚え、トイレに立った瞬間に破水。バケツをひっくり返したのではないかと思うほど、ぬるめの温度の羊水がダバダバと流れ落ちました。
即座に病院に連絡し、そのまま母の運転する車で病院に向かいました。羊水は潮のようなにおいがして、車のシートにはビニール製のゴミ袋とバスタオルを数枚重ねて乗り込んだものの、「ああ、車がくさくなってしまうなあ」とぼんやり考えていました。
感覚としては、お腹の羊水がすべて流れ落ちてしまったのではないか思うほどの大量破水でした。しかし、病院に着くと助産師さんから「陣痛室で待つように」と指示されたので、思っていたよりも緊迫した状況ではなかったのかもしれません。
しかし、陣痛室へ移動する途中で急速に陣痛が強まったため、結局陣痛室には行かずそのまま分娩の流れとなりました。今考えると、その日は朝からお腹にいつもと違う痛みと収縮を感じていたので、違和感を覚えたときに病院にかかっていれば焦る必要もなかったのかなと感じています。
羊水は赤ちゃんを守る大切なバリアー
羊水は赤ちゃんが快適に過ごすための環境を整えているだけではなく、赤ちゃんの身体の機能を高めるためにも、とても重要なものだということがわかります。定期健診をしっかり受けて、羊水の状態を管理していきたいですね。
また、妊娠高血圧症候群や絨毛膜羊膜炎などの発症は、羊水の質に影響する可能性があります。妊娠中はストレスや疲れをためないようにして、できるだけ規則正しい生活を送れるよう心がけていきましょう。
※この記事は2025年3月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。