【産婦人科医監修】胎嚢(たいのう)とは?胎嚢が確認できるのはいつ?妊娠4週・5週・6週・7週・8週ごとの大きさの平均について解説
赤ちゃんが入る胎嚢はとても小さい袋ですが、直径2mmを超えるとエコー検査で容易に確認できるようになります。胎嚢の平均的な大きさはどれくらいなのか、いつごろ胎芽や心拍が確認できるのかも気になります。胎嚢の平均的な大きさや形、妊娠週数にあわせた目安、簡単な計算で胎嚢の大きさを求める方法を産婦人科医監修で解説します。
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目次
胎嚢(たいのう)とは?
胎嚢は「胎芽(たいが)」を包む袋
妊娠初期に子宮の中に赤ちゃんを包む「胎嚢(たいのう)」と呼ばれる袋が形成されます。胎嚢はGSと呼ばれることもあります。胎嚢は受精卵が着床した場所に作られ、妊娠を判断する大きな要素となります。胎嚢・胎芽・心拍確認の三点が確認できた時点で、妊娠が成立(確定)します。
胎嚢が確認できても胎芽が確認できない場合や心拍が確認できない場合には、自然流産の可能性があります。ただし生理周期の乱れや最終月経日(最終生理日)の誤認識などが原因で、胎嚢が確認できる時期がずれるケースもあります。
胎芽が成長すると「胎児」になる
胎嚢は妊娠4週のはじめから5週頃にエコー検査で確認でき、5週の前半には胎嚢の中に小さなリングが出現します。このリングは「卵黄嚢(らんおうのう)」と言い、胎盤が完成するまで赤ちゃんに栄養を供給したり、造血したりする役割を担っています。その後、5週の後半から6週頃になると、卵黄嚢に接するようにして胎芽が確認できるようになります。
妊娠初期の赤ちゃんは着床から7週までを胎芽、8週からを胎児と呼ぶのが一般的です(※1、※2)。ただし胎芽から胎児に移行する時期は、生物学的な観点と医学的な観点で解釈が異なります。
胎嚢の大きさの平均は?教えてもらえない場合もある?
胎嚢の大きさには個人差がある
胎嚢は妊娠5週0日(受精後21日)までは1日に0.9mm、1週間で約7mmとほぼ一定の割合で成長していきます。その後、妊娠5週を過ぎるころから大きさに個人差があらわれはじめ、「妊娠何週でどれくらい」とサイズを示すのが難しくなります。
個体差があるとはいえ、妊娠日数に比べ胎嚢のサイズが小さいと気になるものです。しかし妊娠が判明する前の最終月経開始日や排卵日の認識が誤っていたり、生理周期が不定期だったりすると、妊娠日数がずれている場合があるため必要以上に心配しすぎないようにしましょう。サイズはあくまで目安としてとらえ、定期健診で経過を見ていきたいですね。
双子の場合はひとつの胎嚢に赤ちゃんがふたり入っていたり、胎嚢がふたつ確認されたりと個人差がさらに大きくなります。絨毛膜や羊膜、胎盤がどのように形成されていくかが赤ちゃんの成長に大きくかかわってくるので、医師の管理のもと、経過をしっかりと観察するようにしましょう。
胎嚢の大きさは必ず教えてもらえるわけではない
胎嚢の大きさは、どこの病院でも必ず教えてもらえるものではありません。エコー写真にGS(胎嚢)計測値が記載されていて知ったという人もいれば、医師に質問して胎嚢の大きさを聞いたという人もいます。一方で、特に何も言われないケースや聞いても教えてもらえなかったケースもあります。
このため「病院で胎嚢の大きさを教えてくれないのは、何か異常があるからなのでは」といった過度な心配をする必要はありません。
妊娠検査薬が陽性になってから妊娠3ヶ月ごろまで通っていた病院では、胎嚢の大きさを告げられたことはありませんでした。また胎嚢の大きさを気にしたことがなかったため、質問もしませんでした。
妊娠4ヶ月ごろから通い始めた病院ではエコー写真にGS(胎嚢)の値が記載されていたので、それで初めて胎嚢の大きさを知りました。
妊娠初期は不安なことも多いので、かえって知る機会がないことで個人差などに悩むことがなく、結果的には良かったかもしれません。
妊娠4・5・6・7・8週の胎嚢の大きさの平均と胎児・母体の様子
妊娠4週の胎嚢の大きさ
妊娠4週は妊娠していなければ次の生理予定日のころで、この時期に胎嚢ができはじめます。感度の高い妊娠検査薬では陽性反応を示し、早いと4週2日目頃には経腟の超音波検査でやや楕円形をした直径1.5mmの胎嚢が確認できるようになります(※2)。
4週の時期に胎嚢が確認できるのは、正常な妊娠の80%ほどで、一般的には直径2mmの大きさとなる4週後半頃から確認できることが多いようです(※3)。
妊娠5週の胎嚢の大きさ
妊娠5週になると、正常な妊娠ではほぼ100%の確率で胎嚢が確認できるようになります(※3)。胎嚢の確認に続いて卵黄嚢も確認でき、赤ちゃんは心臓や中枢神経といった身体の根幹となる部分の形成を開始します。
この時期の胎嚢の大きさは平均的に1cm前後あり、胎芽はもう少し後の時期になると確認できます。胎嚢は超音波検査でその大きさを計測しますが、計算でもおおよその直径を求めることができます。
1cmという大きさは、ママの身体の大きさに対して決して大きいサイズではありません。しかしこの小さな命の営みが、ママの身体に大きな変化をもたらします。つわり症状が始まり、ときには気分が落ち込んだり体調不良に悩まされたりすると、大きな変化に戸惑うかもしれません。無理をせずにゆったりと過ごすことを心がけましょう。
