【産婦人科医監修】流産の兆候は?つわりや妊娠初期症状がなくなる?兆候なしの可能性も!
流産は全妊娠のうち約15%で起こるといわれ、決して珍しいものではありません。流産の兆候は、出血や腹痛の他にもさまざまにあり、つわりや妊娠初期症状にも変化がみられます。しかし、流産の種類によっては自覚症状なしの場合もあります。ここでは、流産の兆候について、流産の種類や原因、処置の方法なども含めて解説します。
本ページはプロモーションが含まれています
この記事の監修
目次
流産とは?
流産とは、エコー検査でお腹の赤ちゃんを包む「胎嚢(たいのう)」を確認後、妊娠22週未満に妊娠が中断することです。自然に妊娠が終わる「自然流産」と、人工的に流産を起こす「人工流産」がありますが、「流産」といえば自然流産を指すのが一般的です。
流産は誰にでも起こるリスクがあり、すべての妊娠のうち約15%の確率で発生します。母体の年齢が高くなるにつれ、発生率は高くなり、40歳以上では25%にも達するといわれています。
流産は発症する時期や、胎児や胎盤などの子宮内容物の状態によってそれぞれ分類されます。
妊娠12週未満は流産のリスクが高い
発症時期 | 全流産に占める割合 | 備考 | |
---|---|---|---|
早期流産 | 胎嚢確認後から妊娠12週未満 | 約80% | 胎嚢確認は妊娠5週~6週頃が多い |
後期流産 | 妊娠12週以降22週未満 | 約20% | 死産として扱われ、死亡届の提出が必要 |
流産の多くは、心拍確認できずに早期流産だと診断されるケースです。そのため、心拍確認ができれば安心だと一般的にいわれていますが、経腟エコーによる心拍確認後の流産率は全流産のうち16~36%とされ、油断はできません。また、流産は妊娠初期に起こるイメージが強いですが、安定期と呼ばれる妊娠中期(妊娠16週~27週)も流産のリスクはあります。
なお、医学的には流産に分類されませんが、妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、エコー検査で胎嚢が確認できる前に流産する「化学流産」というものもあります。妊娠検査薬を使わなければ、妊娠して化学流産にいたったことに気付かないで次の生理を迎える可能性もあります。
進行流産や稽留流産に分類される
子宮内容物の状態 | 診断の基準 | |
---|---|---|
進行流産 | 子宮内容物が子宮外に流れ出てきている | 不全流産と完全流産で異なる |
稽留流産(けいりゅうりゅうざん) | 胎児が死亡した状態で、胎児などの子宮内容物が子宮内にとどまっている | 胎嚢が確認できるが胎児が確認できない「枯死卵(こしらん)」と認める |
切迫流産 | 流産にいたっていないものの、流産の危険性が高い | 胎児と心拍を確認できる |
進行流産は、子宮内容物の排出の程度により、さらに「不全流産」と「完全流産」に分類されます。
子宮内容物の排出の程度 | 診断の基準 | |
---|---|---|
不全流産 | 子宮内容物の一部が子宮内に残ったままになっている | 胎児を認めない・胎児を認めても心拍確認できない |
完全流産 | 子宮内容物が完全に排出された状態 | 胎児が確認できない・胎嚢の消失を認める |
妊娠12週未満の流産の主な原因は染色体異常
流産の原因は早期流産と後期流産で異なります。
妊娠12週未満に起こる早期流産のほとんどは、受精卵の染色体異常が原因で引き起こされます。胎児側の問題でもともと流産することが決まっていた受精卵なので、残念ながら予防することはできません。
また、双子などの「多胎妊娠(たたいにんしん)」も子宮収縮が起こりやすく、早期流産の原因になります。
一方、妊娠12週以降の後期流産は、主に母体側の異常が原因です。赤ちゃんを包む膜が細菌感染を起こす「絨毛膜羊膜炎」や、子宮頸管が弱くなって子宮口が開いてしまう「子宮頸管無力症」の他、「子宮筋腫」「子宮奇形」などが考えられます。
なお、最近の研究では、ストレスが妊娠に影響をおよぼす可能性があることが徐々に明らかにされています。強いストレスが長期間続くと、自律神経が乱れて血流が低下しやすく、胎児への栄養や酸素の供給が阻害される可能性があるのです。
流産の兆候・症状は?
