【産婦人科医監修】胎動とダウン症の関係は?胎動が激しい理由は?エコーでダウン症がわかる?
胎動にまつわるうわさは多く、たとえば胎動とダウン症に関しては「胎動が少ないとダウン症の可能性がある」というものと「胎動が激しいとダウン症の可能性がある」という真逆のものが存在します。胎動の頻度や強弱はダウン症と関連があるのでしょうか。ダウン症と胎動の関連性や、痙攣など散見されるうわさの医学的根拠について解説します。
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目次
胎動とは?いつから始まる?
胎児がお腹の中で動くことを「胎動」と言います。胎児はお腹の中でじっとしているわけではなく、身体の発達とともに子宮の中を動き回っています。胎動は、早ければ妊娠7~9週頃からエコー検査で確認できます。このころの胎動はぴょこんと全身で跳ねるような動作です。胎児は3cmにも満たない大きさで、ママが胎動を感じるのはもう少し先になります。
妊娠16週頃になると胎児の身体は人間らしくなり、運動反射が完成してきます。胎児が手足を曲げたり伸ばしたりすることが増え、徐々に胎動を感じるママも多くなりますよ。
妊娠15~20週頃は、妊娠期間を通じて赤ちゃんが一番活発に動く時期です。妊娠後期になると、大きくなった赤ちゃんが動き回れるスペースが減ってしまうことや、睡眠と覚醒のサイクルができ始めるからと考えられています。
胎動とダウン症の関係は?
ダウン症の正式名は「ダウン症候群」と言います。イギリス人のジョン・ラングドン・ダウン医師が発見したことから命名された、21番目の染色体の突然変異です。ダウン症候群には目が吊り上がっている、鼻が低いという外見的な特徴のほか、筋力が弱い、運動能力や知的な発達が遅れるなどの傾向があります。
このように、ダウン症児には筋力や運動能力に影響が出ることから、「ダウン症の赤ちゃんは胎動も弱い」もしくは「胎動が少ない」という誤解が生まれています。その一方で、ダウン症児はしばしば多動性障害がみられることから、「胎動が激しいのはダウン症の可能性がある」という風説が広まっているのです。
しかし、ダウン症と胎動の関連性を示すには医学的な根拠に乏しく、胎動の強弱だけでは「ダウン症ではない」という判断も、「ダウン症かもしれない」という判断もできないのが現状です。事実、ダウン症の子どもを持つママからも「発達に問題がないきょうだいと胎動は変わらなかった」といった声が聞かれますよ。
ダウン症は胎動が始まるのが早い?遅い?
胎動の強弱と同様に、胎動が始まるタイミングについても「ダウン症は胎動が始まるのが遅い」という見解が散見されます。しかし、この説も医学的な根拠に乏しく、胎動の始まりだけでは正しい判断はできません。
先天的な異常がない場合でも、大きな胎動を感じないというケースは見受けられます。妊娠中期になっても胎動がないと心配になるかもしれませんが、定期健診で問題がなければ、心配しすぎないようにしましょう。
ダウン症は胎動が激しい?少ない?
ダウン症は発達障害や知的障害をともなうことがあります。お腹の中でよく動く子や、胎動が激しい子に対し、発達障害の多動の症状を疑ったり、ダウン症の傾向があるのではないかと心配になったりするママも多いようです。
しかし、胎動には個性があり、ママの受け止め方も人それぞれに違います。発達に何も問題がなくても、胎動が弱い場合やあまり感じられない場合もあります。逆に、胎動が激しい子や力が強くよく動く子でも、なんらかの異常があらわれる可能性もあるのです。
胎動が激しい理由は科学的に説明できるものではなく、いつもと変わらない様子であれば、気にしすぎないことが大切です。
ダウン症は痙攣のような胎動?
痙攣のような胎動は、赤ちゃんがしゃっくりをしていたり、おしっこをしたりすると感じるものです。しゃっくりやおしっこは生理現象で起こり、頻度や回数がダウン症に影響しているという科学的な根拠は見当たりません。
赤ちゃんのしゃっくりは大人よりも頻繁に起こります。お腹の中で赤ちゃんが震えているのを感じても、生まれてきた後に外の世界に対応する準備を進めているのだと、温かい目で見守ってくださいね。
ダウン症はエコーでわかるの?
