流産の出血はいつまで続く?手術後も止まらない場合は?出血なしの流産も

妊娠初期に出血すると、流産してしまうのではないかと不安になりますよね。妊娠初期の出血は心配ないことも多いのですが、痛みを伴ったり、白い塊が出たりしたら流産の兆候かもしれません。一方、流産していても出血しないこともあります。ここでは、流産の出血の特徴や、いつから出血が始まるのか、手術後いつまで出血が続くのか解説します。

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この記事の監修

杉山 太朗
産婦人科医
杉山 太朗

目次

  1. 流産とは
  2. 流産の兆候は出血?
  3. 流産しても出血なしのことがある?
  4. 流産の出血はいつまで?手術後も止まらない?
  5. 妊娠初期の出血は心配ない場合も多い
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流産とは

妊娠22週未満に妊娠が継続できなくなる

流産とは、何らかの原因によって妊娠22週未満にお腹の赤ちゃんが亡くなってしまい、妊娠が中断することです。流産には、自然に妊娠が終わる「自然流産」と、人工的に流産を起こす「人工流産(人工妊娠中絶)」がありますが、一般的に「流産」といえば自然流産を指します。流産は全妊娠の約15%の確率で起こるとされており、決して珍しいものではありません。

流産の多くは妊娠初期に起こる

流産が起こりやすい時期は妊娠初期です。流産は発症時期によって、妊娠12週未満に起こる「早期流産」と、妊娠12週以降22週未満に起こる「後期流産」に分類されるのですが、全流産のうち約80%が早期流産なのです。早期流産の中でも、エコー検査で一度も心拍確認ができずに流産と診断されるケースが多く、心拍確認後は流産のリスクが減ります。

早期流産の原因のほとんどは受精卵の染色体異常といわれています。受精卵にもともと成長する力がなく、残念ながら、事前に防ぐことはできません。

一方、後期流産は、赤ちゃんを包む膜が細菌感染を起こす「絨毛膜羊膜炎」や、子宮の筋肉に腫瘍ができる「子宮筋腫」など、母体側の原因で起こるといわれています。ただし、こうした原因への対策を打ったとしても、流産のリスクを減らせる可能性はありますが、完全に予防することは困難です。

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進行流産と稽留流産に分けられる

流産は、子宮内の胎児や胎盤の状態によって「進行流産」と「稽留流産(けいりゅうりゅうざん)」に分けられます。

進行流産とは、胎児や胎盤などの子宮内容物が外に流れ出てきている状態です。排出が進む程度によって、さらに「不全流産」と「完全流産」に分類されます。

不全流産子宮内容物の排出が進行しており、まだ一部が子宮内に残っている
完全流産子宮内容物がすべて排出された状態

不全流産は、排出が進むのに伴い、出血や腹痛といった自覚症状があらわれます。完全流産の場合、子宮内容物が排出されているあいだは自覚症状がみられますが、完全に外に出されると子宮頸管が自然に閉じ、症状も治まってきます。

一方、稽留流産とは、子宮内で胎児が亡くなってしまい、胎児を含む子宮内容物が排出されずにとどまっている状態です。身体が妊娠を継続していると勘違いして、正常妊娠時のホルモンバランスが維持されるため、自覚症状がまったくあらわれず、妊婦健診で初めて気付くケースが多いようです。

なお、まだ胎児は死亡していないものの、少量の出血や軽度の腹痛があらわれ、流産のリスクが高まっている状態を「切迫流産」と言います。妊娠初期の切迫流産は有効な治療法がなく、安静にするしかありませんが、妊娠を継続できる可能性があります。

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胎嚢が確認できない化学流産もある

通常の流産は、赤ちゃんを包む「胎嚢(たいのう)」がエコー検査で確認できて以降、妊娠21週6日までに妊娠が中断したときに診断されます。これに対し、「化学流産(生化学妊娠)」とは、妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、胎嚢が確認できないことです。