流産すると、出血や腹痛をはじめとして、いくつかの兆候や症状があらわれます。ここで紹介する兆候・症状は、正常妊娠の場合もみられることがあり、流産との判別が難しいかもしれません。気になる症状があらわれたら、自己判断せず、産婦人科で赤ちゃんの状態を調べてもらいましょう。まだ流産にいたっていない切迫流産ならば、妊娠を継続できる可能性もあります。
出血
進行流産では、子宮内膜が剥がれることで出血が起こります。生理に似た茶褐色や鮮血の不正出血ですが、通常の生理よりも出血量が多く、長期間、出血が続きます。また、血の塊やゼリー状の白い塊が一緒に出てくることもあります。不正出血と同時に、陣痛のような下腹部の痛みを伴うことが多いようです。
一方、妊娠超初期から妊娠6週くらいまでに起こるとされている化学流産では、一般的に生理時と同じくらいの量の出血がみられます。そのため、妊娠検査薬を試していなければ、生理だと勘違いしてしまう可能性が高いでしょう。なお、流産にいたっていない切迫流産では、進行流産に比べて不正出血の量は少ないとされています。
妊娠初期の少量の出血や軽い腹痛は通常の妊娠経過でもみられます。また、少量の出血があり、早い時点で医療機関を受診したとしても、流産や切迫流産に対しては有効な対処法はないのが現状といわれています。少量の出血があった場合は慌てずにまず、産婦人科に連絡をして受診の判断をあおぎましょう。
ただし、出血量が多い場合や強い腹痛があった場合は、異所性妊娠などほかの原因が考えられるため、夜間や時間外を問わず早めに受診するようにしましょう。
お腹の痛みや張り・腰痛
特に妊娠初期には、正常妊娠でも下腹部痛やお腹の張り、腰痛が起こりやすいといわれています。子宮が大きくなることや、ホルモンバランスの変化によって便秘になることで起こるもので、通常、しばらく安静にして治まるようであれば心配いりません。
しかし、陣痛のような下腹部痛やお腹の張り、腰痛があらわれたら、流産の兆候の可能性もあります。お腹の張りと痛みが5分間隔、10分間隔など周期的にあらわれる、しばらく休んでも症状が治まらない、茶色いおりものや出血を伴うといった場合は要注意です。
おりものが変わる
後期流産の原因のひとつである絨毛膜羊膜炎は、重症化すると、おりものから悪臭がするようになります。おりものの変化とともに、陰部のかゆみや発熱があらわれる場合もあります。
つわりが突然なくなる
妊娠初期につわりが突然なくなった場合、流産の兆候のことがあります。
つわりは妊娠8週~9週頃にピークを迎え、妊娠12週~16週頃に徐々に治まっていく人が多いとされています。ただし、つわりが終わる時期は一概には言えないうえ、終わり方も「朝目覚めたら終わっていた」などさまざまです。そのため、つわりが突然なくなっても、流産しているのではなく、単につわりが終わっただけの可能性も大きいのです。
つわりだけで流産かどうかは判断できないため、出血や腹痛といった他の症状があらわれていないかよく確認する必要があります。
基礎体温が下がる
妊娠すると、妊娠を持続させる作用のあるプロゲステロンの分泌量が増え続けます。プロゲステロンには体温を上げる働きもあることから、基礎体温は高温期を維持します。一方、流産してしまった場合、プロゲステロンの分泌量が減るため、基礎体温は下がるのです。
ただし、基礎体温は正常妊娠でも妊娠13週頃から徐々に下がり始め、妊娠20週頃には低温期の体温に戻るといわれています。そのため、基礎体温が下がったからといってひとえに流産かどうかはわかりません。
胸の張りがなくなる
妊娠初期症状のひとつに、胸の張りがあります。もしも胸の張りが急になくなった場合、流産の兆候かもしれません。しかし、つわりと同じく、胸の張りがなくなっただけでは流産と判断できません。
頭痛
流産を経験した方の中には、流産が発覚する数日前から激しい頭痛やめまいがしたというケースがあるようです。ただし、頭痛やめまいが流産の兆候や症状だと医学的に証明されているわけではありません。
妊娠初期はホルモンバランスが急激に変化し、妊娠初期症状として頭痛やめまいが起こりやすい状態になっています。そのため、流産前にたまたま症状があらわれていただけという可能性もあります。
流産は兆候なしのこともある?
子宮内容物が子宮内にとどまっている稽留流産の場合、出血や腹痛などの自覚症状があらわれないため、流産していることに気付かないことがあります。胎児が亡くなった後も、正常妊娠のときのホルモンバランスを維持して、つわりがなくならず、基礎体温も高温のままというケースもあるようです。
一方、進行流産が進み、子宮内容物がすべて自然に出てしまう完全流産では、出血や腹痛といった症状が軽減または消失します。
流産の手術の方法・手術後の生理や妊娠は?
