【産婦人科医監修】つわりの種類とは?5種類のつわりの症状・原因・対策

つわりとひとことでいっても、種類は大きく5つに分かれます。症状ごとに原因や対策は違うため、適切に対処することがとても大切です。それでは、つわりの種類にはどのような特徴があるのか、吐きつわり、眠りつわり、食べつわり、よだれつわり、においつわりの5種類の症状と原因、つわりを和らげる方法、体験談をみていきましょう。

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この記事の監修

寺師 恵子
産婦人科医
寺師 恵子

目次

  1. つわりとは?5種類もあるの?
  2. 1.「吐きつわり」:ムカムカが治まらなくてつらい
  3. 2.「食べつわり」:食べても食べてもまだ食べたくなる
  4. 3.「眠りつわり」:逆らえないほどの猛烈な眠気に襲われる
  5. 4.「よだれつわり」:唾液がダラダラと止まらない
  6. 5.「においつわり」:息を止めていないと耐えられない
  7. つわりの種類で性別がわかる?
  8. どんなつわりでも無理せずリラックスを
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つわりとは?5種類もあるの?

つわりは妊娠にともなって起こる生理現象のひとつで、50~80%の妊婦さんが経験するといわれています。5週頃に始まり16週頃までに治まるのが一般的で、代表的な胃腸症状のほか、全身倦怠感や頭痛など多岐にわたる症状があらわれます。

とはいえ症状のあらわれ方にはいくつかの傾向があり、症状によってつわりは大きく5種類に分けられます。吐き気が続く吐きつわり、強い眠気を感じる眠りつわり、食べていないと落ち着かない食べつわり、唾液量が増加するよだれつわり、においに対して敏感になるにおいつわりです。

どの症状が強く出るか、期間はどれくらいになるのかは人それぞれで、個人差が大きいものです。一人目、二人目で違う症状のつわりになったり、途中で症状が変わったりすることもあります。症状が複数出て、つわりの種類が区別できないことも珍しくありません。

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1.「吐きつわり」:ムカムカが治まらなくてつらい

症状

5つあるつわりの種類の中でも、多くの妊婦さんが経験するのが吐きつわりです。吐き気を覚える程度のこともあれば、吐き気がのど元までこみあげることが続いたり、寝ているとき以外はずっと吐いていたりという状態になることもあります。

まさに船酔いや二日酔い状態がずっと続く感覚で、吐いても吐いても楽にならないというのがつらいつわりです。症状が重く栄養失調や脱水症状に陥ると「妊娠悪阻(にんしんおそ)」となり、状態によっては入院しての治療が必要です。

原因

吐きつわりが起こる原因ははっきりとは解明されていませんが、妊娠してホルモンバランスが大きく変わることが一因と考えられています。

心理的なストレスがつわりの症状を強めるケースがあるともいわれています。仕事や家事、夫婦関係などで強いストレスを感じていると、症状が悪化する傾向がみられます。一方で、仕事や作業に集中しているときは吐き気を感じなかったという人もいるため、気分の良いときを見つけてリフレッシュを心がけても良いでしょう。

対策

吐きつわりの対策は、食べられるときに食べられるものを食べることです。一度に食べる量を少なくし、複数回に分けて食べるのがポイントです。野菜スープや経口補水液は比較的飲みやすく、必要なミネラルが補給できます。

ビタミンB6や葉酸の不足が吐き気につながるというデータもあることから、症状が強くてほとんど食事ができないようであれば、医師に相談し必要な治療やサプリメントの摂取について指導を受けるようにしましょう。

また、疲れやストレスをためないようにすることも大切です。つわりのときは無理をせず、できるだけ休息をとるようにしてくださいね。リラックスするために、気分転換となるような趣味や作業をみつけると良いかもしれません。

体験談

一人目のつわりは、いくつかの症状が重なった混合型でした。一番つらかったのが吐きつわりで、一日中ずっと船酔い状態が続いたことが強いストレスになりました。夫は「俺だって二日酔いでもがんばっている」というのをアピールしていましたが、それとつわりとは話は別です。

とにかく胃がムカムカし、喉元になにかがつかえている感覚が消えません。食事をすると吐いてしまうのはもちろん、食べ物をみるだけでも吐き気がこみ上げます。ひどいときにはシャワーの湯気にも反応し、夫が帰ってきたときに連れ込んでくる外気に吐く、という状態でした。

