【産婦人科医監修】胎嚢が小さい原因と出産への影響は?心拍確認できても流産の可能性はある?
妊娠4週~5週頃に胎嚢が確認され、妊娠6週頃に胎嚢の大きさを教えられることが増えてきます。妊娠初期に胎嚢が小さいといわれるのは珍しくありませんが、つわりの状況、流産やダウン症などとの関連が気になりますね。体外受精やタバコの影響など妊娠にいたる経過も踏まえ、胎嚢が小さい原因や妊娠の経過について産婦人科医監修で解説します。
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この記事の監修
目次
胎嚢とは?5・6・7・8週に胎嚢が小さいと言われることも?
受精卵が着床すると、子宮の中に袋状の組織があらわれます。この袋が胎嚢(たいのう)です。胎嚢は妊娠4週頃から出現しはじめます。正常な妊娠では、妊娠5週ですべての妊婦さんで胎嚢が確認できるようになるといわれています。
妊娠5週後半になると胎嚢の中に赤ちゃんがみられ、妊娠6週にかけて心拍が確認できます。胎嚢、赤ちゃん、心拍の3つが確認できてはじめて、妊娠の成立となります。妊娠4週のあいだ、胎嚢は1日に0.9~1mm成長します。妊娠4週前半で1.5mmほどで出現した胎嚢が、妊娠5週はじめには6~7mmに成長している計算です。
妊娠5週に入ると胎嚢の大きさには個体差が生じます。成長の早い、遅いに個性が出始めるため、胎嚢が小さいと言われることは珍しくありません。胎嚢の中に赤ちゃんが見える妊娠5週後半になれば、頭殿長(CRL)での計測が可能になります。胎嚢の大きさは成長のひとつの目安としてとらえ、一度の健診で大きさを判断しないようにしましょう。
胎嚢が小さい原因は?小さくても大丈夫?
胎嚢が小さい理由は、いくつか考えられます。可能性としてあげられるのは、最終生理開始日が間違っていたり、生理周期が不順だったり、排卵日がずれていたりして、実際の妊娠週数と合っていないことです。
エコー検査の装置を当てる角度が影響して、胎嚢が小さく見えることもあります。ときには胞状奇胎が判明したり、小さく見えた胎嚢が血の塊で、異所性妊娠(子宮外妊娠)だったりすることもあるようです。しかし、一度の診察では発育状態や異常の有無を判断することは難しいため、一定の期間を置いて改めて検査するのが一般的です。
胎嚢が小さい、成長が遅いと言われても正常分娩で出産にいたることも多く、あまり深刻に考えすぎないことも大切です。定期的に妊婦健診に通い、医師と一緒に妊娠の経過を見守っていきたいですね。
胎嚢が小さいと流産の可能性も?障害との関係は?
胎嚢が小さい、胎嚢の発育が良くないと指摘されると、赤ちゃんが元気に育つのかとても心配になりますね。胎嚢の大きさと流産率が気になるママも少なくありません。
胎嚢の大きさと流産の関係
胎嚢が小さいと、流産につながる可能性は否定できないのは、流産の原因にあります。流産は全妊娠の約15%の確率で起こるといわれています(※1)が、流産の原因の多くは胎児の染色体異常です。染色体異常があり、もともと赤ちゃんに成長する力が備わっていないと、胎嚢が小さいままで流産にいたってしまう可能性があるということです。
胎嚢が確認できてからの流産率はいくつかの研究により約10~15%という数値が示されています。また、海外では胎嚢の大きさと胎芽の大きさの差が流産率に関係しているという研究報告があります。
しかし、胎嚢が小さいことと流産は決してイコールではありません。小さかった胎嚢が順調に成長して無事に出産された方もいますよ。
胎嚢の大きさと障害の関係
胎嚢が小さい場合には、障害の可能性についても考慮されることがあります。たとえば、羊水量の異常で胎嚢が小さい場合は、「腎尿路系先天異常」「羊膜索症候群」など、肺形成不全や奇形といった障害が発生する可能性があります。ダウン症では、妊娠週数に比べ胎嚢が小さいケースも見受けられます。
ただし、体外受精の場合は、妊娠7週頃までは自然妊娠と比較して胎嚢が小さいという傾向が見られたという海外の文献があります(※2)。この研究では、心拍が確認されていれば妊娠8週以降は自然妊娠の胎嚢サイズに近づくというデータが示されています。
胎嚢が小さいからといって流産、障害が必ず起こるとは限りません。赤ちゃんの生命力を信じましょう。
心拍確認できたのに胎嚢が小さい!無事出産できる?