通常、胎嚢は妊娠5~6週頃までには確認できますが、この時期を過ぎても確認できなければ、化学流産が疑われます。ただし、卵管など子宮以外の場所に着床する「子宮外妊娠」を発症しているために胎嚢が確認できないことも考えられるため、診断は慎重に行います。

早期妊娠検査薬の普及などにより、早い時期に妊娠がわかるようになったため、化学流産が判明するケースも増えています。しかし、妊娠検査薬を使わなければ、妊娠して化学流産にいたったことに気付かずに次の生理が来ることも十分にあり得ます。

流産の兆候は出血?

進行流産の代表的な兆候として不正出血があげられます。ただし、妊娠初期には、妊娠が正常に進んでいても、出血がみられることが珍しくありません。心配がいらない出血なのか、流産の兆候なのか、自分で判断するのは危険なため、出血したら早めに産婦人科に症状を伝えて、エコー検査で胎児の状態を調べてもらいましょう。

それでは、進行流産の際にみられる不正出血には、どのような特徴があるのでしょうか。

生理の出血に似ていて痛みを伴う

不全流産や完全流産が起こったとき、生理に似た不正出血があったという人が多いようです。出血の色は、生理が始まったころのような真っ赤な鮮血、茶色っぽい、赤黒いなど、人によってさまざまです。

流産の初期段階では、出血に伴って、生理痛のような下腹部の痛みやお腹の張り、腰痛がみられますが、こうした症状は流産の進行とともに強くなることが多いようです。陣痛のような激しい痛みが周期的にあらわれるようになったり、お腹の張りが治まらなかったりする場合、流産の可能性が高いと言えます。

出血量が多い

流産したときの出血量は切迫流産に比べて多いといわれていますが、個人差が大きく、一概には言えません。「少量の出血がだらだらと長期間続いた」「最初は茶色いおりものから始まり、徐々に量が増えていった」「生理の2日目くらいの量だった」など、多様なケースがあります。

妊娠初期には、少量の出血はよくあることだといわれていますが、「出血量が少ないから大丈夫」と自己判断しないようにしましょう。

化学流産の場合、生理予定日の1~2週間後に出血が始まることが多いようです。普段の生理と同じくらいの出血量だった人もいれば、少量の出血が1週間~10日間ほど続いたという人もいます。妊娠検査薬で陽性反応が出てから、胎嚢が確認できるまでのあいだに出血がみられたら、化学流産や子宮外妊娠のリスクがあるため、すぐに産婦人科を受診しましょう。

塊が出る

流産が進行すると、どろっとした赤黒い塊やゼリー状の白い塊が出ることがあります。こうした塊は、胎嚢の可能性が高いといわれています。排出された胎嚢は、絨毛細胞が異常増殖してしまう「胞状奇胎(ほうじょうきたい)」や子宮外妊娠などの異常妊娠でないか診断するため、病理検査を行うことがあります。そのため、出血に混じって塊が出た場合、可能であればタッパーなどの容器に入れて持参するよう、病院から指示されるようです。

つわりが突然なくなることも

進行流産では、出血や痛みがあらわれるほか、それまでにあったつわりが突然なくなる場合があります。これは、子宮内容物が外に出ることで、ホルモンバランスが急激に変化することなどが関係していると考えられます。

つわりは、一般的に妊娠8~9週頃がピークで、妊娠中期に入るくらいまでに治まるとされています。しかし、つわりが終わる時期は個人差が大きく、平均より早い妊娠週数に終わる人や、そもそもつわりがまったくない人もいます。正常妊娠であっても、妊娠初期に急につわりがなくなることはあるため、つわりだけで流産しているかどうか判断することはできません。

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流産しても出血なしのことがある?

