子宮外妊娠でもつわりはある?つわりが軽い・ないと子宮外妊娠の確率は高いの?
産婦人科医監修|子宮外妊娠は、受精卵が子宮内膜以外に着床するトラブルです。正常妊娠と同じようなホルモンバランスになるため、妊娠検査薬で陽性反応が出て、つわりもあります。ただし、子宮外妊娠の場合、正常妊娠よりもつわりが軽いというのは本当なのでしょうか。子宮外妊娠のつわりについて、症状や兆候とともに解説します。
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目次
子宮外妊娠とは
子宮外妊娠とは、正常ならば子宮内膜に着床するはずの受精卵が、何らかの原因で子宮内膜以外の場所に着床してしまう状態です。医学的には「異所性妊娠」と言います。
子宮外妊娠の着床部位は卵管が多く、98.3%を占めています。まれに、腹膜や卵巣、子宮頚管に着床することもあります。
子宮以外の部位には、受精卵の成長にあわせて伸びたり、胎盤を形成したりする機能がありません。そのため、子宮外妊娠では、残念ながら妊娠を継続することができないのです。さらに、子宮外妊娠を放置すると、「卵管流産」や「卵管破裂」を起こし、母体の命にかかわることもあるため、早期発見することが重要です。
子宮外妊娠の原因
通常、卵管膨大部で受精した受精卵は、発育を続けながら、卵管上皮細胞や卵管壁の運動によって子宮まで送られ、子宮内膜に着床します。子宮外妊娠は、何らかの原因で受精から着床までのこの流れに異常が発生することで引き起こされます。
子宮外妊娠の原因は、「卵管の問題」「受精卵の輸送の問題」「子宮の問題」に大きくわけられます。
■卵管の問題
卵管内や卵管周辺の器官で癒着が起こると、受精卵が子宮に到達できません。クラミジアなどの性感染症や子宮内膜症、卵巣・卵管の手術によって、卵管が炎症を起こすことで、癒着しやすくなるといわれています。
■受精卵の輸送の問題
まれな例ですが、受精卵が卵管から子宮へ運ばれずにお腹に排出され、腹膜や卵巣、反対側の卵管などに着床してしまいます。あるいは、不妊治療において、体外受精後に受精卵を子宮に戻す「胚移植」を行なう際、受精卵が子宮体部を通り越してしまい、卵管や子宮頸部に着床することがあります。
■子宮の問題
子宮内避妊具(IUD)の挿入や人工妊娠中絶の経験があると、炎症などによる子宮環境の変化が何らかの影響をおよぼし、受精卵が子宮内膜に着床できないことがあります。
子宮外妊娠の確率
子宮外妊娠は、全妊娠の1~2%の確率で発生するといわれています。しかし、近年、クラミジアなどの性感染症が増加しているほか、不妊治療における生殖補助医療(ART)の普及が進んでいます。それに伴い、子宮外妊娠の発生頻度も高くなっているのです。
体外受精で胚移植を行なったケースに限ってみると、子宮外妊娠が発生する確率は2~4%に上昇します。
子宮外妊娠でもつわりはあるの?
子宮外妊娠の場合、妊娠を継続できず、卵管破裂などのリスクもあることから、できるだけ早く正常妊娠と判別しなければなりません。しかし、子宮外妊娠でも、つわりのような、正常妊娠であらわれる身体の変化がみられることがあります。正常な妊娠かどうかは、超音波(エコー)検査を受けなければ判断できないため、妊娠している可能性があるときは、早めに産婦人科を受診することが大切です。
妊娠検査薬で陽性反応が出る
子宮外妊娠は正常な妊娠と同様、妊娠検査薬で陽性反応があらわれます。妊娠検査薬は、受精卵が着床すると分泌が増え始めるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモンが、尿中にどの程度あるかによって判定する仕組みです。子宮外妊娠であっても、hCGホルモンは分泌されるため、陽性反応が出るのです。
つわりの症状があらわれる
子宮外妊娠は、正常妊娠のときと同じように、ホルモンバランスが変化するのが特徴です。それに伴い、生理がなくなり、基礎体温も高温期を維持します。また、吐き気をもよおしたり、においに敏感になったりと、つわりの症状が出る場合もあります。胸の張りや貧血、腰痛、下痢、風邪のひき始めのような症状など、妊娠初期症状があらわれることもあるようです。
子宮外妊娠では、つわりや妊娠初期症状など、正常妊娠と似た身体の変化がみられるため、「つわりがあるから、子宮外妊娠ではない」と判断することはできないということです。
つわりがない・軽い場合もある
子宮外妊娠では、つわりがない、あるいは軽いというケースも考えられます。子宮外妊娠であっても、正常妊娠と同様、体内のホルモンバランスが変わるなどすることから、つわりの症状が出ます。ただし、つわりは、一般的に妊娠8~11週にピークを迎えるといわれています。子宮外妊娠は妊娠6週頃に判明することが多いのですが、つわりが本格的に始まる、あるいは重くなる前に子宮外妊娠の処置を終えると、つわりがない・軽いと感じる可能性があります。
しかし、つわりは個人差が非常に大きく、正常妊娠であってもつわりがまったくない人もいます。また、同じ人であっても、一人目と二人目の妊娠でつわりの程度や症状が異なることも珍しくありません。したがって、「つわりがない」「つわりが軽い」から子宮外妊娠の可能性が高いということにはならないのです。
子宮外妊娠の兆候は?