心拍が確認されるのは、妊娠5週~妊娠6週にかけてです。心拍が確認できれば、ほとんどの妊娠で妊娠継続の可能性が高まります。さらに、妊娠7週頃になると胎児のCRLは約10mmほどに成長します(※3)。CRLが10mmを超えると流産となる可能性は0.5%まで減少し、妊娠継続が期待できます(※4)。
ただし、心拍が確認されてから流産にいたる可能性はおよそ9%という確率で存在しています(※5)。そのため、胎嚢のサイズが小さく、胎芽の発育が遅れているような場合では、経過を慎重に観察していくことが望まれます。お腹の痛みや出血があった場合は無理をせずに、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
胎嚢が小さいと「つわりなし」というのは本当?
つわりは妊娠5週~妊娠6週頃からはじまり、妊娠7週~妊娠11週頃にピークを迎えるのが一般的です。妊娠した人の50~80%感じている症状ですが、言い換えれば、まったくつわりを感じずに出産までいたるケースも20~50%の割合で存在します。
つわりの感じ方には個人差があるため、同じつわりの程度でも重いと感じる人もいれば、気にならないという人もいます。
また、つわりがなぜ起こるのかは明確に解明されていません。つわりは妊娠経過のバロメーターのようにとらえられがちですが、胎嚢が小さいからつわりがない、つわりがないから赤ちゃんの元気がないと結びつけることはできないのです。
胎嚢が小さいと言われてもつわりがあった人、成長が平均に追いつくころにつわりがひどくなった人など、妊婦さんから寄せられている体験談もさまざまですよ。
胎嚢の大きさに関する体験談
筆者が二人目を妊娠したとき、一人目の子は2歳4ヶ月になったばかりでした。一人目と同じ産院で診てもらおうと思ったものの、そこは健診の予約を入れても、2時間以上待つのはざらという人気の病院です。
2歳児が待つには酷だろうと、周りのママ友たちは誰も通っていないような近所の産院に赴きました。施設が新しくないせいか、待っている人は常にひとり、ふたりという具合で、ほとんど待たずに診察室に通されます。
診察もあっさりとしたもので、胎嚢の大きさや胎児の大きさについて、数値で伝えられたことはありません。きちんと成長しているのか、大きさは大丈夫なのか気になったので、どれくらいの大きさなのか数値を教えてほしいとお願いしたこともありました。
しかし、医師の回答は「誤差があるから意味がないよ」というもので、数値はわからずじまいでした。臨月に入り「2500gを超えたね」と太鼓判を押され出産に臨みましたが、生まれたときの体重は2410g。もしも胎嚢の段階で小さい、成長が遅いと言われていたら、心配でたまらなかったでしょう。
二人目という余裕もあり「元気ならば良いか」と妊娠を前向きにとらえることができたので、「数値にとらわれない」ということも、大切なのかなと思っています。
胎嚢が成長する時期に注意すべきことは?
胎嚢が成長するのは妊娠4~妊娠8週で、8週を過ぎると胎嚢は絨毛膜へと分化していきます。妊娠4~妊娠7週は、胎児の重要な器官が作られる重要な時期と重なります。薬、タバコ、飲酒による胎児への影響が大きく、奇形や胎児の発育不全につながる可能性があります。
妊娠が判明したら禁酒、禁煙し、薬が必要な場合は医師に相談してから服用するようにしましょう。胎嚢がある時期は胎盤がまだ完成していません。激しい運動は避け、休息をとりながら穏やかに過ごしたいですね。
胎嚢が小さくても心配しすぎなくて大丈夫
妊娠が判明すると「赤ちゃんは無事に大きくなるのかな」「障害がないと良いな」と考えることがあるのではないでしょうか。胎嚢は、一番最初に目にすることができる赤ちゃんの存在の証でもあるため、大きさを気にすることは当然とも言えます。
しかし、胎嚢が小さいと診察されても、無事に生まれてくる赤ちゃんは多くいます。通常は、1回の健診の結果では判断できないので、何週間か継続して成長を見守っていきます。そのあいだは心を穏やかに、リラックスして過ごすように心がけたいですね。
※この記事は2024年2月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。