進行流産は兆候として出血や下腹部の痛みがあらわれますが、子宮内容物が子宮内に残ったままになっている稽留流産の場合、自覚症状がまったくあらわれません。出血なしで、お腹もまったく痛くないうえ、つわりが続くこともあります。また、稽留流産後も妊娠中のホルモンバランスが維持され、プロゲステロンが分泌され続けるため、基礎体温が高温期のまま下がらないこともあるようです。

稽留流産が起こっても、正常妊娠のときの身体の状態からあまり変化しないため、妊婦健診のエコー検査で稽留流産が判明すると、妊婦さんは「いつの間に流産していたの」と驚いてしまうのです。

しかし、稽留流産であっても、子宮内容物が自然に排出され始めて進行流産に移行することがあり、その場合、出血や痛みがみられるようになります。

なお、化学流産の場合、生理に似た出血があるのですが、人によってはなかなか出血しないこともあるようです。

流産の出血はいつまで?手術後も止まらない?

完全流産や手術をしないと止まらない

進行流産の場合、子宮内容物が排出されきって完全流産になったり、手術で子宮内容物を取り除いたりするまでは、基本的に出血は止まりません。子宮内に亡くなった胎児や胎盤を残したままにすると、大量出血や激しい腹痛のリスクがあるため、進行流産、稽留流産ともに手術を検討することが多いようです。

早期流産は器具を使って子宮内容物を取り除く「子宮内容除去術」を行い、後期流産は子宮収縮剤で陣痛を起こして亡くなった胎児を分娩します。

手術後も少量の出血がある

手術後は、子宮が妊娠前の状態に戻ろうとする「子宮復古」の過程で、少量の出血や腹痛が起こる場合があります。手術してから出血が止まるまでの期間は1~2週間が目安で、日が経過するにつれて出血量が少なくなっていくとされています。

しかし、なかには、「出血が数週間止まらなかった」「鮮血と茶色いおりものが交互に出たり、症状が治まったりするのが長期間続いた」という人もいます。いずれにせよ、手術後2週間以上、出血が止まらなかったら、一度産婦人科を受診しましょう。

また、手術後の出血は、少量ならばほとんど問題ないのですが、大量に出血していたり、発熱や強い腹痛を伴ったりする場合、術後の合併症を発症している恐れもあるため、すぐに受診してください。

流産手術後は身体が大きなダメージを受けているほか、精神的なストレスも受けています。そのため、ホルモンバランスが乱れがちで、不正出血が起こりやすくなっています。流産手術後は、不正出血なのか生理が再開したのか見分けたり、生理周期を整えたりするためにも、基礎体温を測ることを習慣づけましょう。

待機療法ではいつから出血するかわからない

妊娠12週未満の稽留流産や不全流産の場合、子宮内容物が自然排出されるのを待つ「待機療法」が選択される場合があります。しかし、稽留流産の場合はいつから排出が起こって出血するかわかりません。また、稽留流産、不全流産ともに、突然大量出血して緊急入院するリスクがあります。

子宮内容物がすべて排出されて出血が止まるまで1~2週間かかるのが目安ですが、3週間以上出血が続いたという人もおり、個人差が大きいようです。

妊娠初期の出血は心配ない場合も多い

妊娠初期に出血が起こると「赤ちゃんに何かあったのではないか」と不安になり、焦ってしまいますよね。もちろん、妊娠初期の出血は流産や切迫流産の兆候のこともありますが、心配ない出血の場合も多いですよ。一方、出血していないのに流産していたということもあるため、出血あり・なしでは流産のリスクを判断できません。

妊娠初期の流産は妊婦さんがどんなに気を付けていても起こってしまうものです。出血してしまったとしても、きちんと診断が出るまでは赤ちゃんの生きる力を信じながら待ちましょう。

妊娠初期は気が抜けず、つわりのピークでもあるため、精神的にも身体的にもつらいと思うことが多いでしょう。流産のリスクがぐっと下がる安定期まで、自分にやさしくして、周りの人に頼りながら過ごしてくださいね。

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