妊娠初期の段階で、エコー検査で後頸部浮腫が見つかると、ダウン症の可能性が考慮されます。しかし、後頸部浮腫は週数が進むと消失してしまうことも多いため、経過を観察していきましょう。
ダウン症の外見的特徴には、耳や鼻が小さい、足が短いというものがあります。鮮明なエコー装置であれば画面に赤ちゃんの表情をとらえることができますが、顔立ちには個性が出るため、エコー写真だけではダウン症かどうかの判断できません。
エコー検査でダウン症が疑われる場合は、身体や赤ちゃんに負担がかからない母体血清マーカーテスト、新型出生前診断(NIPT)で一次的な検査が行われる場合があります。検査の結果、ダウン症の疑いが強ければ、羊水検査や絨毛検査で確定診断を行うことも可能です。いずれにしても、検査が必要かどうかは医師や夫婦で相談しながら慎重に判断したいですね。
胎動の種類
グルングルン回る全身運動
妊娠中期頃の赤ちゃんは、お腹の中の羊水に浮かびながらグルングルンと回る全身運動をしています。「赤ちゃんがお腹の中で、でんぐり返しをしている」と形容されるほど、赤ちゃんの胎動のなかでもダイナミックな動きです。
妊娠後期になると子宮の中で十分なスペースがなくなるため、グルングルン、ゴロンゴロンと回転するような胎動は少なくなります。
グニュグニュ押される手足の運動
妊娠20週頃になると、赤ちゃんの骨格がしっかりとしてきます。赤ちゃんは発達した手足を曲げたり伸ばしたりするので、内側からグニュグニュと押されるような感覚を覚えることがありますよ。
妊娠後期となり赤ちゃんの力が増してくると、お腹がグーッと盛り上がる様子を確認できます。お腹の外からも赤ちゃんを感じられる瞬間です。
リズミカルなしゃっくり
妊娠中期になると、赤ちゃんはお腹の中でしゃっくりを始めます。ママは、痙攣(けいれん)しているようなリズミカルな動きを胎動として感じますよ。
大人のしゃっくりよりもリズムが早く、赤ちゃんが苦しくないのか不安になりますが、しゃっくりは生理現象なので心配いりません。時間がたてば自然とおさまるため、ママは普段通りリラックスして過ごしてくださいね。
ピクピクと震える胎動
妊娠中期の赤ちゃんは、身体の機能がどんどん発達してきます。羊水を飲んで呼吸や排せつの練習をしたり、目や耳で外の刺激に反応したりし始めるのもこの時期です。
プルプルと震えるような胎動は、赤ちゃんがおしっこをしたときの反応だといわれています。また、光や音の刺激にも反応するため、びっくりしたときに手足をピクピクと痙攣させたり、ビクッと震えたりする「モロー反射」が出ることもあるようです。
ポコポコ感じるキックやパンチ
赤ちゃんが子宮の壁を蹴ったりパンチしたりすると、ポコポコとした振動がお腹に伝わってきます。妊娠中期頃は力がそれほど強くないため、胎動を使ってキックゲームを楽しむ余裕がありますが、妊娠後期が近づくにつれ、痛みで唸ってしまうほど力強い蹴りやパンチが入ることもありますよ。
骨格がほぼ完成する妊娠後期では、赤ちゃんがキックやパンチをした際のふくらみが、お腹の外からも確認できるかもしれません。
妊娠週数別の胎動の感じ方
妊娠2・3・4ヶ月(4~15週)
妊娠初期の赤ちゃんは、骨格がまだ発達していません。手足も十分に動かすことができないため、胎動は頭から足が連動した全身運動になります。エコー検査では、元気に跳ねる様子が確認できるかもしれません。
しかし、ママが胎動として赤ちゃんの動きを認識できるのは、早くて妊娠15週頃からです。このころの胎動は「もぞもぞ」や「むずむず」としたような感触で、お腹の中でガスが移動している感覚と似ています。はっきりと「胎動だ」と区別できるほどの力はなく、胎動を感じないという妊婦さんが大半です。
妊娠5・6・7ヶ月(16~27週)
妊娠中期になると、赤ちゃんの骨格や手足の筋肉が発達し、動きが活発になります。経産婦さんでは、妊娠16週頃に初めての胎動を感じるママが増えてきます。初産では、妊娠16~20週頃に初めての胎動が感じられるケースが多いようです。
妊娠20週頃には、回転やキックなど、さまざまなパターンの胎動が感じられるようになります。耳や目の機能も発達してきているため、話しかけたり音楽を聞かせたりすると、赤ちゃんが胎動で応えてくれるかもしれませんね。
胎動を通じ、赤ちゃんが元気な様子が伝わってくるとうれしいものですが、胎動のあらわれ方には個性があります。おとなしい赤ちゃんもいるので、エコー検査や妊婦健診で問題がなければ、胎動が少ないからと言って心配しすぎることはありません。ただし、いつもより胎動の回数が少ないときや、様子が違うと感じたときは、医師に相談するようにしましょう。
妊娠8・9・10ヶ月(28週~)
妊娠後期の赤ちゃんは、骨格がほぼ完成してきます。キックやグーッと押す力は強くなり、場所によっては痛いと感じることもあるかもしれません。赤ちゃんが大きくなるにつれて子宮内のスペースが減り、お腹の中での位置が定まってくるため、胎動の回数は少しずつ落ち着いてきます。
臨月になると赤ちゃんは骨盤内に降りてきます。これまで胎動を感じていた位置も、下にずれることが多いようです。
胎動だけではダウン症の特徴は見分けられない
赤ちゃんを授かると、ただただ健康で、五体満足に生まれてくるように願うものですね。エコー検査で心拍が確認できたり、初めての胎動が感じられたりしたときは、元気な赤ちゃんの様子に、ホッとするママも多いことでしょう。
そのため、胎動が弱かったり遅かったりすると、心配な気持ちになるのは当然のこととも言えます。しかし、胎動だけでは赤ちゃんの異常を正確に把握することはできません。また、たとえダウン症があったとしても、病気ではなく個性のひとつだととらえれば、また別の一面も見えてくるのではないでしょうか。
ただし、胎動がいつもと違うと感じたら注意が必要です。胎動の減少や胎動がない状態が続くことは、赤ちゃんの命を守るうえで大切なポイントとなります。いつもより胎動の間隔が長くなったり、弱くなったりしたときは早めに病院で診察を受けましょう。
※この記事は2023年6月時点の情報をもとに作成しています。掲載した時点以降に情報が変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。