流産の手術の方法
流産の処置の方法は、流産の種類や妊娠週数によって異なります。
早期流産では、「手術」と「待機療法」というふたつの方法があります。稽留流産や不全流産の場合、子宮内容物をそのままにしておくと大量出血などのリスクがあるため、基本的に「子宮内容除去術」という手術を行います。
状況によって手術を行わず、子宮内容物が自然に排出されるのを待つ「待機療法」を選択できる場合があります。ただし、長期間待っても排出されなければ、結局手術を行う可能性があるのがデメリットです。
後期流産の場合、子宮内容除去術は母体への負担が大きいため行えません。陣痛促進剤で強制的に子宮を収縮させ、通常の出産と同様に子宮口を開き、胎児と胎盤を排出する処置をとります。
流産後の妊娠検査薬の反応
流産後しばらくのあいだは、妊娠検査薬は陽性反応を示します。
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌量が増えるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモンに反応する仕組みです。流産の処置後や完全流産後は、通常、しばらく経つと、hCGホルモンの分泌が少なくなり、非妊娠時のホルモンバランスに戻っていきますが、hCG値が高いままで陽性反応が出続けることがあります。
これは、処置で取り除ききれなかった組織から分泌されているhCGホルモンに反応しているほか、ホルモンバランスが乱れていることが原因と考えられます。
流産後、妊娠検査薬でいつまで陽性反応が出るかは個人差があります。1週間程度で陽性反応が出なくなることもありますが、1ヶ月たっても陽性反応が出続ける場合もあるようです。
流産後の生理や妊娠
流産後の生理は、流産の処置後、3~6週間経過してから再開することが多いようです。ただし、流産後は心身のストレスなどにより、生理周期が乱れやすいため、あくまで目安と考えてくださいね。
流産後に性行為を再開するタイミングについては、医師の指示に従いましょう。少なくとも1~2回は生理を見送るよう指導されることが多いようです。「胞状奇胎」といった疾患が原因で流産した場合、半年~1年間の避妊期間が必要になることもあります。
流産後、再び妊娠して無事に出産できるか不安になる方は多いでしょう。流産経験後、無事に妊娠・出産した先輩ママはたくさんいるので、安心してくださいね。
ただし、流産を2回繰り返す「反復流産」の頻度は4.2%、3回以上繰り返す「習慣流産」の頻度は0.88%とされ、流産を繰り返す可能性がゼロではないことも確かです。反復流産や習慣流産は、染色体異常や子宮奇形など、何らかの原因がもともとあることも考えられ、男性、女性ともに検査をして原因を探る必要があります。
流産の兆候の体験談
ここでは、流産を経験した先輩ママの体験談をご紹介します。この方は現在40歳で6歳の男の子を子育てしていますが、26歳のときに妊娠12週で不全流産、31歳のときに妊娠8週未満で化学流産を経験しました。
妊娠判明時から腹痛があった
26歳の不全流産のときは妊娠が判明したころから腹痛があって不安に思っていました。妊娠12週にお腹の痛みで夜眠れなくなり、多量の鮮血も出たため「これはまずい」とすぐに救急外来を受診したところ流産だとわかりました。出血や腹痛のほか、つわりよりひどい嘔吐や膀胱炎のような身体の不調があったのですが、それが流産の兆候だったのかどうかはわかりません。
31歳の化学流産のときは重い生理のような出血と痛みがあらわれ、2~3日後に病院を受診して化学流産が判明しました。
手術後1年間くらい不正出血や痛みが続いた
不全流産のときは子宮内容除去術を行いましたが、手術後5~6日間は痛みや出血がありました。
私の場合、手術後の生理が重くなったほか、1年間くらい生理前後に腹痛と不正出血が起こることがありました。流産当時は海外にいたため、しっかりと検査ができず心配だったのですが、帰国時に検査したところ「問題ない」といわれました。
流産が起こっても自分を責めないで
流産はすべての妊娠のうち約15%で起こってしまいます。原因の多くは胎児側にあり、確実に予防する方法はありません。また、自覚症状がまったくなく、いつの間にか流産していたというケースも多くあります。そのため、流産が起こっても、自分を責め過ぎないでほしいのです。
流産後は、自分の心と身体をケアすることを第一に優先してくださいね。亡くなってしまった赤ちゃんもきっと、ママの回復を願いながら見守ってくれていますよ。
※この記事は2023年5月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。