【産婦人科医監修】胎嚢確認の時期は?確認できないことも?確認後の流産や出血のリスク
産婦人科医監修|妊娠が判明しても、エコー検査で胎嚢を確認できるまでは心もとないものです。平均的な胎嚢の確認時期は妊娠初期となるのが一般的ですが、遅い場合にはどのような原因が考えられるのでしょうか。胎嚢が確認できないときに考えられる可能性や子宮外妊娠、流産となるケースについて解説します。
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目次
胎嚢とは?胎芽との関係は?
胎嚢は、赤ちゃんを包む膜のことです。エコー写真で見ると、ぽっかりと楕円形の黒い空間ができているのがわかります。妊娠が判明し、初期の検査でママが一番初めに目にすることができる、赤ちゃんの生存の証かもしれません。胎嚢は英語で「gestational sac」と言い、超音波検査の結果ではGSと表示されます。
胎嚢が確認できると、5週2日目までに胎嚢の中にさらに小さな丸いリングが出現します(※1)。リングの正体は「卵黄嚢(らんおうのう)」と呼ばれる組織です。卵黄嚢は胎盤ができるまで、成長に必要な栄養を供給したり血を作ったりする役割を担っています。
正常な妊娠の経過をたどると、胎嚢は妊娠6週頃に「絨毛膜(じゅうもうまく)」へと分化していきます。絨毛膜は細かな毛のような突起がある絨毛膜有毛部と薄く平坦な無毛部があり、有毛部は胎盤の一部を形成していきます。妊娠週数が進むと胎嚢という言葉が使われなくなるのは、絨毛膜へと変化するからなのです。
胎嚢が絨毛膜に分化を始めるに従い、胎嚢の中には骨や身体の器官が発達途上の「胎芽」が確認できます。赤ちゃんの主要な器官や骨が形成され、手足や頭部が区別できるようになる妊娠8週に入ると、呼び名は胎芽から胎児に変化します。
胎嚢確認の時期はいつから?エコーで見るの?
胎嚢が初めて確認できるのは、妊娠4週の初めごろからです。正常な妊娠であれば、経腟超音波検査(エコー検査)で妊娠5週までには子宮内に胎嚢が確認できます(※2)。
双子の場合は絨毛膜(胎嚢)が1つの「一絨毛膜性」と、絨毛膜が2つできる「二絨毛膜性」があります。二絨毛膜性となるのは、二卵性の双子の場合のみです。胎嚢がふたつ以上確認できたときは、多胎妊娠として扱われます。
胎嚢が確認できる4週頃は、平均的な28日の生理周期で次の生理が開始する予定日の時期に相当します。そのため、妊娠が判明して初めて行うエコー検査で、すでに胎嚢や胎芽が確認できるケースもあります。
妊娠が順調に経過していると、経腟エコー検査では妊娠6週頃、お腹の外から超音波をあてる経腹エコー検査では妊娠8週頃までに、胎児の心拍動があらわれます(※2)。ドップラー法を用いれば、妊娠12週目に胎児の心音を聞くことができますよ(※3)。
胎嚢を確認できない・見えないこともある?
胎嚢や心拍がいつまでに確認できるかというのは、あくまで目安です。最終生理開始日や排卵日の測定に誤りがあると、実際の妊娠週数とは誤差が生じるため、期待していた時期に胎嚢が確認できなかったり赤ちゃんが見えなかったりということも珍しくありません。
妊婦健診で胎嚢が確認できなくても、医師と相談しながら焦らずに経過を見ていきましょう。ただし、妊娠検査薬で陽性反応が得られていても、5~6週までに子宮内に胎嚢を確認できない場合は、化学的流産や子宮外妊娠(異所性妊娠)を念頭に入れる必要があります。
化学的流産は正式には「生化学的妊娠」と言い、胎嚢が確認される前の流産や発育停止を指します。化学的流産では特別な処置は必要ありませんが、子宮外妊娠の場合は大量出血や破裂のリスクを避けるため、薬や外科的な手術で胎嚢を取り除きます。
胎嚢の大きさはどのくらい?小さい場合でも大丈夫?