ちょうど夫の赴任先に転居してから半年という時期だったので、気分転換につき合ってもらうような知り合いがいないことも症状に拍車をかけた気がします。心もとない孤独な気持ちを抱えながらトイレの中に座り込み、「もう嫌だ」と力尽きることもしばしばでした。

2.「食べつわり」:食べても食べてもまだ食べたくなる

症状

常に何かを食べていたいのが食べつわりです。空腹になると特に吐き気を感じやすく、寝起きは空腹感から吐き気が強くなる傾向にあります。しかし、満腹を感じないのかというとそうではありません。お腹いっぱいになるまで食べると、かえって気分が悪くなることもあります。

食べていないと気持ちが悪くなる食べつわりですが、特定の食べ物ばかりを食べたくなるというケースもしばしばみられます。毎日同じものを食べたくなり、それ以外の食べ物は食べることができないことがあるから不思議です。吐きつわりと食べつわりの併発もよくみられるパターンです。

原因

食べつわりが起こる原因は完全にはわかっていませんが、ひとつの説として赤ちゃんに十分な栄養を届けるために、血糖値やインスリンが関与しているという考え方があります。

人の身体は食事をとると血糖値があがります。血糖があがるとすい臓はインスリンを分泌し、インスリンのはたらきで血液中のぶどう糖を細胞内に取り込まれます。こうしてぶどう糖がエネルギーとして変換されたり、脂肪の合成が促されたりするのです。

血糖値は通常、食事後1~2時間ほどすれば落ち着いてきますが、血糖が低下しすぎると低血糖となり、吐き気やめまいなどの症状があらわれます。食べつわりで食べ続けないと調子が悪いのは、赤ちゃんの栄養を確保するためにママのエネルギーが不足して低血糖を起こしていることが原因だと考えられるのです。

対策

食べつわりの症状があるときは、すぐに食べられる軽食を用意しておくようにしましょう。外出時にはバッグに飴やクッキーを入れておくと安心です。睡眠前には、起きたときにすぐに食べ物を口に入れられるよう、枕元に小さめのおにぎりなどを用意しておくと良いでしょう。

食べたいのに吐き気も強いというときは、スープ類がおすすめです。温かいものは冷ましてから食べるようにすると、比較的スムーズに食事ができますよ。

この時期は栄養のバランスを気にすることはなく、食べたいものを食べられるだけ食べるというのが基本です。ただし、うなぎやレバーなどに含まれるビタミンAの一種「レチノール」は、妊娠初期の過剰摂取が胎児の催奇形性に影響をおよぼす可能性があります。バランスがかたよっているなと感じるときは、含まれる成分に注意してみましょう。

体験談

つわりのピーク時は、食べつわりと吐きつわりのダブルパンチでした。一日中吐き気に襲われ、食べたら吐いてしまうという恐怖感にかられながらも、お腹がすきすぎるとそれもまた吐き気につながるという魔の連鎖。空腹時に吐き気が強くなる、典型的な食べつわりの症状もあったのです。

食事とおかずをつくる心の余裕はありません。でも、なにかを食べないと気持ちが悪くなってしまう。そんな中で食べられた食材は「白いもの」でした。色の主張がないので、心理的に負担を軽くしたのかもしれません。白ご飯を炊き、豆腐を買い求め、えのき茸とごぼうでスープを作ります。

特につらかったのは寝起きや就寝中です。夜中にふと目が覚めると、空腹で吐き気がこみ上げます。そこで、枕元に白米で握った、一口サイズの小さなおにぎりを用意しておきました。海苔のにおいも吐き気につながるので、塩をふっただけのシンプルなおにぎりです。でも、この白い小玉おにぎりが、食べつわりの救世主とも言える食べ物だったのです。

3.「眠りつわり」:逆らえないほどの猛烈な眠気に襲われる

症状

胃腸症状以外のつわりとして、悩んでいる声が多く聞かれるのが眠りつわりです。医学的な用語ではありませんが、一日中眠気がつきまとい、強い倦怠感や集中力の低下などをもたらすため、精神的・身体的につらいつわりのひとつと言えます。

一見するとなまけているようにも見えるため、周囲の人からの「眠たいだけならつらくないのでは」という無理解に苦しむことも少なくありません。仕事や子育て中の対策をしっかりとおさえて、精神的な負担を減らしておきたいものです。