妊娠6週の胎嚢の大きさ
妊娠6週では、赤ちゃんの頭と胴体の区別がつくようになり、胎嚢の中には胎芽が確認できます。胎嚢の大きさは1.5~2cm程度に成長しています。
経腟超音波検査で胎芽の心拍動を見られるようになるのもこの時期です。心拍が確認されれば、最終月経の開始日や胎芽の頭からお尻までの長さを計測した「胎児頭臀長(とうでんちょう)」から正確な出産予定日を決定します。
ただしこの時期に心拍が確認できなかったとしても、心配しすぎる必要はありません。正常な妊娠であれば、妊娠8週頃までに心拍動が確認されるようになりますよ。
妊娠7週の胎嚢の大きさ
妊娠7週になると、胎嚢の大きさは2.5~3cmほどになります。胎嚢は胎盤を形成する絨毛膜へと分化が始まっており、赤ちゃんを包む薄い膜の絨毛膜無毛部と母体から栄養や酸素を取り込む絨毛膜有毛部の区別がついてきます。
胎嚢の中では赤ちゃんの脳や心臓、肺といった重要な器官の形成が進んでいます。口や顔の形が作られるのもこの時期です。薬の影響を受けやすいので、自己判断で薬を使わないよう注意しましょう。
子宮内に胎嚢が見えていても7週までに心拍が確認されないときは、胎芽の発育が停止する「稽留流産」の可能性を考えます。稽留流産の場合は薬や外科的手術を行い、胎嚢を取り除く処置が必要です。
妊娠8週の胎嚢の大きさ
妊娠8週になると、胎芽は人の形に近づき胎児へと呼び名が変化します。胎嚢の大きさは3cm前後となり、赤ちゃんが手足を動かしたり羊水を飲んだりする動作が見られるようになります。
超音波検査で見られる画像にかわいさが募る反面、ママのつわりはピークを迎え体調面で困難なことも出てくるかもしれません。大きくなりはじめた子宮に膀胱や腸が圧迫されるため、トイレが近くなったり便秘になったりという症状も見られます。
胎嚢の平均的な大きさを求める計算式
胎嚢の大きさは超音波検査で計測する方法と別に、計算式でも求められます。いくつかある計算式の中で、最も手軽なのが妊娠週数を割り出すための「胎嚢のサイズ(GS)+4=妊娠週数」という計算式を応用したものです。この式を用いてGSを求める場合、「GS=妊娠週数-4」で計算します。
妊娠5週であれば元の計算式では「GS+4=5」なので、GSの大きさは「GS=5-4」となることから1cmという値が求められます。
より細かい数値を知りたいときは、「0.70×妊娠週数-2.54=胎嚢の直径(cm)」という計算式が提示されています(※4)。計算すると0.7×5週−2.54=0.96cm。ミリ単位で大きさが求められます。サイズがわかると、お腹に宿った小さな命の存在をより実感できますね。
胎嚢の大きさに関する体験談
上の画像は、筆者が第二子妊娠を妊娠したときの6週2日の胎嚢です。うっすらと卵黄嚢らしきものが確認できます。写真からはサイズはわかりません。設備が古かったのか、医師の信条によるものなのかは定かではありませんが、とにかく手元にあるのはなかなかにさっぱりとしたエコー写真のみなのです。
第一子のときに健診を受けていた病院のエコー写真には、GSやCRL、BPDといったさまざまな数値がしっかりと明記されているのとは対照的です。
実は健診中も「胎嚢は何cmだよ」「赤ちゃんは何cmに育っているよ」と告げられたことはありません。診察室に用意された大小さまざまなキューピーちゃんの中から「今はこれくらいの大きさ」と示されるざっくり加減です。一度「数値を教えてください」とお願いしましたが、「誤差があるから意味ないよ」というひと言で終わりました。
二人目ということもあり、私自身も「待たなくて済むし元気ならば良いか」くらいの感覚だったため特に気にしていませんでしたが、健診で細かい数値を伝えてほしい場合は、医師の性格や使用している設備について、あらかじめ確認してから受診をした方が良いかもしれません。
胎嚢を確認できる妊娠初期に気を付けたいこと
妊娠初期は胎盤が完成していないため、激しい動きや身体に負担がかかることは避けたいものです。激しい運動や不規則な生活、転倒の危険がある行為やファッション、腹圧がかかる体勢に気を付けましょう。
妊娠すると免疫が低下し、疲れがたまりやすくなるため感染症やストレス対策も重要です。外出から帰ったらうがい手洗いを実践し、家ではできるだけリラックスして過ごすようにしたいですね。
胎嚢の大きさを気にしすぎず、赤ちゃんの成長を見守ろう
胎嚢・胎芽・心拍が確認できることで妊娠が確定するため、ドキドキしている人も多いかもしれません。「いつ確認できるのか」「他の人と比べてどうなのか」など、さまざまなことが気になってしまいますよね。
妊娠の経過は個人差があり、使用している設備や子宮の角度によっても見え方が異なってくるものです。今回の健診で思うような結果でなくても、次回の健診では状況が変わっているかもしれません。
胎嚢や胎芽の大きさはあくまでも目安です。1回の健診結果を気にしすぎず、長い目で赤ちゃんの成長を見守っていきましょう。
※この記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。