妊娠4週2日目の胎嚢は、直径が1.5mmととても小さいものです(※2)。しかし2日後の4週4日目になると倍以上の3.5mmほどの大きさにまで成長し、エコー検査でも検出されやすくなります。
妊娠5週0日(受精後21日)までは胎嚢の直径は1日に0.9mm、1週間で約7mmのスピードで成長するとされています。超音波断層法では、胎嚢の直径は0.70×妊娠週数-2.54(cm)であらわされます(※3)。とはいえ、月経周期や排卵日の計算が間違っていた場合は妊娠週数がずれることもあり、目安となるサイズに比べて実際の大きさが小さいこともあります。
検査の結果に一喜一憂はせず、妊娠初期を穏やかな気持ちで過ごすことが大切です。心配なことがあれば、医師に相談するようにしましょう。
胎嚢確認後の流産確率は?出血が兆候に?
胎嚢が確認できても、流産となってしまう可能性は否定できません。日本国内では、胎嚢が確認された後に流産が起こる頻度は、10~15%の確率と推測されています(※4)。
また、別の論文では胎嚢確認後に流産となる確率は11.5%、卵黄嚢の確認後ならば8.5%、5mm以上の胎芽が認められれば7.2%と、妊娠が進行するに従い流産にいたる確率が減少するというデータが示されています(※5)。
流産の種類はいくつかあり、胎嚢が確認されてから起こりうる流産としては、妊娠の継続が見込まれる切迫流産、出血や下腹部痛があり保存的治療が難しい進行流産、胎嚢が確認できるものの胎芽や胎児が見えない稽留流産、性器感染をともなった感染流産があります。
切迫流産を除いては、妊娠の継続は難しいのが現状です。流産の兆候として腹痛や性器からの茶色い出血がみとめられるため、異常を感じたら早めに医療機関を受診するようにしましょう。
胎嚢確認に関する体験談
筆者が一人目を妊娠したときは、生理開始予定日直後に市販の妊娠検査薬で陽性反応が示され、妊娠が判明しました。まだ受診するには早いかという懸念がありましたが、5週になったらいてもたってもいられず、最寄りの産科医を受診し妊娠を告げられました。
しかし、やはりというべきか、エコー検査では胎嚢しか確認することができません。妊娠経過を見るために翌週、改めて受診をすることにして、次の受診で心拍を確認することができました。
胎嚢が確認できても、正直なところ黒い空間が広がっているのを見るだけでは少し不安がありました。心拍が確認できるまでの1週間はそわそわしてしまい、うれしいという気持ちを感じる余裕はありませんでした。
再受診で心拍が確認できて初めて、妊娠を強く実感したものです。そして胎嚢、心拍の確認時期はつわりが始まる時期でもありました。気持ちの浮き沈みが大きく、その当時は必死だったのを覚えています。今、大きくなった息子と一緒に胎嚢だけのエコー写真を見返してみて、長い子育ての時間がここから始まったのだと思うと感慨もひとしお。真っ黒な空間に妊娠初期のとき以上のいとおしさがこみ上げています。
胎嚢確認で赤ちゃんの命の芽吹きを感じよう
妊娠初期は妊娠の陽性反応に続き、胎嚢の確認、卵黄嚢、胎芽、心拍の確認と一つひとつステップを踏んで妊娠が進行していきます。次のステップに進むごとに、うれしい気持ちが募ったり、新しい心配が浮かんだりと、気持ちが揺れ動くママも多いのではないでしょうか。
妊娠は個人個人で異なる環境のもと、違う速度で進行していくものです。胎嚢が見られてうれしさに心弾む人、胎嚢だけでは妊娠の実感がわかない人、反応もひとそれぞれです。もしも胎嚢を見るだけでは実感がわかなかったとしても、エコー検査で心拍や胎動がとらえられるようになると、徐々に気持ちが整っていくこともあります。
定期的な妊婦健診で赤ちゃんの命の営みを感じて、ママになる気持ちの準備を少しずつ進めていけると良いですね。