原因

眠りつわりが起こる原因はいくつがあげられています。そのひとつが妊娠して分泌が増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)の影響です。プロゲステロンは排卵後にも分泌量が増えることで知られるホルモンです。

プロゲステロンが増えると、眠気や倦怠感、気持ちの落ち込みなどが引き起こされるため、眠りつわりもこうした作用がはたらいていると考えられます。

また、胎盤をつくることにエネルギーを使うため、無駄な動きをしないように身体の防衛反応として眠気が起こるという説や、自律神経が乱れることが原因だという説もあります。

対策

眠りつわりの対策の一番は、とにかく寝ることです。無理に起きていようとするとめまいや気持ち悪さが悪化することがあります。横になって寝るのが難しい場合は、目をつぶって15分ほど休息をとりましょう。

もしも休息をとるのが難しければ、ガムを食べたり声を出したりして眠気を紛らさせると良いでしょう。つわりの症状は体調の良いとときと悪いときの波があるものです。家事などまとめてやれるものは、体調の良いときに済ませておくとスムーズですよ。

体験談

つわりの症状から逃げる方法、それは身体の求めに応じて寝ることでした。つわり時期はとにかく動くのがだるく、すきあらば布団に横になって寝ていたい、眠りつわりの症状があったのです。

もともと筆者はいつでもどこでも眠れるタイプで、テレビを見るなら眠りたい性格です。眠りつわりだけは、素直に受け入れました。

自宅で受けていたお仕事はちょうど繁忙期を過ぎた時期で、時間に余裕があったのも幸いしたと思います。とはいえまったくお仕事がないわけではなく、体調が良いときに集中して作業する日もありました。

4.「よだれつわり」:唾液がダラダラと止まらない

症状

たえず口の中が唾液でいっぱいになってしまうのがよだれつわりです。唾液の分泌が盛んになる一方で、自分の唾液が苦く感じたり不快感があったりして飲み込めないという症状に見舞われます。

唾液は寝ているときにも分泌され、眠りが浅くなったり寝具が濡れてしまったりという症状に悩まされる人もいます。唾液に対する不快感から、吐き気を感じることもあるほどですが、よだれつわりの認知度が低いために、つらさを理解されないことも多くあるつわりです。

原因

唾液を分泌する唾液腺は、普段からエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロンの影響を受けていることが示唆されています。妊娠するとこれらの性ホルモンの分泌量が変化するため、口腔内の環境が変わると考えられているのです。

一般的に、妊娠すると唾液の分泌量は減少し、粘り気は強くなるといわれています。しかし、なんらかの反応で唾液量が増えるのがよだれつわりです。考えられる原因として、よだれの消毒・殺菌作用が身体の防衛反応としてはたらく説や、自律神経の乱れから唾液量が増加する説、唾液腺のホルモン受容体が変化する説などがみられます。

対策

唾液の分泌は一日中続くため、口元を抑えるティッシュやタオルが欠かせません。通勤や外出時などは、キッチンペーパーを入れた袋に吐き出したり、ホルダーの中に入れたペットボトルに吐き出したりする方法が役立ちます。

清涼感のあるミント系の飴やガムを口に入れると、比較的スムーズに唾液を飲み込むことができるのでバッグの中に忍ばせておくと安心ですよ。

体験談

一時は妊娠の継続が危ぶまれたほどの妊娠悪阻で入院した筆者の友人は、治療が功を奏し2ヶ月ほど入退院を繰り返した後に退院する運びとなりました。その後、妊娠5~6ヶ月ころまで自宅療養を続け、症状がいくらか落ち着いてから職場へと復帰しました。困ったのが大量の唾液が分泌されるよだれつわりです。

会社まで電車で1時間の電車通勤では、バッグにボックスティッシュを丸ごと入れて、口元を絶えず拭き取りながら通っていました。出産してもよだれが止まらないのではないかと心配しながらも、赤ちゃんが生まれ出た瞬間に、ピタッとよだれが止まったそうです。

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5.「においつわり」:息を止めていないと耐えられない

症状

嗅覚が敏感になって、あらゆるにおいが駄目になってしまうのがにおいつわりです。においをきっかけにそのまま吐いてしまう、吐きつわりとの合併型の人もいます。

においつわりがあると、今まで好んでいたにおいも苦手になることがあります。食べ物や水蒸気のにおいが受け付けられず料理をするのがつらくなったり、石けんのにおいがきつくてお風呂で気分が悪くなったりすることもあるほどです。