子宮外妊娠は、初期の段階では特に自覚症状があらわれません。しかし、妊娠6週頃になると、どんどん発育する受精卵によって着床部位が出血し、ピンク色のおりものや不正出血、下腹部や腰の痛みがみられるようになります。
不正出血や下腹部痛は、正常妊娠でも起こりうる症状です。また、生理時の症状にも似ていることから、特に妊娠検査薬を使わなかった場合、生理と勘違いしてしまう可能性もあります。
症状があらわれ始めたころは、出血量が少なく、痛みも不規則で弱いのですが、妊娠週数が進行するにつれて、出血量が増えたり、下腹部痛や腰痛が強くなったりします。また、受精卵が卵管内で流産してしまい、血腫が形成される「卵管流産」のリスクも高まります。
さらに妊娠7〜8週頃まで放置すると、受精卵が大きくなり過ぎて「卵管破裂」を引き起こし、突然の激しい下腹部痛に襲われるケースもあります。卵管破裂によってお腹の中で大出血した結果、激しい腹痛に加えて出血性ショック状態に陥ると、母体の命にもかかわります。
子宮外妊娠はいつごろわかる?
子宮外妊娠かどうかは、妊娠検査薬で陽性反応があらわれただけでは判別できず、エコー検査で診断することになります。たいていの場合、妊娠6週くらいまでには判明します。
正常妊娠であれば、妊娠5~6週頃に産婦人科のエコー検査で、胎嚢(たいのう)という赤ちゃんを包んでいる袋が子宮内に確認できるようになります。この胎嚢が確認できない場合、子宮外妊娠の疑いが持たれます。
ただし、排卵日がいつもより遅れるなどして、最後の生理開始日から数えた妊娠週数と実際の妊娠週数がずれている可能性もあります。そのため、「妊娠6週を過ぎて胎嚢が確認できない=子宮外妊娠」であるとは判断できません。したがって、子宮外妊娠の診断は、基礎体温から実際の妊娠週数を計算したり、血中hCG値や症状の程度を診たりして、総合的に行います。
子宮外妊娠の治療法
子宮外妊娠が判明した場合、残念ながら妊娠を継続することはできず、治療を行なうことになります。治療方針は、症状の進行具合や将来の妊娠を希望するかどうかに応じて決めていきます。ここでは、子宮外妊娠の98%以上を占める卵管妊娠の治療法について解説します。
待機療法
卵管がまだ破裂しておらず、全身の状態が安定しているなど、いくつかの条件をクリアしていれば、特に治療を行わず、受精卵が流産し、自然に吸収されるのを待つこともできます。ただし、病状が良くなるのが確認できるまでは、hCG値の測定やエコー検査を繰り返し、経過を観察します。
手術療法
子宮外妊娠を早期に発見できなかった場合、卵管から胎嚢を取り除くための手術が原則として必要です。
手術には、腹腔鏡下で卵管を切開して胎嚢を除去する「卵管線状切開術」のような「温存療法」と、開腹や腹腔鏡による「卵管切除術」で卵管ごと着床部位を摘出する「根治手術」があります。
温存療法では卵管を残せるため、将来その欄干を使って妊娠できる可能性がありますが、手術後に卵管が癒着を起こしたり、同じ卵管でまた子宮外妊娠を繰り返したりするリスクも高まります。
病巣が大きい場合や、お腹の中で大量出血したり卵管破裂したりしていて緊急度が高い場合には、卵管切除術を行います。手術をする側の卵管の妊娠する能力は失われてしまいますが、手術をしない側の卵管を残したり、卵子を保存したりすることで、将来の妊娠・出産は望めます。
薬物療法
卵管がまだ破裂していない場合には、抗がん剤の一種であるMTX(メトトレキサート)を使って胎嚢の成長を止める「薬物療法」が可能です。ただし、MTXの子宮外妊娠に対する使用はまだ保険適用外のため、現時点ではあまり普及していません。
つわりでは判断できない子宮外妊娠。早めの受診を
妊娠検査薬で陽性反応が出ても、つわりがまったくないと、赤ちゃんは無事なのか、もしかして子宮外妊娠なのではないかと気に病んでしまうかもしれません。しかし、つわりがない・軽ければ、絶対に子宮外妊娠だということはありません。つわりは個人差が大きく、つわりの程度で子宮外妊娠かどうかは判断できないのです。
子宮外妊娠は予防が難しいトラブルですが、早期に発見することで、身体への負担が少なくて済むだけでなく、将来の妊娠も可能になります。早期発見のために、妊娠検査薬で陽性反応が出たら、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。エコー検査で子宮内に胎嚢が無事に確認できれば、まずは少し安心できるかもしれませんね。