どのにおいで気持ち悪くなるかは人それぞれです。人の体臭にも敏感に反応してしまうため、夫のにおいが苦手と感じるときは、つわりであることを理解し対策をしてもらうと良いでしょう。

原因

女性のにおいに対する感受性は、エストロゲンやプロゲステロンの分泌量の変化に左右されることがわかっています。一般的に、エストロゲンの分泌量が増える排卵期には嗅覚が敏感になり、ホルモン分泌がおさまる生理期には嗅覚が鈍くなります。

妊娠してからにおいに敏感になるのも、こうしたホルモンの影響が関係しているのではないかと考えられます。動物は妊娠するとにおいに敏感になりますが、これは天敵との遭遇や火事などの天災をにおいから察知し、身重であっても逃げやすくするためという説もあります。

対策

においつわりの一番の対策は、においを寄せ付けないようにすることです。まずはマスクをして、においをシャットダウンしましょう。

香料が含まれる石けんや化粧品、洗剤類は無香性にすることである程度症状をおさえることができます。無香性とはいえ、成分のにおいが気になるという人もいます。もしも成分のにおいが苦手だと感じたら、ハーブ系の天然素材を使っているものや、別の無香性に切り替えて自分に適した商品を見つけてみましょう。

好きな香りを身近に置いておくのも効果が期待できます。つわりではにおいに対する好みが変わるため、思いもよらないにおいが好ましく感じることもあります。お気に入りのにおいをみつけて、気分転換が図れると良いですね。

体験談

筆者はにおいつわりにも大いに悩まされました。妊娠当時は水道水でもおいしくいただけるような地方に住んでいたのですが、それでも水のにおいが気になるようになりました。好んで使っていたシャンプーの香りも、ふんわりただよう洗濯物の洗剤の香りもダメ。

「最近、加齢臭がするね」なんて言っても、なんだかんだ好みだった夫の体臭も受け付けません。ご飯が作れない代わりにスーパーの惣菜をと思っても、売り場のにおいがつらく、スーパーに行くのすら苦痛になりました。

ここまでくると、「もうどうしろっていうの」と怒りともつかないフツフツとした感情が芽生えます。しかし、怒ったところでつわりは軽くなりません。マスクをしたり、無香性のものを使用したりと対策をしました。料理は体調の良いときにまとめて作り置きをし、冷凍したものを食べるときに解凍する方法で乗り切りました。

つわりの種類で性別がわかる?

お腹の中の赤ちゃんの性別が、つわりの種類でわかるという噂を聞いたことはあるでしょうか。噂の中には、食べつわりは男の子、吐きつわりだと女の子というものがあります。食べ物の好みも変わるようで、揚げ物やお肉などガッツリとしたものを食べたくなると男の子、甘いものや野菜が好きになったら女の子という話もありますよ。

一般的な男女の食の好みが反映されていて、興味深い内容ですね。とはいえ、これらの話はあくまで噂です。妊婦さんの体験談から「なんとなくこんな傾向がありそう」「私もそうだった」とまとめられてきたもので、医学的な根拠はありません。

つわりがまったくない人もいれば、予想と逆の性別だったというのもよくある話です。それでも、赤ちゃんの性別がわからない時期に、つわりの症状で男の子か女の子かイメージをふくらませるのは楽しいものですね。赤ちゃんとの対面を思い描けば、つらいつわりも乗り切れそうです。

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どんなつわりでも無理せずリラックスを

5種類に大別されるつわりは、複数のつわりが組み合わさったり、つわりの症状が時間を追うごとに変わっていったりすることがあります。症状に慣れたなと思っても、違う症状に悩まされることも少なくありません。つらくてめげそうになることもあるかもしれませんが、体験談や対策を参考にしながら、無理せず休息をとるように心がけてくださいね。

どうしてもつらいときや、体調不良が著しいときは治療が必要なこともあります。我慢せず医師の診察を受けましょう。医師の指導で休業や変則業務が必要となった場合は、指導内容を会社側に伝える「母性健康管理指導事項連絡カード」が役立ちますよ。

つわりは長くても、22週頃までには治まってくるといわれています。自分にあった対策やリラックスする方法をみつけながら、できるだけつわりのことを意識しないように心がけると、症状は少し和らぐかもしれませんよ。

※この記事は2023年12月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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